StudyMed医師国家試験

その仕事、誰の担当?―根拠法から見抜く保健所の業務

第111回医師国家試験 B問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第111回 B問題 第30問

保健所の業務はどれか。

  1. a.生活保護の認定
  2. b.食品に関する営業者の監視
  3. c.予防接種後の健康被害救済
  4. d.地域包括支援センターの設置
  5. e.休日夜間急患センターの設置

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、保健所が担う業務を選ぶ問題だ。選択肢には市町村や福祉事務所、国の業務がうまく混ぜてある。コツは「その業務の根拠法は何か」「その法律で実施主体とされているのは誰か」を考えること。まず保健所そのものについて確認しよう。保健所はどんな法律に基づく機関かな。
医学生医学生
地域保健法です。公衆衛生の講義で、保健所と市町村保健センターの違いを何度も強調されました。
ドクタードクター
いいね。保健所は都道府県、政令指定都市、中核市、政令で定める市、東京都の特別区が設置する、地域保健の広域的・専門的・技術的な拠点だ。所長は原則として医師。業務は地域保健法第6条と第7条に列挙されている。一方、市町村保健センターは何を担う施設だった?
医学生医学生
乳幼児健診や健康相談みたいな、住民に身近な対人サービスですよね。設置は義務ではなかったはずです。
ドクタードクター
その通り。この役割分担を頭に置いて選択肢を見ていこう。まず生活保護の認定はどうだろう。
医学生医学生
生活保護は医療や健康とも関わるので、保健所が関係していそうな気もします。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも生活保護法では、保護の決定・実施の権限は都道府県知事や市長、福祉事務所を設置する町村長にあり、実務はケースワーカーのいる福祉事務所が担う。保健所と福祉事務所を「保健福祉事務所」として組織上まとめている自治体もあるけれど、法律上の根拠は別物だ。
医学生医学生
予防接種後の健康被害救済は、感染症対策の一環として保健所かと思いました。
ドクタードクター
ここもひっかけやすい。予防接種法に基づく定期接種などの後の健康被害は、国の審査会の意見を聴いて厚生労働大臣が因果関係を認定し、医療費や障害年金などの給付は接種を実施した市町村が行う。保健所は実施主体ではないんだ。なお任意接種による健康被害は、PMDAが実施する医薬品副作用被害救済制度の対象になる。
医学生医学生
「国が認定、市町村が給付」ですね。地域包括支援センターは介護保険法なので市町村でしょうか。
ドクタードクター
正解。設置主体は市町村で、社会福祉法人や医療法人などに委託することもできる。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーが配置され、総合相談や高齢者虐待への対応などの権利擁護、介護予防ケアマネジメントなどを行う。
医学生医学生
臨床実習の地域医療で、地域包括支援センターの保健師さんと退院前カンファレンスに出たのを思い出しました。休日夜間急患センターも市町村ですか。
ドクタードクター
そう。休日夜間急患センターは比較的軽症の患者を受け入れる初期救急医療施設で、在宅当番医制と並ぶ初期救急体制のひとつだ。市町村が地域の医師会などの協力を得て整備・運営するのが一般的だよ。
医学生医学生
となると、残る食品に関する営業者の監視が保健所の業務ですね。
ドクタードクター
その通り。地域保健法第6条には「栄養の改善及び食品衛生に関する事項」が挙げられている。食品衛生法に基づく飲食店などの営業許可、営業施設への立入検査、食品の収去検査、食中毒発生時の原因調査などを、保健所に配置された食品衛生監視員が担当する。代表的な保健所業務だ。
医学生医学生
食中毒が出たときにニュースで「保健所が営業停止処分」と報じられるのは、まさにこの業務なんですね。
ドクタードクター
そういうことだ。ほかにも第6条には、感染症や結核・エイズの予防、精神保健、難病など長期療養が必要な人の保健、環境衛生、医事・薬事、人口動態統計などが並ぶ。専門性と広域性が高いものが保健所、と覚えるとイメージしやすい。
医学生医学生
医師として働くうえで、保健所と関わる場面はどんなときですか。
ドクタードクター
たとえば感染症法に基づく届出は保健所長を経由するし、結核患者の接触者健診や食中毒疑いの報告でも保健所と連携する。食中毒を疑う患者を診た医師には、24時間以内に保健所長へ届け出る義務がある。臨床医にとっても身近な存在なんだ。業務と実施主体を根拠法とセットで覚えておけば、こうした問題は迷わず解けるし、現場でもどこに連絡すべきか判断しやすくなるよ。

まとめ

保健所は地域保健法に基づき都道府県や政令指定都市などが設置する地域保健の専門的・広域的拠点で、食品衛生法に基づく営業許可や営業施設の監視指導、食中毒の原因調査は食品衛生監視員が担う代表的な業務です。一方、生活保護の決定・実施は福祉事務所、地域包括支援センターと休日夜間急患センターの整備は市町村、定期予防接種の健康被害救済は厚生労働大臣が認定し市町村が給付する仕組みであり、いずれも保健所の業務ではありません。保健所はほかにも感染症対策、精神保健、難病対策、環境衛生、医事・薬事など専門性の高い業務を担い、乳幼児健診などの身近な対人サービスは市町村保健センターが担います。業務を根拠法と実施主体のセットで整理する考え方は、公衆衛生の出題に広く応用できるうえ、届出や連携先を判断する臨床の場面でも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

保健所の業務を問う問題である。保健所は地域保健法に基づいて都道府県、政令指定都市、中核市、その他政令で定める市および東京都の特別区が設置する、地域保健の広域的・専門的・技術的拠点である。その業務の範囲は地域保健法第6条(必ず行う事項)および第7条(必要に応じて行える事項)に列挙されている。 本問の選択肢には、保健所ではなく市町村や福祉事務所、国(厚生労働大臣)が担う業務が混ざっている。解く際は「その業務の根拠法は何か」「その法律で実施主体とされているのは誰か」を考えるとよい。生活保護は生活保護法(福祉事務所)、予防接種の健康被害救済は予防接種法(厚生労働大臣の認定と市町村の給付)、地域包括支援センターは介護保険法(市町村)、休日夜間急患センターは初期救急医療体制(市町村)というように整理できる。一方、食品衛生法に基づく飲食店などの営業許可や営業施設への立入検査・監視指導は、保健所に配置された食品衛生監視員が行う代表的な保健所業務である。

選択肢考察

  1. ×a.  生活保護の認定

    生活保護法に基づく保護の決定・実施は、都道府県知事、市長、および福祉事務所を設置する町村の長が行い、実務はその権限を委任された福祉事務所(社会福祉法に規定される「福祉に関する事務所」)が担う。申請の受付、資産や扶養義務者の調査、保護の要否判定などはケースワーカーを配置した福祉事務所の業務であり、保健所の業務ではない。保健所と福祉事務所は「保健福祉事務所」などとして組織上統合されている自治体もあるが、法律上の業務の根拠は別である。

  2. ○b.  食品に関する営業者の監視

    地域保健法第6条は保健所が行う事項として「栄養の改善及び食品衛生に関する事項」を挙げている。具体的には、食品衛生法に基づき、飲食店営業などの営業許可、営業施設への立入検査、食品の収去検査、食中毒発生時の原因調査などを行う。これらの監視指導は保健所に配置された食品衛生監視員(食品衛生法に定める資格を持つ職員)が担当する。したがって保健所の業務である。

  3. ×c.  予防接種後の健康被害救済

    予防接種法に基づく定期接種・臨時接種の後に生じた健康被害については、予防接種健康被害救済制度が設けられている。予防接種と健康被害との因果関係は国の審査会(疾病・障害認定審査会)の意見を聴いて厚生労働大臣が認定し、医療費・障害年金などの給付は接種を実施した市町村が行う。保健所はこの制度の実施主体ではない。なお、予防接種法によらない任意接種による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度(医薬品医療機器総合機構〈PMDA〉が実施)の対象となる。

  4. ×d.  地域包括支援センターの設置

    地域包括支援センターは介護保険法に基づく機関で、設置主体は市町村である。市町村から包括的支援事業の委託を受けた社会福祉法人や医療法人などが設置することもできる。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)が配置され、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待への対応など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントを行う。保健所が設置するものではない。

  5. ×e.  休日夜間急患センターの設置

    休日夜間急患センターは、休日や夜間に比較的軽症の救急患者(主に独歩で受診できる外来患者)を受け入れる初期(一次)救急医療施設である。在宅当番医制と並ぶ初期救急医療体制の一つで、市町村が地域の医師会などの協力を得て整備・運営するのが一般的である。保健所の業務ではない。

保健所と市町村保健センターの違い

保健所:地域保健法に基づき、都道府県・政令指定都市・中核市・政令で定める市・特別区が設置する。所長は原則として医師である。専門性・広域性の高い業務(感染症対策、食品衛生、環境衛生、医事・薬事、精神保健、難病対策、統計の作成など)を担う。 市町村保健センター:地域保健法に基づき市町村が設置できる施設で、住民に身近な対人保健サービス(乳幼児健診、母子健康手帳の交付〈市町村の業務〉、健康相談、予防接種の実施など)を担う。設置は義務ではなく、所長が医師である必要もない。

地域保健法第6条に掲げられた保健所の業務(要旨)

地域保健に関する思想の普及・向上、人口動態統計その他地域保健に関する統計、栄養の改善および食品衛生、住宅・水道・下水道・廃棄物処理・清掃その他の環境衛生、医事および薬事、保健師に関する事項、公共医療事業の向上・増進、母性・乳幼児・老人の保健、歯科保健、精神保健、治療方法が確立していない疾病その他の特殊な疾病(難病など)により長期療養を必要とする者の保健、エイズ・結核・性病・伝染病その他の疾病の予防、衛生上の試験・検査、その他地域住民の健康の保持・増進に関する事項。

実施主体の整理

生活保護の決定・実施:福祉事務所(都道府県知事・市長・福祉事務所設置町村長の権限) 定期予防接種の実施と健康被害救済の給付:市町村(因果関係の認定は厚生労働大臣) 地域包括支援センター:市町村(委託可) 初期救急医療(休日夜間急患センター・在宅当番医制):市町村 食品衛生監視・営業許可:保健所(食品衛生監視員)

POINT

・保健所は地域保健法に基づく機関で、食品衛生(営業許可・監視指導、食中毒調査)は代表的な業務である。 ・生活保護は福祉事務所、地域包括支援センターと休日夜間急患センターは市町村、予防接種の健康被害救済は「厚生労働大臣が認定し市町村が給付」。 ・業務の根拠法と実施主体をセットで覚えると、保健所・市町村・福祉事務所の業務を区別しやすい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。