StudyMed医師国家試験

「判定する人」と「支える人」は違う―多職種連携で押さえる各専門職の本当の役割

第111回医師国家試験 B問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第111回 B問題 第2問

医療,介護および福祉の分野で連携する職種の専門性や主たる役割について最も適切なのはどれか。

  1. a.介護支援専門員は要介護度を判定する。
  2. b.管理栄養士は高齢者施設で調理を担当する。
  3. c.作業療法士は基本的動作能力の回復を図る。
  4. d.言語聴覚士は摂食・嚥下の機能回復を図る。
  5. e.民生委員は生活保護の受給資格を判定する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療・介護・福祉の現場で一緒に働く職種について、それぞれの役割を正しく知っているかを問う問題だ。着眼点は2つ。1つは「判定」「決定」という言葉が出てきたら、それを本当にその職種が担うのかを疑うこと。もう1つは、リハビリ職の役割分担をきちんと区別できているかどうかだよ。
医学生医学生
選択肢を見ると、ケアマネジャーが要介護度を判定するというのは、なんとなく合っていそうに感じました。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。要介護認定の流れを思い出してみよう。申請を受けるのはどこだったかな。
医学生医学生
市町村です。公衆衛生の講義で、認定調査員の訪問調査と主治医意見書があって、コンピュータの一次判定のあとに二次判定がある、と習いました。
ドクタードクター
その通り。二次判定を行うのは、市町村に置かれる介護認定審査会という合議体で、保健・医療・福祉の専門家で構成される。最終的に認定するのは保険者である市町村だ。ケアマネジャー、つまり介護支援専門員は、決まった要介護度をもとに、利用者や家族の状況を評価してケアプランを作り、サービス事業者との調整を担う人なんだ。
医学生医学生
判定する側ではなく、判定結果を受けてサービスを組み立てる側なんですね。主治医意見書は僕たち医師が書くので、むしろ医師のほうが判定に関わっているくらいかもしれません。
ドクタードクター
意見書は判定の大事な材料になるからね。ただ、判定そのものは審査会の合議で行う、と区別しておこう。次は管理栄養士。高齢者施設で調理を担当する、という記述はどうだろう。
医学生医学生
給食を作っているイメージがありましたが、調理は調理員さんの仕事でしょうか。
ドクタードクター
そう。管理栄養士は国家資格で、主な業務は傷病者への療養のための栄養指導や、個々の栄養状態に応じた専門的な栄養管理、そして給食施設での献立作成や衛生管理などの給食管理だ。調理そのものは主たる役割ではない。病棟でNSTに参加している管理栄養士さんを見たことはあるかな。
医学生医学生
内科の臨床実習でNSTの回診に同行しました。確かに、栄養評価をして経腸栄養の内容を提案していました。
ドクタードクター
まさにそれが本来の専門性だね。では今回の山場、リハビリ職の区別に進もう。作業療法士は基本的動作能力の回復を図る、という記述は?
医学生医学生
寝返りや起き上がり、歩行の練習をしているのは理学療法士のイメージがあります。作業療法士は日常生活動作のほうでしょうか。
ドクタードクター
正確だね。基本的動作能力、つまり寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行などを担うのが理学療法士で、運動療法や温熱・電気刺激などの物理療法を用いる。作業療法士は、食事・更衣・入浴・排泄・家事といった応用的動作能力や、社会的適応能力の回復を図る職種だ。手芸や工作などの作業活動を使い、精神科リハビリテーションにも関わる。だからこの記述は理学療法士の説明になっていて、誤りなんだ。
医学生医学生
そうすると、言語聴覚士が摂食・嚥下の機能回復を図る、というのが正しいですね。言語の訓練だけかと思っていました。
ドクタードクター
正解。言語聴覚士は失語症や構音障害、音声障害、聴覚障害の評価・訓練を行う国家資格職だけど、言語聴覚士法で、医師または歯科医師の指示のもとで嚥下訓練を業として行えると定められている。脳卒中後や高齢者の嚥下障害に対して、嚥下機能を評価し、食物を使わない間接訓練や、実際に食物を使う直接訓練を行うんだ。
医学生医学生
神経内科を回ったとき、STさんが嚥下造影の結果を見ながら食形態を決めていたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい経験をしているね。誤嚥性肺炎の予防という点でも、言語聴覚士は欠かせない存在だよ。最後に民生委員。生活保護の受給資格を判定する、というのはどうかな。
医学生医学生
地域の相談役のような人だと思うので、判定までは行わない気がします。
ドクタードクター
その通り。民生委員は厚生労働大臣から委嘱される無報酬の非常勤の特別職で、児童委員も兼ねる。住民の相談に乗り、行政につなぐのが役割だ。生活保護法では保護の実施に協力する協力機関という位置づけにすぎない。保護の決定は都道府県知事や市長、福祉事務所を設置する町村長が行い、実務は福祉事務所のケースワーカーが担う。
医学生医学生
要介護認定も生活保護も、判定や決定は行政の仕組みの中で行われていて、個々の専門職や相談役が単独で決めるわけではない、ということですね。
ドクタードクター
よく整理できた。臨床で大事なのは、患者さんの困りごとに応じて「誰につなぐか」を判断できることだ。退院支援や経済的な問題なら医療ソーシャルワーカーとして働く社会福祉士、精神障害者の社会復帰なら精神保健福祉士、日常の介護なら介護福祉士。それぞれの専門性を知っていると、カンファレンスでの議論もぐっと具体的になるよ。
医学生医学生
OSCEの医療面接でも、生活背景を聞いたあとに「どの職種に相談するか」まで考えられると良さそうですね。
ドクタードクター
そうだね。医師はチームの一員として、各職種の専門性を尊重しながら情報を共有し、指示が必要な場面では適切に指示を出す。その前提になるのが、今回のような職種ごとの役割の理解なんだ。

まとめ

多職種連携では、各職種の法的な位置づけと主な業務を正しく理解することが欠かせません。要介護度は市町村の介護認定審査会による二次判定を経て市町村が認定し、介護支援専門員はその結果をもとにケアプランを作成します。生活保護の決定は福祉事務所を設置する自治体の長が行い、民生委員は協力機関として地域の相談とつなぎ役を担います。リハビリ職では、理学療法士が基本的動作能力、作業療法士が応用的動作能力や社会的適応能力、言語聴覚士が言語・聴覚と摂食・嚥下機能を主に担当し、管理栄養士の主業務は調理ではなく栄養指導と給食管理です。「判定・決定は誰が行うか」と「各専門職の守備範囲」を区別して覚えることが、試験対策だけでなく、患者を適切な職種につなぐ臨床力の土台になります。

解答・解説

正解はdです

医療の高度化や高齢化に伴い、患者・利用者を医師だけでなく多くの専門職が協力して支える多職種連携(チーム医療、地域包括ケア)が重視されている。本問は、医療・介護・福祉の現場で連携する代表的な職種について、それぞれの法的な位置づけや主な業務を正しく理解しているかを問うものである。 考え方のポイントは次のとおりである。 ・「判定」「決定」といった行政上の判断は、個々の専門職ではなく、行政機関や法律で定められた合議体が行うことが多い(要介護認定は市町村と介護認定審査会、生活保護の決定は福祉事務所を設置する自治体の長など)。 ・リハビリテーション専門職は役割分担が明確に区別されている。理学療法士(PT)は基本的動作能力、作業療法士(OT)は応用的動作能力や社会的適応能力、言語聴覚士(ST)は言語・聴覚・摂食嚥下の機能をそれぞれ主に担当する。 ・管理栄養士は栄養管理・栄養指導の専門職であり、調理そのものを担う職種ではない。 これらを整理すれば、言語聴覚士の役割を正しく述べた選択肢が正解となる。

選択肢考察

  1. ×a.  介護支援専門員は要介護度を判定する。

    要介護認定は保険者である市町村が行う。まず認定調査員による訪問調査の結果をもとにコンピュータで一次判定を行い、次に一次判定結果・主治医意見書・特記事項をもとに、市町村に置かれる介護認定審査会(保健・医療・福祉の学識経験者で構成される合議体)が二次判定を行って要介護度が決まる。介護支援専門員(ケアマネジャー)の主な役割は、利用者や家族の状況をアセスメントし、必要な介護サービスを組み合わせた介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、サービス事業者との連絡調整を行うことである。要介護度を判定する立場ではない。

  2. ×b.  管理栄養士は高齢者施設で調理を担当する。

    管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受けた国家資格で、傷病者への療養のための栄養指導、個人の身体状況や栄養状態に応じた高度な専門知識を要する栄養指導、特定給食施設における給食管理(献立作成、栄養管理、衛生管理など)を主な業務とする。施設で実際に調理を担当するのは調理員などであり、調理そのものは管理栄養士の主たる役割ではない。なお、調理業務に従事すること自体には特別な資格は必要とされない。

  3. ×c.  作業療法士は基本的動作能力の回復を図る。

    寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、立位保持、歩行といった基本的動作能力の回復を主に図るのは理学療法士である。理学療法士は運動療法や物理療法(温熱・電気刺激など)を用いる。作業療法士は、手芸・工作などの作業活動を通じて、食事・更衣・入浴・排泄・家事などの日常生活活動(ADL)に必要な応用的動作能力や、社会的適応能力の回復を図る職種であり、福祉用具の使用訓練や精神障害者のリハビリテーションにも携わる。記述は理学療法士の役割であり、誤りである。

  4. ○d.  言語聴覚士は摂食・嚥下の機能回復を図る。

    言語聴覚士は、失語症・構音障害・音声障害などの言語やコミュニケーションの障害、聴覚障害を有する人に対して、検査・評価、訓練、指導、助言などを行う国家資格職である。言語聴覚士法では、医師または歯科医師の指示のもとで嚥下訓練を業として行えることが定められており、脳卒中後や高齢者の摂食・嚥下障害に対して、嚥下機能の評価、間接訓練(食物を用いない口腔・咽頭の運動訓練など)や直接訓練(食物を用いた訓練)を行い、機能回復を図る。記述は正しい。

  5. ×e.  民生委員は生活保護の受給資格を判定する。

    民生委員は民生委員法に基づき厚生労働大臣から委嘱される非常勤の地方公務員(特別職)で、給与は支給されない。地域住民の立場に立って生活上の相談に応じ、必要な援助や福祉サービスの情報提供を行い、行政機関との橋渡しをする。児童福祉法に基づく児童委員も兼ねる。生活保護法では民生委員は保護の実施に協力する協力機関と位置づけられているにすぎず、受給の可否を判定する権限はない。生活保護の決定・実施は、都道府県知事、市長、福祉事務所を設置する町村長が行い、実務は福祉事務所(ケースワーカー)が担う。

リハビリテーション専門職の比較

・理学療法士(PT): 基本的動作能力(寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行など)の回復。運動療法・物理療法。 ・作業療法士(OT): 応用的動作能力(食事、更衣、入浴、排泄などのADL、家事)や社会的適応能力の回復。作業活動、福祉用具の訓練、精神科作業療法。 ・言語聴覚士(ST): 言語機能(失語症、構音障害)、音声機能、聴覚機能の評価・訓練、摂食・嚥下訓練。 ・視能訓練士(ORT): 斜視・弱視の視能矯正訓練や、眼科の各種検査。

介護保険の要介護認定の流れ

本人・家族の申請(市町村へ)→ 認定調査(訪問調査)と主治医意見書 → コンピュータによる一次判定 → 介護認定審査会による二次判定 → 市町村による認定(要支援1・2、要介護1〜5、非該当)→ 介護支援専門員などによるケアプラン作成 → サービス利用。

福祉分野の関連職種

・介護支援専門員(ケアマネジャー): ケアプラン作成とサービス調整。 ・社会福祉士: 福祉に関する相談援助。医療機関では医療ソーシャルワーカー(MSW)として退院支援や経済的問題の相談に関わることが多い。 ・精神保健福祉士: 精神障害者の社会復帰に関する相談援助。 ・介護福祉士: 入浴・排泄・食事などの介護と、介護者への指導。 ・民生委員・児童委員: 地域住民の相談援助と行政へのつなぎ役(無報酬のボランティア的性格)。

POINT

・要介護度を判定するのは介護認定審査会(認定は市町村)であり、介護支援専門員はケアプランを作成する。 ・PTは基本的動作、OTは応用的動作・社会的適応、STは言語・聴覚・摂食嚥下を担当する。 ・管理栄養士の主業務は栄養指導と給食管理であり、調理ではない。 ・生活保護の決定は福祉事務所を設置する自治体の長(実務は福祉事務所)が行い、民生委員は協力機関である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。