二本の指と片手で骨盤を読む―双合診の正しい手順とDouglas窩の触れ方
第110回医師国家試験 H問題 第13問
国試問題にチャレンジ
成人女性の婦人科診察時の双合診で正しいのはどれか。
- a.側臥位で行う。
- b.外陰部視診の前に行う。
- c.膀胱に尿をためて行う。
- d.Douglas窩は内診指で触診する。
- e.正常卵巣は外診指で触知できる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
双合診は、腟内の内診指と腹壁上の外診指で骨盤内臓器を挟み込み、子宮・付属器・Douglas窩を評価する婦人科の基本手技です。内診台での砕石位で、排尿して膀胱を空にしてから行い、外陰部の視診・触診、腟鏡診のあとに実施するのが原則です。Douglas窩は後腟円蓋に接しているため内診指で触診し、子宮内膜症の硬結や播種結節、腹腔内出血などを評価します。正常卵巣は小さく通常は触知しないため、明らかに触れる場合や閉経後に触れる場合は病的腫大を疑います。膀胱充満が必要な経腹超音波との違いや、移動痛の意義、性交経験のない女性への配慮もあわせて理解しておくことが、安全で正確な婦人科診察につながります。
解答・解説
正解はdです
双合診は、腟内に挿入した指(内診指、通常は示指と中指)と下腹壁に置いたもう一方の手(外診指)で骨盤内臓器を挟み込むようにして触れる、婦人科の基本的な診察法である(一般に「内診」とよばれるものの中心となる手技)。子宮の大きさ・形・硬さ・可動性・圧痛、付属器(卵巣・卵管)の腫大や圧痛、Douglas窩(直腸子宮窩)の硬結・圧痛・腫瘤などを評価する。 本問は、双合診の体位・診察の順序・前準備・触診の方法・正常所見を問うている。婦人科診察の標準的な流れは「問診 → 外陰部の視診・触診 → 腟鏡診(クスコ診) → 双合診 → 必要に応じて直腸診・直腸腟双合診」であり、体位は砕石位(内診台上で仰臥位のまま股関節・膝関節を屈曲し開脚する体位)、診察前には必ず排尿させる。これらの原則を押さえておけば、各選択肢の正誤は判断できる。
選択肢考察
- ×a. 側臥位で行う。
誤り。双合診は内診台を用いた砕石位で行う。仰臥位で両下肢を開いて挙上するこの体位では、外診指で下腹壁を押し下げながら内診指と協調して骨盤内臓器を挟み込むことができる。側臥位(Sims位など)は腹壁からの圧迫ができず、双合診には適さない。
- ×b. 外陰部視診の前に行う。
誤り。外陰部の視診・触診を最初に行い、次に腟鏡診で腟壁や子宮腟部を観察し、その後に双合診を行う。先に指を挿入すると、外陰部の病変を見落としたり、分泌物や出血の性状が変化して腟鏡診・細胞診の評価が不正確になったりするため、侵襲の小さい観察から順に進める。
- ×c. 膀胱に尿をためて行う。
誤り。双合診の前には排尿を済ませ、膀胱を空にしておく。充満した膀胱は子宮の前方に位置して輪郭を不明瞭にし、子宮や付属器の大きさ・位置の評価を妨げる。さらに外診指による圧迫で患者に苦痛や尿意を与える。なお、経腹超音波検査では膀胱充満が音響窓として有用であり、混同しないよう注意する。
- ○d. Douglas窩は内診指で触診する。
正しい。Douglas窩は子宮後面と直腸の間にある腹膜腔の最下端であり、後腟円蓋に接している。そのため、内診指を後腟円蓋に当てて触診することで評価する。子宮内膜症による硬結・圧痛、骨盤内の癒着、腫瘍の播種結節、腹腔内出血や膿瘍による膨隆・圧痛などを確認できる。直腸腟双合診や直腸診を加えると、さらに詳しく評価できる。
- ×e. 正常卵巣は外診指で触知できる。
誤り。正常の卵巣は母指頭大程度と小さく、骨盤深部にあって可動性も大きいため、双合診で明瞭に触れないことが多い。まして外診指(腹壁上の手)だけで触知することはできない。双合診で付属器がはっきり腫大して触れる場合は、卵巣腫瘍や卵管留水腫、卵管卵巣膿瘍などの病的腫大を考える。特に閉経後女性で卵巣を触知した場合は異常として精査する。
婦人科診察の流れ
1. 問診(月経歴・妊娠分娩歴・性交経験の有無などを含む) 2. 外陰部の視診・触診:腫瘤、潰瘍、色素沈着、Bartholin腺の腫大などを確認する。 3. 腟鏡診:腟壁、子宮腟部、帯下・出血の性状を観察し、必要に応じて子宮頸部細胞診や帯下培養を採取する。 4. 双合診:子宮・付属器・Douglas窩を評価する。 5. 直腸診・直腸腟双合診:性交経験のない女性で腟からの診察が難しい場合や、子宮頸癌の子宮傍組織浸潤、Douglas窩病変の評価に有用である。
双合診で評価する主な項目
・子宮:大きさ、形(凹凸の有無)、硬さ、位置(前傾前屈・後傾後屈など)、可動性、圧痛 ・付属器:腫大の有無・大きさ・可動性、圧痛 ・Douglas窩:硬結、圧痛、膨隆、腫瘤 ・子宮頸部:移動痛(子宮頸部を動かしたときの痛み。骨盤内炎症性疾患や異所性妊娠などで陽性となる)
診察時の配慮
羞恥心や緊張で腹壁に力が入ると所見が取りにくくなる。事前に説明と同意を得て、プライバシーに配慮し、必要に応じて看護師などの同席のもとで行う。患者に口呼吸を促し、腹部の力を抜いてもらうことが大切である。性交経験のない女性には腟鏡診や双合診を避け、直腸診や経直腸・経腹超音波で代用する。
POINT
・双合診は砕石位で、排尿後に行う。 ・順序は外陰部視診 → 腟鏡診 → 双合診。 ・Douglas窩は後腟円蓋に接しており、内診指で触診する(直腸腟双合診も有用)。 ・正常卵巣は通常触知しない。触れたら病的腫大を疑う。 ・膀胱充満が必要なのは経腹超音波検査であり、双合診ではない。
