「外してから抜く」―駆血帯のタイミングで決まる採血の成否
第110回医師国家試験 H問題 第10問
国試問題にチャレンジ
シリンジを用いて静脈採血を行う手順を示す。 駆血帯を外す時点はどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
駆血帯は静脈還流をせき止めて皮静脈を怒張させ、穿刺を容易にし、逆流と吸引をスムーズにするために用います。したがって駆血は穿刺から必要量の採取が終わるまで続け、採取終了後・抜針前に外すのが正しい手順です(「外してから抜く」)。穿刺前や採取開始前に外すと穿刺や採取が困難になり、駆血したまま抜針や圧迫を行うと静脈内圧が高いまま出血して皮下血腫を作りやすくなります。あわせて、駆血時間を短くして検査値の変動を防ぐこと、尺側寄りの穿刺による神経・動脈損傷を避けること、血管迷走神経反射への対応、リキャップ禁止による針刺し事故防止も押さえておきましょう。手技の各ステップを目的と結びつけて理解することが、安全で確実な採血につながります。
解答・解説
正解はcです
図に示された手順
図はシリンジによる静脈採血の流れを示しており、各工程の間に①〜⑤の番号が振られている。 駆血帯を巻く → 静脈怒張を触知する → 採血部位を消毒する →①→ 注射針を刺入し逆流を確認する →②→ 血液を採取する →③→ 注射針を抜く →④→ 刺入部を圧迫する →⑤→ 絆創膏を貼る
駆血帯の役割から考える
駆血帯は上腕を締めて静脈の還流だけをせき止め(動脈血の流入は保つ)、末梢側の皮静脈に血液をためて怒張させるために用いる。駆血によって静脈が太く張るため穿刺しやすくなり、静脈内圧が上がるため針が入ったときに血液の逆流(フラッシュバック)が得られ、シリンジへの吸引もスムーズになる。 したがって駆血が必要なのは「穿刺から必要量の採血が終わるまで」であり、それより前に外すと穿刺や採取が難しくなる。一方、駆血したまま針を抜くと、静脈内圧が高いまま血管壁に穴が開くことになり、刺入部から血液が勢いよく漏れて皮下血腫(内出血)を作りやすい。 よって、正しい時点は「血液の採取を終えたあと、注射針を抜く前」、すなわち③である。
選択肢考察
- ×a. ①
①は消毒後、注射針を刺入する前の時点である。ここで駆血帯を外すと静脈の怒張が消えて血管が細く平坦になり、針先を静脈内に正確に入れにくくなる。駆血は穿刺の前から必要なので、この時点で外すのは誤りである。
- ×b. ②
②は針を刺入して逆流を確認した直後、血液の採取を始める前の時点である。ここで駆血を解除すると静脈内圧が下がり、シリンジで吸引しても血液が十分に引けなくなったり、強く引くことで血管壁が針先に吸い付いて採血が途切れたりする。必要量を採り終えるまでは駆血を続けるべきであり、誤りである。
- ○c. ③
③は必要量の血液を採り終えた後、注射針を抜く前の時点である。採取が終われば静脈を怒張させておく必要はなく、ここで駆血帯を外して静脈内圧を下げてから抜針すれば、刺入部からの出血や皮下血腫の形成を最小限にできる。駆血を解除してから、刺入部にアルコール綿などを軽く当て、針を刺入方向にまっすぐ静かに引き抜くのが正しい手順である。
- ×d. ④
④は抜針後、刺入部を圧迫する前の時点である。駆血したまま抜針すると、うっ滞して内圧の高い静脈に開いた穴から血液が噴き出すように漏れ、皮下血腫を作りやすい。抜針より前に駆血を解除しておく必要があるため誤りである。
- ×e. ⑤
⑤は刺入部の圧迫後、絆創膏を貼る前の時点である。駆血を続けたまま圧迫しても静脈内圧が高いため止血しにくく、圧迫に時間がかかるうえ血腫で皮膚が膨らむこともある。さらに長時間の駆血は手指のしびれや末梢の循環障害の原因にもなる。駆血帯は抜針前に外しておくべきであり誤りである。
シリンジによる静脈採血の一般的な流れ
1. 患者確認と準備:氏名などで本人確認を行い、必要な採血管・器具をそろえる。過去の採血で気分不良を起こしたことがあるかを確認し、その場合は臥位での採血を考慮する。 2. 穿刺部位の選択と駆血:肘窩の皮静脈(肘正中皮静脈、橈側皮静脈など)を選ぶことが多い。尺側の深部には上腕動脈と正中神経が走行するため、尺側寄りの穿刺は神経損傷・動脈穿刺の危険が高く避けるのが望ましい。駆血帯は穿刺部位より数cm〜10cm程度中枢側に巻き、静脈だけを止める強さとする(強すぎると動脈血の流入まで妨げ、かえって怒張しにくい)。駆血時間はできるだけ短くし、長時間の駆血は血液濃縮やカリウム値などの検査値の変動、しびれの原因となるため、血管選びに手間取ったら一度緩める。 3. 消毒:アルコール綿などで消毒し、乾くのを待ってから穿刺する。 4. 穿刺と採取:皮膚を末梢側に軽く引いて静脈を固定し、針の切り口(ベベル)を上に向けて浅い角度(おおむね30度以下)で刺入する。逆流を確認したら針を動かさないよう固定し、ゆっくり吸引する。患者が指先にしびれや電撃痛を訴えたら神経損傷を疑い、直ちに抜針する。 5. 駆血解除と抜針:採取が終わったら駆血帯を外し、その後に針を抜く。 6. 止血:刺入部を数分間しっかり圧迫する。揉むと血腫の原因となる。抗凝固薬・抗血小板薬の内服患者では圧迫時間を長めにする。 7. 分注と廃棄:シリンジの血液を採血管に移す(針刺し事故防止のため、安全装置付きの分注器具を用いるのが望ましい)。使用済みの針はリキャップせずに直ちに専用の廃棄容器に捨てる。
採血時の主な合併症
・血管迷走神経反射:緊張や痛みで副交感神経が亢進し、徐脈・血圧低下・冷汗・気分不良・失神をきたす。起こったら直ちに採血を中止して臥位にする。 ・皮下血腫:抜針時の駆血解除忘れや圧迫不足が主な原因である。 ・末梢神経損傷:深く刺しすぎる、尺側寄りを穿刺するなどで起こる。 ・針刺し事故:リキャップや分注時に多い。
POINT
・駆血は「穿刺から採取終了まで」静脈を怒張させるために必要である。 ・駆血帯は採血が終わってから、抜針する前に外す(「外してから抜く」)。 ・駆血したまま抜針すると、刺入部から出血し皮下血腫ができやすい。 ・駆血時間は短くし、長時間の駆血は検査値の変動やしびれの原因となる。 ・使用済みの針はリキャップせず専用容器に廃棄する。
