「生きているか、いないか」で仕分ける―日本脳炎ワクチンだけが不活化である理由
第110回医師国家試験 G問題 第7問
国試問題にチャレンジ
不活化ワクチンはどれか。
- a.MRワクチン
- b.水痘ワクチン
- c.BCGワクチン
- d.日本脳炎ワクチン
- e.ロタウイルスワクチン
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
ワクチンは、弱毒化した生きた病原体を用いる生ワクチンと、増殖能を失わせた病原体やその成分を用いる不活化ワクチン(毒素を無毒化したトキソイドを含む)に大別されます。生ワクチンは少ない接種回数で強く持続する免疫が得られる一方、妊婦や免疫不全者には原則禁忌であり、代表はBCG、MR、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルス(経口)、黄熱です。日本脳炎ワクチンはVero細胞で増やしたウイルスをホルマリンで不活化したワクチンで、免疫原性が弱いため第1期3回・第2期1回と接種回数が多くなります。接種間隔の規定は現在、注射生ワクチン同士で27日以上あけることのみです。ワクチンの種類と特徴を理解しておくことは、定期接種のスケジュール管理や禁忌の判断など、日常診療での安全な予防接種に直結します。
解答・解説
正解はdです
ワクチンは大きく、生ワクチンと不活化ワクチン(およびトキソイド)に分けられる。 ・生ワクチン:病原体の毒性を弱めた(弱毒化した)生きた株を接種する。体内で増殖するので、自然感染に近い形で液性免疫と細胞性免疫の両方を誘導し、少ない接種回数で長く続く免疫が得られる。一方で、接種後にその疾患の軽い症状が出ることがある。また、免疫不全者や妊婦には原則として禁忌である。 ・不活化ワクチン:病原体をホルマリンなどで処理して増殖能力を失わせたもの、あるいは病原体の一部の成分(抗原タンパク、多糖体など)を用いる。体内で増えないので安全性は高いが、誘導される免疫が弱く、持続も短い。そのため複数回の接種や追加接種が必要になる。病原体がつくる毒素を無毒化して抗原として用いるものはトキソイド(ジフテリア、破傷風)と呼ばれる。 選択肢のうち、MR(麻疹・風疹混合)、水痘、BCG、ロタウイルスの各ワクチンはいずれも代表的な生ワクチンである。不活化ワクチンは日本脳炎ワクチンだけである。日本で使われる代表的な生ワクチンを確実に覚えておけば、消去法でも解ける。
選択肢考察
- ×a. MRワクチン
誤り。MRワクチンは麻疹(measles)ウイルスと風疹(rubella)ウイルスの弱毒株を混ぜた生ワクチンで、皮下注射で接種する。定期接種は2回で、第1期は1歳以上2歳未満、第2期は小学校就学前の1年間(5歳以上7歳未満)である。麻疹と風疹は2回接種によって十分な免疫を確実にすることが目標とされている。
- ×b. 水痘ワクチン
誤り。水痘ワクチンは水痘・帯状疱疹ウイルスの弱毒株(Oka 株)を用いた生ワクチンである。2014年から定期接種となり、生後12か月から36か月に至るまでの間に2回接種する(標準的には1回目の後、6〜12か月あけて2回目)。なお、成人の帯状疱疹予防には、この弱毒生ワクチンのほか、遺伝子組換えの不活化ワクチン(サブユニットワクチン)も用いられる。
- ×c. BCGワクチン
誤り。BCG(Bacille de Calmette et Guérin)は、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)を長期間継代培養して弱毒化した株を用いる生菌ワクチンである。経皮接種(管針法によるスタンプ式)で、定期接種として生後1歳に至るまでに1回接種する(標準的な接種時期は生後5〜8か月)。生ワクチンなので、先天性免疫不全症(慢性肉芽腫症など)の児に接種すると播種性 BCG 感染症を起こすおそれがある。
- ○d. 日本脳炎ワクチン
正しい。現在の日本脳炎ワクチンは、Vero 細胞(アフリカミドリザル腎臓由来の培養細胞)でウイルスを増やし、これをホルマリンで不活化して精製した乾燥細胞培養不活化ワクチンである。不活化ワクチンは免疫の誘導が弱いため、接種回数が多い。定期接種は、第1期が生後6か月以上90か月未満(標準的には3歳から開始)で、初回2回と、その約1年後の追加1回の計3回、第2期が9歳以上13歳未満で1回である。かつてマウス脳由来ワクチンが使われていた時期に、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)との関連が問題となり、2005年に積極的勧奨が差し控えられた。その後、現在の細胞培養ワクチンが導入され、積極的勧奨が再開された経緯がある。
- ×e. ロタウイルスワクチン
誤り。ロタウイルスワクチンは経口で接種する弱毒生ワクチンである。2020年10月から定期接種となった。1価ワクチン(ヒトロタウイルス由来の弱毒株)は2回、5価ワクチン(ウシ・ヒト再集合ウイルス)は3回、いずれも生後6週から接種できる。初回接種は生後14週6日までに行うことが推奨される。これは、接種月齢が上がると腸重積症の発症リスクが高まる可能性が指摘されているためである。
日本で用いられる主なワクチンの分類
・生ワクチン:BCG、MR(麻疹・風疹)、麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)、ロタウイルス(経口)、黄熱、帯状疱疹(弱毒生) ・不活化ワクチン:日本脳炎、インフルエンザ、B型肝炎、A型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肺炎球菌(結合型・多糖体)、インフルエンザ菌b型(Hib)、百日咳、ポリオ(不活化ポリオ:IPV)、狂犬病、帯状疱疹(組換えサブユニット)、新型コロナウイルス(mRNA ワクチンなど。生ワクチンではない) ・トキソイド:ジフテリア、破傷風 ※ 五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib:ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ・Hib)は不活化ワクチンとトキソイドの混合である。 ※ 日本ではかつて経口生ポリオワクチン(OPV)が用いられていたが、ワクチン由来の麻痺の問題があり、2012年に不活化ポリオワクチンへ切り替えられた。
接種間隔
2020年10月の制度改正以降、注射の生ワクチンを接種した後に別の注射の生ワクチンを接種する場合にのみ、27日以上あける必要がある。不活化ワクチン同士や、経口の生ワクチン(ロタウイルス)を含む組み合わせでは、異なるワクチンの間に一律の間隔制限は設けられていない(同じワクチンを複数回接種する場合は、それぞれ定められた間隔を守る)。かつては「生ワクチン後は27日以上、不活化ワクチン後は6日以上」とされていた。
生ワクチンの注意点
・妊婦には原則禁忌(風疹ワクチン接種後は2か月間の避妊が勧められる)。 ・細胞性免疫不全や免疫抑制療法中の者には原則禁忌。 ・輸血やガンマグロブリン製剤の投与を受けた後は、注射生ワクチン(麻疹・風疹など)の効果が弱まるので、一定期間あけて接種する。
POINT
・生ワクチンの代表は BCG、MR、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルス(経口)、黄熱である。 ・日本脳炎ワクチンは Vero 細胞由来の不活化ワクチンで、第1期に3回、第2期に1回接種する。 ・不活化ワクチンは安全性が高い反面、免疫原性が弱いため、複数回の接種と追加接種が必要になる。 ・生ワクチンは妊婦と免疫不全者には原則禁忌である。 ・現在の接種間隔の規定は「注射生ワクチン → 注射生ワクチンは27日以上」のみである。
