StudyMed医師国家試験

2セットは別の腕から―血液培養の「採り方」が診断の信頼性を決める

第110回医師国家試験 G問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第110回 G問題 第25問

血液培養の検体採取方法で適切なのはどれか。

  1. a.動脈採血を第一選択とする。
  2. b.複数部位より採取する。
  3. c.血液量はなるべく少量とする。
  4. d.ボトルに分注する前に針を交換する。
  5. e.好気用ボトルに先に分注する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は血液培養の採取手技を問う問題だ。症例ではなく手順の知識問題だけど、どの選択肢も「なぜそうするのか」を理解しておけば迷わない。キーワードは検出感度と汚染(コンタミネーション)の見分け、この2つだよ。
医学生医学生
血液培養って、とりあえず2セット採るものと臨床実習で教わりましたが、理由までは考えたことがなかったです。
ドクタードクター
まずそこから整理しよう。血液培養は好気用と嫌気用のボトル1組で1セット。これを異なる穿刺部位から2セット以上採るのが原則で、今回の正解は「複数部位より採取する」だ。
医学生医学生
2セットにすると菌を拾える確率が上がるから、ですよね。
ドクタードクター
それが1つ目の理由。もう1つが大事で、汚染の判定ができるようになることなんだ。表皮ブドウ球菌などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌やコリネバクテリウムのような皮膚常在菌が生えたとき、1セットだけ陽性なら採取時の汚染の可能性が高い。でも別々の部位から採った2セットで同じ菌が出れば、本当に血液中にいると判断しやすくなる。
医学生医学生
同じ腕から続けて採ってしまうと、同じ汚染が両方に入るかもしれないから「別部位」なんですね。
ドクタードクター
その通り。では動脈採血を第一選択にする、という選択肢はどうかな。
医学生医学生
動脈血の方が菌が多そうなイメージがあります。OSCEの採血練習は静脈でしたけど……。
ドクタードクター
よくある誤解だね。動脈血と静脈血で検出率に明らかな差はないとされている。動脈穿刺は痛みが強いうえ、血腫や動脈損傷のリスクもある。だから基本は末梢静脈で、静脈が取れないときに動脈を使う、という位置づけだ。
医学生医学生
血液量を少なくするのは、患者さんの負担を考えると良さそうにも思えますが。
ドクタードクター
そこは逆なんだ。菌血症でも血液1mLあたりの菌数はごくわずかなことが多く、検出率は採血量にほぼ比例する。成人なら1セット20〜30mL、各ボトルに約10mLずつが標準。少なすぎると偽陰性が増えてしまう。ただしボトルごとの規定量を超えて入れるのも避けよう。
医学生医学生
分注前に針を交換するのは、清潔操作として正しい気がしていました。
ドクタードクター
昔はそう教えられていたけれど、針を替えても汚染率が下がるという根拠は乏しく、むしろ付け替え操作で針刺し事故の危険が高まる。今は交換せずにそのまま注入するのが一般的だ。汚染を防ぐなら、皮膚消毒とボトルのゴム栓の消毒を確実にすることの方がずっと大切だよ。
医学生医学生
分注の順番は、嫌気用が先でしたっけ。
ドクタードクター
シリンジで採血したときは嫌気用ボトルが先。好気用を先にするとシリンジ内に空気が入り込みやすく、その空気が後から嫌気用ボトルに入ると嫌気性菌が育ちにくくなる。だから好気用を先にするという記述は誤りだ。ただ、翼状針と真空採血ホルダーを使う場合は、チューブ内の空気が最初のボトルに入るので好気用から先に採る手順もある。器具によって考え方が変わると知っておくといい。
医学生医学生
原則と理由がセットになると、選択肢の正誤がすっと見えてきますね。
ドクタードクター
最後に臨床での注意点をまとめておこう。いちばん大切なのは抗菌薬を投与する前に採ること。投与後だと検出率が大きく下がる。発熱のピークを待つ必要はなく、疑った時点で採って治療を遅らせない。感染性心内膜炎を疑うなら時間をずらして3セット以上採ることもある。
医学生医学生
救急外来で、悪寒戦慄のある患者さんにまず血培2セットを採ってから抗菌薬を始めていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが正しい流れだね。あとは採ったボトルを冷蔵せず室温で保管して速やかに提出すること。それから、黄色ブドウ球菌や大腸菌、肺炎球菌、カンジダなどは1セットだけの陽性でも原則として真の起炎菌として扱う。汚染として片づけてはいけない菌もあると覚えておこう。

まとめ

血液培養は、好気用・嫌気用ボトル1組を1セットとして、異なる部位の末梢静脈から2セット以上採取するのが原則です。複数部位から採ることで検出感度が上がるとともに、皮膚常在菌が検出されたときに汚染か真の菌血症かを判断できるようになります。成人では1セット20〜30mLを確保し、動脈血を第一選択にする必要はなく、分注前の針交換は針刺し事故のリスクを高めるだけなので不要です。シリンジ採血では嫌気用ボトルを先に分注し、何より抗菌薬投与前に採取することが重要です。採取手技の一つひとつに理由があることを理解しておくと、結果の解釈や適切な抗菌薬選択という臨床判断の質が大きく変わります。

解答・解説

正解はbです

血液培養は、菌血症(血流中に細菌が存在する状態)や敗血症を疑うときに原因菌を特定し、適切な抗菌薬を選ぶための最も基本的な微生物検査である。結果の信頼性は「どのように採取したか」に大きく左右されるため、採取手技の原則が繰り返し問われる。 押さえるべき原則は次の4点である。 1. 部位とセット数: 好気用ボトルと嫌気用ボトルの1組を1セットとし、異なる穿刺部位から2セット以上採取する。 2. 採血量: 成人では1セットあたり20mL程度(各ボトル約10mL)を確保する。採血量が多いほど検出率が上がる。 3. 汚染(コンタミネーション)の防止: 穿刺部位の皮膚とボトルのゴム栓をしっかり消毒し、皮膚常在菌の混入を防ぐ。 4. 分注の順序: シリンジで採血した場合は嫌気用ボトルから先に入れ、嫌気環境に空気が入るのを避ける。 本問はこれらの原則に合致する記述を選ぶ問題であり、「複数部位から採取する」が正しい。2セット以上を別部位から採取することで、検出感度が上がるだけでなく、皮膚常在菌が検出されたときに真の起炎菌か汚染菌かを判断できるようになる。

選択肢考察

  1. ×a.  動脈採血を第一選択とする。

    誤り。動脈血と静脈血とで血液培養の検出率に明らかな差はないとされる。動脈穿刺は疼痛が強く、出血・血腫や動脈損傷などの合併症もあるため、通常は四肢の末梢静脈から採取するのが基本である。静脈からの採血が難しい場合に限って動脈血を用いてもよい。

  2. ○b.  複数部位より採取する。

    正しい。異なる部位から2セット以上採取すると、1セットのみの場合に比べて原因菌の検出率が上がる。さらに、表皮ブドウ球菌などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌やコリネバクテリウムといった皮膚常在菌が検出された場合、1セットのみ陽性なら採取時の汚染の可能性が高く、複数セットで同じ菌が検出されれば真の菌血症と判断しやすい。このように、別部位からの複数セット採取は感度向上と汚染の鑑別の両面で意味がある。

  3. ×c.  血液量はなるべく少量とする。

    誤り。菌血症では血液1mL中の菌数がごく少ないことが多く、検出率は採血量にほぼ比例して高くなる(成人では1セットあたり約30mLまでは量が多いほど陽性率が上がるとされる)。成人では1セットにつき20〜30mL程度、すなわち好気用・嫌気用の各ボトルに約10mLずつ入れるのが標準であり、少量にするのは不適切である。ただし、ボトルごとに規定量の上限があるため、過剰な注入も避ける。

  4. ×d.  ボトルに分注する前に針を交換する。

    誤り。採血に使った針をボトル注入前に新しい針へ交換しても、汚染率が有意に下がるという根拠は乏しい。一方で、針の付け替え操作は医療従事者の針刺し事故の危険を高める。そのため現在は針を交換せず、そのままボトルに注入するのが一般的である。汚染防止には、皮膚消毒とボトル栓のアルコール消毒を確実に行うことの方が重要である。

  5. ×e.  好気用ボトルに先に分注する。

    誤り。シリンジで採血した場合は嫌気用ボトルを先に、好気用ボトルを後にするのが原則である。先に好気用ボトルへ注入すると、シリンジ内に空気が入り込みやすく、その空気が後の嫌気用ボトルに入って嫌気性菌の発育が妨げられるおそれがある。なお、翼状針と真空採血ホルダーを用いる場合は、チューブ内の空気が最初のボトルに入るため、好気用ボトルから先に採取する手順が推奨されることもあり、採血器具に応じて順序を考える必要がある。

血液培養の適応

発熱(特に悪寒戦慄を伴う場合)、低体温、原因不明の意識障害や血圧低下、白血球数の著しい増減など、菌血症・敗血症が疑われる場合に行う。感染性心内膜炎を疑う場合は、時間をずらして3セット以上採取することもある。

採取のタイミング

抗菌薬を投与する前に採取するのが大原則である。抗菌薬投与後では検出率が大きく低下する。発熱のピークを待つ必要はなく、疑った時点で速やかに採取し、治療開始を遅らせない。

採取手順の要点

1. 穿刺部位をアルコールで清拭したのち、ポビドンヨード(乾燥まで待つ)やクロルヘキシジンアルコールで消毒する。消毒後は穿刺部位に触れない。 2. ボトルのゴム栓もアルコール綿で消毒する。 3. 原則として末梢静脈から採取する。留置中の血管内カテーテルからの採取は汚染が多いため、カテーテル関連血流感染を疑う場合を除き避け、行う場合は末梢静脈からのセットと併せて採取する。 4. 採取したボトルは速やかに検査室へ提出する。すぐに提出できない場合も冷蔵はせず、室温で保管する(冷蔵すると菌が死滅・発育不良となるおそれがある)。

汚染菌と真の起炎菌の見分け方

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、コリネバクテリウム属、バシラス属(炭疽菌を除く)、アクネ菌などの皮膚常在菌が複数セット中1セットのみから検出された場合は汚染の可能性が高い。一方、黄色ブドウ球菌、大腸菌などの腸内細菌目細菌、肺炎球菌、カンジダなどは、1セットのみ陽性であっても原則として真の起炎菌として扱う。

POINT

・血液培養は好気用・嫌気用ボトルを1セットとし、異なる部位から2セット以上採取する。 ・成人では1セットあたり20〜30mL(各ボトル約10mL)。採血量が多いほど検出率が上がる。 ・原則は末梢静脈血。動脈血でも検出率に差はなく、動脈を第一選択にはしない。 ・分注前の針交換は不要(針刺し事故の危険が増すだけ)。 ・シリンジ採血では嫌気用ボトルを先に入れる。 ・抗菌薬投与前に採取し、検体は冷蔵しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。