「食」でも管轄は別―健康日本21(第二次)の5本柱と食中毒予防の線引き
第110回医師国家試験 G問題 第26問
国試問題にチャレンジ
健康日本21(第二次)に含まれないのはどれか。
- a.食中毒予防
- b.健康格差の縮小
- c.生活習慣病の予防
- d.健康を守るための社会環境の整備
- e.社会生活を営むために必要な機能の向上
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
健康日本21(第二次)は健康増進法に基づく国民健康づくり運動で、2013年度から2023年度まで実施され、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を最上位目標としました。基本的な方向として、生活習慣病の発症予防と重症化予防、社会生活を営むために必要な機能の維持・向上、健康を支え守るための社会環境の整備、栄養・食生活や喫煙などの生活習慣と社会環境の改善が掲げられています。食中毒予防は「食」に関わるものの、食品衛生法に基づく食品衛生行政の領域であり、健康日本21の柱には含まれません。医師には食中毒を診断した際の保健所長への届出義務があることも併せて押さえておきましょう。施策をどの法律が担っているかで整理する視点は、2024年度に始まった第三次を含め、公衆衛生の制度問題全般の理解に役立ちます。
解答・解説
正解はaです
健康日本21は、国が定める「国民健康づくり運動」の計画であり、健康増進法に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」として位置づけられている。2000年に始まった健康日本21(第一次)に続き、健康日本21(第二次)は2013年度から開始された(当初は2022年度までの計画で、のちに1年延長され2023年度まで実施)。 第二次では、目指す姿を「全ての国民が共に支え合い、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会」とし、次の5つを基本的な方向として掲げた。 1. 健康寿命の延伸と健康格差の縮小 2. 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(がん、循環器疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった非感染性疾患(NCD)への対策) 3. 社会生活を営むために必要な機能の維持・向上(こころの健康、次世代の健康、高齢者の健康) 4. 健康を支え、守るための社会環境の整備 5. 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康に関する生活習慣と社会環境の改善 本問は「含まれないもの」を選ぶ問題である。選択肢b〜eはいずれも上記の基本的方向にそのまま対応しているが、食中毒予防は健康日本21の柱ではなく、食品衛生法を中心とする食品衛生行政が担う領域である。したがって正解はaとなる。
選択肢考察
- ○a. 食中毒予防
健康日本21(第二次)に含まれない項目であり、これが正解である。健康日本21が扱う「栄養・食生活」は、肥満・やせの是正や食塩摂取量の減少、野菜摂取量の増加など、生活習慣病予防を目的とした食習慣の改善である。一方、食中毒の予防は、飲食に起因する衛生上の危害を防止するための施策であり、食品衛生法に基づいて保健所などが営業施設の監視指導や食中毒発生時の調査を行う枠組みで扱われる。両者は「食」に関わる点で似ているが、所管する法律と目的が異なる。
- ×b. 健康格差の縮小
含まれる。第二次の最上位の目標として「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が掲げられている。健康格差とは、地域や社会経済状況(所得・職業・学歴など)の違いによって生じる集団間の健康状態の差を指す。第二次では、都道府県間の健康寿命の差を縮めることなどが具体的な目標とされた。
- ×c. 生活習慣病の予防
含まれる。「生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底」が基本的な方向の一つであり、がん、循環器疾患(脳血管疾患・虚血性心疾患)、糖尿病、COPDを対象としている。第一次が一次予防(発症予防)を中心としていたのに対し、第二次では合併症の発症や症状の進展を防ぐ重症化予防も重視された点が特徴である。
- ×d. 健康を守るための社会環境の整備
含まれる。「健康を支え、守るための社会環境の整備」が基本的な方向に位置づけられている。個人の努力だけでは健康づくりに限界があるという考えに立ち、地域のつながりの強化、健康づくりに取り組む企業や民間団体の活動の促進、受動喫煙のない環境づくりなど、社会全体で個人の健康を支える仕組みを整えることを目指している。
- ×e. 社会生活を営むために必要な機能の向上
含まれる。「社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上」が基本的な方向の一つである。ライフステージに応じて、こころの健康(自殺者の減少、うつ・不安への対策など)、次世代の健康(子どもの生活習慣、低出生体重児の減少など)、高齢者の健康(ロコモティブシンドロームの認知度向上、低栄養傾向の高齢者の増加抑制など)に取り組むことが示されている。
健康づくり施策の変遷
・第一次国民健康づくり対策(1978年〜): 健康診査の充実、市町村保健センターの整備など。 ・第二次国民健康づくり対策(1988年〜、アクティブ80ヘルスプラン): 運動習慣の普及に重点。 ・第三次国民健康づくり対策(2000年〜、健康日本21): 一次予防の重視、数値目標の設定。2003年に健康増進法が施行され、法的な裏付けを得た。 ・第四次国民健康づくり対策(2013年度〜2023年度、健康日本21(第二次)): 健康寿命の延伸と健康格差の縮小を最上位目標とした。 ・第五次国民健康づくり対策(2024年度〜、健康日本21(第三次)): 計画期間はおおむね12年間。「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンとし、健康寿命の延伸と健康格差の縮小、個人の行動と健康状態の改善、社会環境の質の向上、ライフコースアプローチ(胎児期から高齢期まで人生を通じた健康づくり)を踏まえた健康づくり、を基本的な方向とする。
健康増進法との関係
健康増進法は、国が健康の増進に関する基本方針を定めること、都道府県が健康増進計画を策定すること(市町村は努力義務)、国民健康・栄養調査の実施、受動喫煙対策などを規定している。健康日本21はこの基本方針の内容そのものである。
食中毒対策の枠組み
食中毒の予防・調査は食品衛生法に基づく。医師は食中毒患者またはその疑いのある者を診断した場合、直ちに最寄りの保健所長に届け出る義務がある。
POINT
・健康日本21(第二次)は健康増進法に基づく国民健康づくり運動(2013年度〜2023年度)。 ・最上位目標は「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」。 ・基本的方向: 生活習慣病の発症予防・重症化予防、社会生活機能の維持・向上、健康を支え守る社会環境の整備、生活習慣と社会環境の改善。 ・食中毒予防は食品衛生法の領域で、健康日本21の柱ではない。 ・2024年度からは健康日本21(第三次)が開始されている。
