StudyMed医師国家試験

3歳で残るのはどれ?―消える原始反射と一生続くパラシュート反射

第110回医師国家試験 G問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第110回 G問題 第22問

健常な3歳児に認められる反射はどれか。

  1. a.背反射
  2. b.把握反射
  3. c.Landau反射
  4. d.緊張性頸反射
  5. e.パラシュート反射

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳幼児の反射の問題だ。ポイントは、反射を「原始反射」と「姿勢反射」に分け、それぞれの出現時期と消失時期を押さえること。3歳の時点でまだ残っているものはどれか、を考えよう。
医学生医学生
原始反射は新生児にあって、成長すると消えるものですよね。小児科の講義でMoro反射を習いました。
ドクタードクター
そうだね。原始反射は脊髄や脳幹レベルで統合される反射で、新生児期から存在する。大脳皮質など上位中枢が成熟して抑制がかかると、多くは生後数か月以内に消えていく。一方、姿勢反射は中脳や大脳皮質レベルで統合され、原始反射と入れ替わるように乳児期に出現して、寝返り・お座り・立位・歩行といった粗大運動を支えるんだ。
医学生医学生
では、姿勢反射なら3歳でも残っているということでしょうか。
ドクタードクター
そこが落とし穴。姿勢反射にも、一定期間で消えるものと一生続くものがある。順に見ていこう。まず背反射はどうかな。
医学生医学生
Galant反射のことですよね。腹臥位で脊柱の横をこすると、こすった側に体幹が曲がる反射だったと思います。
ドクタードクター
正確だね。これは原始反射で、生後6か月ごろまでに消えるから3歳児にはみられない。把握反射も原始反射で、手掌把握反射は生後3〜4か月ごろに消え、それに代わって自分の意思で物をつかむ動作が育ってくる。足底把握反射は立位・歩行の準備とともに生後9〜10か月ごろに消える。
医学生医学生
足の把握反射のほうが長く残るんですね。手と同じ時期だと思っていました。
ドクタードクター
よく間違えるところだよ。次に緊張性頸反射。代表的な非対称性緊張性頸反射では、仰向けで顔を一方に向けると、顔の向いた側の上下肢が伸び、後頭側の上下肢が曲がる。いわゆるフェンシング姿勢だ。
医学生医学生
臨床実習の新生児室で見せてもらいました。本当に剣を構えているような格好でした。
ドクタードクター
いい経験をしたね。この反射は生後4〜6か月ごろまでに消える。消えることで、両手を体の正中で合わせて操作したり、寝返りしたりできるようになるんだ。3歳まで残っていたら脳性麻痺などを疑う。では、Landau反射は?
医学生医学生
腹臥位で水平に持ち上げると、頭を上げて体を反らせる反射ですよね。姿勢反射だから残るのかと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけだね。Landau反射は姿勢反射だけれど、生後4〜6か月ごろに出現して2歳ごろまでに消える。だから3歳児では通常みられない。
医学生医学生
となると、残るのはパラシュート反射ですね。
ドクタードクター
正解。パラシュート反射は保護伸展反応ともいい、体幹を支えて腹臥位で空中に保持し、急に頭を下に向けて落とすようにすると、両腕を前に伸ばし手を開いて体を支えようとする。転んだときに身を守る反応で、生後8〜10か月ごろに出現し、その後は生涯持続する。
医学生医学生
大人でも転びそうになると反射的に手が出ますね。あれが一生続いているということですか。
ドクタードクター
そのイメージでいいよ。座位や立位での平衡反応、ホッピング反応なども乳児期後半から現れて生涯続く。つまり「原始反射は乳児期に消える」「姿勢反射のうちLandau反射は2歳ごろで消える」「保護伸展反応や平衡反応は残る」と3段階で整理すると覚えやすい。
医学生医学生
逆に、反射の異常からわかることもありますか。
ドクタードクター
大事な視点だね。原始反射が消えるべき時期を過ぎても残っていたり、パラシュート反射が出るべき時期に出なかったりすれば、脳性麻痺などの中枢神経障害や運動発達の遅れを疑う手がかりになる。新生児期に原始反射が誘発できない場合も、中枢神経障害や神経・筋疾患を考える。それから左右差にも注目してほしい。Moro反射が片側だけ弱ければ分娩麻痺や鎖骨骨折、パラシュート反射に左右差があれば片麻痺を考える。
医学生医学生
乳幼児健診では、月齢ごとに出るべき反射と消えるべき反射を確認しているんですね。
ドクタードクター
その通り。反射は特別な道具なしで中枢神経の成熟度を評価できる貴重な手段なんだ。時期の目安は成書によって多少幅があるけれど、出現と消失の大まかな順番を押さえておけば、健診でも国試でも迷わないよ。

まとめ

乳幼児の反射は、脊髄・脳幹レベルで統合され新生児期から存在する原始反射と、中脳・大脳皮質レベルで統合され乳児期に出現する姿勢反射に分けて整理します。背反射(Galant反射)、把握反射、緊張性頸反射などの原始反射は上位中枢の成熟とともに乳児期に消失し、姿勢反射のLandau反射も生後4〜6か月ごろに出現して2歳ごろまでに消えます。パラシュート反射(保護伸展反応)は生後8〜10か月ごろに出現して生涯持続するため、健常な3歳児で認められるのはこの反射です。原始反射の残存や姿勢反射の出現遅延、左右差は、脳性麻痺や片麻痺、分娩麻痺などを見つける手がかりになります。各反射の出現・消失時期を押さえることは、乳幼児健診で発達を評価し、中枢神経障害を早期に拾い上げるための基礎となります。

解答・解説

正解はeです

乳幼児にみられる反射は、大きく「原始反射」と「姿勢反射(立ち直り反応・平衡反応・保護伸展反応など)」に分けて考えると整理しやすい。 原始反射は脊髄や脳幹レベルで統合される反射で、新生児期から存在し、大脳皮質など上位中枢が成熟して抑制がかかるにつれて、多くは生後数か月以内に消失する。一方、姿勢反射は中脳や大脳皮質レベルで統合される反応で、原始反射が消えていくのと入れ替わるように乳児期に出現し、寝返り・座位・立位・歩行といった粗大運動の獲得を支える。そのなかには一定期間で消えるもの(Landau反射)と、一生持続するもの(パラシュート反射など)がある。 本問は3歳という年齢で残っている反射を問うている。各反射の「出現時期」と「消失時期」を押さえていれば、3歳時点で存在するのは生後8~10か月ごろに出現して生涯続くパラシュート反射だけだと判断できる。逆に、原始反射が月齢相応の時期を過ぎても残っていたり、パラシュート反射が出現すべき時期に出現しなかったりする場合は、脳性麻痺などの中枢神経障害を疑う手がかりとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  背反射

    誤り。背反射(Galant反射)は、腹臥位の乳児の背部で脊柱の外側を上から下へこすると、刺激した側に体幹が弯曲する原始反射である。新生児期からみられ、生後6か月ごろまでに消失するため、健常な3歳児には認められない。

  2. ×b.  把握反射

    誤り。把握反射は原始反射の一つで、手掌を指などで圧迫すると指を屈曲して握りしめる手掌把握反射と、足底の母趾球付近を圧迫すると足趾が屈曲する足底把握反射がある。手掌把握反射は生後3~4か月ごろに消失し、それに代わって随意的に物をつかむ動作が発達する。足底把握反射は立位・歩行の準備に伴って生後9~10か月ごろに消失する。いずれも3歳児にはみられない。

  3. ×c.  Landau反射

    誤り。Landau反射は、乳児を腹臥位のまま水平に持ち上げると、頭部を挙上し体幹と下肢を伸展させて弓なりになる姿勢反射である(このとき頭部を他動的に前屈させると体幹・下肢も屈曲する)。原始反射ではなく、生後4~6か月ごろに出現し、2歳ごろまでに消失する。したがって3歳児では通常認められない。

  4. ×d.  緊張性頸反射

    誤り。緊張性頸反射は頸部の位置によって四肢の筋緊張が変わる原始反射である。代表的な非対称性緊張性頸反射では、仰臥位で頭を一方に向けると顔の向いた側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する(フェンシング姿勢)。生後4~6か月ごろまでに消失し、これが消えることで正中位での手の操作や寝返りが可能になる。3歳児にはみられず、残存していれば脳性麻痺などを疑う。

  5. ○e.  パラシュート反射

    正しい。パラシュート反射(保護伸展反応)は、児の体幹を支えて腹臥位で空中に保持し、急に頭を下に向けて落下させるようにすると、両上肢を前方に伸ばし手を開いて体を支えようとする反応である。転倒時に身を守る防御的な反応で、生後8~10か月ごろに出現し、その後は生涯持続する。したがって健常な3歳児にも認められる。出現が遅れたり左右差があったりする場合は、運動発達の遅れや片麻痺の存在を示唆する。

主な反射の出現・消失時期(目安)

原始反射(新生児期からみられ、上位中枢の成熟とともに消失) ・Moro反射:頭部を急に後屈させるなどの刺激で、上肢を伸展・外転したのち抱きつくように屈曲する。生後4~6か月ごろに消失。 ・手掌把握反射:生後3~4か月ごろに消失。 ・足底把握反射:生後9~10か月ごろに消失。 ・非対称性緊張性頸反射:生後4~6か月ごろに消失。 ・背反射(Galant反射):生後6か月ごろまでに消失。 ・吸啜反射・探索反射:生後4~6か月ごろに消失(意識的な摂食に置き換わる)。 姿勢反射(乳児期に出現) ・Landau反射:生後4~6か月ごろに出現し、2歳ごろまでに消失。 ・パラシュート反射:生後8~10か月ごろに出現し、生涯持続。 ・ホッピング反応・座位や立位での平衡反応:乳児期後半から出現し、生涯持続。

臨床的意義

・原始反射が消失すべき時期を過ぎても残存する、あるいは新生児期に原始反射が誘発できない場合は、中枢神経障害(脳性麻痺など)や末梢神経・筋疾患を疑う。 ・反射に左右差がある場合(例:Moro反射の一側の減弱)は、分娩麻痺(腕神経叢麻痺)や鎖骨骨折、片麻痺を考える。 ・パラシュート反射の出現遅延は運動発達の遅れの指標となる。

POINT

・原始反射(Moro、把握、緊張性頸、背反射など)は乳児期に消失する。 ・Landau反射は生後4~6か月ごろに出現し、2歳ごろまでに消える。 ・パラシュート反射は生後8~10か月ごろに出現し、生涯持続する。3歳児で認められるのはこれだけである。 ・原始反射の残存や姿勢反射の出現遅延は、脳性麻痺など中枢神経障害の手がかりになる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。