StudyMed医師国家試験

「絶対」「同義」「必ず」に要注意―外来尿検査の常識を総点検

第110回医師国家試験 G問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第110回 G問題 第16問

外来で行う尿検査について正しいのはどれか。

  1. a.細菌の検査には中間尿を提出する。
  2. b.健常人で蛋白尿が出ることはない。
  3. c.血尿とヘモグロビン尿は同義である。
  4. d.尿糖陽性であれば血糖は高値である。
  5. e.蛋白,糖および潜血は異なる試験紙で調べる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、外来で毎日のように行う尿検査の基本知識を問う問題だ。採尿の方法、試験紙法、尿沈渣の意味を正しく理解しているかがポイントになる。選択肢には「出ることはない」「同義である」といった言い切りが並んでいるから、例外がないかを一つずつ吟味していこう。まずは採尿方法から。細菌の検査にはどんな尿を出すべきかな。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で、患者さんに「出始めの尿は捨てて、途中の尿をコップに取ってください」と説明しました。中間尿ですよね。
ドクタードクター
その通り。膀胱内の尿は本来ほぼ無菌だけれど、排尿の最初の部分には外尿道口や外陰部の常在菌が混ざりやすい。だから外陰部や亀頭を清拭したうえで、出始めを捨てて途中の尿を滅菌容器に採る。これが清潔中間尿で、汚染菌による偽陽性を減らせる。この記述が正解だ。
医学生医学生
採った尿はすぐに出さないといけないんでしょうか。
ドクタードクター
大事な点だね。室温で放置すると細菌が増えて菌数を過大評価してしまうから、すぐに提出するか冷蔵保存する。乳児や排尿困難の人など中間尿が難しい場合は、カテーテル尿や膀胱穿刺尿を使うこともある。ただし例外として、淋菌やクラミジアの核酸増幅検査では尿道の病原体を拾いたいので、あえて初尿を使うんだ。
医学生医学生
泌尿器科の実習で、尿道炎疑いの患者さんに初尿を指示していたのはそういう理由だったんですね。次に、健常人で蛋白尿が出ないというのは、正常値が150mg未満なので少しは出ているということでしょうか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。健常人でも1日150mg未満程度の蛋白、たとえばTamm-Horsfall蛋白や少量のアルブミンは出ている。試験紙はこれを陰性と判定するよう感度が設定されているだけなんだ。さらに激しい運動後や発熱時の一過性蛋白尿、立っていると出て寝ると消える起立性蛋白尿のように、病的意義の乏しい生理的蛋白尿もある。
医学生医学生
起立性蛋白尿は、学校検尿で引っかかるやせ型の思春期の子に多いと小児科の講義で聞きました。早朝第一尿で確認するんですよね。
ドクタードクター
その通り。起床直後の尿は臥位の間にできた尿だから、そこで陰性なら起立性を考えやすい。では、血尿とヘモグロビン尿は同じものだろうか。
医学生医学生
どちらも試験紙の潜血が陽性になるので、ほぼ同じかと思っていました。
ドクタードクター
そこが落とし穴。血尿は尿中に赤血球そのものが混じる状態で、尿沈渣で赤血球が見える。一方ヘモグロビン尿は、血管内溶血で血中に出た遊離ヘモグロビンが尿に出る状態で、沈渣に赤血球はほとんどない。潜血反応はヘモグロビンのペルオキシダーゼ様活性を検出するから、両方とも陽性になってしまうんだ。
医学生医学生
ということは、横紋筋融解症のミオグロビン尿でも潜血が陽性になりますか。
ドクタードクター
なる。だから「潜血陽性なのに沈渣で赤血球がない」ときは、ヘモグロビン尿やミオグロビン尿を疑う。発作性夜間ヘモグロビン尿症や不適合輸血、長距離歩行後の行軍ヘモグロビン尿症などが溶血の例だね。次は尿糖。尿糖が陽性なら血糖は必ず高いと言えるかな。
医学生医学生
血糖が腎閾値の160〜180mg/dLくらいを超えると尿糖が出る、と生理学で習いました。でも、糖尿病内科の実習でSGLT2阻害薬を飲んでいる患者さんは血糖が落ち着いていても尿糖が強陽性でした。
ドクタードクター
まさにそれが例外の代表だ。濾過されたブドウ糖は近位尿細管で主にSGLT2によってほぼすべて再吸収されるけれど、その薬はここを阻害する。ほかにも、再吸収能が生まれつき低い腎性糖尿、Fanconi症候群などの近位尿細管障害、腎閾値が下がる妊娠では、血糖が正常でも尿糖が出る。逆に高齢者や腎機能低下例では、高血糖でも尿糖が出にくいことがある。
医学生医学生
最後の、蛋白・糖・潜血を別々の試験紙で調べるというのは、検査室で見た試験紙にパッドがたくさん並んでいたので違うと思います。
ドクタードクター
よく観察していたね。一般的な多項目試験紙は1本のストリップに蛋白、糖、潜血、pH、比重、ケトン体、白血球、亜硝酸塩などのパッドが並んでいて、1回浸すだけで同時に判定できる。蛋白はpH指示薬の蛋白誤差、糖はグルコースオキシダーゼ法、潜血はペルオキシダーゼ様活性と、原理はそれぞれ違うけれどね。
医学生医学生
断定的な選択肢は、生理的な例外や別の機序がないか考えるのがコツなんですね。
ドクタードクター
その通り。臨床での注意点も押さえておこう。試験紙の蛋白はアルブミンに反応しやすく、多発性骨髄腫のBence Jones蛋白は拾いにくい。ビタミンCを大量に摂っていると糖や潜血が偽陰性になることがある。亜硝酸塩は大腸菌などが硝酸塩を還元してできるので、膀胱内に尿がたまっていた時間が短いと偽陰性になりやすい。尿路感染症の診断では、膿尿や細菌尿を確認したうえで中間尿の定量培養を行い、一般に10^5 CFU/mL以上が有意な細菌尿の目安とされる。
医学生医学生
試験紙の結果だけで判断せず、沈渣や培養、採尿条件まで含めて解釈することが大切ですね。
ドクタードクター
そう。尿検査は簡便だからこそ、検体の採り方と検査の原理を理解しているかで解釈の質が大きく変わるんだ。

まとめ

細菌検査用の尿は、外尿道口や外陰部の常在菌の混入を避けるため、清拭後に出始めを捨てた清潔中間尿を採取し、速やかに提出または冷蔵保存します(淋菌・クラミジアの核酸増幅検査は例外的に初尿を用います)。健常人でも1日150mg未満の蛋白は排泄されており、運動後・発熱時の一過性蛋白尿や起立性蛋白尿などの生理的蛋白尿もみられます。血尿は沈渣で赤血球を認める状態で、溶血によるヘモグロビン尿とは異なりますが、潜血反応はどちらでも、さらにミオグロビン尿でも陽性になります。尿糖は高血糖以外に腎性糖尿、近位尿細管障害、妊娠、SGLT2阻害薬でも陽性となり、蛋白・糖・潜血などは1本の多項目試験紙で同時に判定できます。採尿法と試験紙の原理、偽陽性・偽陰性の要因を理解しておくことは、日常診療で尿検査を正しく解釈するための基本です。

解答・解説

正解はaです

本問は、外来で日常的に行う尿検査(採尿方法、試験紙法、尿沈渣)の基本を問う一般問題である。

外来尿検査の全体像

外来の尿検査には、①試験紙による定性検査(蛋白、糖、潜血、pH、比重、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノゲン、白血球、亜硝酸塩など)、②尿沈渣(遠心した沈殿を顕微鏡で観察し、赤血球・白血球・円柱・結晶・細菌などをみる)、③尿細菌培養、④尿細胞診などがある。

正誤を判断する考え方

・採尿方法:尿は膀胱内では本来ほぼ無菌であるが、排尿時に外尿道口や外陰部の常在菌が混入する。これを避けるため、出始めの尿を捨てて途中の尿を採る中間尿を用いる。 ・「健常人では絶対に出ない」「同義である」「陽性なら必ず〜」といった断定的な表現は、生理的な例外や別の機序が存在しないかを考えて吟味する。蛋白尿には生理的なもの、尿糖には血糖が正常でも出るもの(腎性糖尿、SGLT2阻害薬など)、潜血陽性には赤血球以外の原因(ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿)があることを押さえておく。 ・試験紙法は1本のストリップに複数の検査項目のパッドが並んでおり、1回の浸漬で同時に判定できる。

選択肢考察

  1. ○a.  細菌の検査には中間尿を提出する。

    正しい。排尿の最初の部分には、外尿道口や尿道遠位部、外陰部に付着した常在菌や分泌物が混入しやすい。そこで外陰部(女性)や亀頭(男性)を清拭したうえで、出始めの尿を捨て、排尿途中の尿を滅菌容器に採取する(清潔中間尿)。これにより汚染菌による偽陽性を減らし、尿路感染症の起因菌を正確に評価できる。採取した尿はすぐに提出するか冷蔵保存する(室温放置で細菌が増殖し菌数が過大評価されるため)。中間尿での評価が難しい場合は、カテーテル尿や膀胱穿刺尿を用いることがある。なお、淋菌・クラミジアの核酸増幅検査では例外的に初尿を用いる。

  2. ×b.  健常人で蛋白尿が出ることはない。

    誤り。健常人でも尿には1日150mg未満程度の蛋白(Tamm-Horsfall蛋白〈ウロモジュリン〉や少量のアルブミンなど)が排泄されており、試験紙はこれを陰性と判定するよう感度が設定されている(1+はおおむね30mg/dL)。さらに、激しい運動後、発熱時、精神的ストレス時の一過性蛋白尿や、立位で出現し臥位で消失する起立性(体位性)蛋白尿など、病的意義の乏しい生理的蛋白尿も健常人でみられる。起立性蛋白尿は思春期のやせ型の若年者に多い。

  3. ×c.  血尿とヘモグロビン尿は同義である。

    誤り。血尿は尿中に赤血球そのものが混じる状態で、尿沈渣で赤血球が確認される(顕微鏡的血尿は強拡大1視野あたり5個以上が目安)。ヘモグロビン尿は、血管内溶血(発作性夜間ヘモグロビン尿症、不適合輸血、行軍ヘモグロビン尿症など)で血中に放出された遊離ヘモグロビンが尿中に出る状態であり、沈渣に赤血球はほとんどみられない。試験紙の潜血反応はヘモグロビンのペルオキシダーゼ様活性を検出するため、どちらでも陽性になる(横紋筋融解症によるミオグロビン尿でも陽性)。したがって「潜血陽性なのに沈渣で赤血球がない」ときはヘモグロビン尿やミオグロビン尿を考える。

  4. ×d.  尿糖陽性であれば血糖は高値である。

    誤り。糸球体で濾過されたブドウ糖は、近位尿細管でナトリウム・グルコース共輸送体(主にSGLT2)によりほぼすべて再吸収される。血糖がおよそ160〜180mg/dLの腎閾値を超えると再吸収が追いつかず尿糖が出るのが通常の機序である。しかし、①腎性糖尿(再吸収能が生まれつき低い)、②Fanconi症候群などの近位尿細管障害、③妊娠(糸球体濾過量の増加と腎閾値の低下)、④SGLT2阻害薬の服用(再吸収を薬理的に阻害する。2型糖尿病などの治療薬)では、血糖が正常でも尿糖が陽性になる。逆に腎閾値が高い高齢者や腎機能低下例では、高血糖でも尿糖が出にくいことがある。

  5. ×e.  蛋白,糖および潜血は異なる試験紙で調べる。

    誤り。一般的な尿試験紙(多項目試験紙)は、1本のストリップ上に蛋白・糖・潜血・pH・比重・ケトン体・ビリルビン・ウロビリノゲン・白血球(エステラーゼ)・亜硝酸塩などの試薬パッドが並んでおり、尿に1回浸すだけでこれらを同時に判定できる。蛋白はpH指示薬の蛋白誤差、糖はグルコースオキシダーゼ法、潜血はヘモグロビンのペルオキシダーゼ様活性をそれぞれ利用している。

採尿法の種類と用途

・早朝第一尿(起床直後の尿):濃縮されており、蛋白・沈渣成分・亜硝酸塩の検出に適する。起立性蛋白尿の除外にも有用。 ・随時尿:外来で最も一般的。濃縮度の影響を受けるため、蛋白やアルブミンはクレアチニン比で評価する。 ・中間尿:細菌培養・一般検査に用いる。 ・初尿:淋菌・クラミジアなど尿道炎の病原体検査に用いる。 ・24時間蓄尿:1日排泄量(蛋白、Na、クレアチニンクリアランスなど)の評価。 ・カテーテル尿・膀胱穿刺尿:汚染の少ない検体が必要なとき(乳児、排尿困難など)。

試験紙法の注意点(偽陽性・偽陰性)

・蛋白:アルブミンに反応しやすく、Bence Jones蛋白(免疫グロブリン軽鎖)は検出しにくい。強アルカリ尿では偽陽性となりうる。 ・糖:アスコルビン酸(ビタミンC)の大量摂取で偽陰性となりうる。 ・潜血:赤血球、ヘモグロビン、ミオグロビンのいずれでも陽性。アスコルビン酸で偽陰性となりうる。 ・亜硝酸塩:腸内細菌科細菌(大腸菌など)が硝酸塩を還元して生じる。膀胱内貯留時間が短いと偽陰性になりやすい。

尿路感染症の診断

・膿尿(沈渣で白血球5個/強拡大視野以上)や細菌尿を確認し、中間尿の定量培養で起因菌と薬剤感受性を調べる。一般に中間尿で10^5 CFU/mL以上は有意な細菌尿とされる(症状や検体の種類により基準は異なる)。

POINT

・細菌培養用の尿は、外陰部・外尿道口の常在菌混入を避けるため清潔中間尿を採取する。 ・健常人でも少量の蛋白尿(150mg/日未満)や生理的蛋白尿(運動後、発熱時、起立性)がみられる。 ・血尿は沈渣で赤血球あり、ヘモグロビン尿は溶血によるもので沈渣に赤血球なし。潜血反応はどちらも陽性。 ・尿糖は高血糖以外に、腎性糖尿、近位尿細管障害、妊娠、SGLT2阻害薬でも陽性になる。 ・蛋白・糖・潜血などは1本の多項目試験紙で同時に判定できる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。