StudyMed医師国家試験

濃い尿ほど蛋白が多い?―尿蛋白量を決める「壁」と「圧」を見抜く

第110回医師国家試験 G問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第110回 G問題 第15問

尿蛋白量を決定する因子でないのはどれか。

  1. a.尿浸透圧
  2. b.糸球体内圧
  3. c.蛋白摂取量
  4. d.糸球体基底膜の蛋白透過性
  5. e.糸球体上皮細胞〈ポドサイト〉機能

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、尿中に出てくる蛋白の量が何によって決まるのかを問う問題だ。選択肢の中から「決定する因子でないもの」を一つ選ぶ。考え方の軸は、糸球体の濾過障壁という「壁」と、そこに蛋白を押し出す「圧」の2つ。まずは壁の構造から確認しよう。糸球体毛細血管の壁は何層でできているかな。
医学生医学生
基礎の組織学で習いました。内側から有窓性の内皮細胞、糸球体基底膜、そしてポドサイトの足突起の3層ですよね。
ドクタードクター
その通り。足突起同士のすき間はスリット膜でつながれていて、この3層が分子の大きさで選ぶサイズバリアと、陰性荷電で反発するチャージバリアの両方を担っている。アルブミンは分子量が約6.6万で陰性に荷電しているから、健常な糸球体ではほとんど通れないんだ。
医学生医学生
だから健常者の尿蛋白は1日150mg未満とごくわずかなんですね。わずかに漏れた低分子蛋白は近位尿細管で再吸収される、と生理学で習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。では壁が壊れるとどうなるか。まず糸球体基底膜の蛋白透過性について考えてみよう。
医学生医学生
基底膜はIV型コラーゲンやヘパラン硫酸でできていて、構造や荷電が崩れると蛋白が漏れやすくなる……膜性腎症やAlport症候群がそうでしょうか。
ドクタードクター
いい例だね。膜性腎症では上皮下に免疫複合体が沈着し、Alport症候群ではIV型コラーゲンの異常がある。糖尿病性腎症でも基底膜が障害される。いずれも透過性が上がって尿蛋白が増えるから、基底膜の透過性は明らかに決定因子だ。ではポドサイトの機能は?
医学生医学生
病理実習で、微小変化型ネフローゼ症候群の電子顕微鏡写真を見て、足突起がべったり消失しているのが印象的でした。
ドクタードクター
まさにそれ。ポドサイトとスリット膜はネフリンやポドシンといった分子でできていて、蛋白漏出を防ぐ最後の砦なんだ。微小変化型や巣状分節性糸球体硬化症では足突起の消失で高度の蛋白尿になるし、ネフリン遺伝子の異常による先天性ネフローゼ症候群もある。ここまでが「壁」の話。次は「圧」だ。糸球体内圧が上がるとどうなる?
医学生医学生
蛋白を外へ押し出す力が強くなるので、尿蛋白が増えると思います。
ドクタードクター
正解。全身の高血圧や、アンジオテンシンIIで輸出細動脈が収縮した状態では糸球体高血圧になる。だからACE阻害薬やARBは輸出細動脈を広げて糸球体内圧を下げ、蛋白尿を減らす。腎保護薬として使われる理由がここにあるんだ。
医学生医学生
腎臓内科を回ったとき、血圧がそれほど高くない患者さんにもARBが出ていて不思議に思っていましたが、そういう狙いだったんですね。では蛋白摂取量は、食べた蛋白がそのまま尿に出るということですか。
ドクタードクター
そこは少し誤解がある。食べた蛋白がそのまま漏れるのではなく、蛋白を多く摂ると輸入細動脈が拡張して糸球体濾過量が増え、いわゆる過剰濾過の状態になる。その結果として糸球体内圧が上がり、尿蛋白が増えるんだ。慢性腎臓病で病期に応じて蛋白制限を考えるのも、この負担を減らすためだよ。
医学生医学生
なるほど、蛋白摂取量も「圧」を介して効いてくるんですね。そうすると残る尿浸透圧が答えでしょうか。でも濃い尿だと試験紙の蛋白が強く出る気がします。
ドクタードクター
鋭い引っかかりだね。尿浸透圧は、主にADHの作用で集合管がどれだけ水を再吸収したか、つまり尿の濃縮・希釈の程度を表す指標だ。尿が濃縮されれば蛋白の「濃度」は見かけ上高くなるけれど、糸球体から漏れ出した蛋白の「総量」は変わらない。だから尿浸透圧は尿蛋白量を決定する因子ではなく、これが正解になる。
医学生医学生
濃度と量を混同してはいけないということですね。だから外来では随時尿の蛋白を尿クレアチニンで割って評価するんですか。
ドクタードクター
その通り。尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr)を使えば、濃縮・希釈の影響を補正して1日尿蛋白量をおおよそ推定できる。成人のネフローゼ症候群では、尿蛋白3.5g/日以上の持続、あるいはこの比で3.5g/gCr以上が基準の一つになるから、数字の意味ごと覚えておこう。
医学生医学生
試験紙法だけで「蛋白3+だから重症」と判断するのは危ないんですね。
ドクタードクター
そう。もう一つ発展として、蛋白尿の種類も整理しておきたい。今日話したのはアルブミン主体の糸球体性蛋白尿。ほかに、近位尿細管の再吸収障害でβ2ミクログロブリンなどが出る尿細管性蛋白尿、多発性骨髄腫のBence Jones蛋白のように血中の低分子蛋白が増えて溢れ出るオーバーフロー型、運動後や発熱時、起立性の生理的蛋白尿がある。試験紙法はアルブミンに反応しやすく、Bence Jones蛋白は拾いにくい点も臨床では要注意だ。
医学生医学生
CBTの勉強で「試験紙陰性なのに骨髄腫」というパターンを見ました。機序と結びつくとすっきりします。
ドクタードクター
最近はSGLT2阻害薬も、尿細管糸球体フィードバックを介して輸入細動脈を収縮させ、糸球体内圧を下げることで蛋白尿を減らすと考えられている。「壁」と「圧」の枠組みで考えると、新しい薬の作用も理解しやすくなるよ。

まとめ

尿蛋白量は、内皮・糸球体基底膜・ポドサイト(スリット膜)からなる濾過障壁の性状と、蛋白を押し出す糸球体内圧という「壁」と「圧」の2つで決まります。膜性腎症やAlport症候群などの基底膜障害、微小変化型ネフローゼ症候群や巣状分節性糸球体硬化症での足突起消失は「壁」の破綻であり、高血圧、アンジオテンシンIIによる輸出細動脈収縮、高蛋白食による過剰濾過は「圧」を高めて尿蛋白を増やします。一方、尿浸透圧はADHによる尿の濃縮度を示すもので、蛋白の濃度には見かけ上影響しても1日の尿蛋白量は変えないため、決定因子ではありません。臨床では濃縮・希釈の影響を除くために尿蛋白/クレアチニン比で評価し、ACE阻害薬・ARBやSGLT2阻害薬で糸球体内圧を下げて蛋白尿を減らします。濃度と総量を区別し、機序から蛋白尿を捉える視点は、腎疾患の診断と治療を理解する基盤となります。

解答・解説

正解はaです

本問は「尿蛋白量を決定する因子でないもの」を選ぶ問題である。尿中に出る蛋白の量が、どのような仕組みで決まるかを整理すると解きやすい。

糸球体の濾過障壁

糸球体毛細血管の壁は、内側から①有窓性の血管内皮細胞、②糸球体基底膜(GBM)、③糸球体上皮細胞(ポドサイト)の足突起とその間のスリット膜、の3層からなる。この濾過障壁は、分子の大きさ(サイズバリア)と電荷(陰性荷電によるチャージバリア)によって、アルブミン(分子量約6.6万、陰性荷電)などの血漿蛋白がほとんど濾過されないようにしている。わずかに濾過された低分子蛋白は近位尿細管で再吸収されるため、健常者の尿蛋白は1日150mg未満とごく少ない。

尿蛋白量を増やす要因

尿蛋白量は大きく、(1)濾過障壁そのものの性質(基底膜の透過性、ポドサイト・スリット膜の機能)と、(2)障壁に蛋白を押し出す力(糸球体内圧・糸球体過剰濾過)、の二つで決まる。(2)には全身高血圧、輸出細動脈の収縮(アンジオテンシンIIの作用)、輸入細動脈の拡張を起こす状態(高蛋白食、肥満、糖尿病早期、食塩過剰など)が関与する。

尿浸透圧の位置づけ

尿浸透圧は、主に抗利尿ホルモン(ADH〈バソプレシン〉)の作用下で集合管が水をどれだけ再吸収したか、すなわち尿の濃縮・希釈の程度を表す指標である。尿が濃縮されれば尿中の蛋白「濃度」は見かけ上高くなるが、糸球体から漏れ出す蛋白の総量(1日あたりの尿蛋白量)は変わらない。したがって尿浸透圧は尿蛋白量を決定する因子ではない。

選択肢考察

  1. ○a.  尿浸透圧

    尿浸透圧は、尿中の溶質濃度、すなわち尿の濃縮の度合いを反映し、主に集合管での水再吸収(ADHの作用)や、尿中の溶質量(ブドウ糖・尿素などによる浸透圧利尿)によって決まる。これらは尿量や尿の濃さを左右するが、糸球体の濾過障壁を通過する蛋白の量を変えるものではない。濃縮尿では試験紙法の蛋白濃度が高めに、希釈尿では低めに出るが、それは見かけ上の変化であり1日尿蛋白量は変わらない。このため実地臨床では、随時尿の蛋白濃度を尿クレアチニン濃度で割った尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr)で1日尿蛋白量を推定し、濃縮・希釈の影響を補正する。よって尿蛋白量を決定する因子ではなく、本問の正解である。

  2. ×b.  糸球体内圧

    尿蛋白量を決定する因子である。糸球体内圧は蛋白を濾過障壁の外へ押し出す駆動力であり、内圧が上がるほど蛋白の漏出は増える。全身高血圧や、輸出細動脈がアンジオテンシンIIで収縮した状態では糸球体高血圧となり、蛋白尿が増加する。ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は輸出細動脈を拡張させて糸球体内圧を下げ、蛋白尿を減らす。これらの薬が腎保護に用いられるのはこのためである。

  3. ×c.  蛋白摂取量

    尿蛋白量を決定する因子である。蛋白を多く摂ると輸入細動脈が拡張して腎血漿流量と糸球体濾過量が増え(糸球体過剰濾過)、糸球体内圧が上昇するため尿蛋白が増える。慢性腎臓病(CKD)では、病期に応じた蛋白摂取制限が蛋白尿や腎機能低下の進行を抑える目的で行われることがある。

  4. ×d.  糸球体基底膜の蛋白透過性

    尿蛋白量を決定する因子である。糸球体基底膜はIV型コラーゲンやラミニン、陰性荷電をもつプロテオグリカン(ヘパラン硫酸)などからなり、サイズと電荷の両面で蛋白の通過を制限する。糖尿病性腎症、膜性腎症(上皮下の免疫複合体沈着)、Alport症候群(IV型コラーゲン異常)などで基底膜の構造や荷電が障害されると透過性が高まり、尿蛋白が増える。

  5. ×e.  糸球体上皮細胞〈ポドサイト〉機能

    尿蛋白量を決定する因子である。ポドサイトは足突起を互いに嵌合させ、その隙間をネフリン、ポドシンなどからなるスリット膜でつないでおり、蛋白の漏出を防ぐ最終的な障壁となっている。微小変化型ネフローゼ症候群や巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)では足突起の消失(癒合)が起こり、高度の蛋白尿を呈する。ネフリン遺伝子異常(フィンランド型先天性ネフローゼ症候群)でも大量の蛋白尿が出る。

蛋白尿の分類

・糸球体性蛋白尿:濾過障壁の障害や糸球体内圧上昇により、アルブミン主体の蛋白が漏れる。糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症など。 ・尿細管性蛋白尿:濾過された低分子蛋白(β2ミクログロブリン、α1ミクログロブリンなど)が近位尿細管で再吸収されずに出る。Fanconi症候群、間質性腎炎、薬剤性腎障害など。 ・腎前性(オーバーフロー)蛋白尿:血中に過剰に増えた低分子蛋白が濾過されて再吸収能を超える。多発性骨髄腫のBence Jones蛋白(免疫グロブリン軽鎖)、ミオグロビン、ヘモグロビンなど。試験紙法はアルブミンに反応しやすく、Bence Jones蛋白は検出しにくい点に注意する。 ・生理的(機能性)蛋白尿:激しい運動後、発熱時、起立性蛋白尿などでみられる一過性・軽度の蛋白尿。

尿蛋白の評価

・正常:1日150mg未満(アルブミンとして30mg未満)。 ・ネフローゼ症候群の診断基準(成人):尿蛋白3.5g/日以上の持続(随時尿の尿蛋白/クレアチニン比3.5g/gCr以上も準じる)と、血清アルブミン3.0g/dL以下が必須条件。 ・随時尿の試験紙法は尿の濃縮・希釈に左右されるため、定量には尿蛋白/クレアチニン比や24時間蓄尿を用いる。

糸球体内圧を調節する因子

・輸入細動脈の拡張(高蛋白食、高血糖、プロスタグランジンなど)→糸球体内圧上昇 ・輸出細動脈の収縮(アンジオテンシンII)→糸球体内圧上昇 ・ACE阻害薬・ARB(輸出細動脈拡張)、SGLT2阻害薬(尿細管糸球体フィードバックを介した輸入細動脈収縮)→糸球体内圧低下・蛋白尿減少

POINT

・尿蛋白量は「濾過障壁(内皮・基底膜・ポドサイト)の性状」と「糸球体内圧(過剰濾過)」で決まる。 ・高血圧、輸出細動脈収縮、高蛋白食、肥満、食塩過剰は糸球体内圧を上げ、尿蛋白を増やす。 ・尿浸透圧は尿の濃縮度を示すもので、尿蛋白の濃度には見かけ上影響するが、1日尿蛋白量は決めない。 ・濃縮・希釈の影響を除くため、尿蛋白は尿蛋白/クレアチニン比で評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。