「8か月で2倍」は遅すぎる―乳児の体重増加の目安から体重増加不良を見抜く
第110回医師国家試験 F問題 第5問
国試問題にチャレンジ
正期産児における体重増加不良の所見はどれか。
- a.生後1週で出生時体重に回復
- b.生後1か月時の体重増加が1日30 g
- c.生後8か月で出生時体重の2倍
- d.生後9か月時のKaup指数16
- e.1歳で出生時体重の3倍
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
正期産児の体重は、生後3〜4日に5〜10%程度の生理的体重減少で最低となり、1〜2週で出生体重に戻ったあと、生後3〜4か月までは1日25〜30 g前後増えて3〜4か月で約2倍、1歳で約3倍になります。そのため生後8か月で出生体重の2倍にとどまるのは数か月分の増加が欠けた状態であり、体重増加不良と判断されます。乳児のKaup指数は16〜18前後が標準で15未満がやせ傾向とされ、身長は1歳で約1.5倍、4歳で約2倍が目安です。体重増加不良は成長曲線で経時的に評価し、器質的疾患だけでなく授乳量不足やネグレクトなどの非器質的要因も視野に入れることが重要です。発育の目安を正確に押さえることは、乳児健診や小児診療で異常を早期に拾い上げるための基本となります。
解答・解説
正解はcです
乳児の体重の標準的な増え方を知っていれば、体重増加不良かどうかを判断できる。正期産児(在胎37週0日〜41週6日で生まれた児)の出生体重は約3 kgで、目安は次のとおりである。 ・生後3〜4日:生理的体重減少で最低体重となる(出生体重の5〜10%程度の減少)。 ・生後1〜2週(おおむね7〜10日):出生体重に戻る。 ・生後3〜4か月まで:1日25〜30 g前後(1か月に約1 kg)増え、生後3〜4か月で出生体重の約2倍(約6 kg)になる。 ・その後:増え方はゆるやかになる。 ・1歳:出生体重の約3倍(約9 kg)になる。 各選択肢をこの目安と照らし合わせればよい。生後8か月の時点では、本来は出生体重の2.5〜3倍近く(8 kg前後)になっているはずである。2倍にとどまっているのは、標準から大きく遅れていることを示す。
選択肢考察
- ×a. 生後1週で出生時体重に回復
新生児は、生後数日間は哺乳量が少ない一方で、胎便や尿の排泄、皮膚や呼吸からの水分喪失(不感蒸泄)がある。このため体重が一時的に減る(生理的体重減少)。生後3〜4日で最低体重となり、減少幅は出生体重の5〜10%程度である。その後、生後1週前後、遅くとも10日〜2週以内に出生体重へ戻るのが正常である。したがって、生後1週での回復は正常な経過である。10%を超える減少や、2週を過ぎても回復しない場合は、哺乳不良などを疑う。
- ×b. 生後1か月時の体重増加が1日30 g
生後3〜4か月ごろまでの乳児は、1日あたりおよそ25〜30 g(1か月で約1 kg)増える。1日30 gの増加は標準的な範囲であり、体重増加不良ではない。
- ○c. 生後8か月で出生時体重の2倍
出生体重の2倍になる時期の目安は生後3〜4か月である。生後8か月では、出生体重の2.5〜3倍近く(出生体重3 kgならおよそ8 kg)に達しているのが標準である。8か月の時点で2倍(約6 kg)にとどまっているのは、およそ4か月分の体重増加が見られないことになり、体重増加不良と判断される。成長曲線上でパーセンタイルの線を下に横切っていないかを確認し、原因を調べる必要がある。原因としては、哺乳・摂食量の不足、吸収障害、慢性疾患、虐待やネグレクトを含む心理社会的要因などがある。
- ×d. 生後9か月時のKaup指数16
Kaup指数は 体重(g) ÷ 身長(cm)² × 10(=体重(kg) ÷ 身長(m)²)で求める、乳幼児の栄養状態(体格)を表す指標である。乳児ではおおむね16〜18前後が標準で、15を下回るとやせ傾向と評価される。生後9か月の標準的な体格を体重約8 kg・身長約70 cmとすると、8000 ÷ 70² × 10 ≒ 16.3 となる。16は正常範囲内で、体重増加不良を示す所見ではない。
- ×e. 1歳で出生時体重の3倍
1歳で出生体重の約3倍(約9 kg)になるのは標準的な成長である。なお、身長は1歳で出生時の約1.5倍(約75 cm)、4歳ごろに約2倍(約100 cm)となる。
体重・身長の発育の目安(正期産児)
・体重:出生時約3 kg → 3〜4か月で約2倍 → 1歳で約3倍 → 2歳半〜3歳で約4倍 → 4〜5歳で約5倍。 ・身長:出生時約50 cm → 1歳で約1.5倍(約75 cm)→ 4歳ごろで約2倍(約100 cm)。 ・頭囲:出生時約33 cm → 1歳で約45 cm。 ・体重増加量:生後0〜3か月は1日25〜30 g前後。その後は寝返りやはいはいなどで運動量が増え、増え方はゆるやかになる(6〜12か月では1日10〜15 g程度)。
生理的体重減少
哺乳量が少ないことと、胎便・尿の排泄や不感蒸泄による水分喪失が原因である。生後3〜4日で最低となり、減少率は5〜10%、生後1〜2週で出生体重に戻る。
Kaup指数
体重(g) ÷ 身長(cm)² × 10。主に3か月以降の乳幼児の体格評価に用いる。年齢によって基準が変わるが、おおむね15未満でやせ傾向、18〜19以上で太り気味と評価される。学童ではRohrer指数(体重(kg) ÷ 身長(cm)³ × 10⁷)、成人ではBMIを用いる。
体重増加不良(failure to thrive)
体重が成長曲線上で低い位置にある(3パーセンタイル未満など)、またはパーセンタイルの線を2本以上下に横切る場合に疑う。原因は、器質的なもの(先天性心疾患、腎疾患、内分泌疾患、吸収不良、胃食道逆流症など)と、非器質的なもの(授乳・食事量の不足、養育環境の問題、ネグレクトなど)に分けられる。多くは詳しい問診(哺乳・食事の内容と量、嘔吐・下痢、家庭環境)と身体診察で原因の見当がつく。成長曲線に点を記入し、経過で評価することが重要である。
POINT
・体重は3〜4か月で出生時の2倍、1歳で3倍、身長は1歳で1.5倍、4歳で2倍。 ・生理的体重減少は生後3〜4日が最低(5〜10%減)で、1〜2週で回復する。 ・生後3か月ごろまでの体重増加は1日25〜30 g。 ・乳児のKaup指数は16〜18前後が標準、15未満でやせ傾向。 ・体重増加不良は成長曲線で経時的に評価する。
