StudyMed医師国家試験

「関係ない」と思った症状にこそヒントがある―システムレビューで張る見落とし防止の網

第110回医師国家試験 F問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第110回 F問題 第6問

医療面接におけるシステムレビュー〈review of systems〉はどれか。

  1. a.病歴聴取と身体診察とを並行して行う。
  2. b.問診票の記載に基づいて経過を確認する。
  3. c.時系列に沿って患者に病歴を説明してもらう。
  4. d.主訴と関連のない情報も含めて系統的に聴取する。
  5. e.医療面接で得られた情報を要約して患者に確認する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接の技法のうち、システムレビューとは何かを問う問題だ。医療面接にはいくつもの技法や手順があるけれど、それぞれ何を目的にしているのかを区別できるかが着眼点になる。まず、システムレビューという言葉からどんなイメージが浮かぶかな。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で、最後に「ほかに気になる症状はありますか」と聞くように習いました。あれのことでしょうか。
ドクタードクター
方向性は近いけれど、もう一歩踏み込もう。「ほかに何かありますか」という開放型の質問は患者任せになってしまう。システムレビューは、医師の側から臓器系統ごとに代表的な症状を順番に尋ねていく方法なんだ。全身状態、皮膚、頭頸部、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格系、神経系、精神、内分泌・血液と、頭の先から足の先まで確認していく。
医学生医学生
なるほど、こちらから系統立てて網羅的に聞くんですね。でも、主訴と関係のないことまで聞く必要があるんですか。
ドクタードクター
そこが一番大事なポイントだよ。患者さんは自分が重要だと思うことしか話さないことが多い。たとえば腰痛で来た人が、体重が減っていることや寝汗をかいていることを「関係ない」と思って言わなかったら、悪性腫瘍の骨転移や感染症の手がかりを逃してしまうかもしれない。主訴に関係なさそうな情報も含めて系統的に聴取する、それがシステムレビューの本質なんだ。
医学生医学生
だから正解は「主訴と関連のない情報も含めて系統的に聴取する」なんですね。
ドクタードクター
その通り。ほかの選択肢も、医療面接で実際に使う大切な技法だから、何に当たるのかを整理しておこう。病歴聴取と身体診察を並行して行う、というのはどうかな。
医学生医学生
救急外来の実習で、先生が聴診しながら質問していたのを見ました。時間短縮の工夫という感じがします。
ドクタードクター
そう、緊急時や診察中に追加で確認したいときに行う診察の進め方の工夫で、臓器系統を網羅するという定義には当たらない。では、問診票の記載に基づいて経過を確認する、はどうだろう。
医学生医学生
システムレビューを問診票でチェックしてもらう病院もあると聞いたので、少し迷いました。
ドクタードクター
鋭い迷いだね。実際、全系統を一つずつ聞くと時間がかかるので、チェックリスト形式の問診票に記入してもらい、医師が確認・補足する方法はよく使われる。ただ、それは実施の手段にすぎない。システムレビューの本質は媒体ではなく、全臓器系統を系統的に網羅する点にあるんだ。
医学生医学生
時系列に沿って病歴を説明してもらうのは、現病歴の聴き方ですよね。
ドクタードクター
そうだね。発症からいままでの流れを語ってもらうのは現病歴聴取の基本で、主訴の経過を把握するには有効だけれど、主訴以外の系統まで漏れなく確認するものではない。最後の、得られた情報を要約して患者に確認する、はどうかな。
医学生医学生
コミュニケーション技法の講義で習った「要約」ですね。誤解を修正できて、患者さんも頭を整理できるという。
ドクタードクター
よく覚えているね。開放型質問と閉鎖型質問の使い分け、促し、繰り返し、言い換え、要約、共感の表出などは面接を円滑に進めるための技法で、システムレビューとは別物だ。
医学生医学生
整理すると、時系列で聞くのが現病歴、まとめて確かめるのが要約、主訴と関係なく系統的に網羅するのがシステムレビュー、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として位置づけも押さえておこう。医療面接では主訴、現病歴、既往歴、家族歴、社会歴を聴き、その最後にシステムレビューを置くのが一般的で、問題志向型診療記録でも病歴情報の締めくくりに来る。主訴と現病歴で拾いきれなかった情報を補い、隠れた問題点を見つける網の役割だね。
医学生医学生
臨床実習で、入院時に全身の症状を聞き直したら、患者さんが言っていなかった血尿が見つかったことがありました。
ドクタードクター
まさにシステムレビューが生きた場面だね。臨床では、主訴に引っ張られて思い込みで診断を急ぐことが誤診の原因になりやすい。網羅的に聞くことは、自分の思考の偏りを補う安全装置でもあるんだ。ただし外来で毎回すべてを聞くのは現実的ではないから、問診票の活用や、状況に応じた重点化も工夫したいところだね。

まとめ

システムレビュー(review of systems)とは、全身状態・皮膚・頭頸部・呼吸器・循環器・消化器・泌尿生殖器・筋骨格系・神経系・精神・内分泌などの臓器系統ごとに、主訴と関連のない症状も含めて系統的・網羅的に聴取する方法です。患者が無関係と考えて話さなかった症状や医師の聴き漏らしを拾い上げ、見落としや思い込みによる誤診を防ぐことが目的です。時系列に沿った病歴聴取は現病歴の聴き方、聴取内容をまとめて患者に確認するのは要約という別の技法であり、病歴聴取と身体診察の並行や問診票の活用もシステムレビューそのものではありません。実際にはチェックリスト形式の問診票に記入してもらい医師が確認・補足することも多く、各技法の目的を区別して理解することが、OSCEから臨床現場まで通用する医療面接の基礎となります。

解答・解説

正解はdです

医療面接では、まず患者が最も困っていること(主訴)を確認し、その症状がいつ、どのように始まり、どう変化してきたか(現病歴)を詳しく聴く。しかし、患者は自分が重要だと思うことしか話さないことが多く、主訴に注目した聴取だけでは、本人が関係ないと思っている症状や、言い忘れた症状を拾い損ねるおそれがある。 この見落としを防ぐための手法がシステムレビュー(review of systems:ROS、系統的レビュー)である。全身状態(発熱、体重変化、倦怠感など)、皮膚、頭頸部、眼、耳鼻咽喉、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格系、神経系、精神、内分泌、血液などの臓器系統ごとに、代表的な症状の有無を「頭の先から足の先まで」順番に確認していく。主訴と関連が乏しいように見える情報も含めて網羅的に聴き取る点が本質である。 したがって、選択肢のうち「主訴と関連のない情報も含めて系統的に聴取する」がシステムレビューの説明に当たる。他の選択肢は、医療面接の中で用いられる別の技法や手順(身体診察との同時進行、問診票の活用、時系列での病歴聴取、要約と確認)を述べたものであり、いずれも診療上意味のある行為ではあるが、システムレビューそのものではない。

選択肢考察

  1. ×a.  病歴聴取と身体診察とを並行して行う。

    救急外来など時間的余裕がない場面や、診察中に追加で質問したいときに、病歴聴取と身体診察を同時に進めることはある。診療時間の短縮には役立つが、これは診察の進め方の工夫であり、臓器系統ごとに症状を網羅的に確認するシステムレビューの定義には当たらない。

  2. ×b.  問診票の記載に基づいて経過を確認する。

    事前に患者が記入した問診票をもとに経過を確かめることは、面接を効率化する一般的な方法である。システムレビューを問診票形式で患者に記入してもらうこともあるが、「問診票の記載に従って経過を確認する」という行為自体はシステムレビューを意味しない。システムレビューの本質は、記録媒体ではなく、全臓器系統を系統的に網羅する点にある。

  3. ×c.  時系列に沿って患者に病歴を説明してもらう。

    発症から現在までを時間の流れに沿って語ってもらうのは、現病歴を聴取する際の基本的な方法である。主訴に関する経過を把握するには有効だが、主訴と関係のない臓器系統の症状まで漏れなく確認するものではないため、システムレビューではない。

  4. ○d.  主訴と関連のない情報も含めて系統的に聴取する。

    システムレビューは、全身状態から皮膚、頭頸部、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格系、神経系、精神などに至るまで、臓器系統ごとに主な症状(および関連する既往)の有無を順に尋ねる方法である。患者が主訴と無関係と考えて話さなかった症状や、主訴に気を取られて医師が聴き漏らした症状を拾い上げ、見落としや思い込みによる誤診を防ぐことを目的とする。この記述はその定義そのものであり、正しい。

  5. ×e.  医療面接で得られた情報を要約して患者に確認する。

    聴取した内容を医師が要約し、「〜ということでよろしいですか」と患者に確かめる技法は「要約(summarization)」と呼ばれる。情報の誤解や漏れを修正でき、患者自身も状況を整理できる有用なコミュニケーション技法だが、システムレビューではない。

医療面接で聴取する主な項目

主訴、現病歴、既往歴(手術歴・輸血歴・アレルギー歴・服薬歴を含む)、家族歴、社会歴(生活歴:職業、喫煙、飲酒、住環境、旅行歴など)、そしてシステムレビューが一般的な構成である。

システムレビューの位置づけ

問題志向型診療記録(POMR:problem oriented medical record)では、患者から得た主観的情報(基礎データのうちの病歴部分)の最後にシステムレビューを置くのが一般的である。主訴・現病歴の聴取で集めきれなかった情報を補い、隠れた問題点を発見するための「網」として機能する。

実施の工夫

全臓器系統を一つずつ確認すると時間がかかるため、外来初診時の待ち時間や入院時に、チェックリスト形式の問診票として患者に記入してもらい、その後医師が内容を確認・補足する方法がよくとられる。

確認する系統と症状の例

全身:発熱、体重減少・増加、倦怠感、寝汗 皮膚:発疹、瘙痒、色調変化 頭頸部・眼・耳鼻咽喉:頭痛、視力低下、難聴、耳鳴、鼻出血、咽頭痛 呼吸器:咳嗽、喀痰、血痰、呼吸困難、喘鳴 循環器:胸痛、動悸、浮腫、起座呼吸 消化器:食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛、下痢・便秘、吐血・下血、黄疸 泌尿生殖器:頻尿、排尿時痛、血尿、月経異常 筋骨格系:関節痛、筋力低下、腰痛 神経系:めまい、しびれ、麻痺、けいれん、意識消失 精神:抑うつ気分、不安、不眠 内分泌・血液:口渇・多飲・多尿、暑がり・寒がり、出血傾向、リンパ節腫脹

医療面接のコミュニケーション技法(他の選択肢との対比)

開放型質問・閉鎖型質問の使い分け、促し、繰り返し、言い換え、要約、共感的態度の表出などがある。要約は面接の区切りや終盤で情報を患者と共有・確認するのに用いる。

POINT

・システムレビュー(ROS)=臓器系統ごとに、主訴と無関係に見える症状も含めて網羅的・系統的に確認する方法。 ・目的は主訴・現病歴の聴取だけでは漏れる情報を拾い上げ、見落としを防ぐこと。 ・時間がかかるため問診票(チェックリスト)として患者に記入してもらうことが多い。 ・時系列での病歴聴取=現病歴、聴取内容のまとめと確認=要約であり、システムレビューとは区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。