「誰に雇われているか」で決まる保険証―国民皆保険の振り分けルールを整理する
第110回医師国家試験 E問題 第33問
国試問題にチャレンジ
被保険者とその医療保険制度の組合せで正しいのはどれか。
- a.30歳民間企業従業員 ―― 共済組合
- b.40歳自営業 ―― 国民健康保険
- c.50歳公務員 ―― 協会けんぽ
- d.60歳大学教員 ―― 組合管掌健康保険
- e.70歳年金受給者 ―― 後期高齢者医療制度
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
日本の公的医療保険は国民皆保険であり、加入先はまず年齢、次に働き方で決まります。原則75歳以上(一定の障害があれば65歳以上)は後期高齢者医療制度、75歳未満では、大企業の従業員は組合健保、中小企業の従業員は協会けんぽ、公務員や私立学校教職員(国立大学法人の教職員を含む)は共済組合、自営業者・無職者・退職者などは国民健康保険に加入します。70歳の年金受給者は後期高齢者医療制度の対象ではなく、通常は国民健康保険に加入しており、65〜74歳の前期高齢者は独立した制度ではなく保険者間の財政調整の枠組みである点も重要です。自己負担割合が年齢や所得で異なることも合わせて理解しておくと、患者さんの受療環境を把握し、生活に即した医療を考える土台になります。
解答・解説
正解はbです
問われていること
日本の公的医療保険は、国民全員がいずれかの制度に加入する「国民皆保険」である(1961年に達成)。どの制度に入るかは、主に「職業(雇われているか、どこに雇われているか)」と「年齢(75歳以上か)」で決まる。本問は、その振り分けのルールを正しく理解しているかを問うている。
考え方
まず年齢で分ける。75歳以上(一定の障害があると認定された65〜74歳を含む)は、職業に関係なく後期高齢者医療制度に移る。75歳未満であれば、次に職業で分ける。 ・会社などに雇われている人(被用者)とその扶養家族 → 被用者保険(職域保険) 大企業(単独または共同で健康保険組合を設立)→ 組合管掌健康保険(組合健保) 中小企業(自前の健康保険組合がない)→ 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ) 公務員・私立学校教職員 → 各種共済組合 船員 → 船員保険 ・被用者保険に入らない人(自営業者、農林漁業者、無職者、退職者など)→ 国民健康保険(地域保険) この枠組みに当てはめると、自営業者が国民健康保険に加入するという組合せだけが正しい。なお、選択肢に年齢が添えられているが、制度選択に年齢が影響するのは75歳を境とする後期高齢者医療制度の場合だけであり、30〜60歳の年齢そのものは判断材料にならない。
選択肢考察
- ×a. 30歳民間企業従業員 ―― 共済組合
誤り。共済組合は国家公務員・地方公務員・私立学校教職員を対象とする医療保険である。民間企業の従業員は、勤務先が健康保険組合を持つ大企業であれば組合管掌健康保険に、持たない中小企業であれば協会けんぽに加入する。
- ○b. 40歳自営業 ―― 国民健康保険
正解。自営業者は雇用されていないため被用者保険の対象にならず、住所地の国民健康保険(地域保険)に加入する。保険者は市町村(特別区を含む)で、2018年度からは都道府県も財政運営の責任主体として共同で保険者となっている。なお、医師・弁護士・建設業など同業者で組織する国民健康保険組合に加入する自営業者もいるが、これも国民健康保険の一形態である。
- ×c. 50歳公務員 ―― 協会けんぽ
誤り。公務員は共済組合(国家公務員共済組合、地方公務員共済組合)に加入する。協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)は、自社の健康保険組合を持たない主に中小企業の従業員とその家族が加入する制度であり、被用者保険の中で加入者数が最も多い。
- ×d. 60歳大学教員 ―― 組合管掌健康保険
誤り。大学教員は原則として共済組合に加入する。国立大学法人の教職員は法人化後も国家公務員共済組合法の適用を受け、文部科学省共済組合の組合員となる。公立大学の教職員は地方公務員共済組合、私立大学の教職員は日本私立学校振興・共済事業団が運営する私立学校教職員共済に加入する。組合管掌健康保険は、健康保険組合を設立している大企業などの従業員が加入する制度である。
- ×e. 70歳年金受給者 ―― 後期高齢者医療制度
誤り。後期高齢者医療制度の対象は原則75歳以上であり、65〜74歳で一定の障害(寝たきり等)があると広域連合の認定を受けた者も加入できる。70歳の年金受給者は、通常は国民健康保険に加入している(子などの被用者保険の被扶養者となる場合もある)。65〜74歳は「前期高齢者」と呼ばれ、制度上は加入先の保険のまま、保険者間の財政調整の対象となる。
日本の公的医療保険制度の整理
1. 被用者保険(職域保険):雇用されている人とその被扶養者 ・組合管掌健康保険(組合健保):保険者は健康保険組合。主に大企業。 ・全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ):保険者は全国健康保険協会。主に中小企業。加入者数は最多。 ・共済組合:国家公務員、地方公務員、私立学校教職員。 ・船員保険:船員。保険者は全国健康保険協会。 2. 地域保険 ・国民健康保険:自営業者、農林漁業者、無職者、被用者保険を退職した人など。保険者は都道府県と市町村(2018年度〜)、および同業者で組織する国民健康保険組合。 3. 後期高齢者医療制度(2008年度〜) ・75歳以上の全員、および一定の障害がある65〜74歳。運営主体は都道府県ごとに全市町村が加入する後期高齢者医療広域連合。
年齢による区分と自己負担割合(原則)
・義務教育就学前:2割 ・義務教育就学後〜69歳:3割 ・70〜74歳:2割(現役並み所得者は3割) ・75歳以上:1割(一定以上の所得者は2割、現役並み所得者は3割)
前期高齢者と後期高齢者
65〜74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼ぶ。前期高齢者は独立した保険制度ではなく、それまでの保険に加入したまま、前期高齢者が多く加入する国民健康保険の負担を各保険者間で調整する財政調整の仕組みがある。
POINT
・自営業者・無職者・退職者は国民健康保険に加入する。 ・民間企業の従業員は大企業なら組合健保、中小企業なら協会けんぽ。 ・公務員と私立学校教職員は共済組合(国立大学法人の教職員も共済組合)。 ・後期高齢者医療制度は原則75歳以上(一定の障害があれば65歳以上)。70歳では対象にならない。
