国籍ではなく「住所と雇用」で決まる―日本の医療保険制度を5つの視点で読み解く
第119回医師国家試験 B問題 第10問
国試問題にチャレンジ
我が国の医療保険制度で正しいのはどれか。
- a.外国籍でも加入できる。
- b.財源は保険料より公費が多い。
- c.療養の給付は現金給付である。
- d.予防接種は保険給付の対象である。
- e.保険医療機関は調剤を行う院外薬局を指定する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
我が国の公的医療保険は国民皆保険を原則とし、加入は国籍ではなく雇用関係や住所に基づくため、被用者や在留3か月超で住民登録をした外国人も加入します。医療費の財源は保険料が約5割と最も多く、公費が約4割弱、患者負担が約1割強という構成です。療養の給付は医療サービスそのものを提供する現物給付であり、傷病手当金や出産育児一時金などの現金給付とは区別されます。予防接種や健診、正常分娩は治療ではないため保険給付の対象外で、院外処方箋は患者がどの保険薬局でも利用でき、医療機関による薬局の誘導は療担規則で禁じられています。こうした制度の骨組みを理解することは、保険診療を担う医師として適切な診療・書類作成を行い、患者を不利益から守るための基礎となります。
解答・解説
正解はaです
テーマ
我が国の公的医療保険制度の基本的な仕組みを問う問題である。押さえるべき論点は、(1)誰が加入するのか(国民皆保険と外国人の扱い)、(2)財源の構成、(3)給付の形態(現物給付と現金給付)、(4)保険給付の範囲(治療は対象、予防・健診・正常分娩などは原則対象外)、(5)保険医療機関と保険薬局の関係(医薬分業と患者の薬局選択の自由)の5点である。
考え方
日本は1961年以降、国民皆保険体制をとっており、日本に住所を有する人は原則として何らかの公的医療保険に加入する。この「住所を有する人」には、一定の条件を満たす外国人も含まれる。会社などに使用される人は国籍を問わず被用者保険(健康保険など)の被保険者となり、それ以外の人でも在留期間が3か月を超え住民登録をしている外国人は国民健康保険に加入する。したがって「外国籍でも加入できる」が正しい。 残りの選択肢は、財源の大小関係、療養の給付の性質、予防接種の扱い、院外処方箋と薬局選択の原則という基本事項で判断できる。
選択肢考察
- ○a. 外国籍でも加入できる。
正しい。公的医療保険の加入要件は国籍ではなく、雇用関係や住所(居住実態)に基づいている。健康保険の適用事業所に常時使用される労働者は、国籍・性別・賃金額にかかわらず被保険者となる。被用者保険に入らない人でも、適法に3か月を超えて在留し住民登録をしている外国人は、国民健康保険への加入が義務づけられる(75歳以上は後期高齢者医療制度の対象となる)。一方、在留期間が3か月以下の人、短期滞在(観光など)の人、治療目的で来日する医療滞在ビザの人などは原則として対象外である。
- ×b. 財源は保険料より公費が多い。
誤り。国民医療費を財源別にみると、保険料(被保険者と事業主の負担の合計)が約5割を占めて最も多く、公費(国庫と地方の負担)は約4割弱、残りの1割強が患者の窓口負担などである。また、医療費のうち医療保険でまかなわれる部分(実効給付率、約85%)の内訳でみても、保険料分が約53%、公費分が約32%(2021年度)であり、いずれの見方でも保険料が公費を上回る。ただし後期高齢者医療制度では給付費の約5割を公費が負担するなど、制度ごとに公費の比重は異なる。
- ×c. 療養の給付は現金給付である。
誤り。療養の給付は、被保険者が保険医療機関で保険証(マイナ保険証など)を提示し、一部負担金を支払うことで、診察・検査・投薬・処置・手術・入院などの医療サービスそのものを受けられる給付であり、現物給付である。医療機関は残りの費用を審査支払機関を通じて保険者に請求する。現金給付の例としては、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、埋葬料、療養費(やむを得ず保険証を使わず受診した場合などの払い戻し)がある。
- ×d. 予防接種は保険給付の対象である。
誤り。公的医療保険は疾病・負傷の治療を給付の対象とするものであり、病気でない状態で行う予防接種は対象外である。予防接種法に基づく定期接種(A類疾病・B類疾病)は市町村が実施主体となり公費で行われ(B類疾病は一部自己負担がありうる)、それ以外の任意接種は原則として全額自己負担である。同様に、健康診断、正常な妊娠・分娩、美容目的の手術なども保険給付の対象外である。なお、破傷風トキソイドや抗破傷風人免疫グロブリンを外傷の治療の一環として用いる場合など、治療として行うものは保険の対象となりうる。
- ×e. 保険医療機関は調剤を行う院外薬局を指定する。
誤り。院外処方箋は全国どこの保険薬局でも調剤を受けることができ、どの薬局を利用するかは患者が自由に選ぶ。「保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)」は、保険医療機関や保険医が患者に対して特定の保険薬局で調剤を受けるよう指示・誘導すること、またその見返りに薬局から金品などの利益を受け取ることを禁止している。医療機関と薬局の癒着を防ぎ、医薬分業の目的(処方の独立したチェックなど)を保つためである。
我が国の公的医療保険の体系
・被用者保険:健康保険(全国健康保険協会管掌健康保険〈協会けんぽ〉、組合管掌健康保険)、共済組合(公務員・私立学校教職員)、船員保険 ・国民健康保険:自営業者、農林漁業者、無職者、被用者保険に入らない短時間労働者など。保険者は都道府県・市町村(2018年度から都道府県も保険者)と国民健康保険組合 ・後期高齢者医療制度:75歳以上(一定の障害がある65歳以上を含む)。運営は都道府県単位の後期高齢者医療広域連合
給付の主な種類
・現物給付:療養の給付、入院時食事療養費・入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費など(後者の多くは法律上は費用の支給だが、医療機関が代理受領するため実質的に現物給付として扱われる) ・現金給付:傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、埋葬料、療養費、高額療養費(限度額適用認定証などにより窓口で現物給付化することも可能)
患者の一部負担割合(原則)
・義務教育就学前:2割 ・義務教育就学後〜69歳:3割 ・70〜74歳:2割(現役並み所得者は3割) ・75歳以上:1割(一定以上の所得者は2割、現役並み所得者は3割)
保険給付の対象外となる主なもの
予防接種(治療目的を除く)、健康診断・人間ドック、正常な妊娠・分娩、美容整形、業務上・通勤途上の傷病(労働者災害補償保険の対象)など。
POINT
・国民皆保険では、国籍ではなく就労・住所に基づいて加入する。在留3か月超で住民登録をした外国人は国民健康保険の対象となる。 ・医療費の財源は保険料が最も多く(約5割)、公費(約4割弱)、患者負担(約1割強)の順。 ・療養の給付は現物給付。現金給付の代表は傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、埋葬料。 ・予防接種、健診、正常分娩は保険給付の対象外。定期予防接種は公費で実施される。 ・院外処方箋は患者がどの保険薬局でも使え、医療機関が特定の薬局へ誘導することは療担規則で禁止されている。
