「待っても強めても通れない」―帝王切開の絶対的適応を見抜く
第110回医師国家試験 E問題 第28問
国試問題にチャレンジ
帝王切開の絶対的適応となるのはどれか。
- a.骨盤位
- b.微弱陣痛
- c.不正軸進入
- d.軟産道強靱
- e.児頭骨盤不均衡
対話形式の解説
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ドクターまとめ
帝王切開の絶対的適応とは、経腟分娩が物理的に不可能、または試みること自体が母児に重大な危険をもたらす状態を指します。児頭骨盤不均衡は児頭と骨盤という硬い構造どうしの不適合であり、陣痛促進や時間経過では解決せず、無理に進めると子宮破裂や胎児の低酸素を招くため絶対的適応となります。骨盤位、微弱陣痛、不正軸進入、軟産道強靱は難産の原因になるものの、条件や処置次第で経腟分娩が可能であり、絶対的適応ではありません。全前置胎盤や持続する横位、子宮破裂も絶対的適応の代表で、評価には骨盤X線計測やSeitz法が用いられます。分娩の三要素のどこに異常があり、それが対処可能かどうかという視点で考えることが、分娩管理と手術適応の判断の土台になります。
解答・解説
正解はeです
経腟分娩が進むかどうかは、分娩の三要素、すなわち「娩出力(陣痛と腹圧)」「産道(骨産道と軟産道)」「娩出物(胎児とその付属物)」が互いに適合するかで決まる。三要素のいずれかに異常があると分娩は遷延・停止しうるが、異常の多くは子宮収縮薬の投与、時間経過、体位変換、吸引・鉗子分娩などで対処でき、経腟分娩の可能性が残る。 帝王切開の「絶対的適応」とは、経腟分娩が物理的に不可能、あるいは試みること自体が母児に重大な危険をもたらすため、帝王切開以外に選択肢がない状態をいう。これに対し「相対的適応」は、経腟分娩も不可能ではないが、母児の安全などを総合的に考えて帝王切開を選ぶ状態である。 本問の選択肢のうち、胎児の頭と母体の骨盤という「固い構造どうし」の大きさが合わず、陣痛を強めても時間をかけても解決しないのは児頭骨盤不均衡だけである。他の選択肢は難産の原因にはなるが、状況によって経腟分娩が可能である。
選択肢考察
- ×a. 骨盤位
骨盤位(いわゆる逆子)は、児頭より大きさの小さい殿部や下肢が先に出るため、最後に出る児頭が娩出困難となる(後続児頭の娩出困難)危険がある。わが国では帝王切開が選ばれることが多いが、児の推定体重や骨盤位の種類(単殿位など)、施設の体制などの条件がそろえば経腟分娩も可能であり、絶対的適応ではなく相対的適応である。妊娠後期に外回転術で頭位に直す方法もある。
- ×b. 微弱陣痛
微弱陣痛は娩出力の異常で、分娩遷延の原因となる。まず原因(膀胱充満、母体疲労、子宮の過伸展など)を評価し、休息・排尿・人工破膜や、オキシトシンなどの子宮収縮薬による陣痛促進を行う。これにより分娩が進めば経腟分娩が可能であり、微弱陣痛そのものは帝王切開の絶対的適応ではない。促進しても分娩が停止する場合や胎児機能不全を伴う場合に、はじめて帝王切開が検討される。
- ×c. 不正軸進入
不正軸進入は、児頭が骨盤入口に進入する際に、児頭の矢状縫合が骨盤入口の横径(中央)から前方(恥骨側)または後方(仙骨側)へ偏った状態をいう。矢状縫合が後方に偏る前在頭頂骨進入(ネーゲレ型)は比較的分娩が進みやすく、前方に偏る後在頭頂骨進入(リッツマン型)は難産となりやすく帝王切開となる例が多い。いずれも難産の原因にはなるが、一律に経腟分娩が不可能とはいえないため、絶対的適応ではない。
- ×d. 軟産道強靱
軟産道強靱は、子宮頸管や腟・会陰などの軟らかい産道が硬く伸展しにくい状態で、高年初産婦などにみられやすく、分娩遷延の原因となる。時間経過や子宮頸管熟化を促す処置により軟産道が開大すれば経腟分娩が可能であり、娩出期では会陰切開や吸引・鉗子分娩で対応することもある。分娩が進まない場合に帝王切開を選ぶことはあるが、絶対的適応ではない。
- ○e. 児頭骨盤不均衡
児頭骨盤不均衡(CPD:cephalopelvic disproportion)は、胎児の児頭と母体の骨産道(骨盤)の大きさが釣り合わず、児頭が骨盤を通過できない状態である。骨盤も児頭も硬い構造であり、陣痛を強めても時間をかけても通過は不可能で、無理に経腟分娩を続ければ子宮破裂や胎児の損傷・低酸素を招く。したがって帝王切開の絶対的適応となる。診断には骨盤 X 線計測(グースマン法・マルチウス法)や、内診・Seitz(ザイツ)法などによる児頭と骨盤の適合性の評価が用いられる。
帝王切開の適応の整理
・絶対的適応の例:児頭骨盤不均衡、全前置胎盤(胎盤が内子宮口を完全に覆う)、持続する横位、子宮破裂(切迫子宮破裂を含む)など。 ・相対的適応の例:骨盤位、既往帝王切開後の妊娠、多胎妊娠、胎児機能不全、常位胎盤早期剝離(胎児が生存し、すぐに経腟分娩できない場合)、分娩停止(微弱陣痛や回旋異常などが原因のもの)、重症妊娠高血圧症候群、母体の性器ヘルペス初感染などの産道感染リスクなど。状況次第で緊急帝王切開の適応となるものも多い。
分娩の三要素と主な異常
・娩出力:微弱陣痛、過強陣痛、腹圧不全。 ・産道:狭骨盤(骨産道)、軟産道強靱(軟産道)。 ・娩出物:胎位異常(骨盤位、横位)、胎勢・回旋の異常(反屈位、不正軸進入、後方後頭位など)、巨大児。
児頭骨盤不均衡の評価
・骨盤 X 線計測:側面像で産科的真結合線などを測定するグースマン法、入口面像のマルチウス法がある。産科的真結合線が 9.5 cm 未満を狭骨盤とする(10.5 cm 未満で比較的狭骨盤)。 ・Seitz 法:恥骨結合上縁と児頭前面の高さの関係を触診で比べ、児頭が恥骨結合より突出していれば不均衡を疑う。 ・CPD の疑いが境界域にとどまる場合には、慎重な監視のもとで試験分娩を行うことがある。
POINT
・帝王切開の絶対的適応は、経腟分娩が物理的に不可能または極めて危険な状態である。 ・児頭骨盤不均衡は児頭と骨盤という硬い構造どうしの不適合であり、絶対的適応となる。 ・骨盤位、微弱陣痛、不正軸進入、軟産道強靱は難産の原因となるが、経腟分娩が可能な場合があり絶対的適応ではない。 ・ほかの絶対的適応の代表として全前置胎盤も覚えておく。
