StudyMed医師国家試験

はいはい、歯、離乳食―9〜10か月健診で「見るべきもの」は月齢が教えてくれる

第110回医師国家試験 B問題 第38問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第38問

9~10か月健康診査で行われる項目はどれか。3つ選べ。

  1. a.乳歯萌出の確認
  2. b.知能指数の測定
  3. c.行動発達の評価
  4. d.先天奇形の有無の評価
  5. e.離乳の進行具合の確認

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳幼児健康診査、そのなかでも9〜10か月健診で何を確認するかを問う問題だ。考え方のコツは、この月齢の赤ちゃんが「何をできるようになっているか」「生活がどう変わっているか」を思い浮かべること。そうすれば健診で見るべき項目が自然と見えてくる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、法定の健診は1歳6か月と3歳だと習いました。9〜10か月健診は法律で決まっているわけではないんですか。
ドクタードクター
よく覚えているね。母子保健法で市町村に実施が義務づけられているのは1歳6か月児健診と3歳児健診だ。乳児期の健診は市町村が必要に応じて行うもので、多くの自治体が3〜4か月と9〜10か月で実施している。では、9〜10か月の赤ちゃんってどんな様子かな。
医学生医学生
小児科の実習で外来を見学したとき、つかまり立ちしている子がいました。人見知りして泣いてしまう子も多かったです。
ドクタードクター
まさにその時期だね。運動ではいはい、つかまり立ち、親指と人差し指で小さな物をつまむピンセットつまみ、パラシュート反応が出てくる。社会性ではバイバイや拍手のまね、人見知りがみられる。こうした行動発達が年齢相応に獲得されているかを評価するのが、この健診の中核なんだ。
医学生医学生
発達の遅れに気づく場でもあるということですね。
ドクタードクター
そう。運動発達の遅れから脳性麻痺などに気づくこともあるし、視線が合わない、人への関心が乏しいといった社会性の問題は自閉スペクトラム症の初期徴候のこともある。次に歯。乳歯はいつごろ生え始める?
医学生医学生
生後半年くらいで、下の前歯からだったと思います。
ドクタードクター
正解。生後6〜8か月ごろ下顎の乳中切歯から生え始め、2歳半〜3歳で20本そろう。9〜10か月はちょうど萌出が始まった時期だから、萌出状況を確認し、歯みがき習慣の開始などう蝕予防の指導も行う。ただし萌出時期は個人差が大きく、1歳近くまで生えない子もいるから、それだけで異常と決めつけないことも大事だ。
医学生医学生
食事の面では、離乳食がかなり進んでいる頃ですよね。
ドクタードクター
そうだね。離乳は5〜6か月ごろに始めて、9〜11か月ごろには1日3回食、歯ぐきでつぶせる固さへと進むのが目安だ。順調に進まないと体重増加不良や鉄欠乏につながるから、食事の回数・形態・量と体重の推移を確認して保護者に助言する。つまり乳歯萌出の確認、行動発達の評価、離乳の進行具合の確認の3つが正解になる。
医学生医学生
知能指数の測定は、発達を見るなら含まれそうな気もしたのですが…。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところだ。知能指数は言語による課題への応答が必要だから、測れるのはおおむね幼児期以降。田中ビネー知能検査は2歳から、WISCは5歳からだね。乳児期は知能指数ではなく、遠城寺式乳幼児分析的発達検査などで得る発達指数や、デンバー式発達スクリーニング検査で評価する。
医学生医学生
発達指数は発達年齢を生活年齢で割って100をかけたもの、でしたね。CBTの勉強で覚えました。では先天奇形の評価はどうでしょう。
ドクタードクター
先天奇形の多くは、妊娠中の超音波検査、出生直後の診察、1か月健診などの新生児期・乳児早期で見つかる。9〜10か月健診でも全身の診察はするから見逃しに気づくことはありうるけれど、この健診の目的として位置づけられる項目ではないんだ。
医学生医学生
健診ごとに、その時期ならではの重点項目があるということですね。
ドクタードクター
その通り。整理しておこう。1か月健診は体重増加、黄疸、先天異常、股関節の開排制限、ビタミンK投与。3〜4か月健診は首のすわり、追視、あやし笑い、股関節脱臼。1歳6か月健診はひとり歩き、意味のある単語、指さし、う蝕。3歳児健診は二語文以上の会話、視覚・聴覚、尿検査、社会性。月齢ごとの発達の目安とセットで覚えると忘れにくい。
医学生医学生
発達のマイルストーンを覚えておけば、健診の項目も自然に導けそうです。
ドクタードクター
そう、それが一番の近道だ。そして健診は異常を見つけるだけでなく、保護者の育児不安に寄り添い、助言する場でもあることを忘れないでほしい。

まとめ

9〜10か月健診は、多くの市町村が実施する乳児健診のひとつで、この時期に獲得されるはいはい・つかまり立ち・ピンセットつまみ・人見知りなどの行動発達の評価、生え始めた乳歯の萌出確認、1日3回食へ進む離乳の進行具合の確認が中心となります。知能指数は言語課題を要するため幼児期以降に測定するもので、乳児期は発達指数や発達スクリーニング検査で評価します。先天奇形の評価は胎児期から新生児期・乳児早期の健診が主な場です。母子保健法で義務づけられた健診は1歳6か月児と3歳児であり、各健診の重点項目は月齢ごとの発達の目安と結びつけて理解すると整理しやすくなります。健診は異常の早期発見とともに保護者支援の場でもあり、小児保健の基本として押さえておきたい内容です。

解答・解説

正解はa, c, eです

テーマ

乳幼児健康診査は、成長・発達の節目ごとに異常を早期に見つけ、保護者へ育児上の助言を行う場である。母子保健法では1歳6か月児健診と3歳児健診が市町村に義務づけられており、乳児期については市町村が必要に応じて実施し、多くの自治体で3〜4か月健診と9〜10か月健診(集団健診または医療機関への委託健診)が行われている。

9〜10か月という時期の特徴

・運動: はいはい、つかまり立ちができるようになり、移動範囲が広がる。親指と人差し指で小さな物をつまむ(ピンセットつまみ)動作が出てくる。パラシュート反応が出現する。 ・精神・社会性: 人見知り、バイバイや拍手などのまね、身ぶりでの意思表示がみられる。 ・歯: 下顎の乳中切歯から乳歯が生え始めている時期である。 ・栄養: 離乳食が1日3回となり、歯ぐきでつぶせる固さの食事に進む段階である。 したがって健診の内容は、身体計測に加え、この時期に獲得されているはずの行動・運動発達の確認、乳歯萌出の確認、離乳の進み具合の確認が中心となる。一方、知能指数はこの月齢では測定の対象にならず、先天奇形のスクリーニングは主として出生前から新生児期に行われるものである。

選択肢考察

  1. ○a.  乳歯萌出の確認

    乳歯は生後6〜8か月ごろ下顎の乳中切歯から生え始め、2歳半〜3歳ごろまでに20本がそろう。9〜10か月健診は萌出が始まった時期にあたり、萌出状況の確認とともに、歯みがき習慣の開始などのう蝕予防指導が行われる。萌出時期には個人差が大きく、1歳近くまで生えないこともある。

  2. ×b.  知能指数の測定

    知能指数(IQ)は、精神年齢と生活年齢の比で表すもの(比率IQ)と、同年齢集団内での位置で表すもの(偏差IQ)があり、いずれも言語による課題への応答を要するため、測定できるのはおおむね幼児期以降である(例: 田中ビネー知能検査は2歳から、WISCは5歳から)。乳児期には知能指数ではなく、遠城寺式乳幼児分析的発達検査などで得られる発達指数(DQ)や、デンバー式発達スクリーニング検査などで発達を評価する。健診の場で知能指数を測定することはない。

  3. ○c.  行動発達の評価

    9〜10か月はつかまり立ち・はいはい・つまむ動作・バイバイのまね・人見知りなど、運動と精神・社会性の発達がめざましい時期であり、それらが年齢相応に獲得されているかを評価することは健診の中核である。運動発達の遅れ(脳性麻痺など)や、視線が合わない・人への関心が乏しいといった社会性の問題(自閉スペクトラム症の初期徴候)に気づく機会にもなる。

  4. ×d.  先天奇形の有無の評価

    先天奇形の多くは、妊娠中の超音波検査(胎児期)、出生直後の診察、新生児期・乳児早期の健診(1か月健診など)で発見される。9〜10か月健診でも全身の診察は行い、見逃されていた異常に気づくことはありうるが、この健診の目的として位置づけられる項目ではない。

  5. ○e.  離乳の進行具合の確認

    離乳は生後5〜6か月ごろに開始し、9〜11か月ごろには1日3回食、歯ぐきでつぶせる固さの食事へと進むのが目安である(授乳・離乳の支援ガイド)。離乳が順調に進んでいないと体重増加不良や鉄欠乏などにつながるため、食事の回数・形態・量や体重の推移を確認し、保護者に助言する。

乳幼児健康診査の体系

・法定(母子保健法で市町村に実施義務): 1歳6か月児健診、3歳児健診 ・市町村が必要に応じて実施: 乳児健診(3〜4か月、9〜10か月など) ・医療機関で行われることが多いもの: 1か月健診

各健診の主な着眼点

・1か月: 体重増加、先天異常、黄疸、股関節の開排制限、ビタミンK投与。 ・3〜4か月: 首のすわり、追視、あやし笑い、股関節脱臼。 ・9〜10か月: はいはい・つかまり立ち、ピンセットつまみ、パラシュート反応、人見知り、乳歯萌出、離乳の進行。 ・1歳6か月: ひとり歩き、意味のある単語、指さし、う蝕。 ・3歳: 二語文以上の会話、視覚・聴覚、尿検査、社会性。

知能指数と発達指数

・知能指数(IQ)= 精神年齢÷生活年齢×100(比率IQ)、または同年齢集団内での偏差による偏差IQ。幼児期以降に測定する。 ・発達指数(DQ)= 発達年齢÷生活年齢×100。乳児期から評価可能。

POINT

・9〜10か月健診: 行動・運動発達(つかまり立ち、つまむ、人見知りなど)、乳歯萌出、離乳の進行を確認する。 ・乳歯は生後6〜8か月ごろ生え始め、2歳半〜3歳で20本。 ・離乳は5〜6か月で開始、9〜11か月で1日3回食。 ・乳児期は知能指数ではなく発達指数・発達スクリーニング検査で評価する。 ・先天奇形の評価は胎児期〜新生児期が中心。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。