「1日1回・2Gy・週5日」―放射線治療の基本リズム、通常分割照射を押さえる
第109回医師国家試験 G問題 第27問
国試問題にチャレンジ
放射線治療の通常分割照射で正しいのはどれか。
- a.週に5日照射する。
- b.1日に2回以上照射する。
- c.全治療期間は12週である。
- d.組織内照射において用いる。
- e.1回の線量は5 Gy以上である。
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
通常分割照射は、外部照射で用いられる最も標準的なスケジュールで、1回1.8〜2Gyを1日1回、週5日照射し、根治照射では総線量60〜70Gy、治療期間6〜7週程度となります。分割照射は、正常組織の修復や腫瘍の再酸素化・再分布を利用して、正常組織障害を抑えつつ腫瘍を制御するための方法です。1日2回以上照射するのは多分割・加速多分割照射、1回線量を増やすのは寡分割照射や定位照射、組織内照射は小線源治療であり、いずれも通常分割照射とは区別されます。治療期間の延長は腫瘍の再増殖を招いて効果を下げるため、有害事象を管理して予定どおり完遂することが重要です。分割法ごとの数字と目的を対比して理解しておくと、放射線治療計画の考え方や患者説明にも役立ちます。
解答・解説
正解はaです
放射線治療では、必要な総線量を一度に照射するのではなく、何回かに分けて照射する「分割照射」が基本である。最も標準的なスケジュールを「通常分割照射(conventional fractionation)」といい、次のように定義される。 ・1回線量:1.8〜2Gy(Gy:グレイ、吸収線量の単位) ・照射回数:1日1回 ・照射日:週5日(通常は月〜金曜日、土日は休む) ・総線量:目的や部位により異なり、おおむね40〜70Gy程度(根治照射では60〜70Gyが多い) ・治療期間:総線量に応じて4〜7週程度(例:2Gy×30回=60Gyなら6週) 分割照射が行われる理由は、腫瘍と正常組織の放射線に対する反応の違いを利用するためである。照射と照射の間に、正常組織は放射線で生じたDNA損傷を腫瘍よりも効率よく修復できる。また分割の間に、照射に抵抗性の低酸素状態だった腫瘍細胞が再酸素化されたり、放射線感受性の高い細胞周期(G2/M期)へ移行したりするため、腫瘍への効果が高まる。こうした仕組み(放射線生物学の「4つのR」)によって、正常組織の障害を抑えつつ腫瘍を制御できる。 本問は、この通常分割照射の標準的なスケジュール(1日1回・1回2Gy前後・週5日)を正確に覚えているかを問う問題である。
選択肢考察
- ○a. 週に5日照射する。
正しい。通常分割照射は1日1回、週5日(月〜金曜日)照射し、土日は休止するのが標準である。週末に休むことで正常組織の回復がはかられる一方、休止が長くなりすぎると腫瘍細胞が増殖して治療効果が低下するため、治療期間を不必要に延長しないことも重要である。
- ×b. 1日に2回以上照射する。
誤り。通常分割照射は1日1回である。1日に2回以上照射するのは、通常分割照射とは異なる「多分割照射(hyperfractionation)」や「加速多分割照射(accelerated hyperfractionation)」と呼ばれる方法である。多分割照射は1回線量を1.1〜1.2Gy程度に減らして1日2回照射し、晩期障害を抑えつつ総線量を増やすことを狙う。加速多分割照射は治療期間を短縮して腫瘍の再増殖を防ぐことを狙い、限局型小細胞肺癌に対する1.5Gyを1日2回照射するスケジュールなどが代表である。照射間隔は正常組織の修復のため6時間以上空ける。
- ×c. 全治療期間は12週である。
誤り。通常分割照射の全治療期間は総線量によって異なるが、根治照射で60〜70Gyを照射する場合でも6〜7週程度であり、12週もかからない。治療期間が延びると、照射中に生き残った腫瘍細胞が加速的に再増殖して局所制御率が低下することが知られているため、予定外の中断や延長はできるだけ避ける。
- ×d. 組織内照射において用いる。
誤り。通常分割照射は、リニアック(直線加速器)などを用いて体の外から照射する外部照射で用いられる分割方法である。組織内照射は、放射性同位元素を密封した小線源を腫瘍内やその周囲に刺入して照射する小線源治療(ブラキセラピー)の一種で、前立腺癌に対するヨウ素125シード線源の永久挿入などがある。組織内照射は線源近くに高線量を集中できるため、外部照射の通常分割とはまったく異なる線量・スケジュールで行われる。
- ×e. 1回の線量は5 Gy以上である。
誤り。通常分割照射の1回線量は1.8〜2Gyである。1回線量を2Gyより大きくして回数を減らす方法を寡分割照射(hypofractionation)といい、乳房温存術後の照射(1回2.66Gy程度で16回など)や骨転移の緩和照射(8Gy×1回、4Gy×5回など)で用いられる。さらに1回に数Gy〜20Gy程度の大線量を病変に集中させる定位放射線照射(脳転移や早期肺癌などに対するもの)もある。1回線量が大きいほど晩期障害が起こりやすくなるため、正確な位置合わせと照射範囲の絞り込みが必要となる。
分割照射の種類
・通常分割照射:1回1.8〜2Gy、1日1回、週5日。最も標準的な方法。 ・多分割照射:1回線量を減らし(1.1〜1.2Gy程度)1日2回以上照射。晩期障害を増やさずに総線量を増やす目的。 ・加速分割照射(加速多分割照射を含む):1日の照射回数を増やすなどして治療期間を短縮し、腫瘍の再増殖を抑える目的。例:限局型小細胞肺癌の1.5Gy×1日2回×3週(総線量45Gy)。 ・寡分割照射:1回線量を増やして回数を減らす。乳癌術後照射、前立腺癌、骨転移の緩和照射などで用いられる。 ・定位放射線照射:多方向から病変に高線量を集中させる。1回で行うものを定位手術的照射(SRS)、分割して行うものを定位放射線治療(SRT)という。
放射線生物学の4つのR
分割照射の根拠となる現象である。 ・Repair(修復):照射間に亜致死損傷が修復される。正常組織(特に晩期反応組織)で有利に働く。 ・Reoxygenation(再酸素化):低酸素で放射線抵抗性の腫瘍細胞が、分割の間に酸素化されて感受性が上がる。 ・Redistribution(再分布):細胞周期上の感受性の高い時期(G2/M期)へ細胞が移行する。 ・Repopulation(再増殖):照射期間中に細胞が増殖する。治療期間の延長は腫瘍の再増殖を許し不利となる。
照射法の分類
・外部照射:体外の装置(リニアックなど)から照射する。X線、電子線、陽子線、重粒子線など。 ・小線源治療(密封小線源治療):腔内照射(子宮頸癌など)、組織内照射(前立腺癌、舌癌など)。 ・内用療法(非密封RI):放射性ヨウ素による甲状腺癌・バセドウ病の治療など。 ・術中照射:手術中に露出した病変へ直接1回大線量を照射する。
POINT
・通常分割照射は「1回1.8〜2Gy、1日1回、週5日」が標準である。 ・根治照射の総線量は60〜70Gy程度で、治療期間は6〜7週程度。 ・1日2回以上は多分割・加速多分割照射、1回線量2Gy超は寡分割照射、数Gy以上の大線量を集中させるのは定位照射である。 ・分割照射は正常組織の修復と腫瘍の再酸素化などを利用し、正常組織障害を抑えて腫瘍を制御する。 ・治療期間の延長は腫瘍の再増殖により治療効果を下げる。
