StudyMed医師国家試験

色と性状で原因を読む―帯下から見抜く腟炎・頸管炎の鑑別

第109回医師国家試験 B問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第109回 B問題 第36問

婦人科疾患と帯下の特徴の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.細菌性腟症 ―― 黄色調
  2. b.萎縮性腟炎 ―― 淡血性
  3. c.腟カンジダ症 ―― 泡沫状
  4. d.クラミジア頸管炎 ―― 膿性
  5. e.トリコモナス腟炎 ―― 酒粕状

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、婦人科疾患と帯下、つまりおりものの特徴の組合せを問う問題だ。帯下の色や性状、においは、腟炎や頸管炎の原因を推定する最初の手がかりになる。整理の軸は「常在菌バランスの破綻か、特定の病原体による感染か、エストロゲン低下による粘膜の変化か」という3つの視点だ。まず、腟はふだんどうやって自分を守っているか覚えているかな。
医学生医学生
デーデルライン桿菌、つまり乳酸桿菌が乳酸をつくって腟内を酸性に保っている、と生理学で習いました。
ドクタードクター
その通り。エストロゲンの作用で腟上皮にグリコーゲンが蓄えられ、乳酸桿菌がそれを分解して乳酸を産生し、pHを3.8〜4.5程度に保っている。これが自浄作用だ。この仕組みが崩れると何が起こるかを考えると、細菌性腟症と萎縮性腟炎が理解しやすくなる。
医学生医学生
細菌性腟症は、乳酸桿菌が減って別の菌が増えた状態でしたっけ。
ドクタードクター
そう。乳酸桿菌が減り、Gardnerella vaginalisや嫌気性菌が異常に増えた状態で、特定の病原体による感染ではないから非特異性腟炎とも呼ばれる。帯下は薄く均質で、灰白色から黄色調を呈し、魚が腐ったようなアミン臭を伴うのが特徴だ。だから黄色調という組合せは正しいと判断できる。
医学生医学生
教科書では灰白色と書いてあったので、黄色調と言われると少し迷いました。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。典型は灰白色だけれど、黄色調も含めて表現されることが多い。ほかの選択肢と比べて明らかな誤りがないかで判断するのがコツだ。ちなみに顕微鏡では、腟上皮細胞の表面に細菌がびっしり付着したclue cellがみられ、pHは4.5を超えて上昇する。
医学生医学生
萎縮性腟炎は、閉経後でエストロゲンが下がるからグリコーゲンも減って、自浄作用が落ちるということですね。
ドクタードクター
まさにその流れだ。さらに腟上皮自体が薄く萎縮するので、わずかな刺激で出血しやすい。そのため帯下は黄色から膿性に加え、血液が混じった淡血性になることが多い。この組合せも正しい。
医学生医学生
産婦人科の実習で、閉経後の不正出血の患者さんにはまず細胞診をしていました。
ドクタードクター
大事な経験だね。閉経後の血性帯下では、萎縮性腟炎と決めつけず、子宮体癌や子宮頸癌を除外することが先決だ。ここは臨床で絶対に忘れてはいけないポイントだよ。
医学生医学生
カンジダとトリコモナスは、泡沫状と酒粕状がそれぞれ入れ替わっていますよね。CBTの問題集でも何度もひっかかりました。
ドクタードクター
典型的なひっかけだね。腟カンジダ症の帯下は白色で粘稠な酒粕状、あるいはヨーグルト状で、外陰部の強い瘙痒感を伴う。においは乏しく、pHは正常範囲にとどまることが多い。抗菌薬の使用、妊娠、糖尿病、ステロイドや免疫抑制薬の使用が誘因になる。
医学生医学生
トリコモナスは原虫で、泡が立つような帯下なんですね。
ドクタードクター
そう。淡黄色から黄緑色の泡沫状で悪臭を伴い、瘙痒感や灼熱感がある。子宮腟部に点状出血が生じて、いちご状と表現されることもある。性感染症なので、メトロニダゾールなどの治療はパートナーと同時に行うのが原則だ。
医学生医学生
クラミジア頸管炎の膿性は、性感染症なら膿が出てもおかしくないように思えますが。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。黄色から黄緑色で悪臭のある膿性帯下が目立つのは淋菌性頸管炎の特徴だ。クラミジアは女性では無症状のことが多く、症状があっても帯下の軽い増加や不正出血、性交後出血程度にとどまることが多い。粘液膿性の頸管炎を示すこともあるけれど、典型像としては「クラミジアは無症状が多い、膿性は淋菌」と整理しておこう。
医学生医学生
無症状だからこそ気づかれずに上行感染してしまうんですね。
ドクタードクター
その通り。卵管炎や骨盤腹膜炎、肝周囲炎、いわゆるFitz-Hugh-Curtis症候群を起こし、卵管性不妊や異所性妊娠の原因になる。淋菌との重複感染も少なくないから、一方が見つかったらもう一方も調べるのが基本だ。
医学生医学生
まとめると、泡沫状はトリコモナス、酒粕状はカンジダ、膿性は淋菌、細菌性腟症は灰白色〜黄色調で魚臭、萎縮性腟炎は淡血性、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、細菌性腟症の診断にはAmselの基準がある。均質な帯下、pH4.5超、10%KOHを加えるとアミン臭が強まるwhiff test陽性、clue cellのうち3項目以上で診断する。治療はメトロニダゾールで、妊婦では絨毛膜羊膜炎や早産のリスクになるから見逃せない。帯下の性状は問診と内診で得られる身近な情報だからこそ、正確に読み取れるようにしておこう。

まとめ

帯下の色・性状・においは腟炎や頸管炎の原因を推定する重要な手がかりで、腟の自浄作用(エストロゲン→グリコーゲン→乳酸桿菌→酸性pH)の理解が鑑別の土台になります。細菌性腟症は乳酸桿菌の減少と嫌気性菌などの増殖で起こり、灰白色〜黄色調の均質な帯下とアミン臭、clue cell、pH上昇が特徴です。萎縮性腟炎は低エストロゲンによる粘膜の菲薄化で淡血性帯下を生じやすいものの、閉経後の出血では悪性腫瘍の除外が先決です。泡沫状はトリコモナス、酒粕状・ヨーグルト状はカンジダ、膿性帯下は淋菌の特徴で、クラミジアは無症状が多く上行感染による不妊の原因となる点が重要です。こうした対応関係を病態とともに押さえることで、外来での迅速な鑑別、パートナー治療や悪性疾患の除外といった適切な臨床判断につなげることができます。

解答・解説

正解はa, bです

帯下(おりもの)の色・性状・においは、腟炎や頸管炎の原因を推定する最初の手がかりになる。本問は代表的な5疾患について、典型的な帯下の性状を正しく対応づけられるかを問うている。 整理の軸は次の3点である。 1. 腟内の常在菌バランスの破綻(細菌性腟症)か、特定の病原体(カンジダ、トリコモナス、クラミジア、淋菌)による感染か、エストロゲン低下による粘膜の脆弱化(萎縮性腟炎)か。 2. 帯下の性状:酒粕状・ヨーグルト状(カンジダ)、泡沫状(トリコモナス)、灰白色~黄色調で均質・魚臭(細菌性腟症)、淡血性~膿性(萎縮性腟炎)、膿性(淋菌性頸管炎)。 3. 随伴症状:強い瘙痒(カンジダ)、悪臭(細菌性腟症、トリコモナス)、無症状が多い(クラミジア)。 この対応を覚えておけば、「泡沫状」と「酒粕状」が入れ替えられている選択肢や、淋菌の特徴である「膿性」がクラミジアに当てはめられている選択肢を誤りと判断でき、残る細菌性腟症―黄色調と萎縮性腟炎―淡血性が正しい組合せとして残る。

選択肢考察

  1. ○a.  細菌性腟症 ―― 黄色調

    細菌性腟症(bacterial vaginosis:BV)は、腟の自浄作用を担う乳酸桿菌(Lactobacillus、デーデルライン桿菌)が減少し、Gardnerella vaginalis や嫌気性菌などが異常増殖した状態である。特定の病原体による感染ではないため、非特異性腟炎とも呼ばれる。帯下は薄く均質で、灰白色から黄色調を呈し、アミン臭(魚が腐ったようなにおい)を伴うのが特徴である。よって「黄色調」は細菌性腟症の帯下として矛盾せず、正しい組合せである。なお腟内pHは4.5を超えて上昇し、顕微鏡では細菌が表面に密に付着した腟上皮細胞(clue cell)がみられる。

  2. ○b.  萎縮性腟炎 ―― 淡血性

    萎縮性腟炎(老人性腟炎)は、閉経後などの長期の低エストロゲン状態によって腟上皮が薄く萎縮し、グリコーゲンが減って乳酸桿菌が減少、腟内pHが上昇して雑菌が増えやすくなることで起こる非特異性の腟炎である。粘膜が菲薄化してわずかな刺激で出血しやすいため、帯下は黄色~膿性に加えて血液が混じった淡血性となることが多い。したがって正しい組合せである。ただし閉経後の血性帯下では子宮体癌・子宮頸癌との鑑別が必須であり、萎縮性腟炎と決めつけず細胞診などで悪性腫瘍を除外する必要がある。

  3. ×c.  腟カンジダ症 ―― 泡沫状

    腟カンジダ症(主にCandida albicans による)の帯下は、白色で粘稠な酒粕状(カッテージチーズ様)あるいはヨーグルト状であり、外陰部の強い瘙痒感を伴うのが典型である。においは乏しく、腟内pHは正常(4.5以下)にとどまることが多い。泡沫状帯下はトリコモナス腟炎の特徴であり、本組合せは誤りである。

  4. ×d.  クラミジア頸管炎 ―― 膿性

    Chlamydia trachomatis による子宮頸管炎は、女性では無症状のことが多く(半数以上とされる)、症状があっても帯下の軽度増加(漿液性~粘液性、ときに淡血性)や不正出血、性交後出血程度にとどまることが多い。そのため自覚されないまま上行感染して卵管炎・骨盤腹膜炎・肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)を起こし、卵管性不妊や異所性妊娠の原因となる。黄色~黄緑色で悪臭のある膿性帯下が目立つのは淋菌(Neisseria gonorrhoeae)性頸管炎の特徴であり、クラミジアの典型的な帯下としては誤りである。

  5. ×e.  トリコモナス腟炎 ―― 酒粕状

    トリコモナス腟炎は原虫Trichomonas vaginalis による性感染症で、帯下は淡黄色~黄緑色の泡沫状で悪臭を伴い、外陰部の瘙痒感や灼熱感がみられる。腟・子宮腟部に点状出血が生じ、いちご状(strawberry cervix)と表現されることがある。酒粕状帯下は腟カンジダ症の特徴であり、本組合せは誤りである。

主な腟炎・頸管炎と帯下の特徴

・細菌性腟症:灰白色~黄色調、薄く均質、アミン臭(魚臭)。瘙痒は軽い。pH>4.5、clue cell。診断にはAmselの基準(均質な帯下、pH>4.5、10%KOH添加でアミン臭が強まるwhiff test陽性、clue cellの存在のうち3項目以上)やグラム染色によるNugentスコアが用いられる。治療はメトロニダゾール。妊婦では絨毛膜羊膜炎や早産のリスクとなる。 ・腟カンジダ症:白色の酒粕状・ヨーグルト状、強い瘙痒。pHは正常範囲。抗菌薬使用、妊娠、糖尿病、ステロイド・免疫抑制薬使用が誘因。治療は抗真菌薬(イミダゾール系腟錠など)。 ・トリコモナス腟炎:黄色~黄緑色の泡沫状、悪臭、瘙痒・灼熱感。pH上昇。鏡検で運動する原虫を確認。性感染症であり、治療はメトロニダゾールなどのニトロイミダゾール系薬をパートナーと同時に行う。 ・萎縮性腟炎:黄色~膿性、しばしば淡血性。性交痛、腟の乾燥感。治療はエストロゲン腟錠など。閉経後の出血では悪性腫瘍の除外が重要。 ・クラミジア頸管炎:無症状が多い。帯下は軽度増加(漿液性~粘液性)。上行感染による骨盤内炎症性疾患(PID)、肝周囲炎、不妊の原因。診断は核酸増幅法、治療はアジスロマイシンやドキシサイクリンなど。 ・淋菌性頸管炎:黄色~黄緑色の膿性帯下、悪臭。クラミジアとの重複感染が少なくない。治療はセフトリアキソンなど。

正常の帯下と腟の自浄作用

エストロゲンの作用で腟上皮にグリコーゲンが蓄えられ、これを乳酸桿菌が分解して乳酸を産生し、腟内をpH3.8~4.5程度の酸性に保つ。この仕組みが崩れると細菌性腟症や萎縮性腟炎が起こりやすくなる。

POINT

・泡沫状=トリコモナス、酒粕状・ヨーグルト状=カンジダ(入れ替えのひっかけが頻出)。 ・細菌性腟症は灰白色~黄色調の均質な帯下、アミン臭、clue cell、pH上昇。 ・萎縮性腟炎は淡血性帯下を生じやすいが、閉経後の出血では悪性腫瘍の除外が先決。 ・膿性帯下が目立つのは淋菌、クラミジアは無症状が多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。