StudyMed医師国家試験

栄養は全科共通の「治療」―NSTは病院を横断して患者のベッドサイドへ

第108回医師国家試験 H問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第108回 H問題 第17問

栄養サポートチーム〈NST〉について正しいのはどれか。

  1. a.診療科単位で組織する。
  2. b.医師はチームに加わらない。
  3. c.チームは患者に直接は接触しない。
  4. d.中心静脈栄養の患者にも関与する。
  5. e.栄養投与経路の変更に際して担当医の許諾は不要である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は栄養サポートチーム、いわゆるNSTの基本的な性格を問う問題だ。ポイントは「誰が参加して」「どこまでを対象に」「どんな立場で」動くチームなのか、の3つ。これを押さえれば選択肢は自然に絞れるよ。まず、NSTはどんな単位で組織されると思う?
医学生医学生
消化器外科の病棟で見たことがあるので、外科の中のチームなのかと思っていました。
ドクタードクター
そう見えることもあるけれど、実は違う。低栄養は内科でも外科でも小児科でも、どの診療科の入院患者にも起こりうる問題だよね。だからNSTは特定の診療科に属さず、病院全体を横断して活動するチームなんだ。主治医からの依頼や、入院時の栄養スクリーニングで引っかかった患者に、病棟を問わず介入する。
医学生医学生
なるほど、感染対策チームや緩和ケアチームと同じ「横断型」なんですね。では、構成メンバーは管理栄養士さんが中心ですか。
ドクタードクター
管理栄養士はもちろん中核だけど、医師もチームに欠かせない。むしろ医師が責任者を務めるのが一般的だ。病態の評価や、中心静脈カテーテルの挿入、胃瘻造設の適応判断など、医師でないとできない判断が栄養療法にはたくさんあるからね。看護師、薬剤師、管理栄養士が中核で、必要に応じて言語聴覚士や歯科医師、歯科衛生士、臨床検査技師なども加わる。
医学生医学生
チーム医療の講義で「多職種連携」と習いましたが、医師を外したら連携になりませんね。ただ、NSTはカルテを見て助言するだけで、患者さんには直接会わないイメージがありました。
ドクタードクター
それもよくある誤解だね。体重や上腕周囲長の測定、浮腫や褥瘡の有無、嚥下の様子、食欲や好みの聞き取りなどは、ベッドサイドで患者を直接診て初めてわかる。だからNSTはNST回診を行って患者に直接接し、本人や家族への栄養指導もする。カルテだけで済ませるチームではないんだ。
医学生医学生
そうすると、正しいのは中心静脈栄養の患者にも関与する、ですね。でも、NSTは食事や経腸栄養が専門で、点滴は主治医の領域かと少し迷いました。
ドクタードクター
正解だよ。NSTは経口摂取、経腸栄養、末梢静脈栄養、中心静脈栄養のすべてを対象にする。歴史的には、むしろ中心静脈栄養がきっかけで生まれたチームなんだ。1970年代の米国で高カロリー輸液が普及したとき、適正な処方とカテーテル関連血流感染、高血糖や電解質異常、肝機能障害といった合併症を防ぐ目的でNSTがつくられた経緯がある。
医学生医学生
輸液の組成を整えるだけでなく、腸が使えるなら経腸栄養への切り替えを提案することもあるんでしょうか。
ドクタードクター
その通り。「腸が機能していれば腸を使う」が栄養療法の大原則だ。腸管粘膜の萎縮やバクテリアル・トランスロケーションを防ぎ、合併症やコストの面でも有利だからね。では最後の選択肢、投与経路を変えるときに担当医の許諾は要らない、はどうかな。
医学生医学生
専門チームが判断したなら任せてもよさそうですが……やはり主治医の同意は必要ですよね。
ドクタードクター
必要だね。NSTはあくまで主治医に提案し支援する立場で、診療の最終責任と決定権は主治医にある。経口から経腸へ、静脈から経腸へといった経路変更は、原疾患の治療計画や胃瘻造設などの侵襲的処置、患者や家族の意向にも関わる大きな変更だ。主治医と協議し、患者に説明したうえで行う必要がある。
医学生医学生
まとめると、多職種で診療科横断、患者に直接関わる、全ての栄養療法が対象、最終決定は主治医、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、栄養管理の流れも押さえておこう。スクリーニングでSGA(主観的包括的評価)やMNA(簡易栄養状態評価)などを用いてリスク患者を拾い、アセスメント、計画立案、実施、モニタリングと再評価を繰り返す。投与経路は、経腸栄養が短期なら経鼻胃管、長期なら胃瘻を考え、消化管が使えなければ静脈栄養で、長期や高カロリーが必要なら中心静脈栄養を選ぶ。
医学生医学生
臨床実習で、術後の患者さんが中心静脈栄養から経腸栄養に移ってぐっと元気になったのを見ました。あの裏でNSTが動いていたのかもしれません。
ドクタードクター
きっとそうだね。日本では2000年代にNSTが全国に広がり、2010年度の診療報酬改定で栄養サポートチーム加算も新設された。研修医になったら、栄養を「点滴の残り物」ではなく治療の一部として考え、NSTを積極的に頼ってほしい。

まとめ

栄養サポートチーム(NST)は、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などの多職種で構成され、診療科の枠を超えて病院全体の患者を対象に活動する横断的チームです。NST回診で患者に直接接して栄養評価や指導を行い、経口摂取・経腸栄養から末梢・中心静脈栄養まで、すべての栄養療法に関与します。もともと中心静脈栄養の適正使用と合併症予防を目的に誕生した経緯があり、「腸が機能していれば腸を使う」原則に基づく経腸栄養への移行提案も重要な役割です。一方でNSTは主治医への提案・支援を行う立場であり、投与経路の変更などは担当医の同意と患者への説明を経て行います。チーム医療における各職種の役割と責任の所在を理解することは、臨床現場で多職種と協働するための基礎となります。

解答・解説

正解はdです

栄養サポートチーム(NST:nutrition support team)は、入院患者の栄養状態を評価し、最適な栄養管理を提案・実施するために、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などの多職種が集まって編成するチームである。栄養管理はどの診療科の患者にも共通する基本的な医療行為であるため、NSTは特定の診療科に属さず、病院全体を横断して活動する(診療科横断的チーム医療)のが特徴である。 活動の流れはおおむね次のとおりである。まず入院時に栄養スクリーニングを行って低栄養やそのリスクのある患者を抽出し、身体計測・血液検査・食事摂取量などから栄養評価(アセスメント)を行う。次にNST回診やカンファレンスで患者を直接診察し、必要エネルギー量、栄養素の組成、投与経路(経口・経腸・静脈)などを検討して、主治医に栄養管理計画を提案する。実施後は効果を再評価(モニタリング)し、計画を修正していく。 このように、NSTは①多職種・診療科横断で構成され、②患者に直接関わり、③経口摂取から経腸栄養・中心静脈栄養まで全ての栄養療法を対象とし、④最終的な治療方針の決定は主治医と協議して行う、という4点を押さえれば、本問の各選択肢は判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  診療科単位で組織する。

    誤り。栄養障害は内科・外科・小児科などあらゆる診療科の患者に起こりうる問題であり、NSTは診療科の枠を超えて病院全体を対象に活動する横断的チームとして組織される。各診療科の主治医から依頼を受けたり、スクリーニングで抽出された患者に介入したりして、全病棟の患者を支援するのが一般的な形である。

  2. ×b.  医師はチームに加わらない。

    誤り。医師はNSTの中心的な構成員であり、通常はチームの責任者(チェアマン、ディレクター)を務める。栄養療法には病態の評価、中心静脈カテーテルの挿入・管理、胃瘻造設の適応判断など医師の判断を要する事項が多いためである。医師のほか、看護師、薬剤師、管理栄養士が中核メンバーとなり、必要に応じて歯科医師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、歯科衛生士なども参加する。

  3. ×c.  チームは患者に直接は接触しない。

    誤り。適切な栄養評価には、体重・上腕周囲長などの身体計測、浮腫や褥瘡の有無、嚥下機能、消化器症状、食欲や食事の嗜好の聴取など、患者を直接診察して初めて得られる情報が欠かせない。そのためNSTは病棟回診(NST回診)を行って患者のベッドサイドで評価し、患者・家族への栄養指導も行う。カルテ上の情報だけで助言するチームではない。

  4. ○d.  中心静脈栄養の患者にも関与する。

    正しい。NSTは経口摂取、経腸栄養(経鼻胃管、胃瘻・腸瘻)、末梢静脈栄養、中心静脈栄養(TPN:total parenteral nutrition)のすべてを対象とする。そもそもNSTは、1970年代に米国で中心静脈栄養法が普及した際、高カロリー輸液の適正な処方やカテーテル関連血流感染・代謝合併症(高血糖、電解質異常、肝機能障害など)の予防を目的として誕生した経緯がある。中心静脈栄養患者への関与には、輸液組成の最適化に加え、腸管が使える場合には「腸が機能していれば腸を使う」という原則に基づき経腸栄養への移行を提案することも含まれる。

  5. ×e.  栄養投与経路の変更に際して担当医の許諾は不要である。

    誤り。NSTはあくまで主治医(担当医)に対して栄養管理の助言・提案を行う支援チームであり、患者の診療に対する最終的な責任と決定権は主治医にある。経口から経腸栄養へ、あるいは静脈栄養から経腸栄養へといった投与経路の変更は、原疾患の病態や治療計画、侵襲的処置の要否、患者・家族の意向にかかわる重要な変更であるため、担当医の同意を得て、患者への説明を経たうえで行う必要がある。

NSTの主な構成職種と役割

医師:病態評価、栄養療法の方針決定、チームの統括、カテーテル・胃瘻などの処置 看護師:日々の摂取量・体重・症状の観察、スクリーニング、投与管理、口腔ケア 薬剤師:輸液・経腸栄養剤の組成設計、薬剤と栄養剤の相互作用・配合変化の確認 管理栄養士:必要栄養量の算出、食事内容の調整、栄養指導 臨床検査技師:アルブミン、トランスサイレチン(プレアルブミン)などの栄養指標の提供 言語聴覚士・歯科医師・歯科衛生士:嚥下機能評価、摂食嚥下訓練、口腔機能の管理

栄養管理のプロセス

栄養スクリーニング(SGA〈主観的包括的評価〉、MNA〈簡易栄養状態評価〉など)→栄養アセスメント→栄養管理計画の立案→実施→モニタリング・再評価。

投与経路選択の原則

消化管が機能していれば経口摂取・経腸栄養を優先する(腸管粘膜の萎縮やバクテリアル・トランスロケーションの予防、合併症やコストの面で有利)。経腸栄養が短期間(おおむね4〜6週以内)なら経鼻胃管、長期なら胃瘻などを考慮する。消化管が使えない場合に静脈栄養を選び、短期なら末梢静脈栄養、長期(おおむね2週以上)や高カロリーが必要なら中心静脈栄養を用いる。

制度面

日本では2000年代にNSTが全国の病院に急速に普及し、2010年度の診療報酬改定で「栄養サポートチーム加算」が新設された。算定には医師・看護師・薬剤師・管理栄養士からなる専任チームの設置が求められている。

POINT

・NSTは医師を含む多職種で構成し、診療科の枠を超えて病院横断的に活動する。 ・NST回診などで患者に直接接して栄養評価・指導を行う。 ・対象は経口・経腸・末梢静脈・中心静脈栄養のすべて。NSTは中心静脈栄養の普及とともに誕生した。 ・NSTは主治医への提案・支援を行う立場であり、投与経路の変更などは担当医の同意を得て行う。 ・消化管が使えるなら経腸栄養を優先するのが栄養療法の原則。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。