StudyMed医師国家試験

生後24時間以内の黄疸は待ったなし―早発黄疸から血液型不適合を見抜く

第108回医師国家試験 G問題 第44問

国試問題にチャレンジ

第108回 G問題 第44問

生後1日の新生児。在胎39週,2,980 gで出生した。生後12時間から黄疸が目立つようになり,生後22時間における血清総ビリルビン値は20.4 mg/dL(基準12以下)であった。  考えられるのはどれか。

  1. a.新生児肝炎
  2. b.胆道閉鎖症
  3. c.血液型不適合
  4. d.Gilbert症候群
  5. e.Crigler-Najjar症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は新生児黄疸の原因を考える問題だ。新生児の黄疸は「いつ出たか」と「どれくらいの速さで上がったか」で整理するのが鉄則。この症例はどちらの点でも生理的な範囲を大きく外れている。まず、正常な新生児の黄疸はいつ頃見え始めるか覚えているかな。
医学生医学生
生理的黄疸は生後2〜3日で出てきて、4〜5日でピーク、1〜2週で消える、と小児科の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。それと比べると、この子は生後半日で黄疸が目立ち、1日も経たないうちに総ビリルビンが基準を大きく超えている。生後24時間以内に出る黄疸を早発黄疸と呼んで、これは必ず病的と考える。正期産で体重も適正だから、早産による増強要因もないね。
医学生医学生
これだけ急に上がるということは、ビリルビンを処理できないというより、作られる量が急に増えているということでしょうか。
ドクタードクター
鋭いね。まさにそこが核心だ。短時間でこれほどビリルビンが増えるのは、赤血球が大量に壊されている状態、つまり溶血を考えるのが自然なんだ。そして新生児早期の溶血で最も頻度が高く重要なのが、母児間の血液型不適合。だから答えは血液型不適合になる。
医学生医学生
仕組みとしては、お母さんの抗体が赤ちゃんの赤血球を攻撃するんですよね。
ドクタードクター
そう。母体が胎児の赤血球抗原に対するIgG抗体を持っていると、IgGは胎盤を通過できるので、胎児の赤血球に結合して溶血を起こす。お腹の中にいる間は、できた間接ビリルビンを胎盤経由で母体が処理してくれる。ところが生まれた瞬間にその処理ルートが断たれ、未熟な新生児の肝臓では追いつかず、一気に蓄積するんだ。
医学生医学生
なるほど、だから生まれてすぐに急上昇するんですね。ABO不適合とRh不適合ではどちらが多いんですか。
ドクタードクター
頻度が高いのはABO不適合で、母がO型、児がA型かB型の組み合わせが典型だ。O型の母はもともとIgG型の抗A・抗B抗体を持ちうるので、第1子から起こりうる。ただ新生児赤血球のA・B抗原は発現が弱いこともあって、比較的軽症で済むことが多い。一方、重症化しやすいのはRh(D)不適合で、感作された母体の第2子以降で問題になり、胎児水腫や重い貧血をきたすこともある。
医学生医学生
産婦人科の実習で、Rh陰性の妊婦さんに抗Dグロブリンを打つと聞きました。あれが感作予防ですね。
ドクタードクター
そう、妊娠28週前後と分娩後72時間以内に投与するのが基本だね。では、ほかの選択肢を確認しよう。新生児肝炎と胆道閉鎖症はどうかな。
医学生医学生
どちらも胆汁うっ滞なので、直接ビリルビンが上がるタイプですよね。白っぽい便が出る、というのも特徴だったと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。どちらも直接ビリルビン優位で、生後2週を過ぎても黄疸が続く遷延性黄疸として問題になる。特に胆道閉鎖症は、生理的黄疸に紛れて始まり、消えるはずの時期を過ぎても黄疸が強まっていくのが典型で、灰白色便が大きな手がかりになる。生後1日で急上昇する早発黄疸とは時期も性質も合わない。葛西手術は生後60日以内が望ましいので、便色カードでの早期発見が重視されているよ。
医学生医学生
Gilbert症候群とCrigler-Najjar症候群は、どちらもビリルビンの抱合酵素の異常でしたよね。間接ビリルビンが上がる点は同じなので、少し迷いました。
ドクタードクター
迷うのは自然だ。どちらもUGT1A1というグルクロン酸抱合酵素の異常による体質性黄疸だね。Gilbert症候群は活性が軽く低下しているだけで、ビリルビンはごく軽度の上昇にとどまり、思春期以降に空腹や疲労をきっかけに気づかれることが多い。生後1日で20mg/dLを超えるような病態ではない。
医学生医学生
Crigler-Najjar症候群のI型は新生児期から重症になると聞いたので、こちらは可能性がありそうに思えました。
ドクタードクター
そこはいい引っかかりだね。I型は酵素が完全に欠損していて、確かに新生児期から高度の間接ビリルビン血症になり、ビリルビン脳症を起こしうる。ただ非常にまれで、しかも産生が増えるわけではなく、処理できないビリルビンが日を追って溜まっていく経過をとるのが一般的だ。生後24時間以内の急激な上昇で最初に考えるべきは、やはり溶血なんだ。
医学生医学生
「早発黄疸なら溶血、溶血ならまず血液型不適合」、「遷延性で直接ビリルビン優位なら胆汁うっ滞」と、時期とビリルビンの種類で分ければいいんですね。
ドクタードクター
完璧な整理だ。最後に臨床での注意点。新生児で間接ビリルビンが高度に上がると、血液脳関門を越えて大脳基底核などに沈着し、ビリルビン脳症、いわゆる核黄疸を起こす。急性期は筋緊張低下や哺乳力低下、嗜眠で始まり、進むと後弓反張や甲高い泣き声が出てくる。後遺症としてアテトーゼ型脳性麻痺や感音難聴を残すこともあるから、絶対に見逃せない。
医学生医学生
検査や治療はどう進めるんですか。新生児科の実習では、青い光の中で寝ている赤ちゃんをよく見かけました。
ドクタードクター
それが光線療法だね。まず母児の血液型の確認、児の直接Coombs試験、網赤血球や貧血の評価を行う。ただしABO不適合では直接Coombs試験が弱陽性や陰性のこともあるので、陰性だけで否定しないよう注意しよう。治療の基本は光線療法で、ビリルビンを水溶性の異性体に変えて排泄させる。基準を超える例や上昇が急な例では交換輸血を行い、免疫グロブリン大量静注療法が補助的に使われることもある。この症例のようなスピードなら、時間単位での判断が求められるよ。

まとめ

生後24時間以内に出現する黄疸(早発黄疸)は必ず病的であり、急速なビリルビン上昇はビリルビン産生の急増、すなわち溶血を示唆するため、まず母児間の血液型不適合による新生児溶血性疾患を考えます。母体のIgG抗体が胎盤を通過して児の赤血球を破壊し、出生後は胎盤による処理がなくなるため間接ビリルビンが急速に蓄積します。頻度が高いのはABO不適合(母O型・児A/B型)、重症化しやすいのはRh(D)不適合で、後者には抗Dヒト免疫グロブリンによる感作予防が行われます。新生児肝炎や胆道閉鎖症は直接ビリルビン優位の遷延性黄疸、Gilbert症候群は軽度の間接ビリルビン上昇、Crigler-Najjar症候群は極めてまれで処理障害による漸増型と、発症時期とビリルビンの種類で鑑別できます。ビリルビン脳症を防ぐために光線療法や交換輸血の適応を迅速に判断することは、新生児診療の最も基本的かつ重要な技能の一つです。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・在胎39週、出生体重2,980 g:正期産で体重も適正な、いわゆる成熟新生児である。早産や低出生体重に伴う黄疸の増強要因はない。 ・生後12時間から黄疸が目立つ:肉眼的に黄疸が見えるのは血清総ビリルビンがおよそ5 mg/dL以上になってからであり、生後半日で既に可視的黄疸がある点が異常である。 ・生後22時間で血清総ビリルビン20.4 mg/dL:生後24時間以内に基準(12 mg/dL)を大きく超えており、1時間あたりほぼ1 mg/dL近いペースで上昇したことになる。

診断へのプロセス

新生児の黄疸は、発症時期と経過で整理すると鑑別しやすい。 ・生理的黄疸:生後2~3日で見え始め、4~5日頃にピークとなり、1~2週で消える。 ・早発黄疸:生後24時間以内に出現する黄疸。生理的範囲を逸脱した病的黄疸であり、まず溶血性疾患を考える。 ・遷延性黄疸:生後2週(早産児では3週)を過ぎても続く黄疸。母乳性黄疸、胆汁うっ滞性疾患(胆道閉鎖症、新生児肝炎など)、甲状腺機能低下症などを考える。 本症例は典型的な早発黄疸であり、しかも上昇速度が非常に速い。これほど急激にビリルビンが増えるのは、赤血球が大量に壊されてビリルビン産生が急増している状態、すなわち溶血を想定するのが自然である。新生児早期の溶血の原因として最も頻度が高く重要なのが、母児間の血液型不適合による新生児溶血性疾患である。

設問への考え方

「生後24時間以内の黄疸=溶血(特に血液型不適合)をまず疑う」という原則を当てはめれば正解に至る。一方、選択肢のうち胆汁うっ滞性疾患は直接ビリルビン優位で遷延性黄疸として現れること、体質性黄疸は頻度・発症年齢・重症度が合わないことを確認して除外する。

選択肢考察

  1. ×a.  新生児肝炎

    新生児肝炎は原因の特定できない肝内胆汁うっ滞であり、直接(抱合型)ビリルビン優位の黄疸が生後2週以降も続く遷延性黄疸として問題になる。灰白色便や肝腫大を伴うこともある。生後1日以内に20 mg/dLを超えるような急激な間接ビリルビン上昇を起こす病態ではない。

  2. ×b.  胆道閉鎖症

    胆道閉鎖症は肝外胆管が閉塞する疾患で、直接ビリルビン優位の黄疸、灰白色便、濃い尿、肝腫大を呈する。黄疸は生理的黄疸に紛れて始まり、生理的黄疸が消えるはずの時期を過ぎても消えずに徐々に強まる(遷延性黄疸)のが典型で、生後1か月前後で気づかれることが多い。出生直後から急激にビリルビンが上昇する早発黄疸の原因にはならない。なお、葛西手術(肝門部空腸吻合術)は生後60日以内に行うのが望ましく、便色カードによる早期発見が重視されている。

  3. ○c.  血液型不適合

    母体が胎児の赤血球抗原に対するIgG抗体を持っていると、その抗体が胎盤を通過して胎児・新生児の赤血球に結合し、溶血を引き起こす。溶血で生じた大量の非抱合型(間接)ビリルビンは、出生前は胎盤を介して母体が処理してくれるが、出生後は未熟な新生児の肝臓で処理しきれず、生後24時間以内に急速に蓄積する。本症例の「生後12時間で黄疸が目立ち、22時間で20 mg/dLを超える」という経過は、この溶血性の早発黄疸に合致する。原因としてはABO不適合(母O型・児A型またはB型)が最多で、重症化しやすいのはRh(D)不適合である。放置すると間接ビリルビンが脳に沈着してビリルビン脳症(核黄疸)を起こすため、光線療法や交換輸血による速やかな治療が必要である。

  4. ×d.  Gilbert症候群

    Gilbert症候群は、ビリルビンをグルクロン酸抱合する酵素(UGT1A1:UDP-グルクロン酸転移酵素)の活性が軽度に低下している体質性黄疸である。間接ビリルビン優位だが、血清総ビリルビンは通常5 mg/dL未満程度の軽度上昇にとどまり、思春期以降に空腹・疲労・感染などを契機に気づかれることが多い。予後良好で治療は不要であり、生後1日で20 mg/dLに達するような重症黄疸の原因とはならない。

  5. ×e.  Crigler-Najjar症候群

    Crigler-Najjar症候群はUGT1A1の活性が高度に低下(Ⅱ型)または完全に欠損(Ⅰ型)する常染色体潜性(劣性)遺伝の体質性黄疸で、新生児期から間接ビリルビン優位の高ビリルビン血症を示す。特にⅠ型は総ビリルビンが20 mg/dL以上に達しビリルビン脳症を起こしうるため、新生児黄疸の鑑別として注意が必要である。ただし極めてまれな疾患であり、ビリルビンの産生自体が増えるわけではないため、生後数時間で急激に上昇するというより、抱合できないビリルビンが日を追って蓄積していく経過をとる。成熟新生児の生後24時間以内の急激な黄疸で最初に考えるべきは溶血であり、本症例ではまず血液型不適合を考える。

新生児のビリルビン代謝と黄疸が起こりやすい理由

・赤血球数が多く(多血傾向)、胎児赤血球の寿命が成人より短い(約70~90日)ため、ビリルビン産生量が多い。 ・肝臓のUGT1A1活性が未熟で、抱合能力が低い。 ・腸内細菌叢が未発達で、腸管内のβ-グルクロニダーゼにより抱合型ビリルビンが脱抱合されて再吸収される(腸肝循環の亢進)。 これらにより、正常の新生児でも生理的黄疸が生じる。

病的黄疸を疑う目安

・生後24時間以内に出現する(早発黄疸) ・血清総ビリルビンの上昇速度が速い(1日5 mg/dL以上など) ・血清総ビリルビンが基準値(光線療法基準)を超える ・直接ビリルビンが高い(胆汁うっ滞の示唆) ・黄疸が2週間以上続く(遷延性黄疸)

血液型不適合による新生児溶血性疾患

・ABO不適合:母がO型で児がA型またはB型の場合に多い。O型の母は元々IgG型の抗A・抗B抗体を持ちうるため、第1子から発症しうる。頻度は高いが、新生児赤血球上のA・B抗原の発現が弱いことなどから、比較的軽症のことが多い。 ・Rh(D)不適合:Rh(D)陰性の母がRh(D)陽性の胎児を妊娠した場合、分娩時などに胎児血が母体へ入り母体が感作される。通常、第2子以降で重症化し、胎児水腫や重度の貧血をきたすことがある。感作予防のため、妊娠28週前後と分娩後72時間以内に抗Dヒト免疫グロブリンを母体に投与する。 ・検査:児の直接Coombs試験(直接抗グロブリン試験)陽性、網赤血球増加、貧血、間接ビリルビン優位の上昇。ABO不適合では直接Coombs試験が弱陽性~陰性のこともある。 ・治療:光線療法(ビリルビンを水溶性の異性体に変えて胆汁・尿中に排泄させる)が基本。基準を超える重症例や急速進行例では交換輸血を行う。免疫グロブリン大量静注療法が補助的に用いられることもある。

ビリルビン脳症(核黄疸)

血液脳関門を通過した非抱合型ビリルビンが大脳基底核などに沈着して起こる。急性期には筋緊張低下、哺乳力低下、嗜眠、その後の筋緊張亢進・後弓反張・甲高い泣き声などがみられ、後遺症としてアテトーゼ型脳性麻痺、感音難聴、上方注視麻痺などを残す。

体質性黄疸の整理

・間接ビリルビン優位:Gilbert症候群(軽症・頻度高い)、Crigler-Najjar症候群Ⅰ型(重症・UGT1A1完全欠損・フェノバルビタール無効)、Ⅱ型(中等症・フェノバルビタールで低下) ・直接ビリルビン優位:Dubin-Johnson症候群(肝に黒色色素沈着)、Rotor症候群

POINT

・生後24時間以内の黄疸(早発黄疸)は病的であり、まず母児間血液型不適合による溶血を考える。 ・頻度はABO不適合(母O型・児A/B型)が多く、重症化しやすいのはRh(D)不適合。 ・新生児肝炎・胆道閉鎖症は直接ビリルビン優位の遷延性黄疸(生後2週以降)が典型。 ・Gilbert症候群は軽度の間接ビリルビン上昇で、思春期以降に気づかれる良性疾患。 ・Crigler-Najjar症候群Ⅰ型は新生児期に重症の間接ビリルビン血症をきたしうるが、まれ。 ・高度の間接ビリルビン血症はビリルビン脳症を起こすため、光線療法・交換輸血で速やかに治療する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。