光が効く黄疸、効かない黄疸―「間接か直接か」で決まる新生児光線療法
第113回医師国家試験 D問題 第12問
国試問題にチャレンジ
新生児期に光線療法の対象となる黄疸を生じるのはどれか。
- a.新生児肝炎
- b.胆道閉鎖症
- c.先天性胆道拡張症
- d.ABO血液型不適合
- e.Dubin-Johnson症候群
対話形式の解説
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ドクターまとめ
光線療法は、脂溶性で核黄疸の原因となる間接(非抱合型)ビリルビンを、光によって水溶性の光異性体に変えて排泄させる治療であり、間接ビリルビン優位の黄疸が対象となります。ABO血液型不適合(多くは母O型・児A型またはB型)では、母体のIgG型抗A・抗B抗体が胎盤を通過して溶血を起こし、第1子でも早発黄疸をきたしうるため、光線療法の代表的な対象です。一方、胆道閉鎖症、新生児肝炎、先天性胆道拡張症、Dubin-Johnson症候群はいずれも胆汁の排泄や流れの障害による直接ビリルビン優位の黄疸で、光線療法は無効なうえブロンズベビー症候群を起こしえます。直接ビリルビン優位の黄疸や灰白色便を見たら、まず胆道閉鎖症を念頭に置き、早期の葛西手術につなげることが重要です。ビリルビン代謝の流れを理解しておくと、黄疸の原因の仕分けと治療選択を論理的に導けるようになります。
解答・解説
正解はdです
問われていること
光線療法の対象となるのは、間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)が上昇する黄疸である。本問は、選択肢の各疾患でどちらのビリルビンが上昇するかを判断する問題である。
ビリルビン代謝と光線療法の原理
赤血球が壊れて出たヘモグロビンは、ヘムを経てビリルビンになる。これは水に溶けにくい間接ビリルビンで、アルブミンに結合して肝臓へ運ばれる。肝細胞ではUGT1A1(ウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素)によってグルクロン酸抱合を受け、水溶性の直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)となって胆汁中に排泄される。 間接ビリルビンは脂溶性のため、アルブミンから外れた遊離型が血液脳関門を通って大脳基底核などに沈着し、ビリルビン脳症(核黄疸)を起こす危険がある。光線療法では青〜青緑色の光(波長およそ460〜490nm)を皮膚に当て、皮膚の毛細血管内の間接ビリルビンを光異性体(とくに構造異性体のルミルビン)に変える。光異性体は水溶性なので、抱合を受けずに胆汁や尿へ排泄される。
直接ビリルビン上昇に光線療法が使えない理由
直接ビリルビンはすでに水溶性で、脳に沈着しにくく核黄疸の原因にならない。また光線療法は抱合・排泄の障害や胆道の閉塞を治すものではないため、効果がない。むしろ直接ビリルビンが高い児に光線を当てると、皮膚が灰褐色になるブロンズベビー症候群をきたすことがある。直接ビリルビン優位の黄疸では、光線療法ではなく原因(胆道閉鎖症、肝炎、感染症、代謝異常など)を調べることが重要である。
選択肢の整理
新生児肝炎、胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、Dubin-Johnson症候群は、いずれも肝細胞から胆汁への排泄、または胆汁の流れが障害されるため、直接ビリルビンが上昇する。ABO血液型不適合は溶血によってビリルビンが過剰に作られる病態であり、間接ビリルビンが上昇する。したがって光線療法の対象となるのはABO血液型不適合である。
選択肢考察
- ×a. 新生児肝炎
新生児肝炎は、新生児・乳児期に原因不明の肝内胆汁うっ滞をきたす病態の総称である。肝細胞の障害によって胆汁中への排泄が滞り、直接ビリルビン優位の高ビリルビン血症となる。灰白色便や濃い色の尿がみられることもあり、胆道閉鎖症との鑑別が問題になる。直接ビリルビンの上昇なので光線療法の対象ではない。
- ×b. 胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、肝外胆管が炎症によって進行性に閉塞する疾患である。胆汁が腸へ流れないため、直接ビリルビンが上昇する。遷延する黄疸、灰白色便、濃い色の尿、肝腫大が特徴である。光線療法は無効で、生後60日以内を目安に早期の葛西手術(肝門部空腸吻合術)を行うことが予後を左右する。母子健康手帳の便色カードは早期発見のための道具である。
- ×c. 先天性胆道拡張症
先天性胆道拡張症は、総胆管を中心とする胆管が嚢胞状または紡錘状に拡張する先天異常で、膵・胆管合流異常をほぼ全例で伴う。胆汁の流れが滞るため、閉塞性の黄疸、つまり直接ビリルビンの上昇をきたす。腹痛・黄疸・腹部腫瘤が古典的な3徴である。治療は拡張胆管の切除と胆道再建であり、光線療法の対象ではない。
- ○d. ABO血液型不適合
母親がO型で児がA型またはB型の組み合わせで起こることが多い。O型の母親はもともとIgG型の抗A・抗B抗体をもつことがあり、IgGは胎盤を通るため、児の赤血球が溶血する。このため、Rh不適合と違って第1子でも起こりうる。溶血でビリルビンが過剰に作られ、新生児の肝臓の抱合能力を超えるため、間接ビリルビンが上昇する。生後24時間以内に現れる早発黄疸の代表的な原因である。重症度はRh(D)不適合より一般に軽く、多くは光線療法で管理できるが、重症例では交換輸血が必要となる。
- ×e. Dubin-Johnson症候群
Dubin-Johnson症候群は常染色体劣性遺伝の体質性黄疸である。毛細胆管膜の輸送体MRP2(遺伝子はABCC2)の異常によって、抱合されたビリルビンを胆汁中へ排泄できず、直接ビリルビン優位の高ビリルビン血症となる。肝細胞に黒褐色の色素が沈着し、肝臓が黒っぽくなる(黒色肝)。予後は良好で、光線療法の対象ではない。
新生児の黄疸が起こりやすい理由
新生児は(1)赤血球が多く、寿命も短い(約70〜90日)ためビリルビンが多く作られる、(2)肝臓のUGT1A1活性が低い、(3)腸肝循環が盛ん(腸内細菌が少なく、腸管内のβ-グルクロニダーゼで抱合が外れて再吸収される)、という理由から、生理的にも間接ビリルビンが上がりやすい。生理的黄疸は生後2〜3日に現れ、4〜5日でピークとなり、1〜2週で消える。
病的黄疸を疑う所見
・生後24時間以内に現れる黄疸(早発黄疸):溶血性疾患を考える。 ・血清総ビリルビン値が日齢・出生体重ごとの基準を超えて上昇する。 ・成熟児で2週間以上、早産児で3週間以上続く黄疸(遷延性黄疸)。 ・直接ビリルビンの上昇(目安として1.0〜1.5mg/dLを超える、または総ビリルビンの10〜20%を超える)。
原因の整理
間接ビリルビン優位:血液型不適合(Rh、ABOなど)、遺伝性球状赤血球症などの赤血球膜異常、G6PD欠損症・ピルビン酸キナーゼ欠損症などの赤血球酵素異常、多血症、頭血腫・帽状腱膜下血腫などの閉鎖腔出血、母乳性黄疸、先天性甲状腺機能低下症、Crigler-Najjar症候群、Gilbert症候群、腸閉塞などによる腸肝循環の亢進。 直接ビリルビン優位:胆道閉鎖症、新生児肝炎、先天性胆道拡張症、敗血症、先天性感染症(TORCH:トキソプラズマ、風疹、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、梅毒など)、代謝異常(ガラクトース血症、シトリン欠損症など)、Alagille症候群、Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群。
光線療法と交換輸血の適応
日本では、出生体重と日齢ごとに、血清総ビリルビン値とアンバウンドビリルビン(アルブミンと結合していない遊離ビリルビン)値の基準を設けた基準(村田・井村の基準や、神戸大学〔森岡〕の基準など)で、光線療法や交換輸血を行うかどうかを決める。早産児、低アルブミン血症、アシドーシス、低酸素、感染症などがあるとビリルビン脳症の危険が高まるため、より低い値から治療を始める。光線療法の副作用には、不感蒸泄の増加による脱水、発熱、下痢、皮疹、ブロンズベビー症候群がある。目を守るためにアイマスクを使う。
POINT
・光線療法は間接ビリルビン(非抱合型)を水溶性の光異性体に変えて排泄させる治療で、間接ビリルビン優位の黄疸が対象となる。 ・ABO血液型不適合(母O型、児A型またはB型)は溶血によって間接ビリルビンが上がり、第1子でも起こりうる。 ・胆道閉鎖症、新生児肝炎、先天性胆道拡張症、Dubin-Johnson症候群は直接ビリルビンが上昇するため光線療法の対象外で、直接ビリルビンが高い児に照射するとブロンズベビー症候群を起こしうる。 ・直接ビリルビン優位の黄疸や灰白色便を見たら、まず胆道閉鎖症を除外する(生後60日以内の葛西手術)。
