卵子の旅路をたどれば解ける―受精の場所、卵管の運動、黄体と靱帯の基本
第108回医師国家試験 G問題 第32問
国試問題にチャレンジ
子宮付属器について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.卵管膨大部で受精する。
- b.卵管には蠕動運動がみられる。
- c.黄体は排卵前から形成される。
- d.卵巣は円靱帯で子宮とつながる。
- e.原始卵胞は卵巣の髄質層にみられる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
子宮付属器の問題は、卵子が卵巣皮質の原始卵胞から育ち、排卵後に卵管采に取り込まれ、卵管膨大部で受精し、卵管の蠕動運動と線毛運動で子宮へ運ばれるという流れで整理すると解きやすくなります。黄体は排卵後に残った顆粒膜細胞と莢膜細胞からLHの作用で形成され、プロゲステロンを分泌します。卵巣と子宮をつなぐのは卵巣固有靱帯で、円靱帯は子宮角付近から鼠径管を経て大陰唇へ向かい、卵巣動静脈は卵巣提索を通ります。膨大部は卵管妊娠の好発部位でもあり、卵管炎による卵管機能障害は不妊や異所性妊娠の原因となるため、基礎の解剖・生理は臨床での診断や手術の理解に直結します。
解答・解説
正解はa, bです
子宮付属器とは、子宮の両側に位置する卵管と卵巣、およびそれらを支持する靱帯などの総称である。本問では、受精の場所、卵管の運動、黄体の形成時期、卵巣と子宮をつなぐ靱帯、卵胞の存在部位という、生殖器の解剖と生理の基本が問われている。 考え方としては、卵子が排卵されてから受精・着床に至るまでの流れを時系列でたどるとよい。卵巣皮質で発育した卵胞が成熟して排卵し、卵子は卵管采に取り込まれる。卵子は卵管膨大部で精子と出会って受精し、受精卵は卵割を進めながら卵管の運動によって子宮へ送られる。一方、卵子が抜け出した後の卵胞は黄体へと変化し、プロゲステロンを分泌して着床に備える。この流れを押さえておけば、各選択肢の正誤は判断できる。靱帯については、卵巣固有靱帯・卵巣提索・子宮円索(円靱帯)の区別を整理しておくことが必要である。
選択肢考察
- ○a. 卵管膨大部で受精する。
卵管は子宮側から間質部、峡部、膨大部、漏斗部(先端に卵管采)に区分される。膨大部は卵管の外側約2/3を占める内腔の広い部分で、排卵後に卵管采から取り込まれた卵子と、腟から子宮腔・卵管を上行してきた精子がここで出会い、受精が成立する。したがって正しい。なお、受精卵が膨大部にとどまって着床すると卵管妊娠となり、異所性妊娠の中で最も多い部位も膨大部である。
- ○b. 卵管には蠕動運動がみられる。
卵管壁は内側から粘膜、平滑筋層、漿膜の3層からなる。平滑筋層の収縮による蠕動運動と、粘膜上皮の線毛細胞による子宮方向への線毛運動が協調して、卵子・精子の輸送や、受精卵を子宮腔へ送る役割を担っている。したがって正しい。これらの運動はエストロゲンやプロゲステロンの影響を受けて変化する。卵管炎などでこの機能が障害されると、不妊症や卵管妊娠の原因となる。
- ×c. 黄体は排卵前から形成される。
黄体は排卵の後に形成される。成熟卵胞(グラーフ卵胞)が破裂して卵子が放出されると、卵胞内に残った顆粒膜細胞と莢膜細胞が黄体形成ホルモン(LH)の作用により肥大・増殖し、脂質(ルテイン)を蓄えて黄体となる(黄体化)。黄体はプロゲステロンとエストロゲンを分泌し、子宮内膜を分泌期に変化させる。妊娠が成立しなければ約2週間で退縮して白体となる。排卵前に存在するのは発育中の卵胞であり、黄体ではないため誤りである。
- ×d. 卵巣は円靱帯で子宮とつながる。
卵巣と子宮をつなぐのは卵巣固有靱帯(固有卵巣索)である。円靱帯(子宮円索)は子宮底の卵管付着部のやや前下方から起こり、鼠径管を通って大陰唇の皮下に達する索状物で、子宮の前傾を保つ働きをもつが、卵巣とは直接つながっていない。したがって誤りである。なお、卵巣を骨盤壁につなぎ、卵巣動静脈が通るのは卵巣提索(骨盤漏斗靱帯)である。
- ×e. 原始卵胞は卵巣の髄質層にみられる。
卵巣は表層の皮質と中心部の髄質に分けられる。原始卵胞は一層の扁平な顆粒膜細胞(卵胞上皮細胞)に囲まれた一次卵母細胞からなり、皮質に多数分布している。原始卵胞は皮質内で一次卵胞、二次卵胞(胞状卵胞)を経て成熟卵胞へと発育し、排卵に至る。髄質は疎性結合組織に富み、血管・リンパ管・神経が出入りする部分で、卵胞は存在しないため誤りである。
卵管の区分
子宮側から、間質部(子宮壁内を貫く部分)、峡部(細く筋層が厚い)、膨大部(内腔が広く受精の場)、漏斗部(先端に卵管采があり、排卵された卵子を取り込む)に分けられる。
受精から着床まで
排卵された卵子は卵管采に捕捉され、膨大部で精子と受精する。受精卵は卵割を繰り返しながら、卵管の蠕動運動と線毛運動によって数日かけて子宮へ運ばれ、桑実胚の段階で子宮腔に到達する。その後胚盤胞となり、受精後およそ6〜7日で子宮内膜に着床を始める。
卵胞の発育と黄体
原始卵胞 → 一次卵胞 → 二次卵胞(胞状卵胞) → 成熟卵胞(グラーフ卵胞) → 排卵 → 黄体 → (妊娠不成立なら)白体。妊娠が成立するとヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の作用で黄体は妊娠黄体として維持される。
子宮付属器周囲の靱帯
卵巣固有靱帯(固有卵巣索):卵巣と子宮をつなぐ。 卵巣提索(骨盤漏斗靱帯):卵巣と骨盤壁をつなぎ、卵巣動静脈が通る。 子宮円索(円靱帯):子宮角付近から鼠径管を経て大陰唇に至り、子宮前傾を保つ。 子宮広間膜:子宮・卵管・卵巣を覆う腹膜のひだ。 基靱帯:子宮頸部を骨盤側壁に固定し、子宮動静脈が通る。
POINT
・受精の場は卵管膨大部であり、卵管妊娠の好発部位も膨大部である。 ・受精卵は卵管の蠕動運動と線毛運動で子宮へ運ばれる。 ・黄体は排卵後、卵胞に残った顆粒膜細胞と莢膜細胞から形成される。 ・卵巣と子宮をつなぐのは卵巣固有靱帯。円靱帯は子宮から鼠径管を経て大陰唇へ向かう。 ・原始卵胞は卵巣皮質に存在し、髄質には血管・神経が分布する。
