StudyMed医師国家試験

消える反射と現れる反射―月齢で読み解く乳児の神経発達

第108回医師国家試験 G問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第108回 G問題 第11問

新生児・乳児の反射について正しいのはどれか。

  1. a.Moro反射は1歳ころに消失する。
  2. b.吸啜反射は生後2~3か月からみられる。
  3. c.生後1か月のBabinski反射は病的である。
  4. d.把握反射の消失は手よりも足の方が早い。
  5. e.パラシュート反射は生後9か月前後からみられる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は新生児・乳児の反射の問題だ。ポイントは、反射を「原始反射」と「姿勢反射」の2つの流れに分けて考えること。原始反射は生まれつき備わっていて成長とともに消えていくもの、姿勢反射は乳児期に新しく現れてくるものだ。この2つを月齢と結びつけて整理できているかが問われているよ。
医学生医学生
小児科の講義で表を覚えたはずなんですが、消える時期と出る時期がごちゃごちゃになりがちです。
ドクタードクター
丸暗記だと混乱しやすいね。まず仕組みから押さえよう。原始反射は脳幹や脊髄レベルで起こる反射で、大脳皮質が成熟して上位中枢からの抑制がかかるようになると消えていく。一方の姿勢反射は、中脳や大脳皮質が成熟して初めて出てくる反応で、多くは生涯残る。つまりどちらも「脳が育つ」ことの裏表なんだ。
医学生医学生
なるほど、原始反射が消えるのも姿勢反射が出るのも、同じ大脳の成熟を見ているわけですね。
ドクタードクター
その通り。では具体的に見ていこう。まずMoro反射が1歳ころに消えるという記述はどうかな。
医学生医学生
Moro反射は驚いたときに両手を広げて、そのあと抱きつくような動きをする反射でしたよね。1歳まで残っていたかどうか……ちょっと自信がないです。
ドクタードクター
Moro反射は生後3〜4か月ころから弱まり、おおむね4〜6か月までに消える。1歳まで残っていたら異常で、脳性麻痺などを疑うきっかけになる。新生児期に左右差があれば、分娩外傷による腕神経叢麻痺や鎖骨骨折を考えるのも大事なポイントだ。
医学生医学生
臨床実習で新生児室を回ったとき、鎖骨骨折の赤ちゃんで片側だけMoro反射が弱いのを見せてもらいました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。次は吸啜反射。生後2〜3か月から見られる、という記述だ。
医学生医学生
それは違う気がします。生まれてすぐにおっぱいを吸えるのは吸啜反射があるからですよね。
ドクタードクター
正解。吸啜反射は胎生期から発達していて、出生時にはもう存在する。口唇に触れた方へ顔を向ける探索反射とセットで、すぐに哺乳ができる仕組みになっているんだ。4〜6か月ころにかけて反射としては目立たなくなり、意思による哺乳や摂食に移っていく。新生児で吸啜が弱ければ、早産や中枢神経の異常、敗血症など全身状態の悪化も考える。
医学生医学生
Babinski反射は、神経内科の講義では錐体路障害のサインと習ったので、生後1か月で陽性なら病的なのかと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。成人なら錐体路障害の徴候だけど、乳児は錐体路の髄鞘化がまだ完成していないから、正常でも陽性になりうる。独歩が始まるころに消えていき、1〜2歳ころまでは陽性でも異常とはいえない。だから生後1か月で陽性でも病的とは判断しない。ただし左右差があれば、一側性の中枢神経障害を疑うよ。
医学生医学生
把握反射は、手と足のどちらが先に消えるんでしたっけ。
ドクタードクター
手の方が早い。手掌把握反射は4〜6か月ころまでに消えて、自分の意思で物をつかんだり離したりできるようになる。足底把握反射はもっと長く残り、9〜10か月ころ、つかまり立ちや独歩の準備が整うころに消える。足で握っていたら立てないよね、とイメージすると覚えやすい。だから手より足が早いという記述は逆なんだ。
医学生医学生
そうすると、パラシュート反射が9か月前後から見られるという記述が正しいことになりますね。
ドクタードクター
その通り、これが正解だ。パラシュート反射は保護伸展反応ともいって、児を腹臥位で水平に持ち上げて頭から前下方へ落とすように動かすと、両腕を伸ばして手を開き、体を支えようとする。転んだときに身を守る防御反応で、生後8〜10か月ころに出現し、その後は生涯続く。つかまり立ちや歩行に先立って備わる反応なんだ。
医学生医学生
転ぶ前に手をつけるようになってから歩き出す、という順番になっているんですね。
ドクタードクター
そう、運動発達と反射の変化は並行して進む。首すわりが3〜4か月、寝返りが5〜6か月、お座りが7か月前後、つかまり立ちが9〜10か月、独歩が1歳から1歳3か月くらい。原始反射が消えて姿勢反射が整うにつれて、こうした粗大運動ができるようになる。ATNRやMoro反射が残っていると寝返りやお座りが妨げられるし、足底把握反射が残ると立位や歩行が不安定になる。
医学生医学生
OSCEの小児診察でも、乳幼児健診のつもりで月齢ごとのチェック項目を確認するよう言われました。
ドクタードクター
まさに乳幼児健診で役立つ知識だよ。臨床で異常を疑うサインは3つ。消えるべき原始反射が残っている、出るべき姿勢反射が出てこない、そして左右差がある。たとえば片側だけパラシュート反射が出なければ片麻痺を疑う。逆に新生児期に原始反射がまったく出なければ、重い中枢神経障害や筋疾患を考える。なお消失時期は教科書によって1〜2か月の幅があるから、厳密な数字よりも「消える反射」「現れる反射」の大まかな順序と、その意味をつかむことが大切だ。

まとめ

乳児の神経発達は、出生時から存在し大脳の成熟とともに消えていく原始反射と、乳児期に新たに出現して多くが生涯持続する姿勢反射という2つの流れで評価します。Moro反射・吸啜反射・手掌把握反射はおおむね4〜6か月ころまでに消失し、足底把握反射は9〜10か月ころまで残るため、消失は手の方が早くなります。Babinski反射は錐体路の髄鞘化が未完成な乳児では1〜2歳ころまで生理的に陽性となりえ、パラシュート反射は生後9か月前後に出現して生涯持続します。原始反射の残存、姿勢反射の出現遅延、左右差は脳性麻痺や腕神経叢麻痺などを疑う手がかりとなります。反射の変化を運動発達の里程標と結びつけて理解しておくことは、乳幼児健診や発達評価の基盤になります。

解答・解説

正解はeです

新生児・乳児の神経学的発達は、「原始反射の消失」と「姿勢反射(立ち直り反応・平衡反応・保護伸展反応)の出現」という二つの流れで評価する。 ・原始反射:脳幹・脊髄レベルで起こる反射で、出生時から認められる。大脳皮質が成熟して上位中枢からの抑制が働くようになると、決まった時期までに消失する(統合される)。Moro反射、吸啜反射、手掌把握反射、足底把握反射、非対称性緊張性頸反射(ATNR)、自動歩行などがある。 ・姿勢反射:中脳・大脳皮質レベルの成熟に伴って乳児期に新たに出現し、多くは生涯持続する。頸の立ち直り、Landau反射、パラシュート反射、ホッピング反応などがある。 この二つの流れを月齢の目安とともに覚えておけば、各選択肢の正誤は判断できる。臨床的には、原始反射が消失すべき時期を過ぎても残る場合、出現すべき姿勢反射が出現しない場合、あるいは左右差がある場合に、脳性麻痺などの中枢神経障害や末梢神経障害(腕神経叢麻痺など)を疑う手がかりとなる。 本問では、パラシュート反射が生後9か月前後から出現するという記述が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  Moro反射は1歳ころに消失する。

    Moro反射は、仰臥位の児の頭部を支えて急に少し落とす、あるいは大きな音を立てるなどの刺激を与えると、両上肢を伸展・外転して手を開き(第1相)、続いて上肢を抱きつくように内転・屈曲させる(第2相)原始反射である。出生時から認められ、生後3~4か月ころから減弱して、おおむね4~6か月までに消失する。1歳まで残存するのは異常であり、脳性麻痺などを疑う。また新生児期に左右差がある場合は、分娩外傷による腕神経叢麻痺や鎖骨骨折を、反射が出ない場合は重い中枢神経障害を考える。

  2. ×b.  吸啜反射は生後2~3か月からみられる。

    吸啜反射は、口の中に指や乳首を入れるとリズミカルに吸いつく原始反射で、胎生期から発達し、出生時にはすでに存在する。生まれてすぐに哺乳ができるのはこの反射(および口唇に触れた方へ顔を向ける探索反射)があるためであり、生後2~3か月から出現するという記述は誤りである。生後4~6か月ころにかけて反射としては目立たなくなり、意思による哺乳・摂食へ移行していく。新生児で吸啜が弱い場合は、早産や中枢神経の異常、全身状態の悪化(敗血症など)を考える。

  3. ×c.  生後1か月のBabinski反射は病的である。

    Babinski反射は、足底の外側縁を踵から足趾に向かってこすると母趾が背屈し、他の趾が扇状に開く反応である。成人では錐体路(皮質脊髄路)障害の徴候だが、乳児期は錐体路の髄鞘化が未完成なため正常でも陽性となりうる(生理的Babinski反射)。独歩の開始とともに消失し、おおむね1~2歳ころまでは陽性でも異常とはいえない。したがって生後1か月で陽性であっても病的とは判断しない。ただし左右差がある場合は、一側性の中枢神経障害を疑う。

  4. ×d.  把握反射の消失は手よりも足の方が早い。

    手掌把握反射(手のひらを圧迫すると指を握りしめる)は生後3~4か月ころから弱まり、おおむね4~6か月までに消失する。手の把握反射が消えることで、自分の意思で物をつかみ、離すことができるようになる。一方、足底把握反射(足底の母趾球付近を圧迫すると足趾が屈曲する)はより長く残り、生後9~10か月ころ、つかまり立ちや独歩の準備が整うころに消失する。したがって消失は手の方が早く、記述は逆である。

  5. ○e.  パラシュート反射は生後9か月前後からみられる。

    パラシュート反射(保護伸展反応)は、児の体幹を両手で支えて腹臥位で水平に持ち上げ、急に頭から前下方へ落とすように動かすと、両上肢を伸ばし手を開いて体を支えようとする反応である。転倒時に身を守る防御反応であり、中脳・大脳皮質レベルの成熟によって生後8~10か月ころ(9か月前後)に出現し、その後は生涯持続する。出現が遅れる場合は運動発達の遅れを、左右差がある場合は片麻痺などを疑う。つかまり立ちや歩行の開始に先立って備わる反応であり、発達評価の重要な指標となる。

主な原始反射と消失時期の目安

・Moro反射:出生時~4~6か月 ・探索反射・吸啜反射:出生時~4~6か月ころ ・手掌把握反射:出生時~4~6か月 ・足底把握反射:出生時~9~10か月(独歩の前) ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):出生時~4~6か月(顔を向けた側の上下肢が伸展、反対側が屈曲する「フェンシングの姿勢」) ・自動歩行(原始歩行):出生時~2か月ころ ・Babinski反射:出生時~1~2歳(独歩の開始とともに消失) ※消失時期は教科書により1~2か月の幅がある。

主な姿勢反射と出現時期の目安

・Landau反射(腹臥位で水平に支えると頭部と体幹・下肢を伸展する):6か月ころ出現、2歳ころまで ・パラシュート反射:8~10か月ころ出現、生涯持続 ・座位での側方保護伸展反応:6~7か月ころ出現 ・ホッピング反応・立位の平衡反応:1歳以降に出現

運動発達との関係

首すわり(3~4か月)、寝返り(5~6か月)、お座り(7か月前後)、つかまり立ち(9~10か月)、独歩(1歳~1歳3か月)といった粗大運動の獲得は、原始反射が消えて姿勢反射が整うことと並行して進む。例えばATNRやMoro反射が残っていると寝返りや座位の獲得が妨げられ、足底把握反射が残っていると立位・歩行が不安定になる。

異常を疑うサイン

・原始反射が消失すべき時期を過ぎても残存する(脳性麻痺など) ・出現すべき姿勢反射が出現しない ・反射に明らかな左右差がある(腕神経叢麻痺、鎖骨骨折、片麻痺など) ・新生児期に原始反射が全く出ない(重症の中枢神経障害、筋疾患など)

POINT

・原始反射は出生時から存在し、大脳の成熟とともに消失する:Moro・吸啜・手掌把握・ATNRは4~6か月ころまで、足底把握は9~10か月ころまで(手より足の方が遅い) ・Babinski反射は独歩開始の1~2歳ころまでは生理的に陽性となりうる ・姿勢反射は乳児期に出現:Landau反射6か月ころ、パラシュート反射9か月前後(生涯持続) ・原始反射の残存、姿勢反射の出現遅延、左右差は中枢神経障害の手がかり

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。