ROC曲線の軸はなぜ「感度」と「1-特異度」なのか―カットオフ値が描く検査性能の地図
第108回医師国家試験 C問題 第8問
国試問題にチャレンジ
ある検査に関するROC曲線を示す。 縦軸と横軸の組合せで正しいのはどれか。(編註:選択肢表は下記をご参照ください。) 縦軸 横軸 a 1-感度 特異度 b 感度 1-特異度 c 陽性的中率 陰性的中率 d 1-陽性尤度比 陰性尤度比 e 陽性尤度比 1-陰性尤度比

- a.1-感度特異度
- b.感度 1-特異度
- c.陽性的中率陰性的中率
- d.1-陽性尤度比陰性尤度比
- e.陽性尤度比 1-陰性尤度比
対話形式の解説
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ドクターまとめ
ROC曲線は、検査値が連続量で表される検査について、カットオフ値を変えたときの感度(真陽性率)を縦軸に、1-特異度(偽陽性率)を横軸にとって点を結んだ曲線です。曲線が左上隅に近いほど診断能が高く、原点と右上を結ぶ対角線は診断能がないことを示し、曲線下面積(AUC)は0.5〜1.0の範囲で検査全体の性能を表します。的中率は有病率に依存するため軸には用いず、尤度比も感度と特異度から計算される比であって軸ではありません。最適なカットオフ値はYouden指数や左上隅との距離で決められますが、スクリーニングでは感度、確定診断では特異度を重視するなど目的に応じた設定が必要です。感度と特異度のトレードオフを理解することは、検査結果を正しく解釈するための基礎になります。
解答・解説
正解はbです
ROC曲線(receiver operating characteristic curve:受信者動作特性曲線)は、検査値が連続量で表される検査について、陽性と陰性を分ける境界値(カットオフ値)をさまざまに変えたときの検査性能の変化を一つの図で表したものである。
ROC曲線の描き方
カットオフ値を一つ決めると、その値での感度と特異度が一組決まる。カットオフ値を少しずつずらしながら、各カットオフ値について縦軸に感度(真陽性率)、横軸に1-特異度(偽陽性率)をとって点をプロットし、それらを結んだものがROC曲線である。 ・感度=疾患のある人のうち検査が陽性となる割合(真陽性率) ・特異度=疾患のない人のうち検査が陰性となる割合(真陰性率) ・1-特異度=疾患のない人のうち検査が陽性となる割合(偽陽性率)
曲線の読み方
カットオフ値を「陽性」と判定しやすい方向へ動かすと、感度は上がるが偽陽性も増える(1-特異度も上がる)。そのため曲線は原点(0,0)から右上の(1,1)へ向かう右上がりのカーブとなる。理想的な検査は感度1かつ偽陽性率0、すなわち左上隅(0,1)を通る。逆に、原点と(1,1)を結ぶ対角線は、コイン投げと同じく診断能がまったくない検査を表す。曲線が左上に張り出すほど診断能の高い検査である。 したがって、縦軸は感度、横軸は1-特異度の組合せが正しい。
選択肢考察
- ×a. 1-感度特異度
縦軸「1-感度」、横軸「特異度」の組合せである。1-感度は偽陰性率(疾患があるのに陰性となる割合)であり、ROC曲線の軸ではない。この組合せは正しい軸(縦軸:感度、横軸:1-特異度)の両方を「1から引いた値」に置き換えたものにあたり、図が上下左右に反転してしまう。
- ○b. 感度 1-特異度
ROC曲線は、縦軸に感度(真陽性率)、横軸に1-特異度(偽陽性率)をとる。カットオフ値ごとの(1-特異度, 感度)の点を結んだ曲線が左上隅(0,1)に近づくほど、偽陽性を少なく保ちながら患者を多く拾い上げられる、すなわち診断能の高い検査であることを示す。最適なカットオフ値の決め方として、左上隅(0,1)との距離が最も近い点を選ぶ方法や、感度+特異度-1(Youden指数)が最大となる点を選ぶ方法がある。
- ×c. 陽性的中率陰性的中率
陽性的中率は検査陽性者のうち実際に疾患がある人の割合、陰性的中率は検査陰性者のうち実際に疾患がない人の割合である。的中率は検査を受ける集団の有病率によって大きく変わる(有病率が低いと陽性的中率は下がる)ため、検査そのものの性能を表すROC曲線の軸には用いない。ROC曲線は有病率の影響を受けない感度と特異度から描かれる。
- ×d. 1-陽性尤度比陰性尤度比
陽性尤度比は感度/(1-特異度)、陰性尤度比は(1-感度)/特異度で定義され、検査結果が検査前確率をどれだけ変化させるかを示す指標である。尤度比は1を超える値もとるため「1-陽性尤度比」という量には意味がなく、ROC曲線の軸でもない。なお、ROC曲線上のある点と原点を結ぶ直線の傾き(感度/(1-特異度))は、そのカットオフ値での陽性尤度比に等しいという関係はあるが、軸そのものではない。
- ×e. 陽性尤度比 1-陰性尤度比
尤度比は感度と特異度から計算される比であり、ROC曲線の軸には用いない。陽性尤度比は10を超えるような大きな値をとることもあり、0〜1の範囲に収まる軸としても適さない。また、陰性尤度比は1より小さいほど有用な指標であるが、「1-陰性尤度比」は一般に使われる指標ではない。
2×2表と主な指標
疾患あり・なし と 検査陽性・陰性 で、真陽性(a)、偽陽性(b)、偽陰性(c)、真陰性(d)とすると、 ・感度=a/(a+c) ・特異度=d/(b+d) ・偽陽性率=1-特異度=b/(b+d) ・偽陰性率=1-感度=c/(a+c) ・陽性的中率=a/(a+b) ・陰性的中率=d/(c+d) ・陽性尤度比=感度/(1-特異度) ・陰性尤度比=(1-感度)/特異度 感度・特異度・尤度比は有病率に依存しないが、的中率は有病率に依存する。
AUC(曲線下面積)
ROC曲線の下の面積をAUC(area under the curve)といい、検査全体の診断能を表す。AUCは0.5(対角線、診断能なし)から1.0(完全な検査)の値をとり、1に近いほど優れた検査である。複数の検査の診断能を比較するとき、ROC曲線がより左上にある(AUCが大きい)検査が優れていると判断する。
カットオフ値と感度・特異度のトレードオフ
カットオフ値を下げて陽性を広くとると、感度は上がるが特異度は下がる。見逃しを避けたいスクリーニング検査では感度を重視し、偽陽性を避けたい確定診断では特異度を重視してカットオフ値を設定することがある。感度の高い検査の陰性は除外診断に(SnNout)、特異度の高い検査の陽性は確定診断に(SpPin)役立つ。
POINT
・ROC曲線:縦軸=感度(真陽性率)、横軸=1-特異度(偽陽性率) ・カットオフ値を変えたときの感度と偽陽性率の組を結んだ曲線 ・左上隅(0,1)に近いほど診断能が高く、対角線は診断能なし ・最適カットオフ値:左上隅に最も近い点、またはYouden指数(感度+特異度-1)が最大の点 ・AUCは0.5〜1.0で、大きいほど優れた検査 ・的中率は有病率に依存するためROC曲線には用いない
