「見逃さない検査」で引っかからなければ―SnNoutで読み解く診断の除外
第118回医師国家試験 B問題 第17問
国試問題にチャレンジ
診断の除外に有用なのはどれか。
- a.感度の高い検査が陽性のとき
- b.感度の高い検査が陰性のとき
- c.特異度の高い検査が陽性のとき
- d.特異度の高い検査が陰性のとき
- e.感度/(1-特異度)が1より大きいとき
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
感度の高い検査は偽陰性が少ないため、その検査が陰性であれば疾患の可能性は大きく下がり、診断の除外に役立ちます(SnNout)。一方、特異度の高い検査は偽陽性が少ないため、陽性であれば診断の確定に役立ちます(SpPin)。感度/(1-特異度)は陽性尤度比で、1より大きければ陽性結果は疾患の確率を上げる方向に働くため確定側の指標であり、除外の力は陰性尤度比(1-感度)/特異度が小さいことで表されます。尤度比は検査前オッズに掛けて検査後オッズを求めるために使い、D-ダイマーによる肺塞栓症の除外のように、検査前確率と組み合わせて解釈することが重要です。感度・特異度・尤度比を「何を見逃さず、何を誤報しないか」という視点で理解しておくことは、検査の選択と結果の解釈を適切に行う臨床推論の土台になります。
解答・解説
正解はbです
検査特性(感度・特異度・尤度比)と、検査結果を診断の「除外(rule out)」と「確定(rule in)」にどう使うかを問う問題である。
基本の2×2表
疾患あり・検査陽性=真陽性(A)、疾患なし・検査陽性=偽陽性(B)、疾患あり・検査陰性=偽陰性(C)、疾患なし・検査陰性=真陰性(D)とする。 ・感度=A/(A+C):疾患のある人を検査が正しく陽性と判定する割合。1-感度が偽陰性率である。 ・特異度=D/(B+D):疾患のない人を検査が正しく陰性と判定する割合。1-特異度が偽陽性率である。
除外と確定の考え方
感度が高い検査は、疾患のある人をほとんど見逃さない(偽陰性が少ない)。したがって、その検査が「陰性」であれば、疾患がある可能性は低いと判断でき、診断の除外に役立つ。英語の語呂で「SnNout(Sensitivity・Negative・rule out)」と覚える。 逆に特異度が高い検査は、疾患のない人をほとんど陽性にしない(偽陽性が少ない)。その検査が「陽性」であれば疾患がある可能性が高く、診断の確定に役立つ。こちらは「SpPin(Specificity・Positive・rule in)」である。 直感的には「見逃しの少ない検査で引っかからなければ、病気はなさそう」「誤報の少ない検査で引っかかれば、病気がありそう」と理解するとよい。
選択肢考察
- ×a. 感度の高い検査が陽性のとき
感度が高い検査は疾患のある人の大部分を陽性として拾い上げるが、感度の高さは偽陽性の少なさを保証しない(偽陽性の多さは特異度で決まる)。そのため陽性という結果だけでは疾患があるとも、ないとも強くはいえず、除外には使えない。高感度の検査はスクリーニングで疾患候補者を拾い上げる目的に向く。
- ○b. 感度の高い検査が陰性のとき
感度が高いほど偽陰性率(1-感度)は低くなる。疾患のある人がこの検査で陰性になることはまれなので、陰性の結果が出れば疾患の存在する確率(検査後確率)は大きく下がり、診断の除外に有用である(SnNout)。尤度比で表すと、陰性尤度比=(1-感度)/特異度は感度が高いほど0に近づき、陰性結果の除外力が強くなる。例として、D-ダイマー陰性による深部静脈血栓症・肺塞栓症の除外(検査前確率が低い場合)が挙げられる。
- ×c. 特異度の高い検査が陽性のとき
特異度が高いほど偽陽性率(1-特異度)は低い。疾患のない人がこの検査で陽性になることはまれなので、陽性の結果は疾患の存在を強く示し、診断の確定に有用である(SpPin)。問われているのは除外であり、確定に役立つ組み合わせであるこの選択肢は誤りである。
- ×d. 特異度の高い検査が陰性のとき
特異度の高さは偽陽性が少ないことを意味するが、偽陰性の少なさ(感度)については何も保証しない。特異度が高くても感度が低い検査では、疾患のある人が陰性と判定されることが少なくないため、陰性という結果で疾患を除外することはできない。
- ×e. 感度/(1-特異度)が1より大きいとき
感度/(1-特異度)は陽性尤度比(LR+)であり、「疾患のある人で陽性となる確率」が「疾患のない人で陽性となる確率」の何倍かを示す。LR+が1より大きければ、検査陽性によって疾患の存在確率は上がる方向に動く。したがってこれは陽性結果が診断を支持する(確定方向に働く)ことを示す指標であり、除外とは逆の方向である。なお一般にLR+が10程度以上で確定に強く役立ち、1に近い値では診断的価値は乏しい。除外に役立つのは陰性尤度比(1-感度)/特異度が小さい(0.1程度以下)場合である。
2×2表と主な指標
・感度=真陽性/(真陽性+偽陰性) ・特異度=真陰性/(偽陽性+真陰性) ・陽性的中率(PPV)=真陽性/(真陽性+偽陽性):検査陽性者のうち実際に疾患がある割合 ・陰性的中率(NPV)=真陰性/(偽陰性+真陰性):検査陰性者のうち実際に疾患がない割合 感度・特異度は検査そのものの性能で有病率に左右されないが、的中率は有病率(検査前確率)の影響を受ける。有病率が低い集団では陽性的中率が下がり、陰性的中率が上がる。
尤度比
・陽性尤度比(LR+)=感度/(1-特異度) ・陰性尤度比(LR−)=(1-感度)/特異度 検査前オッズ×尤度比=検査後オッズという関係があり、尤度比を用いると検査結果によって疾患の確率がどれだけ変化するかを定量的に評価できる。目安として、LR+が10以上、LR−が0.1以下の検査は診断上の価値が大きい。LR=1の検査は確率を全く変えない。
ROC曲線
縦軸に感度、横軸に偽陽性率(1-特異度)をとり、カットオフ値を変えたときの組み合わせをプロットした曲線である。曲線下面積(AUC)が1に近いほど識別能の高い検査であり、左上隅に最も近い点などを最適なカットオフ値の候補とする。原点と曲線上の点を結ぶ直線の傾きが、その点での陽性尤度比に相当する。
検査の使い分け
スクリーニングや除外目的には高感度の検査を、確定診断には高特異度の検査を用いる。カットオフ値を下げると感度が上がり特異度が下がる、というトレードオフの関係がある。
POINT
・SnNout:感度の高い検査が陰性なら除外に有用。 ・SpPin:特異度の高い検査が陽性なら確定に有用。 ・感度/(1-特異度)=陽性尤度比。1より大きければ陽性結果は疾患の確率を上げる(確定方向)。 ・除外の指標は陰性尤度比(1-感度)/特異度が小さいこと。
