StudyMed医師国家試験

感度84%・特異度96%が語る「21倍」―陽性尤度比を計算から臨床まで使いこなす

第116回医師国家試験 E問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第116回 E問題 第14問

ある疾患に対する感度84%,特異度96%の検査の陽性尤度比はどれか。

  1. a.8
  2. b.16
  3. c.21
  4. d.32
  5. e.40

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、感度と特異度から陽性尤度比を求める計算問題だ。式を覚えているかどうかだけでなく、その式が何を意味しているかを理解すると、検査結果の読み方がぐっと深まるよ。まず、陽性尤度比はどんな指標だったかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習いました。たしか、感度を特異度で割るんでしたっけ。
ドクタードクター
惜しい、そこはよくある勘違いなんだ。陽性尤度比は「疾患のある人が陽性になる確率」が「疾患のない人が陽性になる確率」の何倍か、を表す。疾患のある人が陽性になる確率は感度、つまり真陽性率。では疾患のない人が陽性になる確率は?
医学生医学生
疾患がないのに陽性……偽陽性率なので、1から特異度を引いたものですね。
ドクタードクター
その通り。だから陽性尤度比は感度を(1-特異度)で割ったものになる。今回の数字を入れるとどうなるかな。
医学生医学生
感度0.84を、1-0.96で0.04で割るから……21です。
ドクタードクター
正解。疾患のある人は、ない人に比べて21倍検査陽性になりやすい、という意味だ。具体的な人数にするとさらにわかりやすい。疾患のある人100人、ない人100人に検査をしたら、陽性になるのは何人ずつ?
医学生医学生
疾患ありでは84人、疾患なしでは4人です。84対4なので、確かに21対1になりますね。
ドクタードクター
そう、こうやって人数でイメージしておくと検算にもなる。ちなみに16という選択肢に引っかかった人はいないかな。
医学生医学生
1-感度が0.16なので、16を見て一瞬手が止まりました。
ドクタードクター
それは偽陰性率で、陽性尤度比には使わない。偽陰性率が出てくるのは陰性尤度比のほうで、(1-感度)を特異度で割る。この検査だと0.16÷0.96でおよそ0.17になる。それ以外の数値は正しく式に代入すれば出てこない値だよ。
医学生医学生
陽性尤度比は分子が感度、陰性尤度比は分子が偽陰性率。どちらも「疾患ありの人の確率」を「疾患なしの人の確率」で割っている、と考えれば混乱しなさそうです。
ドクタードクター
いい整理だね。次に解釈だ。陽性尤度比は大きいほど、陽性の結果で疾患の可能性が強く高まる。目安として10以上なら確定診断に大きく寄与する。陰性尤度比は小さいほど除外に役立ち、0.1以下が目安。1に近い検査は、陽性でも陰性でも確率をほとんど動かさないので価値が乏しい。
医学生医学生
この検査は陽性尤度比21なので、陽性なら確定に強い検査ですね。でも陰性尤度比0.17だと、除外にはやや弱いということですか。
ドクタードクター
その読みで正しい。特異度が高いと分母が小さくなって陽性尤度比は一気に大きくなる。特異度の高い検査は「陽性なら確定に近づく」と覚えておくといい。では、実際の患者さんにどう使うか。尤度比は確率ではなくオッズに掛けるのがポイントなんだ。
医学生医学生
そこがいつもあやふやです。CBTの勉強のときもオッズの変換で手が止まりました。
ドクタードクター
手順を追えば難しくないよ。検査前確率が10%の患者さんなら、検査前オッズは0.1÷0.9で9分の1。これに21を掛けると検査後オッズは約2.33。確率に戻すには、オッズを(1+オッズ)で割るから、約2.33÷3.33でおよそ70%になる。
医学生医学生
10%だった可能性が、陽性1回で70%くらいまで上がるんですね。臨床実習で指導医の先生が「検査前確率を考えずに検査を出すな」と言っていた意味がわかりました。
ドクタードクター
まさにそこが臨床での要点。同じ検査結果でも、検査前確率によって検査後確率は大きく変わる。もう一つ、尤度比は感度・特異度と同じく有病率に影響されない指標だけど、陽性的中率や陰性的中率は有病率で変わる。この違いも国試では頻出だよ。
医学生医学生
ROC曲線でも尤度比が見えるんでしたっけ。
ドクタードクター
よく知っているね。縦軸が感度、横軸が1-特異度だから、ある閾値の点と原点を結んだ直線の傾きが陽性尤度比に相当する。図で見ても「感度÷偽陽性率」という意味が確認できるんだ。

まとめ

陽性尤度比は「疾患のある人が陽性になる確率(感度)」を「疾患のない人が陽性になる確率(偽陽性率=1-特異度)」で割った値で、本問では0.84÷0.04=21となります。陰性尤度比は(1-感度)÷特異度で求め、陽性尤度比は10以上で確定に、陰性尤度比は0.1以下で除外に有用とされ、1に近い検査は診断的価値が乏しいと判断します。尤度比は検査前オッズに掛けて検査後オッズを求め、それを確率に戻すことで、個々の患者で検査結果がどれだけ診断確率を動かすかを見積もれます。感度・特異度・尤度比は有病率に依存しない一方、的中率は有病率で変化する点も重要です。式の意味を2×2表や人数のイメージで理解しておくことは、計算問題の確実な得点だけでなく、日常診療で検査を選び結果を解釈する力の土台になります。

解答・解説

正解はcです

感度と特異度から陽性尤度比を求める計算問題である。

陽性尤度比の定義

陽性尤度比(positive likelihood ratio:LR+)は、「疾患のある人が検査陽性となる確率」が「疾患のない人が検査陽性となる確率」の何倍かを示す指標である。 ・疾患のある人が陽性となる確率=感度(真陽性率) ・疾患のない人が陽性となる確率=偽陽性率=1-特異度 したがって 陽性尤度比=感度/(1-特異度) となる。

計算

感度=84%=0.84 特異度=96%=0.96 → 偽陽性率=1-0.96=0.04 陽性尤度比=0.84/0.04=21 よって正解は c の 21 である。

検算のイメージ

疾患のある人100人、ない人100人に検査を行ったとすると、陽性となるのは有病者84人、非有病者4人である。陽性になる「なりやすさ」の比は84:4=21:1であり、陽性尤度比21と一致する。

選択肢考察

  1. ×a.  8

    感度0.84を偽陽性率0.04で割ると21であり、8にはならない。定義式「感度/(1-特異度)」に正しく代入すれば得られない値である。

  2. ×b.  16

    16は偽陰性率(1-感度=0.16)を連想させる数値だが、陽性尤度比の計算には偽陰性率は用いない。陽性尤度比は0.84/0.04=21である。

  3. ○c.  21

    陽性尤度比=感度/(1-特異度)=0.84/(1-0.96)=0.84/0.04=21である。疾患のある人は、ない人に比べて21倍検査陽性になりやすいことを意味し、10を超えているので陽性結果は診断の確定に大きく寄与する検査といえる。

  4. ×d.  32

    定義式に代入した結果(21)と一致しない。分母の偽陽性率を誤って求めるなどの計算ミスで生じうる値であり、正しくは0.84/0.04=21である。

  5. ×e.  40

    定義式に代入した結果(21)と一致しない。感度を考慮せず偽陽性率の逆数(1/0.04=25)を用いても40にはならず、根拠のない値である。正しくは0.84/0.04=21である。

2×2表と各指標

検査陽性・陰性と疾患あり・なしで、真陽性(TP)、偽陽性(FP)、偽陰性(FN)、真陰性(TN)に分ける。 ・感度=TP/(TP+FN):疾患のある人を陽性と判定できる割合 ・特異度=TN/(FP+TN):疾患のない人を陰性と判定できる割合 ・陽性尤度比(LR+)=感度/(1-特異度) ・陰性尤度比(LR−)=(1-感度)/特異度 本問の検査では、LR−=0.16/0.96≒0.17となる。

尤度比の解釈

・LR+は大きいほど、陽性結果で疾患の可能性が強く高まる(目安として10以上で確定診断に有用)。 ・LR−は小さいほど、陰性結果で疾患の可能性が強く下がる(目安として0.1以下で除外診断に有用)。 ・尤度比が1に近い検査は、結果が陽性でも陰性でも疾患の確率をほとんど変えず、診断的価値が乏しい。 ・特異度が100%に近づくと分母(1-特異度)が0に近づくため、LR+は急激に大きくなる。 ・ROC曲線(縦軸に感度、横軸に1-特異度)上では、ある閾値に対応する点と原点を結んだ直線の傾きがLR+に相当する。

尤度比を用いた検査後確率の求め方

尤度比は確率ではなくオッズに掛けて用いる。 検査前オッズ=検査前確率/(1-検査前確率) 検査後オッズ=検査前オッズ×尤度比 検査後確率=検査後オッズ/(1+検査後オッズ) 例えば検査前確率が10%(オッズ1/9)の患者で本検査が陽性なら、検査後オッズ=1/9×21≒2.33、検査後確率≒2.33/3.33≒70%となる。 尤度比は感度・特異度と同様に有病率に影響されない指標であるのに対し、陽性的中率・陰性的中率は有病率によって変化する点も押さえておく。

POINT

・陽性尤度比=感度/(1-特異度)、陰性尤度比=(1-感度)/特異度。 ・本問:0.84/(1-0.96)=0.84/0.04=21。 ・LR+は大きいほど(10以上)確定に、LR−は小さいほど(0.1以下)除外に有用。1に近い検査は価値が乏しい。 ・尤度比は検査前オッズに掛けて検査後オッズを求める。有病率に依存しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。