肝臓は「いま燃えているか」と「どこまで傷んだか」―ALTが映す慢性肝炎の活動性
第108回医師国家試験 C問題 第9問
国試問題にチャレンジ
慢性肝炎において肝炎活動性の指標となる血液検査項目はどれか。
- a.ALT
- b.血小板
- c.アルブミン
- d.総コレステロール
- e.プロトロンビン時間
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
慢性肝炎の血液検査は、炎症の強さ(活動性)を示すものと、線維化や肝予備能の低下(進行度)を示すものに分けて考えると整理できます。活動性の指標は肝細胞の破壊で血中に漏れ出す逸脱酵素のAST・ALTで、なかでもALTは肝細胞にほぼ限局するため特異性が高く、治療適応や治療効果の判定にも用いられます。一方、血小板数の低下は脾機能亢進とトロンボポエチン産生低下を介して線維化の進行を反映し、アルブミン・総コレステロールの低下やプロトロンビン時間の延長は肝合成能の低下を示し、アルブミンとプロトロンビン時間はChild-Pugh分類の項目です。ALTが正常でも線維化が進んでいることがあるため、FIB-4 indexや線維化マーカーを併用して進行度を評価することが重要です。検査ごとに何を反映するのかを理解することが、肝疾患の病状を正しく把握する第一歩になります。
解答・解説
正解はaです
慢性肝炎の血液検査は、大きく二つの目的に分けて考えると整理しやすい。一つは「いま肝細胞がどれだけ壊れているか(炎症の強さ=活動性)」をみる検査、もう一つは「肝臓の線維化がどこまで進み、肝臓の働き(予備能)がどれだけ落ちているか(進行度)」をみる検査である。 活動性の指標となるのは、肝細胞が壊れたときに細胞内から血中へ漏れ出す酵素(逸脱酵素)である。代表がAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)で、炎症が強く肝細胞壊死が多いほど血中濃度が高くなる。とくにALTは肝細胞にほぼ限局して存在するため、肝炎の活動性を反映する指標として最もよく用いられる。 一方、血小板数、アルブミン、総コレステロール、プロトロンビン時間は、線維化の進行や肝合成能の低下を反映する項目であり、慢性肝炎から肝硬変への進展度(病期)を推定するのに使われる。したがって「活動性」を問う本問では、逸脱酵素であるALTを選べばよい。
選択肢考察
- ○a. ALT
ALTは肝細胞の細胞質に多く含まれる酵素で、肝細胞が炎症により破壊されると血中へ流出する。血中ALTの上昇の程度は肝細胞壊死の量、すなわち炎症の強さを反映するため、慢性肝炎の活動性評価、治療適応の判断、抗ウイルス療法などの治療効果判定に用いられる。ASTも同様に上昇するが、ASTは心筋・骨格筋・赤血球などにも存在するため、肝炎に対する特異性はALTのほうが高い。
- ×b. 血小板
肝線維化が進むと門脈圧が上昇して脾腫・脾機能亢進を来し、さらに肝臓で産生される血小板産生促進因子トロンボポエチンが減少するため、血小板数は低下する。血小板数は線維化の程度をよく反映し、慢性C型肝炎では10万/μL未満で肝硬変が疑われる目安とされる。したがって進行度(病期)の指標であり、炎症の活動性の指標ではない。
- ×c. アルブミン
アルブミンは肝臓で合成される蛋白質であり、肝硬変が進んで肝細胞の数と機能が減ると血中濃度が低下する。肝合成能(肝予備能)の指標で、Child-Pugh分類の評価項目にも含まれる。進行度の指標であり、活動性の指標ではない。
- ×d. 総コレステロール
コレステロールも主に肝臓で合成されるため、肝硬変で合成能が低下すると血中総コレステロール値は低下する。肝予備能の低下を反映する項目であり、炎症の活動性を示すものではない。
- ×e. プロトロンビン時間
プロトロンビン時間(PT)は、肝臓で合成される凝固因子(第II・VII・IX・X因子など)の量を反映する。凝固因子は半減期が短いため、肝合成能低下を鋭敏に反映し、肝硬変の進行とともにPTは延長する(PT活性%は低下する)。Child-Pugh分類の評価項目の一つであり、進行度の指標である。
肝疾患の血液検査の整理
・肝細胞障害(活動性): AST、ALT(逸脱酵素)。急性肝炎や慢性肝炎の増悪で上昇する。 ・胆汁うっ滞: ALP、γ-GTP、直接ビリルビン。 ・肝合成能(予備能): アルブミン、プロトロンビン時間、コリンエステラーゼ、総コレステロール。肝硬変で低下(PTは延長)。 ・線維化・門脈圧亢進: 血小板数低下、ヒアルロン酸・IV型コラーゲン・M2BPGi(Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)などの線維化マーカー上昇。FIB-4 indexのような年齢・AST・ALT・血小板数から計算するスコアも用いられる。 ・解毒・排泄能: アンモニア、総ビリルビン、ICG(インドシアニングリーン)15分停滞率。
AST/ALT比
慢性肝炎ではALT優位(AST/ALT<1)となることが多いが、肝硬変へ進行するとAST優位となる傾向がある。アルコール性肝障害でもAST優位になりやすい。
Child-Pugh分類
肝性脳症、腹水、血清総ビリルビン、血清アルブミン、プロトロンビン時間(活性%またはINR)の5項目を点数化し、A・B・Cの3段階で肝予備能を評価する。
POINT
・肝炎の「活動性」は逸脱酵素(AST、ALT)で評価し、なかでもALTは肝特異性が高い。 ・肝硬変への「進行度」は血小板数低下、アルブミン・コレステロール・コリンエステラーゼ低下、プロトロンビン時間延長などで推定する。 ・アルブミンとプロトロンビン時間はChild-Pugh分類の項目である。
