StudyMed医師国家試験

肝臓は「いま燃えているか」と「どこまで傷んだか」―ALTが映す慢性肝炎の活動性

第108回医師国家試験 C問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第108回 C問題 第9問

慢性肝炎において肝炎活動性の指標となる血液検査項目はどれか。

  1. a.ALT
  2. b.血小板
  3. c.アルブミン
  4. d.総コレステロール
  5. e.プロトロンビン時間

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、慢性肝炎の血液検査をどう使い分けるかを問う問題だ。鍵になるのは、検査が「炎症の強さ(活動性)」を見ているのか、「線維化や肝予備能の低下(進行度)」を見ているのかを区別すること。この2つの軸で選択肢を整理してみよう。
医学生医学生
肝機能検査というと、全部まとめて「肝臓の数値」と覚えてしまっていました。
ドクタードクター
多くの人が最初はそうなんだ。でも目的が違う。肝細胞が炎症で壊れると、細胞の中にあった酵素が血中に漏れ出す。これを逸脱酵素と呼び、代表がASTとALTだ。壊れる細胞が多いほど値が上がるから、いまどれだけ炎症が起きているかを反映する。
医学生医学生
ということは、正解はALTですね。ASTも上がるのに、なぜALTが選ばれるんでしょう。
ドクタードクター
いい疑問だ。ASTは心筋や骨格筋、赤血球にも多く含まれるから、心筋梗塞や筋肉の障害、溶血でも上がってしまう。ALTは肝細胞にほぼ限局しているので、肝炎の活動性の指標としてより特異的なんだ。慢性肝炎では治療適応の判断や抗ウイルス療法の効果判定にもALTが使われる。
医学生医学生
消化器内科の実習で、C型肝炎の治療後にALTが正常化したのを指導医の先生が喜んでいたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが炎症の鎮静化を示すサインだね。では残りの選択肢を見ていこう。血小板数は何を反映していると思う?
医学生医学生
肝臓と血小板の関係がいまひとつピンときません。出血しやすくなるからでしょうか。
ドクタードクター
理由は2つある。線維化が進むと門脈圧が上がって脾腫と脾機能亢進が起こり、血小板が脾臓で壊されやすくなる。さらに、血小板の産生を促すトロンボポエチンは肝臓でつくられるので、肝臓が傷むとその産生も落ちる。だから血小板数は線維化の程度をよく反映するんだ。慢性C型肝炎では10万/μL未満が肝硬変を疑う目安とされる。
医学生医学生
血小板は進行度の指標なんですね。アルブミンは肝臓で合成される蛋白なので、合成能の指標でしょうか。
ドクタードクター
その通り。肝細胞の数と機能が減ると血中アルブミンは低下する。肝予備能の指標で、Child-Pugh分類の項目にも入っている。総コレステロールも主に肝臓で合成されるから、肝硬変で合成能が落ちると低下する。どちらも炎症の強さではなく、肝臓の残された力を見ているわけだ。
医学生医学生
プロトロンビン時間も凝固因子が肝臓でつくられるから延びる、という理屈ですね。
ドクタードクター
そう。第II・VII・IX・X因子などの凝固因子は肝臓で合成され、半減期が短いので合成能低下を鋭敏に反映する。肝硬変が進むとPTは延長し、PT活性%は低下する。これもChild-Pugh分類の項目だ。
医学生医学生
整理すると、ALTだけが「いま燃えているか」で、ほかの4つは「どこまで傷んだか」なんですね。
ドクタードクター
見事なまとめだ。ここからは発展知識。AST/ALT比にも意味があって、慢性肝炎ではALT優位が多いけれど、肝硬変に進むとAST優位になる傾向がある。アルコール性肝障害でもAST優位になりやすい。
医学生医学生
逆に、ALTが正常なら肝臓は安心と考えていいんでしょうか。
ドクタードクター
そこは臨床で特に注意したい点だ。炎症が落ち着いていても線維化がすでに進んでいることがあるし、肝硬変の末期では壊れる肝細胞自体が少なくてALTがあまり上がらないこともある。だから血小板数や、年齢・AST・ALT・血小板数から計算するFIB-4 index、M2BPGiなどの線維化マーカーで進行度を併せて評価するんだ。
医学生医学生
活動性と進行度を別々に評価して、両方そろって初めて病状がわかるということですね。CBTでは単語の暗記で終わっていたので、つながった気がします。
ドクタードクター
そう感じてもらえたら嬉しい。検査値を見るときは、何を反映する検査なのかを常に意識してほしい。

まとめ

慢性肝炎の血液検査は、炎症の強さ(活動性)を示すものと、線維化や肝予備能の低下(進行度)を示すものに分けて考えると整理できます。活動性の指標は肝細胞の破壊で血中に漏れ出す逸脱酵素のAST・ALTで、なかでもALTは肝細胞にほぼ限局するため特異性が高く、治療適応や治療効果の判定にも用いられます。一方、血小板数の低下は脾機能亢進とトロンボポエチン産生低下を介して線維化の進行を反映し、アルブミン・総コレステロールの低下やプロトロンビン時間の延長は肝合成能の低下を示し、アルブミンとプロトロンビン時間はChild-Pugh分類の項目です。ALTが正常でも線維化が進んでいることがあるため、FIB-4 indexや線維化マーカーを併用して進行度を評価することが重要です。検査ごとに何を反映するのかを理解することが、肝疾患の病状を正しく把握する第一歩になります。

解答・解説

正解はaです

慢性肝炎の血液検査は、大きく二つの目的に分けて考えると整理しやすい。一つは「いま肝細胞がどれだけ壊れているか(炎症の強さ=活動性)」をみる検査、もう一つは「肝臓の線維化がどこまで進み、肝臓の働き(予備能)がどれだけ落ちているか(進行度)」をみる検査である。 活動性の指標となるのは、肝細胞が壊れたときに細胞内から血中へ漏れ出す酵素(逸脱酵素)である。代表がAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)で、炎症が強く肝細胞壊死が多いほど血中濃度が高くなる。とくにALTは肝細胞にほぼ限局して存在するため、肝炎の活動性を反映する指標として最もよく用いられる。 一方、血小板数、アルブミン、総コレステロール、プロトロンビン時間は、線維化の進行や肝合成能の低下を反映する項目であり、慢性肝炎から肝硬変への進展度(病期)を推定するのに使われる。したがって「活動性」を問う本問では、逸脱酵素であるALTを選べばよい。

選択肢考察

  1. ○a.  ALT

    ALTは肝細胞の細胞質に多く含まれる酵素で、肝細胞が炎症により破壊されると血中へ流出する。血中ALTの上昇の程度は肝細胞壊死の量、すなわち炎症の強さを反映するため、慢性肝炎の活動性評価、治療適応の判断、抗ウイルス療法などの治療効果判定に用いられる。ASTも同様に上昇するが、ASTは心筋・骨格筋・赤血球などにも存在するため、肝炎に対する特異性はALTのほうが高い。

  2. ×b.  血小板

    肝線維化が進むと門脈圧が上昇して脾腫・脾機能亢進を来し、さらに肝臓で産生される血小板産生促進因子トロンボポエチンが減少するため、血小板数は低下する。血小板数は線維化の程度をよく反映し、慢性C型肝炎では10万/μL未満で肝硬変が疑われる目安とされる。したがって進行度(病期)の指標であり、炎症の活動性の指標ではない。

  3. ×c.  アルブミン

    アルブミンは肝臓で合成される蛋白質であり、肝硬変が進んで肝細胞の数と機能が減ると血中濃度が低下する。肝合成能(肝予備能)の指標で、Child-Pugh分類の評価項目にも含まれる。進行度の指標であり、活動性の指標ではない。

  4. ×d.  総コレステロール

    コレステロールも主に肝臓で合成されるため、肝硬変で合成能が低下すると血中総コレステロール値は低下する。肝予備能の低下を反映する項目であり、炎症の活動性を示すものではない。

  5. ×e.  プロトロンビン時間

    プロトロンビン時間(PT)は、肝臓で合成される凝固因子(第II・VII・IX・X因子など)の量を反映する。凝固因子は半減期が短いため、肝合成能低下を鋭敏に反映し、肝硬変の進行とともにPTは延長する(PT活性%は低下する)。Child-Pugh分類の評価項目の一つであり、進行度の指標である。

肝疾患の血液検査の整理

・肝細胞障害(活動性): AST、ALT(逸脱酵素)。急性肝炎や慢性肝炎の増悪で上昇する。 ・胆汁うっ滞: ALP、γ-GTP、直接ビリルビン。 ・肝合成能(予備能): アルブミン、プロトロンビン時間、コリンエステラーゼ、総コレステロール。肝硬変で低下(PTは延長)。 ・線維化・門脈圧亢進: 血小板数低下、ヒアルロン酸・IV型コラーゲン・M2BPGi(Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)などの線維化マーカー上昇。FIB-4 indexのような年齢・AST・ALT・血小板数から計算するスコアも用いられる。 ・解毒・排泄能: アンモニア、総ビリルビン、ICG(インドシアニングリーン)15分停滞率。

AST/ALT比

慢性肝炎ではALT優位(AST/ALT<1)となることが多いが、肝硬変へ進行するとAST優位となる傾向がある。アルコール性肝障害でもAST優位になりやすい。

Child-Pugh分類

肝性脳症、腹水、血清総ビリルビン、血清アルブミン、プロトロンビン時間(活性%またはINR)の5項目を点数化し、A・B・Cの3段階で肝予備能を評価する。

POINT

・肝炎の「活動性」は逸脱酵素(AST、ALT)で評価し、なかでもALTは肝特異性が高い。 ・肝硬変への「進行度」は血小板数低下、アルブミン・コレステロール・コリンエステラーゼ低下、プロトロンビン時間延長などで推定する。 ・アルブミンとプロトロンビン時間はChild-Pugh分類の項目である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。