StudyMed医師国家試験

1歳半で視力は測れない―発達段階から読み解く幼児健診の項目

第107回医師国家試験 G問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第107回 G問題 第7問

1歳6か月児健康診査に含まれないのはどれか。

  1. a.運動発達の状況
  2. b.歯科健康診査
  3. c.視力の測定
  4. d.身体発育の状況
  5. e.予防接種の実施状況

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は母子保健の分野から、1歳6か月児健康診査の項目を問う問題だ。ポイントは3歳児健診との違い、そして「その月齢の子どもに何ができて何ができないか」という発達の視点だよ。
医学生医学生
幼児健診は1歳6か月と3歳の2回が法律で決まっていた気がします。実施するのは都道府県でしたっけ。
ドクタードクター
惜しい、実施主体は市町村だ。母子保健法第12条で、市町村に1歳6か月児健診と3歳児健診の実施が義務づけられている。具体的な項目は母子保健法施行規則に定められていて、両者でかなり共通しているんだ。
医学生医学生
共通しているなら、違いを覚えればいいわけですね。
ドクタードクター
その通り。3歳児健診にだけ加わるのが「眼の疾病及び異常の有無」と「耳、鼻及び咽頭の疾病及び異常の有無」。つまり視覚と聴覚の検査は3歳児健診で行う。だから今回、1歳6か月児健診に含まれないのは視力の測定なんだ。
医学生医学生
なぜ1歳6か月ではやらないんでしょう。弱視は早く見つけたほうがいいと眼科の講義で習いましたが。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。答えは発達段階にある。ランドルト環や絵視標を使う自覚的な視力検査は、子どもが指標を理解して、指さしや言葉で答えられることが前提になる。それが可能になるのはおおむね3歳前後からで、1歳6か月で視力を数値として測るのは難しいんだ。
医学生医学生
小児科を回ったとき、3歳の子でも視力検査に集中してもらうのは大変そうでした。1歳半では確かに無理ですね。
ドクタードクター
そうなんだ。3歳児健診の視覚検査は、視力の発達が完成する前に弱視や斜視を見つけて治療につなげるのが目的。近年は屈折検査機器を使ったスクリーニングの導入も進められているよ。では、ほかの項目も確認しよう。運動発達の状況はどうかな。
医学生医学生
1歳6か月なら多くの子が一人で歩けているはずなので、歩けるかどうかは大事なチェックポイントだと思います。
ドクタードクター
その通り。施行規則でいう「四肢運動障害の有無」や「精神発達の状況」にあたる。一人歩きは通常1歳3か月頃までに約9割が獲得するから、1歳6か月で独歩できなければ、脳性麻痺や筋疾患、発達の遅れなどを考えるきっかけになる。
医学生医学生
歯科健診も含まれますよね。乳歯が生え始める時期だからでしょうか。
ドクタードクター
そう、乳歯が生えそろい始めるころで、哺乳瓶の使用や甘い飲み物の習慣からむし歯ができやすい時期だ。歯科医師による診察と、歯みがきや食習慣の保健指導が行われる。身体発育の状況も施行規則の最初に挙げられている項目で、身長・体重・頭囲を測って乳幼児身体発育曲線で評価するよ。
医学生医学生
予防接種の実施状況も確認するんですよね。母子健康手帳を見て、打ち忘れがないかチェックするイメージです。
ドクタードクター
そうだね。1歳を過ぎるとMRワクチンや水痘ワクチンなど重要な定期接種が続くから、未接種があれば接種を勧める。育児上の問題も項目に入っていて、健診は保護者を支援する場でもあるんだ。
医学生医学生
整理すると、身体発育・運動や精神の発達・歯科・予防接種は両方の健診に共通で、眼と耳鼻咽頭は3歳児健診から、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、1歳6か月で注目する発達の目安も覚えておこう。一人歩きのほかに、意味のある単語をいくつか話す、指さしで意思を伝える、などがある。言葉の遅れや指さしが見られないことは、自閉スペクトラム症を含む発達の問題に気づくきっかけになる。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で、発達歴を聞くときに「初めての言葉はいつでしたか」と確認したのを思い出しました。
ドクタードクター
そういう問診は実際の外来でも役立つよ。ちなみに、成人と同じ字づまり視力表で検査できるのはおおむね就学前後から。年齢ごとに「何ができるか」を意識すると、健診の項目は自然に理解できるはずだ。

まとめ

1歳6か月児健診と3歳児健診は、母子保健法第12条に基づき市町村が実施する幼児健診で、項目は母子保健法施行規則に定められています。身体発育、栄養状態、運動・精神発達、言語、歯・口腔、予防接種の実施状況、育児上の問題などは両者に共通しますが、眼と耳・鼻・咽頭の検査は3歳児健診で初めて加わるため、視力の測定は1歳6か月児健診には含まれません。自覚的な視力検査は指標を理解して応答できるおおむね3歳前後から可能となり、弱視や斜視の早期発見を目的に3歳児健診で行われます。1歳6か月では独歩や有意語、指さしといった発達の目安を確認することが重要で、健診項目を発達段階と結びつけて理解することが、小児保健の実践にもつながります。

解答・解説

正解はcです

1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査は、母子保健法第12条により市町村に実施が義務づけられた幼児健診であり、その具体的な項目は母子保健法施行規則第2条に定められている。 1歳6か月児健診の項目は、身体発育の状況、栄養状態、脊柱・胸郭の疾病や異常の有無、皮膚の疾病の有無、歯・口腔の疾病や異常の有無、四肢運動障害の有無、精神発達の状況、言語障害の有無、予防接種の実施状況、育児上問題となる事項、その他の疾病や異常の有無である。 3歳児健診ではこれらに加えて「眼の疾病及び異常の有無」と「耳、鼻及び咽頭の疾病及び異常の有無」が項目に入る。つまり、視覚・聴覚の検査は3歳児健診で行うものと覚えておくとよい。これは発達段階と関係している。視力検査は子どもが指標を見て指さしや言葉で答えられることが前提となり、ランドルト環などの自覚的な視力検査はおおむね3歳前後になって初めて可能になる。1歳6か月の時点では、視力を数値として測定することは困難である。 したがって、選択肢のうち1歳6か月児健診に含まれないのは「視力の測定」である。

選択肢考察

  1. ×a.  運動発達の状況

    含まれる。施行規則の「四肢運動障害の有無」「精神発達の状況」にあたる。1歳6か月は多くの子どもが一人歩きを獲得している時期であり(通常1歳3か月頃までに約9割が独歩可能となる)、独歩ができない場合は脳性麻痺や筋疾患、発達の遅れなどを疑う手がかりとなる。

  2. ×b.  歯科健康診査

    含まれる。施行規則の「歯及び口腔の疾病及び異常の有無」にあたる。1歳6か月頃は乳歯が生えそろい始め、哺乳瓶の使用や甘味飲料の習慣などによってむし歯(う蝕)が生じやすくなる時期である。そのため歯科医師による診察と、歯みがき・食習慣についての保健指導が行われる。

  3. ○c.  視力の測定

    1歳6か月児健診の法定項目には、眼の疾病・異常の検査は含まれていない。視力の測定は3歳児健診の「眼の疾病及び異常の有無」の一環として行われるものである。自覚的な視力検査は被検児が指標(ランドルト環や絵視標)を理解して応答できることが必要で、それが可能になるのはおおむね3歳前後からであるため、1歳6か月では実施できない。3歳児健診では弱視や斜視を早期に発見することが目的で、近年は屈折検査機器を用いたスクリーニングの導入も進められている。

  4. ×d.  身体発育の状況

    含まれる。施行規則で最初に挙げられている項目である。身長・体重・頭囲などを計測し、乳幼児身体発育曲線に当てはめて、発育不良や肥満、頭囲の異常などがないかを評価する。栄養状態の評価とあわせて行われる。

  5. ×e.  予防接種の実施状況

    含まれる。施行規則に「予防接種の実施状況」が明記されている。1歳以降は麻しん風しん混合(MR)ワクチンや水痘ワクチンなど重要な定期接種が続く時期であり、母子健康手帳で接種歴を確認し、未接種のものがあれば接種を勧奨する。

1歳6か月児健診と3歳児健診の比較

・対象:1歳6か月児健診は満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児、3歳児健診は満3歳を超え満4歳に達しない幼児 ・共通項目:身体発育状況、栄養状態、脊柱・胸郭の疾病や異常、皮膚の疾病、歯・口腔の疾病や異常、四肢運動障害、精神発達の状況、言語障害、予防接種の実施状況、育児上問題となる事項、その他の疾病や異常 ・3歳児健診のみの項目:眼の疾病及び異常の有無(視力検査など)、耳・鼻・咽頭の疾病及び異常の有無(聴覚検査など)

各健診で注目する発達の目安

・1歳6か月:一人歩き、意味のある単語(有意語)をいくつか話す、指さしで意思を伝える、など。言葉の遅れや指さしの欠如は、自閉スペクトラム症を含む発達の問題を見つけるきっかけとなる。 ・3歳:二語文以上の会話、自分の名前が言える、階段を上れる、など。

視力検査が可能になる時期

自覚的な視力検査(ランドルト環、絵視標)は3歳前後から可能になる。成人と同じ字づまり視力表を用いた検査ができるのは、おおむね就学前後(5〜6歳)以降である。視力の発達が完成する前に弱視を発見し治療を始めることが重要であり、これが3歳児健診で視覚検査を行う理由である。

実施主体

1歳6か月児健診・3歳児健診はいずれも市町村が実施する(母子保健法第12条)。

POINT

・1歳6か月児健診と3歳児健診は、母子保健法第12条に基づき市町村が実施する義務がある。 ・視覚(眼)と聴覚(耳・鼻・咽頭)の検査は3歳児健診で初めて加わる項目であり、1歳6か月児健診には含まれない。 ・運動・精神発達、身体発育、歯科、予防接種の実施状況は両方の健診に共通する。 ・自覚的な視力検査は3歳前後から可能になる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。