黒いけれど心配いらない?―生後20時間の便が教える「胎便」の見分け方
第107回医師国家試験 G問題 第44問
国試問題にチャレンジ
生後1日の新生児。在胎39週,3,010 gで出生した。生後5分のApgarスコアは8点であった。糖水を与えた後で少量の嘔吐が2回認められた。生後20時間で排泄された便の写真を別に示す。 この便から考えられるのはどれか。

- a.胎便
- b.移行便
- c.胆道疾患
- d.消化管出血
- e.消化管閉鎖
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
正常な新生児は通常生後24時間以内に、羊水成分・腸管分泌物・胆汁色素などからなる暗緑色〜黒緑色で粘稠、においの少ない胎便を排泄します。黒っぽい便でも、元気な正期産児の生後24時間以内の便であれば、まず胎便と考えるのが基本です。移行便は哺乳が進んだ生後2〜4日頃の緑〜緑黄色便、胆道閉鎖症では灰白色〜淡黄色便、上部消化管出血(新生児メレナなど)では黒色タール便と、時期と色で区別します。生後早期の少量の嘔吐は初期嘔吐であることが多い一方、胆汁性嘔吐や胎便排泄の遅れは消化管閉鎖やHirschsprung病などを疑うサインです。便の性状と排泄時期を正しく評価することは、新生児の異常を早期に見つけるための第一歩になります。
解答・解説
正解はaです
所見の整理
・在胎39週、出生体重3,010 gの正期産・適正体重児で、生後5分のApgarスコアは8点と良好である。出生時に大きな問題はなかったと考えられる。 ・糖水を与えた後に少量の嘔吐が2回ある。生後早期の新生児では、分娩時に飲み込んだ羊水や粘液のために少量の嘔吐がよくみられる(初期嘔吐)。量が少なく回数も限られ、胆汁性(緑色)嘔吐や腹部膨満などの記載もないため、消化管閉鎖などの病的な嘔吐を示唆する所見とはいえない。 ・生後20時間で排便があった。写真の便は暗緑色〜黒色で粘稠なタール状の外観であり、よく見ると緑がかった色調が確認できる。
判断の考え方
正常な新生児は、通常生後24時間以内に最初の便である胎便を排泄する。胎便は胎内で飲み込んだ羊水の成分(剥がれた皮膚上皮細胞、胎毛など)、腸管の分泌物、胆汁色素などからなり、暗緑色〜黒緑色の、粘り気が強くにおいの少ない便である。 黒っぽい便を見たときは消化管出血によるタール便(黒色便)との鑑別が必要になるが、本例は元気な正期産児で、生後24時間以内の排便であり、出血を疑わせる全身所見(顔色不良、頻脈など)の記載もない。緑がかった色調も合わせると、正常な胎便と判断するのが妥当である。
選択肢考察
- ○a. 胎便
胎便は、羊水成分・腸管の分泌物・胆汁色素などからなる暗緑色〜黒緑色の粘稠な便で、においはほとんどない。正期産児の大多数は生後24時間以内に、ほぼ全例が48時間以内に初回の胎便を排泄する。本例は生後20時間の排便で、緑がかった黒色の粘稠な便であり、胎便の特徴に合致する。
- ×b. 移行便
移行便は、胎便に哺乳した母乳やミルクの消化物が混じった便で、緑色〜緑黄色を呈し、胎便から普通便(黄色便)に移り変わる途中にみられる。哺乳が進んだ生後2〜4日頃に出現するのが一般的であり、生後20時間でまだ糖水しか与えていない時期の便としては考えにくい。
- ×c. 胆道疾患
胆道閉鎖症などで胆汁が腸管に流れなくなると、便に胆汁色素が含まれなくなり、淡黄色〜灰白色の便(無胆汁便)となる。本例の便は緑がかった黒色で胆汁色素を十分に含んでおり、胆道疾患を示唆しない。なお胆道閉鎖症では生後早期には便色の変化が目立たないこともあり、母子健康手帳の便色カードで生後数週間から数か月にかけて便色を確認することが早期発見に役立つ。
- ×d. 消化管出血
上部消化管からの出血では、血液が胃酸などで変化して黒色のタール便(メレナ)となる。新生児ではビタミンK欠乏による新生児メレナ(新生児ビタミンK欠乏性出血症)が生後2〜4日頃に起こりやすい。また分娩時に飲み込んだ母体血による仮性メレナもあり、Apt試験(アルカリ変性試験)で児の血液か母体血かを区別する。本例は元気な正期産児で生後24時間以内の排便であり、緑がかった色調からも胎便と考えられ、出血を積極的に疑う根拠はない。
- ×e. 消化管閉鎖
消化管閉鎖では、閉鎖部位によって胆汁性嘔吐の反復や腹部膨満がみられ、胎便の排泄がない、あるいは灰白色の粘液様の少量の便しか出ないことが多い。本例は生後20時間で胎便が排泄されており、嘔吐も糖水後の少量2回にとどまることから、消化管閉鎖は考えにくい。
新生児の便の変化
・胎便:生後24時間以内に排泄が始まり、2〜3日程度続く。暗緑色〜黒緑色、粘稠、無臭に近い。 ・移行便:生後2〜4日頃。胎便と乳汁の消化物が混じった緑色〜緑黄色の便。 ・普通便(乳便):生後4〜5日頃以降。母乳栄養児では黄色の軟らかい便となる。
胎便排泄遅延をきたす疾患
生後24〜48時間を過ぎても胎便が出ない場合は、Hirschsprung病(腸管壁内の神経節細胞の欠如)、消化管閉鎖・狭窄、胎便栓症候群、胎便性イレウス(嚢胞性線維症に合併することが多い)、甲状腺機能低下症などを考える。
新生児の嘔吐
・初期嘔吐:生後早期に飲み込んだ羊水や粘液を吐くもので、通常は一過性で心配はない。 ・胆汁性(緑色)嘔吐:十二指腸乳頭部より肛門側の閉塞(腸回転異常症・中腸軸捻転、小腸閉鎖など)を示唆し、緊急の評価が必要である。
便の色と疾患
・灰白色〜淡黄色便:胆道閉鎖症などの閉塞性黄疸。 ・黒色便(タール便):上部消化管出血(新生児メレナ、仮性メレナなど)。 ・イチゴゼリー状の粘血便:腸重積症(乳幼児)。
新生児メレナの予防
新生児はビタミンKが欠乏しやすい(胎盤移行が少ない、腸内細菌叢が未熟、母乳中の含有量が少ない)ため、ビタミンK2シロップの予防投与が行われる。
POINT
・胎便は暗緑色〜黒緑色、粘稠で、正常新生児は生後24時間以内に初回排泄する。 ・移行便は生後2〜4日頃、胆道閉鎖症は灰白色便、上部消化管出血は黒色タール便と特徴を区別する。 ・生後早期の少量の嘔吐は羊水や粘液による初期嘔吐が多い。胆汁性嘔吐は要注意。 ・黒っぽい便でも、元気な児の生後24時間以内の便ならまず胎便を考える。
