陣痛で来院した産婦にまず何をする?―「今の胎児の元気さ」を記録する分娩監視装置
第107回医師国家試験 G問題 第43問
国試問題にチャレンジ
30歳の初産婦。妊娠40週5日。10分周期の下腹部緊満を主訴に来院した。これまでの妊娠経過に異常を認めなかった。脈拍72/分,整。血圧124/64 mmHg。内診で先進部は小泉門で母体の右後方に触れる。子宮口4 cm開大,展退度80%,児頭下降度SP+1 cm。子宮口の位置は中央,硬さは軟である。未破水である。尿所見:蛋白(-),糖(-)。ドプラ聴診器による胎児心拍数は150/分である。 次に行うのはどれか。
- a.導尿
- b.外陰消毒
- c.心電図検査
- d.分娩監視装置装着
- e.パルスオキシメーター装着
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
10分以内の周期で規則的な子宮収縮が始まれば陣痛発来(分娩開始)であり、本例は母体・胎児とも異常のない正期産初産婦の分娩第1期です。入院時には母体のバイタル、破水の有無、内診による分娩進行度を評価したうえで、分娩監視装置(CTG)を少なくとも20分以上装着し、胎児心拍数と子宮収縮を同時に記録して胎児の健常性を確認します。外陰消毒は分娩第2期の娩出準備で行う処置であり、導尿・母体心電図・パルスオキシメーターは正常分娩ではルーチンに行うものではありません。小泉門が母体右後方なら第2後方後頭位ですが、分娩早期には多くが自然に前方後頭位へ回旋するため、経過を追って評価します。入院時の優先順位を理解しておくことは、分娩室での実習や臨床で胎児の異常を早期に捉える基本となります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
・妊娠40週5日の初産婦で、これまでの経過は正常。10分周期の規則的な子宮収縮(下腹部緊満)があり、陣痛の発来(分娩開始)と判断できる。一般に陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の規則的な子宮収縮が始まった時点を分娩開始とする。 ・母体:脈拍72/分・整、血圧124/64 mmHg、尿蛋白・尿糖陰性と、バイタルサインに異常はなく、妊娠高血圧症候群などを疑う所見もない。 ・内診:子宮口4 cm開大、展退度80%、児頭下降度SP+1 cm(坐骨棘を結ぶ線より1 cm下方)、子宮口の位置は中央、硬さは軟。Bishopスコアで評価すると、開大4 cm=2点、展退80%=3点、下降度+1=3点、硬さ軟=2点、位置中央=1点の計11点であり、頸管は十分に熟化している。未破水である。 ・先進部の小泉門(後頭側の目印)が母体の右後方に触れる。児背(後頭)が母体の右側にある第2胎向で、後頭が後方を向いているので第2後方後頭位(右後方後頭位)である。分娩早期には後方後頭位はしばしばみられ、その多くは分娩の進行とともに児頭が回旋して前方後頭位となり経腟分娩に至る。現時点で特別な処置を要する状況ではない。 ・胎児心拍数150/分:正常範囲(110〜160 bpm)である。
診断と設問の考え方
正期産の初産婦が陣痛発来により来院した分娩第1期であり、母体・胎児ともに現時点で異常はない。入院時にまず行うべきことは、胎児の健常性(well-being)と陣痛の状態を客観的に確認することである。ドプラ聴診器による心拍数の聴取は一時点の心拍数しかわからないため、分娩監視装置(胎児心拍数陣痛図:CTG)を装着して、胎児心拍数基線・基線細変動・一過性頻脈や一過性徐脈の有無と、子宮収縮の頻度・持続を同時に記録し、正常な胎児心拍数パターンであることを確認する。
選択肢考察
- ×a. 導尿
膀胱の充満は児頭の下降や陣痛を妨げるため、分娩第1期には2〜3時間ごとを目安に自然排尿を促す。カテーテルによる導尿は尿路感染や尿道損傷のリスクがあるので、自力で排尿できない場合や膀胱が著しく充満している場合に限って行い、ルーチンの処置ではない。本例で次に行うべきことではない。
- ×b. 外陰消毒
分娩のための外陰消毒は、子宮口が全開大して分娩第2期に入り、娩出の準備を整える段階で行うものである。子宮口4 cm開大の初産婦ではまだ分娩まで時間がかかり、今行う必要はない(分娩が長引けば消毒は繰り返すことになる)。入院時にまず優先すべきことではない。
- ×c. 心電図検査
母体の脈拍は72/分で整、血圧も正常で、心疾患の既往や症状もない。正常分娩において母体の心電図検査はルーチンには不要である。心疾患合併妊娠や不整脈を疑う所見がある場合に考慮する。
- ○d. 分娩監視装置装着
分娩監視装置(CTG)は、胎児心拍数と子宮収縮を同時に連続記録し、胎児の低酸素状態の兆候を早期に捉えるための基本的な検査である。分娩のために入院した際は、少なくとも20分以上装着して、胎児心拍数基線が正常範囲で、基線細変動が保たれ、一過性徐脈がないといった正常パターンであることを確認する。その後は、リスクや分娩経過に応じて連続モニタリングまたは間欠的な聴取を行う。本例で次に行うべき処置である。
- ×e. パルスオキシメーター装着
パルスオキシメーターは母体の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を測る機器である。本例の母体に呼吸・循環の異常はなく、正常分娩でルーチンに装着する必要はない。帝王切開などで麻酔を行う場合や、母体の呼吸循環状態に異常がある場合に用いる。
分娩の3期
・分娩第1期(開口期):分娩開始から子宮口全開大(10 cm)まで。初産婦で10〜12時間程度、経産婦で4〜6時間程度が目安。子宮口の開大がゆっくり進む潜伏期と、急速に進む活動期に分けられる。 ・分娩第2期(娩出期):子宮口全開大から胎児娩出まで。初産婦で1〜2時間程度、経産婦で30分〜1時間程度。 ・分娩第3期(後産期):胎児娩出から胎盤娩出まで。
Bishopスコア(頸管成熟度の評価)
開大度(0 cm:0点、1〜2 cm:1点、3〜4 cm:2点、5 cm以上:3点)、展退度(0〜30%:0点、40〜50%:1点、60〜70%:2点、80%以上:3点)、児頭下降度(SP−3:0点、−2:1点、−1〜0:2点、+1以上:3点)、硬さ(硬:0点、中:1点、軟:2点)、子宮口の位置(後方:0点、中央:1点、前方:2点)の合計13点満点。一般に9点以上で頸管は熟化していると判断する。
胎位・胎向の読み方
・頭位では、小泉門(後頭側)の位置で後頭(児背)の向きを判断する。児背が母体の左側にあるものを第1胎向、右側にあるものを第2胎向という。 ・正常な分娩機転では、児頭は屈曲(第1回旋)して小泉門が先進し、続いて内回旋(第2回旋)により小泉門が母体の前方(恥骨側)へ向かう前方後頭位となって娩出される。 ・小泉門が後方(仙骨側)を向いたまま進むものを後方後頭位といい、分娩が遷延する原因となることがあるが、分娩早期には一時的にみられることも多い。
分娩監視装置(CTG)の正常所見
・胎児心拍数基線:110〜160 bpm ・基線細変動:6〜25 bpm(中等度) ・一過性頻脈がある ・一過性徐脈がない これらを満たせば胎児の状態は良好(reassuring)と判断される。
入院時の産婦の取り扱い
母体のバイタルサインを確認し、胎児心拍数を聴取し、破水の有無と内診による分娩進行度を評価したうえで、分娩監視装置で胎児の状態を確認する。浣腸・剃毛・導尿などはルーチンで行う必要はなく、必要に応じて行う。
POINT
・10分以内の周期の規則的な子宮収縮は陣痛発来(分娩開始)。 ・分娩のために入院した産婦には、まず分娩監視装置(CTG)を20分以上装着して胎児の健常性を確認する。 ・外陰消毒は分娩第2期の娩出準備で行う。導尿・母体心電図・パルスオキシメーターは正常分娩でルーチンには不要。 ・小泉門の位置で胎向・回旋を判断する(母体右後方なら第2後方後頭位)。
