Th2は「マクロファージの相棒」ではない―ヘルパーT細胞の役割分担を整理する
第107回医師国家試験 E問題 第12問
国試問題にチャレンジ
Th2(ヘルパーT細胞のサブセット)について誤っているのはどれか。
- a.液性免疫を活性化する。
- b.Th1細胞応答を抑制する。
- c.寄生虫感染で活性化される。
- d.マクロファージを活性化する。
- e.インターロイキン4〈IL-4〉を産生する。
対話形式の解説
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医学生まとめ
ナイーブCD4陽性T細胞は、IL-12・IFN-γの存在下ではTh1(転写因子T-bet)に、IL-4の存在下ではTh2(転写因子GATA3)に分化します。Th1はIFN-γでマクロファージを古典的に活性化し、結核菌などの細胞内寄生菌に対する細胞性免疫を担うのに対し、Th2はIL-4・IL-5・IL-13を産生して液性免疫、IgE産生、好酸球や肥満細胞の動員を通じて寄生虫排除やI型アレルギーに関わります。両者はIFN-γとIL-4・IL-10を介して互いに抑制し合うため、「マクロファージを活性化する」をTh2の性質とする記述は誤りです。Th17やTregなど他のサブセットも含めた役割分担の理解は、喘息やアトピー性皮膚炎に対する抗IL-5抗体・抗IL-4受容体抗体といった生物学的製剤の作用を理解する土台にもなります。
解答・解説
正解はdです
本問は、CD4陽性ヘルパーT細胞(Th細胞)のサブセットのうちTh2細胞の性質を問う一般問題であり、「誤っているもの」を1つ選ぶ。
Th細胞の分化の考え方
ナイーブCD4陽性T細胞は、抗原提示を受けたときの周囲のサイトカイン環境によって異なるサブセットへ分化する。IL-12やインターフェロンγ(IFN-γ)の存在下ではTh1細胞へ、IL-4の存在下ではTh2細胞へ分化する。分化を決める転写因子はTh1がT-bet、Th2がGATA3である。
Th1とTh2の役割分担
Th1細胞はIFN-γやIL-2を産生し、マクロファージや細胞傷害性T細胞を活性化して、結核菌などの細胞内寄生病原体に対する細胞性免疫を担う。 Th2細胞はIL-4、IL-5、IL-13などを産生し、B細胞の抗体産生(特にIgEへのクラススイッチ)を助けて液性免疫を担うとともに、好酸球や肥満細胞を動員して寄生虫(蠕虫)の排除に働く。アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎など)にも深く関わる。 さらに、両者は互いに相手の分化・機能を抑える関係にある(IFN-γはTh2を、IL-4やIL-10はTh1を抑制する)。
解き方
「マクロファージを古典的に活性化して殺菌能を高める」のはTh1細胞の代表的な機能であり、IFN-γがその主役である。したがって、これをTh2の性質とする記述が誤りとなる。
選択肢考察
- ×a. 液性免疫を活性化する。
正しい記述である。Th2細胞はIL-4、IL-13などを介してB細胞の増殖・分化と抗体産生を促し、液性免疫(抗体による免疫)を活性化する。IL-4はB細胞のIgEへのクラススイッチを誘導する代表的なサイトカインである。細胞性免疫を主に担うTh1細胞と対比して理解するとよい。
- ×b. Th1細胞応答を抑制する。
正しい記述である。Th2細胞が産生するIL-4はナイーブT細胞のTh1への分化を妨げ、IL-10はマクロファージや樹状細胞からのIL-12産生を抑えることでTh1細胞のIFN-γ産生を低下させる。逆にTh1由来のIFN-γはTh2への分化を抑制する。このようにTh1とTh2は相互に拮抗し、一方に偏った免疫応答が形成されやすい。
- ×c. 寄生虫感染で活性化される。
正しい記述である。蠕虫(回虫、鉤虫、糞線虫など)のような大型の寄生虫は、マクロファージが貪食して処理することができない。このような感染ではTh2応答が優位となり、IL-4・IL-13によるIgE産生、IL-5による好酸球の産生・活性化が起こる。IgEで感作された肥満細胞の脱顆粒や好酸球の顆粒蛋白放出、腸管の粘液分泌亢進などにより寄生虫が排除される。寄生虫感染で好酸球増多や血清IgE高値がみられるのはこのためである。
- ○d. マクロファージを活性化する。
誤った記述であり、本問の正解である。マクロファージを活性化して殺菌能力(活性酸素や一酸化窒素の産生など)を高めるのはTh1細胞であり、その中心となるサイトカインはIFN-γである。この経路は結核菌やリステリアなど、マクロファージ内で生き延びる細胞内寄生菌の排除に不可欠である。Th2サイトカイン(IL-4、IL-10、IL-13)はむしろマクロファージの古典的活性化や炎症性サイトカイン産生を抑える方向に働く。なお、IL-4・IL-13は組織修復や線維化に関わる「代替活性化(M2型)マクロファージ」を誘導することが知られるが、一般に「マクロファージの活性化」といえば殺菌能を高める古典的活性化(M1型)を指し、これはTh1の機能である。
- ×e. インターロイキン4〈IL-4〉を産生する。
正しい記述である。IL-4はTh2細胞の代表的なサイトカインであり、B細胞のIgEへのクラススイッチを誘導するとともに、ナイーブT細胞をTh2へ分化させる。産生されたIL-4がさらにTh2分化を促すため、Th2応答は自己増幅的に強まる。Th2はほかにIL-5(好酸球の分化・活性化)、IL-13(IgE産生、気道の粘液産生亢進)、IL-10なども産生する。
主なヘルパーT細胞サブセットの整理
・Th1:分化誘導はIL-12、IFN-γ。転写因子T-bet。産生サイトカインはIFN-γ、IL-2など。マクロファージ活性化、細胞性免疫、細胞内寄生菌(結核菌など)やウイルスへの防御。遅延型(IV型)過敏反応に関与する。 ・Th2:分化誘導はIL-4。転写因子GATA3。産生サイトカインはIL-4、IL-5、IL-13、IL-10など。液性免疫、IgE産生、好酸球・肥満細胞の動員、寄生虫防御。I型アレルギー(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)に関与する。 ・Th17:分化誘導はTGF-β+IL-6(維持にIL-23)。転写因子RORγt。産生サイトカインはIL-17、IL-22など。好中球の動員、細胞外細菌・真菌(カンジダなど)への防御。乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患などの自己免疫・慢性炎症性疾患に関与する。 ・制御性T細胞(Treg):分化誘導はTGF-β(+IL-2)。転写因子Foxp3。産生サイトカインはIL-10、TGF-βなど。免疫応答の抑制と自己寛容の維持。Foxp3の異常はIPEX症候群を起こす。 ・濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh):リンパ節の胚中心でIL-21などを介してB細胞の成熟・抗体の親和性成熟を助ける。
臨床との関連
Th2型炎症(タイプ2炎症)は気管支喘息やアトピー性皮膚炎の病態の中心であり、IL-5を標的とする抗体薬(メポリズマブなど)、IL-4受容体α鎖を標的とする抗体薬(デュピルマブ)などが治療に用いられている。
POINT
・Th1:IFN-γ → マクロファージ活性化、細胞性免疫、細胞内寄生菌 ・Th2:IL-4、IL-5、IL-13 → 液性免疫、IgE産生、好酸球、寄生虫、I型アレルギー ・Th1とTh2は互いに抑制し合う(IFN-γ⇔IL-4・IL-10) ・「マクロファージを活性化する」のはTh1であり、Th2ではない
