「替えれば安全」は思い込み―中心静脈カテーテルは定期交換しない
第107回医師国家試験 C問題 第15問
国試問題にチャレンジ
適切に管理され感染徴候のない中心静脈カテーテルの入れ替え時期について正しいのはどれか。
- a.48時間ごと
- b.96時間ごと
- c.1週間ごと
- d.2週間ごと
- e.定期的な入れ替えは不要
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
適切に管理され感染徴候のない中心静脈カテーテルは、定期的に入れ替えても感染は減らず、新たな穿刺による気胸・動脈穿刺などの合併症や挿入時の汚染の機会を増やすだけなので、定期的な入れ替えは行いません(ガイドワイヤー交換もルーチンには行いません)。定期的に交換するのはドレッシング(ガーゼは2日、透明フィルムは少なくとも7日ごと)と輸液セット(通常は96時間〜7日、脂肪乳剤・血液製剤は24時間以内)であり、末梢静脈カテーテルの72〜96時間という目安とも区別して覚えることが大切です。カテーテルは不要になれば速やかに抜去し、感染を疑えば血液培養2セット以上の採取と抜去・先端培養を行います。挿入時のマキシマル・バリアプリコーションやクロルヘキシジンアルコール消毒と合わせて、「何を、いつ替えるか」を正しく理解することは、病棟での安全な輸液管理の基本となります。
解答・解説
正解はeです
テーマ
中心静脈カテーテル(CVC:central venous catheter)に関連する血流感染(CRBSI:catheter-related bloodstream infection、カテーテル関連血流感染)の予防策のうち、カテーテルの入れ替え時期を問う問題である。
考え方
かつては感染予防のために一定期間ごとにカテーテルを入れ替えることが試みられた。しかし、定期的に入れ替えても感染率は低下せず、むしろ新たな穿刺に伴う機械的合併症(気胸、動脈誤穿刺、血腫など)や、挿入操作そのものによる汚染の機会が増えることが明らかになった。ガイドワイヤーを用いた入れ替えも、定期的に行うことは推奨されていない。 このため、米国疾病予防管理センター(CDC)の血管内カテーテル関連感染予防ガイドラインをはじめとする現在の標準では、「感染予防のみを目的として中心静脈カテーテルを定期的に入れ替えない」とされている。適切に管理され感染徴候がなければ、留置期間の長さだけを理由に入れ替える必要はない。 一方で、定期的に行うべきこととして、刺入部の毎日の観察、ドレッシングの交換、輸液セット(輸液ライン)の交換がある。そして、カテーテルが不要になれば速やかに抜去し、感染が疑われれば抜去・入れ替えを行う。設問の各数値はこれらの別の管理項目の目安と紛らわしく作られているので、それぞれの対象を区別して覚えることが大切である。
選択肢考察
- ×a. 48時間ごと
中心静脈カテーテルを48時間ごとに入れ替える根拠はない。頻回の入れ替えは穿刺に伴う気胸・動脈穿刺などの合併症と、挿入時の汚染による感染の機会を増やすだけである。なお、48時間(2日)はガーゼドレッシングを用いた場合の交換間隔の目安であり、刺入部そのものは毎日観察して発赤・腫脹・圧痛・排膿などの感染徴候を確認する。
- ×b. 96時間ごと
72〜96時間は、成人の末梢静脈カテーテルについて静脈炎・感染予防の観点から示されてきた交換間隔の目安である(末梢カテーテルについては臨床的に必要なときに交換すればよいとする考え方もある)。また輸液セットは、脂肪乳剤・血液製剤などを使わない場合、96時間より短い間隔で交換する必要はなく、少なくとも7日ごとに交換するとされる。いずれも中心静脈カテーテル本体の入れ替え時期ではない。
- ×c. 1週間ごと
1週間(7日)は、滅菌された透明フィルムドレッシングの交換間隔の目安(少なくとも7日ごと。汚れ・湿潤・剥がれがあればその都度交換)であり、輸液セットの交換間隔の上限の目安でもある。中心静脈カテーテル本体を1週間ごとに入れ替える必要はない。
- ×d. 2週間ごと
留置期間が2週間を超えても、適切に管理され感染徴候がなければ入れ替えは不要である。期間を決めて一律に入れ替えても感染は減らず、穿刺による合併症のリスクを負うことになる。長期間の留置が見込まれる場合には、皮下トンネル型カテーテルや皮下埋め込み型ポートの選択を検討する。
- ○e. 定期的な入れ替えは不要
感染予防を目的とした中心静脈カテーテルの定期的な入れ替え(ガイドワイヤーによる入れ替えを含む)は感染率を下げず、新たな挿入に伴う合併症や感染の機会を増やすため推奨されない。適切に管理され感染徴候がなければ入れ替えは不要であり、不要になった時点で速やかに抜去する。感染が疑われる場合や機能不全がある場合には、抜去・入れ替えを行う。
中心静脈カテーテル関連血流感染の予防策(CDCガイドラインなどの要点)
・挿入時:手指衛生と高度無菌遮断予防策(マキシマル・バリアプリコーション:キャップ、マスク、滅菌ガウン、滅菌手袋、全身を覆う大きな滅菌ドレープ)を行う。 ・皮膚消毒:0.5%を超える濃度のクロルヘキシジンアルコール製剤が推奨される。 ・挿入部位:成人の非トンネル型CVCでは、感染リスクの点で大腿静脈を避け、鎖骨下静脈が推奨される(ただし気胸などの機械的合併症のリスクとのバランスで選択する)。超音波ガイド下穿刺は合併症を減らす。 ・留置中:刺入部を毎日観察する。ハブやアクセスポートは使用前に消毒する。 ・ドレッシング:ガーゼは2日ごと、滅菌透明フィルムは少なくとも7日ごとに交換し、湿潤・汚染・剥がれがあればその都度交換する。 ・輸液セット:通常の輸液では96時間より短い間隔で交換する必要はなく、少なくとも7日ごとに交換する。脂肪乳剤・血液・血液製剤を投与したラインは投与開始から24時間以内に交換する(プロポフォールではさらに短い間隔で交換する)。 ・カテーテル本体:定期的な入れ替えは行わず、不要になれば速やかに抜去する。
カテーテル関連血流感染を疑ったとき
カテーテル以外に明らかな感染源のない発熱、刺入部の発赤・排膿などがあれば疑う。カテーテルからと末梢静脈からの血液培養(2セット以上)を採取し、原則としてカテーテルを抜去して先端培養を行う。起炎菌としてはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ属、グラム陰性桿菌などが多い。黄色ブドウ球菌やカンジダによる感染ではカテーテルの抜去が必須であり、カンジダ血症では眼内炎の検索のため眼科診察も行う。
末梢静脈カテーテルとの違い
成人の末梢静脈カテーテルは静脈炎予防の観点から72〜96時間を目安に入れ替えるとされてきたが、中心静脈カテーテルには定期交換の考え方は適用しない。
POINT
・感染徴候のない中心静脈カテーテルは定期的に入れ替えない(ガイドワイヤー交換も定期的には行わない)。不要になれば速やかに抜去する。 ・定期的に交換するのはドレッシング(ガーゼ2日、透明フィルム7日)と輸液セット(96時間〜7日、脂肪乳剤・血液製剤は24時間以内)。 ・末梢静脈カテーテルは72〜96時間ごとが目安。 ・挿入時はマキシマル・バリアプリコーション、クロルヘキシジンアルコールで消毒、成人では大腿静脈を避ける。
