「22」は体重じゃない―減量指導で迷わない推定エネルギー必要量の組み立て方
第107回医師国家試験 B問題 第61問
国試問題にチャレンジ
55歳の男性。職場の定期健康診断の後,減量指導を受けるため,職場の医務室を訪れた。身長165 cm,体重70 kg。健康診断では肥満以外に特記すべき所見を指摘されなかった。仕事は事務作業で,勤務中はほとんどの時間を机に向かって過ごしている。通勤には自家用車を使っている。勤務の都合で運動する時間を確保するのが難しいため,現在の身体活動レベルのまま,BMI〈Body Mass Index〉が22となる体重を目標に減量することにした。55歳の男性の基礎代謝基準値は21.5 kcal/kg/日である。また,推定エネルギー必要量と基礎代謝量の比は,身体活動レベルがⅠ(低い)なら1.50,Ⅱ(ふつう)なら1.75,Ⅲ(高い)なら2.00である。 この受診者に提示する一日の推定エネルギー必要量(kcal)を求めるための計算式はどれか。
- a.22×21.5×1.50
- b.22×21.5×1.75
- c.22×21.5×2.00
- d.70×21.5×1.50
- e.70×21.5×1.75
- f.70×21.5×2.00
- g.22×1.65×1.65×21.5×1.50
- h.22×1.65×1.65×21.5×1.75
- i.22×1.65×1.65×21.5×2.00
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
推定エネルギー必要量は「体重×基礎代謝基準値×身体活動レベル」で求め、減量を目的とする場合は現体重ではなく目標体重を用います。BMI 22となる体重は22×身長(m)²で計算し、BMIの値そのものを体重として掛けるのは誤りです。身体活動レベルは生活の大部分が座位ならⅠ(1.50)、移動や立位、家事、軽い運動などを含めばⅡ(1.75)、立位や移動の多い仕事や活発な運動習慣があればⅢ(2.00)と判定し、本問の受診者では約1,930 kcal/日となります。現体重を使うと維持量に、活動レベルを過大に見積もると過剰な量になる点を押さえておくと、計算問題の取り違えを防げます。この考え方は肥満症や糖尿病の食事療法、産業保健での保健指導にそのまま生かせる実践的な知識です。
解答・解説
正解はgです
問われていること
減量を目指す受診者に示す「一日の推定エネルギー必要量」を求める式を選ぶ問題である。必要な要素は、(1)どの体重を使うか、(2)基礎代謝基準値、(3)身体活動レベル、の三つである。
基本となる式
推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル 基礎代謝量(kcal/日)=基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)×体重(kg) したがって、推定エネルギー必要量=体重×基礎代謝基準値×身体活動レベル となる。
(1) 体重:現在の体重ではなく目標体重を使う
この受診者は減量のためのエネルギー量を知りたいのであり、目標はBMI 22となる体重である。BMI=体重(kg)÷身長(m)² なので、BMI 22となる体重は 目標体重=22×1.65×1.65=22×2.7225≒59.9 kg である。BMIの値「22」そのものは体重ではないため、22をそのまま体重として掛けることはできない。 なお、現在のBMIは 70÷2.7225≒25.7 であり、わが国の基準(BMI 25以上)で肥満(1度)に該当する。
(2) 基礎代謝基準値
問題文に与えられた55歳男性の値 21.5 kcal/kg/日 を用いる。
(3) 身体活動レベル
仕事は事務作業で勤務中はほぼ座位、通勤は自家用車、運動の時間も取れず、現在の活動量を維持するという条件である。生活の大部分が座位で静的な活動にあたるため、身体活動レベルはⅠ(低い)=1.50 と判断する。
計算
推定エネルギー必要量=22×1.65×1.65×21.5×1.50 ≒59.9×21.5×1.50 ≒1,288×1.50 ≒1,930 kcal/日 参考までに、現在の体重70 kgで計算すると 70×21.5×1.50≒2,260 kcal/日 となり、目標体重で計算した値のほうが一日あたり約330 kcal少ない。
選択肢考察
- ×a. 22×21.5×1.50
身体活動レベルⅠ(1.50)の選択は妥当だが、体重の代わりにBMIの値22をそのまま掛けている。基礎代謝基準値は体重1 kgあたりの値なので、体重(kg)を掛けなければならない。BMI 22に相当する体重は 22×1.65×1.65 で求める必要がある。
- ×b. 22×21.5×1.75
BMIの値22を体重として用いている誤りに加え、身体活動レベルをⅡ(ふつう、1.75)としている点も誤りである。座位中心の事務作業で車通勤、運動習慣もないこの受診者はⅠ(低い)に該当する。
- ×c. 22×21.5×2.00
BMIの値を体重として用いており、さらに身体活動レベルをⅢ(高い、2.00)としている。Ⅲは移動や立位の多い仕事や、活発な運動習慣をもつ人に相当し、この受診者には当てはまらない。
- ×d. 70×21.5×1.50
身体活動レベルⅠは適切だが、現在の体重70 kgを用いている。これは現在の体重を維持するためのエネルギー量(約2,260 kcal/日)であり、減量の目標として示す値にはならない。BMI 22となる目標体重を用いる。
- ×e. 70×21.5×1.75
現在の体重70 kgを用いている点、身体活動レベルをⅡ(1.75)としている点の二つが誤りである。この式では約2,630 kcal/日となり、減量どころか体重増加につながりうる。
- ×f. 70×21.5×2.00
現在の体重と、身体活動レベルⅢ(2.00)を用いており、いずれも不適切である。約3,010 kcal/日と過大な値になる。
- ○g. 22×1.65×1.65×21.5×1.50
目標体重(BMI 22となる体重=22×1.65×1.65≒59.9 kg)×基礎代謝基準値(21.5 kcal/kg/日)×身体活動レベルⅠ(1.50)で、三つの要素がすべて正しい。計算すると約1,930 kcal/日となり、これが減量目標として提示する一日の推定エネルギー必要量である。
- ×h. 22×1.65×1.65×21.5×1.75
目標体重の求め方は正しいが、身体活動レベルをⅡ(1.75)としている。ほぼ座位で過ごし車通勤のこの受診者はⅠ(1.50)であり、Ⅱで計算すると約2,250 kcal/日と過大になる。
- ×i. 22×1.65×1.65×21.5×2.00
目標体重は正しいが、身体活動レベルをⅢ(2.00)としており誤りである。約2,580 kcal/日と大きく過大評価になる。
推定エネルギー必要量(estimated energy requirement:EER)
「日本人の食事摂取基準」で用いられる指標で、エネルギー出納(摂取量と消費量の差)がゼロとなる確率が最も高くなると推定される、習慣的な一日あたりのエネルギー摂取量をいう。成人では「基礎代謝量×身体活動レベル」で算出する。
基礎代謝量と基礎代謝基準値
・基礎代謝量:早朝空腹時、快適な室温で安静仰臥・覚醒状態のときに測定される、生命維持に必要な最小限のエネルギー消費量。 ・基礎代謝基準値:体重1 kgあたりの基礎代謝量(kcal/kg/日)。性別・年齢階級ごとに示され、若年ほど高く、加齢とともに低下する。数値は食事摂取基準の改定版ごとにわずかに異なるため、試験では問題文に与えられた値を用いる。 ・基礎代謝基準値は参照体位(標準的な体格)の人を基に求められている。肥満者に現体重を当てはめると基礎代謝量を過大に見積もりやすい点にも注意する。
身体活動レベル(physical activity level:PAL)
一日の総エネルギー消費量を基礎代謝量で割った値。成人では概ね次のように区分される。 ・Ⅰ(低い、1.50):生活の大部分が座位で、静的な活動が中心。 ・Ⅱ(ふつう、1.75):座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客、通勤・買い物・家事・軽いスポーツなどのいずれかを含む。 ・Ⅲ(高い、2.00):移動や立位の多い仕事への従事者、またはスポーツなど余暇に活発な運動習慣をもつ人。
BMIと標準体重
・BMI=体重(kg)÷身長(m)²。 ・日本肥満学会の基準:18.5未満 低体重、18.5以上25未満 普通体重、25以上 肥満(25以上30未満が肥満1度)。 ・BMI 22は統計的に疾病が最も少ないとされる値で、BMI 22となる体重を標準体重(理想体重)と呼ぶ。標準体重(kg)=22×身長(m)²。
減量の目安
肥満症の治療では、まず現体重の3%以上の減量を目標とすることが勧められている。エネルギー摂取量の設定は、目標体重(標準体重など)を基にする考え方が用いられる。
POINT
・推定エネルギー必要量=体重×基礎代謝基準値×身体活動レベル。 ・減量目標の計算には現体重ではなく目標体重を使う。BMI 22の体重=22×身長(m)²(本問では22×1.65×1.65)。 ・BMIの値自体は体重ではない。 ・デスクワーク中心で車通勤、運動習慣なし → 身体活動レベルⅠ(1.50)。 ・本問の値は約1,930 kcal/日。
