減るむし歯、増える近視―小学生の健康統計グラフを「桁」と「傾き」で読み解く
第107回医師国家試験 B問題 第10問
国試問題にチャレンジ
学校保健統計調査における小学生の主な疾病・異常被患率の推移を示す。 ②はどれか。 ただし,①~⑤はa~eのいずれかに該当する。

- a.心電図異常
- b.むし歯(う歯)
- c.鼻・副鼻腔疾患
- d.(尿)蛋白検出の者
- e.裸眼視力1.0未満の者
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
学校保健統計調査は文部科学省が毎年行う基幹統計で、幼児・児童・生徒の発育状態と疾病・異常の被患率を示します。本問の時期の小学生では、むし歯が約6割で最多ながら減少傾向、裸眼視力1.0未満が約3割で2位かつ増加傾向、鼻・副鼻腔疾患が約1割で3位、心電図異常は数%、尿蛋白検出は1%未満でした。グラフ問題では「頻度の桁」と「増減の向き」で選択肢を並べ替えると対応がつき、減るむし歯と増える近視という対照的な動きが上位2本を見分けるポイントです。中学・高校では以前から視力低下が1位で、近年は小学生でもむし歯を上回っており、近視対策は学校保健の重要課題となっています。統計の数字そのものより、その背景にある生活や予防の変化を理解することが、公衆衛生の問題にも小児の健康支援にも役立ちます。
解答・解説
正解はeです
問われていること
学校保健統計調査(文部科学省が毎年実施し、幼稚園から高等学校までの児童・生徒の発育状態と健康状態を明らかにする基幹統計調査)で、小学生の主な疾病・異常の被患率(その疾病・異常があると判定された者の割合)がどの程度の水準にあるかを問う問題である。
グラフの読み取り
図は2005~2009年度の推移で、5本の線は水準が大きく異なる。 ・①:約68%から約60%へ。圧倒的に高いが、年々低下している。 ・②:約26%から約30%へ。2番目に高く、緩やかな増加傾向にある。 ・③:約11~12%でほぼ横ばい。 ・④:約2~3%で低い水準のまま横ばい。 ・⑤:1%未満で、グラフの底にはりついている。
考え方
5つの選択肢を「頻度の桁」で並べると、グラフとの対応がつく。 ・むし歯(う歯):小児で最も多い疾患。ただし、フッ化物の利用や歯みがき指導の普及で長期的に減少している → 高いが低下中の① ・裸眼視力1.0未満:近視の増加により上昇が続いている → 2番目で増加中の② ・鼻・副鼻腔疾患:アレルギー性鼻炎を中心に1割程度 → ③ ・心電図異常:数% → ④ ・尿蛋白検出:1%前後またはそれ未満 → ⑤ したがって、②は裸眼視力1.0未満の者である。 「高いが減少しているう歯」と「増え続けている視力低下」という対照的な動きを押さえておけば、上位2本の区別は容易である。
選択肢考察
- ×a. 心電図異常
④に当たる。心電図検査は学校保健安全法施行規則により小学校・中学校・高等学校の各第1学年で行われ、異常と判定される者は2~3%程度と低い水準で、年次推移もほぼ横ばいである。約30%の②には当たらない。
- ×b. むし歯(う歯)
①に当たる。乳歯はエナメル質が薄く酸に弱いうえ、小児はみがき残しも多いため、う歯は長く小学生の被患率第1位であった。一方、フッ化物配合歯みがき剤の普及や学校での歯科保健指導により、昭和50年代の90%台をピークに一貫して減少している。図でも約68%から約60%へ低下しており、②ではない。
- ×c. 鼻・副鼻腔疾患
③に当たる。アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)や慢性副鼻腔炎などが含まれ、小学生の約1割にみられる。被患率の順位ではう歯、裸眼視力1.0未満に次ぐ3番目であり、約30%の②には届かない。
- ×d. (尿)蛋白検出の者
⑤に当たる。学校検尿(腎疾患の早期発見を目的とする尿検査)で蛋白が検出される小学生は1%未満とまれである。小学生ではまだ体位性(起立性)蛋白尿も少なく、中学・高校生より検出率は低い。
- ○e. 裸眼視力1.0未満の者
②に当たる。視力低下の主因は近視であり、屋外活動の減少や近くを見る作業(読書、ゲーム、スマートフォン・タブレットの使用など)の増加を背景に、裸眼視力1.0未満の者の割合は長期的に上昇している。図の時期には約26%から約30%へ増えつつ、う歯に次ぐ第2位であった。その後も増加が続き、近年(令和4年度前後)の調査では小学生でもう歯を上回り、第1位となっている。
学校保健統計調査
文部科学省が毎年実施する調査で、健康診断の結果をもとに、5~17歳の幼児・児童・生徒の身長・体重などの発育状態と、疾病・異常の被患率を集計する。統計法上の基幹統計である。
学校段階別の被患率上位(本問の出題当時の傾向)
・幼稚園:①う歯 ②裸眼視力1.0未満 ③鼻・副鼻腔疾患 ・小学校:①う歯 ②裸眼視力1.0未満 ③鼻・副鼻腔疾患 ・中学校:①裸眼視力1.0未満 ②う歯 ③鼻・副鼻腔疾患 ・高等学校:①裸眼視力1.0未満 ②う歯 ③鼻・副鼻腔疾患 学年が上がるほど視力低下の割合が大きくなり、高校生では6割を超える。
最近の動向
・う歯は全学校段階で減少が続いている。 ・裸眼視力1.0未満は上昇が続き、過去最高を更新している。小学校でも近年う歯を上回った。 ・このほか、ぜん息、アトピー性皮膚炎、肥満傾向児なども調査項目に含まれる。
学校健康診断の検査項目の例
・心電図検査:小・中・高の各第1学年 ・尿検査(蛋白・糖など):全学年(幼稚園は糖の検査を省略できる) ・視力検査:全学年(370方式などの簡易判定を用いることが多い) ・歯および口腔の検査:全学年
POINT
・小学生の被患率は、う歯>裸眼視力1.0未満>鼻・副鼻腔疾患の順(本問当時)。 ・う歯は減少傾向、裸眼視力1.0未満は増加傾向で、近年は小学生でも視力低下が第1位となった。 ・中学・高校では以前から裸眼視力1.0未満が第1位。 ・心電図異常は数%、尿蛋白検出は1%前後またはそれ未満と低い。
