検診で見つかった「トサカ状のいぼ」―尖圭コンジローマとHPVの型を読み解く
第106回医師国家試験 I問題 第43問
国試問題にチャレンジ
26歳の女性。子宮頸がん検診のために来院したところ,外陰部の皮膚病変を認めた。病変は淡赤色で鶏冠状の小結節であり,会陰から肛門周囲の皮膚まで広がっている。痒みと痛みとを訴えていない。 この疾患の原因として考えられるのはどれか。
- a.アデノウイルス
- b.単純ヘルペスウイルス
- c.サイトメガロウイルス
- d.ヒト免疫不全ウイルス
- e.ヒトパピローマウイルス
対話形式の解説
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ドクターまとめ
外陰部から会陰・肛門周囲に多発する、無痛性の淡紅色で乳頭状・鶏冠状の小結節は尖圭コンジローマの典型像であり、原因はヒトパピローマウイルスの低リスク型である6型・11型です。同じHPVでも16型・18型などの高リスク型は子宮頸癌などの原因となり、型によって病態が異なる点が重要です。有痛性の水疱・潰瘍なら単純ヘルペスウイルスによる性器ヘルペス、平坦で湿った隆起なら第2期梅毒の扁平コンジローマと、病変の形と痛みの有無で鑑別します。4価・9価HPVワクチンは尖圭コンジローマも予防でき、性感染症を1つ見つけたらHIVや梅毒など他の性感染症も検索することが臨床上大切です。病変の見た目からウイルスの型、予防、合併症まで一連で理解することは、婦人科・皮膚科・感染症の診療に共通する基礎となります。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・26歳女性。性的活動期にある若年者である。 ・外陰部に淡赤色の鶏冠状(ニワトリのトサカのような形)の小結節が多発し、会陰から肛門周囲の皮膚にまで広がっている。 ・痒みや痛みなどの自覚症状はなく、検診で偶然見つかっている。
診断へのプロセス
外陰部に隆起する病変をつくる疾患としては、性感染症では尖圭コンジローマ、扁平コンジローマ(第2期梅毒)、梅毒の初期硬結、伝染性軟属腫、疥癬(結節型)などが、性感染症以外では脂漏性角化症、腟前庭乳頭腫症、Bowen病や乳房外Paget病、基底細胞癌などの腫瘍が挙げられる。 このうち、若年者で、無症状の淡紅色〜褐色の乳頭状・鶏冠状の小結節が外陰部から会陰・肛門周囲へと多発・拡大するものは、尖圭コンジローマの典型像である。扁平コンジローマは表面が平坦で湿潤した扁平隆起であり、伝染性軟属腫は中心に臍窩(へそのようなくぼみ)をもつ光沢のある丘疹である点で区別される。 尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)の低リスク型、主に6型と11型の感染による良性の乳頭腫(いぼ)である。選択肢のうち、上皮を増殖させて隆起性病変をつくるのはHPVのみであり、他のウイルスはこのような病変をつくらない。
選択肢考察
- ×a. アデノウイルス
アデノウイルスは咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎、急性出血性膀胱炎、小児の胃腸炎(40型・41型)、肺炎などの原因となる。性行為を介して尿道炎を起こすことはあるが、外陰部に乳頭状の隆起性病変(いぼ)をつくることはなく、本例とは合わない。
- ×b. 単純ヘルペスウイルス
単純ヘルペスウイルス(主に2型、近年は1型も増加)は性器ヘルペスの原因である。外陰部に小水疱が多発し、破れて浅い潰瘍となる。強い疼痛を伴い、初感染では発熱、鼠径リンパ節腫脹、排尿困難をきたすこともある。無痛性の鶏冠状結節という本例の所見とは異なる。
- ×c. サイトメガロウイルス
サイトメガロウイルスは免疫が正常な人では多くが不顕性感染で、初感染時に伝染性単核球症様の症状を呈することがある程度である。問題となるのは、胎内感染による先天性サイトメガロウイルス感染症と、臓器移植後やAIDSなど免疫不全者での網膜炎・肺炎・腸炎である。外陰部の隆起性病変をつくることはない。
- ×d. ヒト免疫不全ウイルス
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)はCD4陽性T細胞に感染し、細胞性免疫を低下させてAIDSに至る全身性の感染症を起こす。HIV自体が外陰部に限局した乳頭状の結節をつくることはない。ただし、同じ性感染症として尖圭コンジローマと合併することがあり、HIV感染者では尖圭コンジローマが多発・難治化しやすいため、性感染症を1つ見つけたら他の性感染症の検査も考慮する。
- ○e. ヒトパピローマウイルス
尖圭コンジローマは主にHPVの低リスク型である6型・11型が、性行為などで生じた皮膚・粘膜の微小な傷から基底細胞に感染し、上皮を乳頭状に増殖させて生じる。外陰部から会陰・肛門周囲に多発する無症状の鶏冠状・乳頭状の小結節という本例の所見に合致する。なお、病変から子宮頸癌などとの関連が深い16型・18型などの高リスク型HPVが同時に検出されることもある。
尖圭コンジローマ
・HPV(主に6型・11型)による性感染症で、潜伏期は3週〜8か月程度(平均約3か月)とされる。 ・好発部位:女性では大・小陰唇、腟前庭、会陰、肛門周囲、腟・子宮頸部。男性では陰茎の冠状溝・包皮、亀頭、肛門周囲。 ・症状:淡紅色〜褐色の乳頭状・鶏冠状の小結節が多発し、融合してカリフラワー状となることもある。通常は自覚症状に乏しいが、ときに軽い痒みや違和感を伴う。 ・診断:多くは視診で診断する。非典型例や悪性腫瘍(Bowen様丘疹症、有棘細胞癌など)との鑑別を要する場合は生検を行う。子宮頸部・腟の病変の検索も重要である。 ・治療:イミキモドクリーム(免疫賦活作用をもつ外用薬)の塗布、液体窒素による凍結療法、電気焼灼、レーザー蒸散、外科的切除などがある。治療後も再発が多い。 ・妊婦では妊娠中に増大しやすく、分娩時の産道感染により児に若年性再発性呼吸器乳頭腫症(喉頭乳頭腫)を起こすことがある。
HPVの型と疾患
・低リスク型(6型・11型など):尖圭コンジローマ、喉頭乳頭腫。 ・高リスク型(16型・18型・31型・33型・52型・58型など):子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)・子宮頸癌、外陰癌、腟癌、肛門癌、陰茎癌、中咽頭癌。 ・皮膚型(1型・2型など):尋常性疣贅、足底疣贅などのいぼ。
HPVワクチン
・2価ワクチン(16・18型)、4価ワクチン(6・11・16・18型)、9価ワクチン(4価の型に31・33・45・52・58型を追加)がある。4価と9価は尖圭コンジローマの予防効果ももつ。 ・日本では小学6年生〜高校1年生相当の女子が定期接種の対象である。
外陰部の主な性感染症の病変の特徴
・尖圭コンジローマ:無痛性の乳頭状・鶏冠状の隆起。 ・性器ヘルペス:有痛性の小水疱・浅い潰瘍。 ・梅毒:第1期は無痛性の初期硬結・硬性下疳、第2期は扁平コンジローマ(扁平で湿潤した隆起)。 ・軟性下疳(軟性下疳菌):有痛性の潰瘍と有痛性の鼠径リンパ節腫脹。
POINT
・外陰部〜会陰・肛門周囲に多発する無症状の鶏冠状・乳頭状の小結節 → 尖圭コンジローマ。 ・原因はHPVの低リスク型(6型・11型)。子宮頸癌の原因は高リスク型(16型・18型など)。 ・4価・9価HPVワクチンは尖圭コンジローマも予防する。 ・性器ヘルペス(単純ヘルペスウイルス)は有痛性の水疱・潰瘍で、隆起性病変ではない。 ・扁平コンジローマ(第2期梅毒)との鑑別に注意する。
