StudyMed医師国家試験

「肉納豆」に足りないもの―ビタミンKが働く凝固因子・働かない凝固因子

第106回医師国家試験 G問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第106回 G問題 第7問

ビタミンK依存性の凝固調節因子でないのはどれか。

  1. a.第Ⅱ因子
  2. b.第Ⅶ因子
  3. c.プロテインC
  4. d.プロテインS
  5. e.フィブリノゲン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はビタミンK依存性の凝固関連蛋白を問う知識問題だ。「でないもの」を選ぶ否定形なので、まずビタミンK依存性の蛋白を全部挙げて、そこに入らないものを探すのが近道だよ。そもそもビタミンKが何をしているか覚えているかな。
医学生医学生
生化学の講義で、ビタミンKは凝固因子のカルボキシル化に必要な補酵素だと習いました。でも何のためにカルボキシル化するのかは曖昧です。
ドクタードクター
大事なところだね。これらの蛋白は肝臓で作られるとき、N末端付近のグルタミン酸残基がγ-カルボキシグルタミン酸、つまりGlaに変換される。この反応を担うγ-グルタミルカルボキシラーゼがビタミンKを必要とするんだ。Glaができるとカルシウムイオンを介してリン脂質膜、たとえば活性化血小板の表面に結合できるようになり、凝固反応の現場に集まって働ける。
医学生医学生
つまりカルボキシル化されないと、蛋白はあっても現場に集まれないということですか。
ドクタードクター
その通り。では、ビタミンK依存性の凝固因子を挙げてみよう。
医学生医学生
「肉納豆」で第Ⅱ・Ⅸ・Ⅶ・Ⅹ因子です。CBTの勉強でさんざん唱えました。なので第Ⅱ因子と第Ⅶ因子は依存性ですね。
ドクタードクター
完璧だ。第Ⅱ因子はプロトロンビンで、活性化されるとトロンビンになり、フィブリノゲンをフィブリンに変える凝固の中心選手。ビタミンKが足りないと、カルボキシル化が不完全なプロトロンビンであるPIVKA-Ⅱが血中に出てくる。
医学生医学生
PIVKA-Ⅱって、消化器内科の実習で肝細胞癌の腫瘍マーカーとして見たものですよね。同じものだったとは。
ドクタードクター
そう、同じものだよ。第Ⅶ因子は組織因子と複合体を作って外因系を始動させる因子で、ビタミンK依存性因子の中で半減期が最も短く、数時間程度しかない。だからビタミンK欠乏やワルファリン開始直後には真っ先に下がって、まずPTが延長するんだ。
医学生医学生
ではプロテインCとプロテインSは凝固を止める側なので、ビタミンKとは関係なさそうに思えますが……。
ドクタードクター
そこがこの問題の引っかけポイントだね。実はプロテインCとプロテインSもGla領域をもつビタミンK依存性蛋白なんだ。プロテインCはトロンビン・トロンボモジュリン複合体によって活性化され、補酵素のプロテインSと一緒に活性化第Ⅴ因子と第Ⅷ因子を分解して凝固にブレーキをかける。ビタミンKは「アクセル」と「ブレーキ」の両方に関わっているわけだ。
医学生医学生
なるほど、促進側4つと抑制側2つ、合わせて6つですね。そうすると残るのはフィブリノゲンです。
ドクタードクター
正解。フィブリノゲンは第Ⅰ因子で肝臓で作られるけれど、γ-カルボキシル化を必要としない。だからビタミンK欠乏やワルファリンでは低下しない。下がるのは重症肝障害による合成低下、DICなどによる消費、先天性の無・低フィブリノゲン血症といった場面だ。逆に急性期反応蛋白でもあるから、炎症では上がることも覚えておこう。
医学生医学生
同じ肝臓で作られる凝固因子でも、ビタミンK欠乏と肝不全では検査の動きが違うということですね。ビタミンK欠乏ならPT延長とPIVKA-Ⅱ上昇があってもフィブリノゲンと血小板は正常、と。
ドクタードクター
その整理はとても実践的だよ。もう一つ臨床で大事なのがワルファリン導入時の注意点だ。プロテインCも半減期が短いので、開始直後は凝固因子より先にブレーキ役が減って、一時的に過凝固になることがある。これがワルファリン誘発性皮膚壊死の原因になるんだ。
医学生医学生
循環器内科の実習で、ワルファリン開始時にヘパリンを併用していたのはそのためだったんですね。
ドクタードクター
そういう理由で、血栓症の急性期などではヘパリンを併用しながらワルファリンを導入することが多い。それから、プロテインC・S欠乏症を疑って測定するときも、ワルファリン服用中は誰でも活性が下がるので解釈に注意が必要だ。ちなみにアンチトロンビンや組織因子経路インヒビターはビタミンK非依存性の凝固阻止因子だよ。
医学生医学生
ビタミンK欠乏が起こりやすいのはどんな場面でしたっけ。小児科で新生児にシロップを飲ませていたのを覚えています。
ドクタードクター
よく見ていたね。新生児・乳児は胎盤移行が少なく、母乳中の含量も少なく、腸内細菌叢も未発達なので、新生児メレナや乳児の頭蓋内出血の予防にビタミンK2シロップを投与する。成人では、脂溶性ビタミンなので胆汁が必要だから閉塞性黄疸や脂肪吸収障害、長期の抗菌薬投与と食事摂取不良、そしてワルファリン投与が代表的だ。

まとめ

ビタミンKはγ-グルタミルカルボキシラーゼの補酵素として、肝臓で合成される一部の蛋白をGla化し、カルシウムを介してリン脂質膜に結合できるようにします。ビタミンK依存性蛋白は、凝固因子の第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子(「肉納豆」)と、凝固阻止因子のプロテインC・プロテインSであり、フィブリノゲン(第Ⅰ因子)やアンチトロンビンは非依存性です。ビタミンK欠乏では半減期の最も短い第Ⅶ因子が先に低下してPTが延長し、PIVKA-Ⅱが上昇する一方、フィブリノゲンと血小板数は保たれます。ワルファリン導入初期にはプロテインCの低下による一過性の過凝固や皮膚壊死に注意が必要です。凝固の「アクセル」と「ブレーキ」の両方にビタミンKが関わることを理解しておくと、出血・血栓の病態や抗凝固療法の管理を筋道立てて考えられます。

解答・解説

正解はeです

ビタミンKは、肝臓で合成される一部の凝固関連蛋白が機能を発揮するために不可欠な補酵素である。これらの蛋白は N 末端付近に複数のグルタミン酸残基をもつ。ビタミンK依存性のγ-グルタミルカルボキシラーゼがこれらをγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)に変換することで、はじめて Ca²⁺ を介してリン脂質膜(活性化血小板の表面など)に結合できるようになり、凝固反応の場に集まって働く。 このカルボキシル化を受ける蛋白は、凝固を促進するものと抑制するものの両方を含む。 ・凝固因子(促進側):第Ⅱ因子(プロトロンビン)、第Ⅶ因子、第Ⅸ因子、第Ⅹ因子 ・凝固阻止因子(抑制側):プロテインC、プロテインS 語呂合わせでは「肉納豆(2・9・7・10)」と覚えることが多く、そこに抑制系のプロテインC・Sを加えればよい。 本問は「でないもの」を選ぶ否定形の問題であり、上の6つに含まれない因子を探す。フィブリノゲン(第Ⅰ因子)は肝臓で合成されるが、ビタミンKによるカルボキシル化を必要としないので、これが正解である。

選択肢考察

  1. ×a.  第Ⅱ因子

    ビタミンK依存性であるため、本問の正解にはあたらない。第Ⅱ因子はプロトロンビンとも呼ばれ、活性化されてトロンビンとなり、フィブリノゲンをフィブリンに変換する凝固反応の中心的因子である。ビタミンK欠乏やワルファリン投与時には、カルボキシル化されていない不完全なプロトロンビン(PIVKA-Ⅱ:protein induced by vitamin K absence or antagonist-Ⅱ)が血中に出現する。PIVKA-Ⅱはビタミン K 欠乏の指標となるほか、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても用いられる。ビタミンK依存性凝固因子の中では半減期が最も長い(約60〜72時間)。

  2. ×b.  第Ⅶ因子

    ビタミンK依存性であるため、本問の正解にはあたらない。第Ⅶ因子は組織因子と複合体を形成して外因系凝固を開始する因子である。半減期はビタミンK依存性凝固因子の中で最も短く(約4〜6時間)、ビタミンK欠乏やワルファリン投与の初期には真っ先に低下する。第Ⅶ因子はプロトロンビン時間(PT)には反映されるが、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)には反映されない。そのため、ビタミンK欠乏のスクリーニングやワルファリンの効果判定には PT(PT-INR)が用いられ、まず PT が延長する。

  3. ×c.  プロテインC

    ビタミンK依存性であるため、本問の正解にはあたらない。プロテインCは凝固を抑える側の因子である。トロンビンが血管内皮上のトロンボモジュリンと結合して活性化し、活性化プロテインC(APC)となる。APCは補酵素プロテインSとともに活性化第Ⅴ因子と活性化第Ⅷ因子を分解・不活化する。半減期が短い(約8時間)ため、ワルファリン開始直後には凝固因子より先にプロテインCが低下して一過性の過凝固状態となることがある。これがワルファリン誘発性皮膚壊死の原因となる。

  4. ×d.  プロテインS

    ビタミンK依存性であるため、本問の正解にはあたらない。プロテインSは活性化プロテインCの補酵素として働く凝固阻止因子で、肝臓のほか血管内皮細胞などでも産生される。ワルファリン服用中は誰でもプロテインC・プロテインSの活性が低下する。そのため、先天性プロテインC欠乏症・プロテインS欠乏症(静脈血栓塞栓症の素因となる)の診断のための測定は、ワルファリン服用の影響を考慮して解釈する必要がある。

  5. ○e.  フィブリノゲン

    ビタミンK依存性ではないため、これが正解である。フィブリノゲン(第Ⅰ因子)は肝臓で合成される糖蛋白で、トロンビンによってフィブリンモノマーとなり、重合したうえで活性化第ⅩⅢ因子により架橋されて安定化フィブリンとなる。合成過程にビタミンKによるγ-カルボキシル化を必要としないため、ビタミンK欠乏症やワルファリン投与では低下しない。低下を来すのは重症肝障害(合成低下)、播種性血管内凝固(DIC)などによる消費、先天性無(低)フィブリノゲン血症などである。また、急性期反応蛋白でもあり、炎症時には上昇する。

ビタミンK依存性蛋白のまとめ

・凝固因子:第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子 ・凝固阻止因子:プロテインC、プロテインS (ほかにプロテインZ もビタミンK依存性である)

半減期の順(短い順)

第Ⅶ因子(約4〜6時間)< 第Ⅸ因子(約24時間)< 第Ⅹ因子(約40時間)< 第Ⅱ因子(約60〜72時間) プロテインCの半減期(約8時間)も短い。

主な凝固阻止因子とビタミンK依存性

・アンチトロンビン(AT):トロンビンや活性化第Ⅹ因子などを阻害する。ヘパリンにより作用が増強される。ビタミンK非依存性。 ・プロテインC、プロテインS:ビタミンK依存性。 ・組織因子経路インヒビター(TFPI):ビタミンK非依存性。

ビタミンK欠乏を来す病態

・新生児・乳児:ビタミンKの胎盤移行が少なく、母乳中の含量も少ないうえ、腸内細菌叢が未発達である。新生児メレナや乳児ビタミンK欠乏性出血症(頭蓋内出血)の原因となるため、ビタミンK2シロップを予防投与する。 ・閉塞性黄疸、脂肪吸収障害:ビタミンKは脂溶性で、吸収に胆汁酸を要する。 ・長期の抗菌薬投与と食事摂取不良:腸内細菌によるビタミンK2産生が減少する。 ・ワルファリン投与:ビタミンKエポキシド還元酵素(VKORC1)を阻害し、還元型ビタミンKの再生を妨げる。

検査所見

ビタミンK欠乏では PT が延長し、進行すれば APTT も延長する。PIVKA-Ⅱ が上昇し、フィブリノゲンと血小板数は正常である。

POINT

・ビタミンK依存性の凝固因子は第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子(「肉納豆」)である。 ・凝固阻止因子ではプロテインC・プロテインSがビタミンK依存性で、アンチトロンビンは非依存性である。 ・フィブリノゲン(第Ⅰ因子)はビタミンK非依存性である。 ・第Ⅶ因子は半減期が最も短く、ビタミンK欠乏やワルファリン投与では PT がまず延長する。 ・ワルファリン導入初期はプロテインC低下による過凝固(皮膚壊死)に注意する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。