StudyMed医師国家試験

「隙間」から滑り落ちる命綱―足位に潜む臍帯脱出のリスク

第106回医師国家試験 G問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第106回 G問題 第6問

臍帯脱出を起こしやすいのはどれか。

  1. a.足位
  2. b.微弱陣痛
  3. c.低在横定位
  4. d.不正軸進入
  5. e.羊水過少症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は臍帯脱出を起こしやすい状況を選ぶ問題だ。リスク因子を丸暗記するより、「なぜ臍帯が先に出てきてしまうのか」という仕組みから考えると、選択肢がすっきり整理できるよ。まず、臍帯脱出とはどんな状態かな。
医学生医学生
破水したあとに、臍帯が赤ちゃんより先に腟の中や外に出てきてしまう状態ですよね。
ドクタードクター
その通り。もう少し正確に言うと、胎児の先進部、つまり最初に産道を下りてくる部分よりも先に臍帯が子宮口から脱出した状態だ。脱出した臍帯が先進部と骨盤壁の間に挟まれると血流が途絶え、胎児は急速に低酸素に陥る。産科の緊急事態だね。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で、破水の直後に胎児心拍が急に落ちたら臍帯脱出を疑え、と言われました。
ドクタードクター
まさにそれが典型的な気づき方だ。では、なぜ臍帯が先進部を追い越せるのか考えてみよう。普通の頭位分娩では、大きくて丸い児頭が骨盤入口をぴったり塞いでいる。この状態で臍帯は脇をすり抜けられるかな。
医学生医学生
蓋がされているようなものなので、すり抜けにくいと思います。逆に、隙間があると羊水と一緒に流れ出てしまうということですか。
ドクタードクター
その発想が核心だ。先進部と子宮下部、骨盤入口の間に広い隙間ができる状況で破水すると、羊水の流れに乗って臍帯が押し出される。だから先進部が小さい、あるいは形が不整な場合が要注意になる。そう考えると、選択肢の中で一番当てはまるのはどれだろう。
医学生医学生
足位ですね。足は細いので、骨盤入口を全然塞げなさそうです。
ドクタードクター
正解。足位は骨盤位、いわゆる逆子のうち片足か両足が先進する型で、周囲に大きな隙間が残る。前期破水も起こしやすく、破水時に臍帯が脱出しやすい。同じ骨盤位でも、殿部がしっかり先進して入口を塞ぐ単殿位に比べると、足位や膝位のリスクは格段に高いんだ。
医学生医学生
逆子ならどれも同じくらい危ないと思っていました。型によってこんなに違うんですね。
ドクタードクター
そこは国試でも臨床でも大事な区別だよ。では残りを見ていこう。羊水過少症はどうかな。
医学生医学生
羊水が少ないと臍帯が圧迫されやすいと習ったので、危ない方に入れてしまいそうです。
ドクタードクター
よくある混同だね。羊水過少で臍帯が子宮壁と胎児の間で圧迫され、変動一過性徐脈が出やすいのは確かだけれど、それは臍帯脱出とは別の病態だ。臍帯脱出のリスクになるのは逆の羊水過多症。胎位が定まりにくいうえに、破水時に大量の羊水が勢いよく流れ出て臍帯を押し流してしまう。
医学生医学生
羊水の「勢い」が関係しているんですね。微弱陣痛はどうでしょう。
ドクタードクター
微弱陣痛は子宮収縮の強さや頻度が足りず分娩が進まない状態で、娩出力の問題だ。先進部の周りに隙間を作る要因ではないから、臍帯脱出との直接の関係はない。
医学生医学生
低在横定位と不正軸進入は、どちらも児頭の回旋や進入の異常でしたよね。
ドクタードクター
そう。低在横定位は第2回旋が起こらず、矢状縫合が骨盤の横径に一致したまま児頭が骨盤底近くまで下りてきた状態。児頭がすでに骨盤の深くに嵌入しているから隙間は小さく、問題になるのは分娩停止のほうだ。不正軸進入は児頭が傾いて矢状縫合が前方や後方に偏った進入の異常で、分娩遷延の原因にはなるけれど臍帯脱出とは結びつかない。
医学生医学生
隙間ができるかどうかで判断すれば、ほかのリスク因子も推測できそうです。横位や早産児、多胎の第2子、児頭が浮いているときの人工破膜もそうですか。
ドクタードクター
その通り。ほかに児頭骨盤不均衡、過長臍帯、低置胎盤も挙げられる。最後に対応も押さえておこう。臍帯脱出に気づいたら、すぐに応援を呼んで多くは緊急帝王切開の準備をする。同時に内診指で先進部を押し上げて臍帯の圧迫を解除し、骨盤高位や膝胸位をとってもらう。脱出した臍帯は刺激や冷却で血管が攣縮するので、できるだけ触らず、還納も原則試みない。
医学生医学生
破水前に臍帯が先進部の横に下りてきている状態は、臍帯下垂と呼ぶんでしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。卵膜が保たれていれば臍帯下垂、破水後に先進部を越えて出てくれば臍帯脱出だ。下垂の段階で気づければ、破水させない、急速遂娩を準備するといった先手が打てる。用語の区別がそのまま臨床判断につながるんだよ。

まとめ

臍帯脱出は、破水後に臍帯が胎児先進部より先に子宮口から脱出する状態で、臍帯が圧迫されると胎児は急速に低酸素に陥るため産科の緊急事態です。発生の鍵は先進部と骨盤入口の間に隙間ができることで、足位・膝位などの不全骨盤位、横位、早産児、羊水過多、多胎の第2子、児頭骨盤不均衡、過長臍帯、児頭未固定時の人工破膜がリスク因子となります。羊水過少は臍帯圧迫による変動一過性徐脈の原因にはなりますが臍帯脱出のリスクではなく、微弱陣痛や低在横定位、不正軸進入も直接の関係はありません。破水直後の急な胎児徐脈では臍帯脱出を疑い、先進部の挙上と骨盤高位で圧迫を解除しつつ急速遂娩を行います。リスク因子を「隙間」という一つの原理から理解しておくと、初見の選択肢にも対応でき、分娩管理での早期の気づきにもつながります。

解答・解説

正解はaです

臍帯脱出とは、破水(卵膜の破綻)後に臍帯が胎児の先進部(最も先に産道を下りてくる部分)より先に子宮口から腟内、さらには腟外へ脱出した状態をいう。脱出した臍帯が先進部と骨盤壁の間で圧迫されると臍帯血流が途絶え、胎児は急速に低酸素状態に陥る。胎児機能不全(胎児徐脈など)を起こすため、産科の緊急事態である。 臍帯脱出が起こる条件を考えると、リスク因子を整理しやすい。通常の頭位では、大きく丸い児頭が子宮下部から骨盤入口部を隙間なく塞ぐため、臍帯は先進部の脇をすり抜けにくい。ところが、先進部と子宮下部(骨盤入口)との間に広い隙間が生じる状況では、破水時に羊水とともに臍帯が隙間から押し流されやすくなる。 この「隙間ができる状況」には、次のようなものがある。 1. 先進部が小さい、または不整形である場合:足位・膝位などの不全骨盤位、横位、早産児・低出生体重児 2. 先進部が骨盤に固定されていない場合:児頭骨盤不均衡(CPD)、骨盤狭窄、多産婦で児頭が高い位置にある場合 3. 羊水が多く、破水時の流出の勢いが強い場合:羊水過多症、多胎妊娠の第2子 4. 臍帯の条件:過長臍帯、低置胎盤 5. 医原性:児頭が固定していない状態での人工破膜 選択肢のうち、この条件にあてはまるのは足位である。

選択肢考察

  1. ○a.  足位

    正しい。足位は骨盤位(いわゆる逆子)のうち、片足または両足が先進する型である。先進部の足は細く小さいため、子宮口や骨盤入口を塞ぐことができず、周囲に大きな間隙が残る。このため前期破水を起こしやすく、破水時に臍帯が間隙から脱出しやすい。骨盤位の中でも、殿部が先進して比較的よく骨盤入口を塞ぐ単殿位に比べ、足位・膝位の臍帯脱出リスクは格段に高い。

  2. ×b.  微弱陣痛

    誤り。微弱陣痛は、子宮収縮の強さ・持続時間・頻度が不十分で分娩が進行しない状態である。娩出力の問題であり、先進部と子宮下部の間の間隙を生む要因ではないため、臍帯脱出との直接の関係はない。

  3. ×c.  低在横定位

    誤り。低在横定位は胎児の回旋異常の一つである。第2回旋(児頭が骨盤内で回旋し、矢状縫合が縦径に一致する動き)が起こらず、矢状縫合が骨盤の横径に一致したまま児頭が骨盤底近くまで下降した状態をいう。児頭がすでに骨盤深くまで嵌入しているので先進部周囲の隙間は小さく、臍帯脱出を起こしやすい状態ではない。問題となるのは分娩停止であり、鉗子分娩や吸引分娩などが必要になることがある。

  4. ×d.  不正軸進入

    誤り。不正軸進入は、児頭が骨盤入口に進入する際に児頭が側方に傾き、矢状縫合が骨盤入口の中央(横径上)から母体の前方(恥骨側)または後方(仙骨側)へ偏位した状態である。前頭頂骨進入・後頭頂骨進入に分けられる。児頭の進入様式の異常で分娩遷延の原因となるが、臍帯脱出との関連はない。

  5. ×e.  羊水過少症

    誤り。臍帯脱出を起こしやすいのは羊水過多症の方である。羊水過多では子宮内で胎児が動きやすく胎位が定まりにくいうえ、破水時に大量の羊水が勢いよく流出し、臍帯が押し流されやすい。羊水過少ではこうした機序が働かないため、むしろ臍帯脱出は起こりにくい。なお、羊水過少では臍帯が子宮壁と胎児の間で圧迫されやすく、変動一過性徐脈がみられやすいが、これは臍帯脱出とは別の病態である。

臍帯の位置異常の用語

・臍帯下垂:破水前(卵膜が保たれている状態)に、臍帯が胎児先進部の側方または前方に下降し、卵膜越しに触れる・透見できる状態。 ・臍帯脱出:破水後に、臍帯が先進部を越えて子宮口から腟内や外陰部へ脱出した状態。

診断

破水直後に胎児心拍数の急激な低下(高度徐脈や高度変動一過性徐脈)がみられた場合は臍帯脱出を疑い、内診で腟内の臍帯(拍動を触れる索状物)を確認する。

対応

1. 直ちに応援を呼び、急速遂娩(多くは緊急帝王切開)の準備をする。 2. 内診指で先進部を押し上げ、臍帯の圧迫を解除する。 3. 骨盤高位や膝胸位をとらせ、先進部が臍帯を圧迫しないようにする。 4. 脱出した臍帯はできるだけ触らない(刺激や冷却により臍帯血管が攣縮するため)。還納は原則試みない。 5. 子宮口全開大で児頭が十分に下降していれば、鉗子分娩・吸引分娩による経腟分娩を選ぶこともある。

骨盤位の分類

・殿位:単殿位(両下肢が挙上し殿部のみ先進)、複殿位(殿部と足が先進) ・膝位:全膝位、不全膝位 ・足位:全足位(両足)、不全足位(片足) 臍帯脱出のリスクは、単殿位に比べて足位・膝位で高い。

POINT

・臍帯脱出は、先進部と子宮下部の間に隙間ができる状況で破水したときに起こりやすい。 ・主なリスク因子:足位・膝位(不全骨盤位)、横位、早産・低出生体重児、羊水過多、多胎、児頭骨盤不均衡、過長臍帯、児頭未固定時の人工破膜。 ・羊水過少ではなく羊水過多がリスク因子である。 ・臍帯下垂は破水前、臍帯脱出は破水後の状態を指す。 ・臍帯脱出は胎児低酸素に直結するため、先進部の挙上・骨盤高位で臍帯圧迫を解除しつつ急速遂娩を行う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。