120日・幹細胞・細胞質―血液細胞の「基本のキ」を総点検
第115回医師国家試験 C問題 第26問
国試問題にチャレンジ
血液細胞に関する記載で正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.赤血球の寿命は約30日である。
- b.造血幹細胞は多分化能を有する。
- c.好中球は分葉核球と桿状核球を指す。
- d.乳幼児の主な造血組織は肝臓である。
- e.血小板は巨核球の核が断片化して産生される。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
造血幹細胞は多分化能と自己複製能をあわせもち、これが造血幹細胞移植の原理となっています。好中球は成熟段階の桿状核球と分葉核球の総称であり、感染症などで幼若な好中球が増えることを核の左方移動と呼びます。赤血球の寿命は約120日、血小板は約7〜10日で、血小板は巨核球の核ではなく細胞質が断片化してできる無核の細胞片です。造血の場は卵黄嚢から肝臓・脾臓、そして骨髄へと移り、出生時にはすでに骨髄が主体であるため、乳幼児の主な造血組織は骨髄です。こうした血液細胞の基本は、血算の解釈や貧血・血小板減少の病態理解の土台になります。
解答・解説
正解はb, cです
血液細胞の基本的な生理について問う問題である。次の事項を正確に覚えていれば解ける。 (1) 造血幹細胞の性質:すべての血球系統に分化できる多分化能と、自分と同じ幹細胞を作り続ける自己複製能をあわせもつ。 (2) 各血球の寿命:赤血球は約120日、血小板は約7~10日、好中球は血中で1日弱である。 (3) 好中球の定義:成熟段階の桿状核球と分葉核球をまとめて好中球と呼ぶ。 (4) 造血の場の変遷:卵黄嚢→肝臓(・脾臓)→骨髄と移り、出生時にはすでに骨髄が主な造血の場になっている。 (5) 血小板の産生:巨核球の「細胞質」がちぎれて血小板になる。 これらに照らすと、正しいのは b と c である。
選択肢考察
- ×a. 赤血球の寿命は約30日である。
誤り。赤血球の寿命は約120日である。赤血球には核やミトコンドリアがなく、新たにタンパク質を合成できない。そのため、時間とともに膜の柔軟性や酵素活性が失われていく。老化した赤血球は、主に脾臓のマクロファージに捕捉されて破壊される(血管外溶血)。ヘモグロビンのヘムはビリルビンへ代謝され、鉄は再利用される。毎日およそ1%の赤血球が入れ替わる計算になる。網赤血球の末梢血での比率(基準値はおよそ0.5~2%)が骨髄での赤血球産生の目安になるのもこのためである。なお、血小板の寿命は約7~10日、好中球が血中にとどまる時間は数時間~1日程度である。
- ○b. 造血幹細胞は多分化能を有する。
正しい。造血幹細胞は骨髄に存在し、多分化能をもつ。すなわち、骨髄系前駆細胞(赤血球・巨核球/血小板・顆粒球・単球に分化)とリンパ系前駆細胞(T細胞・B細胞・NK細胞に分化)の両方を経て、すべての血球を生み出すことができる。さらに、分裂しても幹細胞としての性質を保った細胞を残す自己複製能もあわせもつ。この2つの能力があるため、造血幹細胞移植では少数の幹細胞を移植するだけで、生涯にわたって全系統の造血を再建できる。造血幹細胞はCD34陽性細胞の分画に含まれ、移植片の幹細胞量の指標としてCD34陽性細胞数が用いられる。
- ○c. 好中球は分葉核球と桿状核球を指す。
正しい。骨髄での好中球の分化は、骨髄芽球→前骨髄球→骨髄球→後骨髄球→桿状核球→分葉核球の順に進む。核が細長く棒状に曲がったものが桿状核球、核がくびれて2~5個に分かれたものが分葉核球で、いずれも成熟した好中球として末梢血に出る。白血球分画で「好中球」というときは、通常この両者の合計を指す。細菌感染症などで骨髄から若い好中球が多く動員されると、桿状核球や後骨髄球の割合が増える。これを核の左方移動という。
- ×d. 乳幼児の主な造血組織は肝臓である。
誤り。造血の場は発生とともに移り変わる。胎生3週ごろに卵黄嚢で始まり(中胚葉期)、胎生6週ごろからは肝臓が中心になる(脾臓も一部担う。肝脾期)。胎生4~5か月ごろから骨髄造血が始まり、胎生後期には骨髄が主体となる(骨髄期)。肝臓での造血は出生後まもなく(生後1~2週ごろまでに)終わるため、乳幼児の主な造血組織は骨髄である。乳幼児では四肢の長管骨を含むほぼ全身の骨髄が赤色髄(造血している骨髄)である。成長とともに長管骨は脂肪髄に置き換わり、成人では椎骨・胸骨・肋骨・骨盤などの体幹の骨が主な造血の場となる。成人でも骨髄線維症などで骨髄造血が障害されると、肝臓や脾臓で造血が再開することがある(髄外造血)。
- ×e. 血小板は巨核球の核が断片化して産生される。
誤り。血小板は巨核球の「細胞質」が断片化してできる無核の細胞片である。巨核球は、核分裂だけを繰り返して細胞質は分裂しない「核内分裂(endomitosis)」によって多倍体の大きな核と豊富な細胞質をもつ。成熟した巨核球は細胞質の突起(胞体突起)を骨髄の類洞内へ伸ばし、そこから血小板が切り離されて血中に放出される。1個の巨核球から数千個の血小板が作られる。この過程は、主に肝臓で産生されるトロンボポエチン(TPO)によって促進される。血小板の寿命は約7~10日である。
造血の階層構造
造血幹細胞 → 骨髄系共通前駆細胞 → 赤芽球系(赤血球)、巨核球系(血小板)、顆粒球・単球系(好中球・好酸球・好塩基球・単球/マクロファージ) → リンパ系共通前駆細胞 → T細胞、B細胞(形質細胞)、NK細胞 分化には、エリスロポエチン(EPO、主に腎臓で産生)、トロンボポエチン(TPO、主に肝臓で産生)、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)などのサイトカインが関わる。
主な血球の寿命と特徴
・赤血球:約120日。無核。主に脾臓で処理される ・血小板:約7~10日。巨核球の細胞質断片。約1/3は脾臓にプールされる ・好中球:血中にとどまるのは数時間~1日程度で、その後組織へ移行する。白血球の約40~70%を占める ・リンパ球:記憶細胞などは年単位で生存するものもある
造血の場の変遷
卵黄嚢(胎生3週ごろ~)→ 肝臓・脾臓(胎生6週ごろ~、胎生中期に最盛期)→ 骨髄(胎生4~5か月ごろ~、出生時には主体)。小児では全身の骨髄が造血し、成人では体幹の骨の骨髄が中心となる。
POINT
・造血幹細胞は多分化能と自己複製能をあわせもつ(造血幹細胞移植の原理) ・赤血球の寿命は約120日、血小板は約7~10日 ・好中球=桿状核球+分葉核球。幼若な好中球が増えるのが核の左方移動 ・出生時の主な造血の場はすでに骨髄で、肝臓での造血は胎生期が中心 ・血小板は巨核球の細胞質が断片化したもの(核ではない)
