毎年11月、食卓を秤で量る―国民健康・栄養調査の「いつ・誰を・どうやって」
第106回医師国家試験 G問題 第30問
国試問題にチャレンジ
国民健康・栄養調査について正しいのはどれか。
- a.特定保健指導と同時に開始された。
- b.毎年実施される。
- c.調査対象となる都道府県は無作為抽出で選ばれる。
- d.身体状況調査として心電図検査がある。
- e.栄養摂取状況調査は24時間思い出し法で行われる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
国民健康・栄養調査は健康増進法に基づき2003年から原則毎年11月に行われる全国調査で、前身は1945年開始の国民栄養調査です。対象は都道府県ではなく層化無作為抽出された地区の世帯と世帯員で、身体状況調査(心電図は含まない)、秤量記録法による栄養摂取状況調査、生活習慣調査の3つから構成されます。2008年に高齢者医療確保法に基づいて始まった特定健診・特定保健指導とは根拠法も開始時期も異なり、患者調査(3年ごと)や国勢調査(5年ごと)など他の統計調査との頻度の違いも整理しておく必要があります。調査結果は健康日本21などの施策の基礎資料となり、食塩摂取量などのデータは日常の生活指導にも活かせます。統計調査を「根拠法・頻度・対象・方法」のセットで理解することが、公衆衛生分野を効率よく学ぶ鍵になります。
解答・解説
正解はbです
本問は、国民の健康状態と栄養摂取の実態を把握するための全国調査である国民健康・栄養調査について、その根拠法・開始時期・実施頻度・対象の選び方・調査項目・調査方法を問う問題である。
国民健康・栄養調査の概要
・根拠法:健康増進法(2002年制定)。国(厚生労働大臣)が実施し、実際の調査は都道府県・保健所設置市・特別区(保健所)が担う。 ・沿革:前身は1945年に始まった国民栄養調査で、のちに栄養改善法に基づいて行われた。健康増進法の施行に伴い、2003年から国民健康・栄養調査として実施されている。 ・頻度:原則として毎年、11月に実施される。 ・対象:全国から層化無作為抽出した地区(単位区)内の世帯とその世帯員(1歳以上)。 ・調査内容:身体状況調査、栄養摂取状況調査、生活習慣調査の3つからなる。 ・結果の用途:健康日本21などの健康づくり施策の目標設定・評価の基礎資料となる。
考え方
公衆衛生分野の統計調査は「根拠法・実施主体・頻度・対象・方法」をセットで覚えておくことが大切である。国民健康・栄養調査は毎年実施であり、3年ごとの患者調査や、毎年調査で3年ごとに大規模調査を行う国民生活基礎調査などと区別しておく。
選択肢考察
- ×a. 特定保健指導と同時に開始された。
誤り。国民健康・栄養調査は健康増進法に基づき2003(平成15)年に始まった。一方、特定健康診査・特定保健指導は、高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)に基づき、医療保険者に実施が義務づけられて2008(平成20)年に始まった。開始時期も根拠法も異なる。
- ○b. 毎年実施される。
正しい。国民健康・栄養調査は原則として毎年11月に実施される。毎年同じ方法で調査することで、肥満者の割合、食塩摂取量、野菜摂取量、歩数、喫煙率などの経年的な推移を追うことができる。なお、2020年と2021年は新型コロナウイルス感染症の影響で調査が中止された。
- ×c. 調査対象となる都道府県は無作為抽出で選ばれる。
誤り。無作為抽出の単位は都道府県ではない。全国の国勢調査区を基に設定された地区から層化無作為抽出で調査地区(単位区)を選び、その地区内の全世帯とその世帯員が対象となる。都道府県単位で調査地を選ぶわけではないため、原則としてすべての都道府県が調査地区を含む形になる。
- ×d. 身体状況調査として心電図検査がある。
誤り。身体状況調査の項目は、身長、体重、腹囲、血圧、血液検査(血糖・HbA1c、脂質など)、問診(服薬状況、運動習慣など)であり、心電図検査は含まれない。歩数は栄養摂取状況調査の一環として記録される。
- ×e. 栄養摂取状況調査は24時間思い出し法で行われる。
誤り。栄養摂取状況調査は、特定の1日(日曜・祝日を除く)に世帯で食べたものを、秤で重さを量って記録する秤量記録法(食事記録法)で行われる。家族で同じ料理を分けて食べた場合は、各世帯員が食べたおおよその割合を記録して個人の摂取量を推定する(案分比率法)。24時間思い出し法は、面接などで前日1日の食事を記憶に基づいて聞き取る方法であり、本調査の方法ではない。
国民健康・栄養調査の3つの調査
・身体状況調査:身長、体重、腹囲、血圧、血液検査、問診(服薬状況、運動習慣など)。会場で医師・管理栄養士などが実施する。 ・栄養摂取状況調査:世帯の食事内容を秤量記録法で1日分記録する。歩数も併せて測定する。 ・生活習慣調査:食生活、身体活動、休養(睡眠)、飲酒、喫煙、歯の健康などについての自記式の質問紙調査。
食事調査法の比較
・秤量記録法(食事記録法):食べたものを秤で量って記録する。精度は高いが、対象者の負担が大きく、調査日に普段と違う食事になりやすい。 ・24時間思い出し法:前日1日の食事を面接で聞き取る。負担は小さいが、記憶や面接者の技量に左右される。 ・食物摂取頻度調査法:一定期間の習慣的な摂取頻度を質問票で尋ねる。大規模な疫学研究に向く。
主な保健統計の実施頻度
・国民健康・栄養調査:毎年(健康増進法) ・人口動態調査:毎年(戸籍法などに基づく届出を集計) ・国民生活基礎調査:毎年、3年ごとに大規模調査 ・患者調査:3年ごと ・国勢調査:5年ごと(10年ごとに大規模調査)
関連する制度
特定健康診査・特定保健指導は高齢者医療確保法に基づき、40~74歳の医療保険加入者を対象に医療保険者が実施するもので、2008年に開始された。
POINT
・国民健康・栄養調査は健康増進法に基づき、2003年から毎年11月に実施される(前身は国民栄養調査)。 ・対象は層化無作為抽出で選ばれた地区の世帯と世帯員であり、都道府県を抽出するのではない。 ・身体状況調査に心電図は含まれない。 ・栄養摂取状況調査は秤量記録法(食事記録法)で行う。 ・特定健診・特定保健指導は高齢者医療確保法に基づき2008年開始。
