気管支と肺動脈は二人三脚―肺の「配置図」をCT読影につなげる
第106回医師国家試験 G問題 第29問
国試問題にチャレンジ
肺の構造・機能について正しいのはどれか。
- a.気管は第3胸椎の高さで左右に分岐する。
- b.右主気管支は左主気管支よりも長い。
- c.末梢の肺動脈は気管支と並走する。
- d.呼吸細気管支が分岐して終末細気管支となる。
- e.ガス交換は肺胞孔で行われる。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
気管は胸骨角の高さ(第4~5胸椎)で分岐し、右主気管支は太く短く急角度のため異物や挿管チューブが入りやすくなっています。気道は導管部の最末端である終末細気管支から呼吸細気管支へと続き、ガス交換は肺胞壁の薄い血液空気関門で行われ、肺胞孔(Kohn孔)は側副換気の通り道です。肺動脈は気管支と伴走して二次小葉の中心を走り、肺静脈とリンパ管は小葉間隔壁を走るため、この配置が胸部CTで小葉中心性病変と隔壁病変を見分ける根拠になります。また、肺には機能血管としての肺循環と栄養血管としての気管支動脈の2系統があり、喀血の多くは後者に由来します。肺の配置図を正確に理解しておくことは、画像読影や気道管理など臨床のさまざまな場面の土台になります。
解答・解説
正解はcです
本問は、気道の分岐と肺の血管配置、ガス交換の場という呼吸器の基本解剖を問う問題である。
気道の構造
気管は喉頭の下(第6頸椎の高さ)から始まり、胸骨角(第4~5胸椎の高さ)で左右の主気管支に分かれる。心臓が左に寄っていることなどから、右主気管支は太く・短く・急な角度(垂直に近い)で下降し、左主気管支は細く・長く・水平に近い走行をとる。 主気管支からは葉気管支、区域気管支、細気管支と分岐を重ね、空気の通り道にすぎない「導管部」の最末端が終末細気管支である。その先の呼吸細気管支から壁に肺胞が現れ始め、肺胞管、肺胞嚢へと続く部分がガス交換を行う「呼吸部」である。
肺の血管配置
肺動脈は右室から静脈血を運び、気管支とともに分岐しながら肺の中心部から末梢へ進む(気管支と肺動脈は伴走する)。肺胞壁の毛細血管網でガス交換を受けた血液は肺静脈に集まるが、肺静脈は気管支・肺動脈とは離れ、小葉間隔壁や区域の境界を走って心臓へ戻る。
考え方
各選択肢について「気管分岐部の高さ」「左右主気管支の長さ」「肺動脈・肺静脈の走行」「導管部と呼吸部の順序」「ガス交換の場」を順に照合すれば、正しいのは肺動脈と気管支の並走を述べたものだけである。
選択肢考察
- ×a. 気管は第3胸椎の高さで左右に分岐する。
誤り。気管分岐部はおおむね第4~5胸椎の高さにあり、体表では胸骨角(胸骨柄と胸骨体の結合部、第2肋軟骨の付着部)の高さに相当する。胸骨角の高さは、大動脈弓の起始と終わり、奇静脈が上大静脈に注ぐ位置などの目安にもなる。第3胸椎では高すぎる。なお、分岐部の高さは呼吸や体位でやや上下する。
- ×b. 右主気管支は左主気管支よりも長い。
誤り。右主気管支は長さ約2.5cm前後と短く、左主気管支は約5cm前後と長い。左主気管支は大動脈弓の下をくぐり心臓の上を越えて左肺門に向かうため長くなる。右主気管支は太く短く、気管の延長線に近い急な角度で分岐するため、誤嚥した異物や、深く挿入しすぎた気管チューブは右主気管支に入りやすい。誤嚥性肺炎が右下葉に多いのも同じ理由である。
- ○c. 末梢の肺動脈は気管支と並走する。
正しい。肺動脈は肺門から入ったあと、気管支とともに分岐を繰り返しながら末梢へ進み、細気管支のレベルまで伴走する。二次小葉(肺の構造単位)では、小葉の中心を細気管支と肺動脈が走り、肺静脈とリンパ管は小葉の辺縁の小葉間隔壁を走る。この配置は胸部CTの読影にも重要で、小葉中心性の病変(細気管支炎など)と小葉間隔壁の病変(肺水腫、癌性リンパ管症など)を見分ける手がかりになる。
- ×d. 呼吸細気管支が分岐して終末細気管支となる。
誤り。順序が逆である。終末細気管支は導管部の最末端であり、これが分岐して呼吸細気管支となる。呼吸細気管支は壁に肺胞が点在し始める部分で、さらに分岐して肺胞管、肺胞嚢へと続く。終末細気管支までは軟骨をもたないが、ガス交換には関与しない。1本の終末細気管支より末梢の領域を細葉(肺細葉)と呼ぶ。
- ×e. ガス交換は肺胞孔で行われる。
誤り。ガス交換は肺胞壁で行われ、肺胞上皮(主にⅠ型肺胞上皮細胞)、基底膜、毛細血管内皮からなるごく薄い血液空気関門を介して、酸素と二酸化炭素が拡散する。肺胞孔(Kohn孔)は隣り合う肺胞どうしをつなぐ肺胞中隔の小孔であり、側副換気(閉塞した気道の先へ隣の肺胞から空気を送る経路)に関わるが、ガス交換の場ではない。肺炎の際に病変がこの孔を介して広がることもある。
気道の分岐(おおよその分岐次数)
気管(0)→ 主気管支(1)→ 葉気管支(2)→ 区域気管支(3)→ …… → 細気管支 → 終末細気管支(約16)[ここまで導管部]→ 呼吸細気管支(17~19)→ 肺胞管(20~22)→ 肺胞嚢(23)[呼吸部] 導管部はガス交換に関与しないため、その容積(約150mL)は解剖学的死腔と呼ばれる。
左右の肺の違い
・右肺:上葉・中葉・下葉の3葉、10区域。主気管支は太く短く急角度。 ・左肺:上葉・下葉の2葉(上葉に舌区を含む)、8~10区域(S1+2、S7欠如などにより数え方が異なる)。主気管支は細く長く水平に近い。
肺の2系統の血管
・肺循環(機能血管):肺動脈は静脈血を運び、気管支と伴走する。肺静脈は動脈血を運び、小葉間隔壁・区域間を走る。 ・気管支循環(栄養血管):気管支動脈は大動脈(または肋間動脈)から分岐し、気管支壁や肺の支持組織を栄養する。喀血の多くは気管支動脈からの出血である。
肺胞の細胞
・Ⅰ型肺胞上皮細胞:扁平で肺胞表面の大部分を覆い、ガス交換に関わる。 ・Ⅱ型肺胞上皮細胞:立方形で肺サーファクタントを産生し、Ⅰ型細胞の前駆細胞でもある。 ・肺胞マクロファージ:肺胞腔内の異物を処理する。
POINT
・気管分岐部は第4~5胸椎(胸骨角)の高さ。 ・右主気管支は太く・短く・急角度であり、異物や挿管チューブが入りやすい。 ・肺動脈は気管支と伴走して小葉中心を走り、肺静脈は小葉間隔壁を走る。 ・終末細気管支(導管部の最末端)→ 呼吸細気管支(呼吸部の始まり)→ 肺胞管 → 肺胞嚢の順。 ・ガス交換の場は肺胞壁。肺胞孔(Kohn孔)は肺胞間の交通路で側副換気に関わる。
