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その血圧、本当に正しい?―カフの巻き方とKorotkoff音で押さえる測定の基本

第106回医師国家試験 F問題 第11問

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第106回 F問題 第11問

上腕での血圧測定の手技で正しいのはどれか。

  1. a.上腕は肩の高さに保つ。
  2. b.マンシェットの遠位端が肘窩に重なるように巻く。
  3. c.ゴム嚢の中央部で上腕動脈を圧迫するように巻く。
  4. d.患者が痛くないように減圧は素早く行う。
  5. e.Korotkoff音の消失する時点を収縮期血圧とする。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、聴診法による上腕での血圧測定の手技を問う問題だ。誰もが毎日のように目にする手技だけど、細かいポイントを正確に理解しているかが問われる。腕の高さ、カフの位置、減圧の速さ、Korotkoff音の読み方という4つの観点で整理してみよう。
医学生医学生
OSCEのバイタルサインの課題で練習しましたが、普段は自動血圧計ばかりなので、細かいところは自信がないです。
ドクタードクター
それなら一つずつ確認しよう。まず腕の高さ。測定部位はどこに合わせるのが原則かな。
医学生医学生
腕を肩の高さに上げると測りやすい気がしますが……。
ドクタードクター
そこが一つ目の落とし穴だ。原則は心臓の高さ、つまり胸骨中央から第4肋間あたりに合わせる。血圧には静水圧の影響があって、測定部位が心臓より高いと低く、低いと高く測定される。10cmの差で7〜8mmHgほど変わるとされているんだ。座位で腕を肩の高さまで挙げると心臓より高くなるから、血圧を過小評価してしまう。
医学生医学生
生理学の講義で習った静水圧の話が、こんなところで効いてくるんですね。
ドクタードクター
そう、基礎医学がそのまま臨床手技の根拠になっている。次はカフの位置。肘窩に重なるように巻くのはどうだろう。
医学生医学生
肘窩は聴診器を当てる場所なので、カフがかぶっていたら音が聞けないですよね。
ドクタードクター
その通り。カフの下端は肘窩より2〜3cm上、肩側に置く。カフが肘窩に重なると聴診器を正しく当てられないし、カフの擦れる雑音も入りやすい。肘を曲げたときにずれて圧迫が不正確にもなる。では、カフのどの部分で動脈を押さえるべきかな。
医学生医学生
カフの中のゴム嚢、つまり空気袋の中央を上腕動脈の真上に合わせる、ですね。カフに印がついているのはそのためだと実習で教わりました。
ドクタードクター
正解。実際に動脈を圧迫しているのはカフの布ではなく中のゴム嚢だ。その中央を上腕内側を走る上腕動脈の真上に合わせることで、カフ圧が均一に伝わり、カフ内圧と動脈を閉塞させる圧が一致する。中央がずれると閉塞にはより高い圧が必要になり、血圧が高めに出てしまう。これが今回の正しい記述だ。
医学生医学生
減圧は患者さんがつらくないように素早く、というのもなんとなく正しそうに見えましたが……。
ドクタードクター
優しさとしては分かるけれど、それは誤りだ。加圧は速やかでよいが、減圧は1拍あたり2〜3mmHg程度とゆっくり行う。速く下げると音が出た瞬間・消えた瞬間の圧を読み損ね、収縮期血圧は低め、拡張期血圧は高めに誤読しやすい。苦痛への配慮は、最初に橈骨動脈を触れながら加圧して拍動が消える圧を確認し、その20〜30mmHg上までにとどめる、という形で行うんだ。
医学生医学生
なるほど、必要以上に高く加圧しないことが配慮になるんですね。最後のKorotkoff音は、聞こえ始めが収縮期、消えるところが拡張期でしたよね。
ドクタードクター
そう。カフ圧が収縮期血圧を下回ると、心臓が送り出すたびに血液がわずかに通り抜けて音が出始める。さらに下がって拡張期血圧を下回ると、血管が常に開いた状態になり音が消える。だから消失点を収縮期血圧とするのは逆だ。ちなみに、妊婦や大動脈弁閉鎖不全症、甲状腺機能亢進症、貧血などでは0mmHg近くまで音が消えないことがあり、音が急に弱くなる第4点を拡張期血圧として用いることもある。
医学生医学生
循環器内科の実習で、大動脈弁閉鎖不全症の患者さんの拡張期血圧がすごく低く出ていたのを思い出しました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。それと、触診で先に拍動消失圧を確認するのには別の理由もある。聴診間隙といって、高血圧や動脈硬化のある人では、聞こえ始めた音がいったん途切れて、また聞こえてくることがある。最初から聴診だけでやると、再出現点を収縮期血圧と取り違えて過小評価してしまうんだ。
医学生医学生
手順の一つ一つにちゃんと理由があるんですね。カフのサイズも関係ありますか。
ドクタードクター
大いに関係する。ゴム嚢の幅は上腕周囲長の約40%、長さは80%以上が目安だ。腕の太さに比べて幅の狭いカフを使うと、閉塞に高い圧が必要になり血圧が高く出る。肥満の人には大きいカフ、小児には小児用カフを使う。ほかにも、まくり上げた袖による締め付け、会話や喫煙・カフェイン摂取直後、足を組むことなどが誤差の原因になる。初回は左右両腕で測り、10mmHg以上の左右差があれば高い側を採用し、鎖骨下動脈狭窄なども考えよう。

まとめ

上腕での聴診法による血圧測定では、測定部位を心臓の高さに保ち、カフの下端を肘窩の2〜3cm上にして、ゴム嚢の中央が上腕動脈の真上に来るように巻くことが基本です。触診で拍動消失圧を確認してその20〜30mmHg上まで加圧し、1拍あたり2〜3mmHg程度でゆっくり減圧して、Korotkoff音の出現点を収縮期血圧、消失点を拡張期血圧とします。腕が心臓より高い、減圧が速い、カフが細すぎる、聴診間隙を見逃すといった要因はいずれも測定誤差につながります。日常的な手技だからこそ、各手順の根拠を理解しておくことが正確な診療と高血圧診断の基盤になります。

解答・解説

正解はcです

上腕での聴診法による血圧測定(水銀血圧計やアネロイド血圧計を用いる方法)の基本手技を問う問題である。正確な測定のためのポイントは、(1)測定部位(カフ)を心臓の高さに合わせること、(2)適切なサイズのカフを正しい位置に巻くこと、(3)適切な速度で加圧・減圧すること、(4)Korotkoff(コロトコフ)音の出現と消失から収縮期・拡張期血圧を正しく読むこと、の4点に整理できる。 標準的な手順は次のとおりである。座位で数分安静にした後、上腕を心臓の高さ(胸骨中央〜第4肋間付近)に置く。ゴム嚢(カフ内部の空気袋)の中央が上腕動脈の真上に来るように、カフの下端を肘窩より2〜3cm上にして、指が1〜2本入る程度の締め具合で巻く。まず橈骨動脈を触れながら加圧して拍動が消える圧を確認し、そこからさらに20〜30mmHg程度上まで加圧する。聴診器は肘窩の上腕動脈上に当て、1拍ごとに2〜3mmHg程度のゆっくりした速度で減圧し、Korotkoff音が聞こえ始めた点を収縮期血圧、消失した点を拡張期血圧とする。 この手順と照らし合わせると、ゴム嚢の中央部で上腕動脈を圧迫するというcだけが正しい記述である。

選択肢考察

  1. ×a.  上腕は肩の高さに保つ。

    測定部位は心臓(右心房)の高さに保つのが原則である。測定部位が心臓より高いと静水圧の分だけ血圧は低く、低いと高く測定される(高さ約10cmの差で7〜8mmHg程度変化する)。座位で上腕を肩の高さまで挙げると心臓より高くなり、血圧が過小評価されるため誤りである。

  2. ×b.  マンシェットの遠位端が肘窩に重なるように巻く。

    マンシェット(カフ)は、その下端が肘窩より2〜3cm程度中枢側(肩側)に位置するように巻く。肘窩はKorotkoff音を聴取するために聴診器を当てる場所であり、カフが重なっていると聴診器を正しく当てられず、カフ自体が擦れる雑音も入りやすい。また肘を曲げたときにカフがずれて正確な圧迫ができなくなるため誤りである。

  3. ○c.  ゴム嚢の中央部で上腕動脈を圧迫するように巻く。

    カフの中にはゴム嚢(空気袋)が入っており、実際に動脈を圧迫しているのはこのゴム嚢である。ゴム嚢の中央を上腕の内側を走る上腕動脈の真上に合わせることで、カフ圧が動脈に均一に伝わり、カフ内の圧と動脈を閉塞させる圧が一致する。中央がずれると動脈を十分に圧迫するのにより高い圧が必要となり、血圧が高めに測定される原因となる。したがって正しい。

  4. ×d.  患者が痛くないように減圧は素早く行う。

    加圧は速やかに行ってよいが、減圧は1拍あたり2〜3mmHg程度の速度でゆっくり行う必要がある。減圧が速すぎると、Korotkoff音が出現・消失した瞬間の圧を正確に読み取れず、収縮期血圧は低めに、拡張期血圧は高めに誤読されやすい。患者の苦痛への配慮は、必要以上に高く加圧しない(触診で拍動消失圧を確認し、その20〜30mmHg上までにとどめる)ことで行うべきであり、減圧を速めるのは誤りである。

  5. ×e.  Korotkoff音の消失する時点を収縮期血圧とする。

    カフ圧を下げていき、Korotkoff音が初めて聞こえ始めた時点(第1点)が収縮期血圧、音が消失した時点(第5点)が拡張期血圧である。音の消失を収縮期血圧とするのは誤りである。なお、妊婦、大動脈弁閉鎖不全症、甲状腺機能亢進症、貧血などで音が0mmHg近くまで消失しない場合は、音が急に小さくなる点(第4点)を拡張期血圧として用いることがある。

Korotkoff音のスワン(Swan)分類

第1点:清明な音が聞こえ始める(収縮期血圧) 第2点:雑音様の音に変わる 第3点:再び大きく明瞭な音になる 第4点:音が急に弱く、こもった音になる 第5点:音が消失する(拡張期血圧) 第1点と第3点の間で一時的に音が聞こえなくなる現象を聴診間隙(auscultatory gap)といい、高血圧や動脈硬化のある人でみられる。これを収縮期血圧と取り違えないためにも、最初に触診法で拍動消失圧を確認してから加圧することが勧められる。

カフの大きさ

・ゴム嚢の幅は上腕周囲長の約40%、長さは上腕周囲長の約80%以上とされる。標準的な成人ではゴム嚢の幅約13cm、長さ22〜24cm程度のものが用いられる。 ・上腕周囲に比べて幅の狭いカフを使うと、動脈を閉塞させるのに高い圧が必要となり、血圧は実際より高く測定される。逆に広すぎるカフでは低めに測定される。肥満者には大きいカフ、小児には小児用カフを用いる。

その他の測定誤差の要因

・まくり上げた袖が上腕をきつく締め付けていると、正しい測定の妨げとなり血圧が低く測定されやすい。 ・触診法(橈骨動脈の拍動再出現点を読む方法)では収縮期血圧しか測定できず、聴診法より低めの値となる。 ・会話、喫煙・カフェイン摂取直後、寒冷、尿意、背もたれなしの座位、足を組むなどは血圧を上昇させる。 ・初回は左右両腕で測定し、左右差(10mmHg以上)があれば高い側の値を採用し、鎖骨下動脈狭窄などを疑う。

POINT

・測定部位は心臓の高さ。高すぎると低く、低すぎると高く測定される。 ・カフ下端は肘窩の2〜3cm上、ゴム嚢の中央を上腕動脈上に置く。 ・触診で拍動消失圧を確かめ、その20〜30mmHg上まで加圧。 ・減圧は1拍あたり2〜3mmHgとゆっくり。 ・Korotkoff音の出現点=収縮期血圧、消失点=拡張期血圧。 ・幅の狭いカフでは血圧が高く出る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。