熱が下がっても登校はまだ早い―インフルエンザの出席停止期間を「日数」で読み解く
第106回医師国家試験 E問題 第39問
国試問題にチャレンジ
9歳の男児。昨日から続く39℃の発熱,咽頭痛および頭痛を主訴に来院した。迅速検査の結果,インフルエンザA型と診断された。 小学校の出席停止期間に関する説明で正しいのはどれか。
- a.解熱するまで
- b.すべての症状が消失するまで
- c.解熱した後2日を経過するまで
- d.解熱した後2週を経過するまで
- e.抗ウイルス薬を使用開始した翌日まで
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
インフルエンザは学校保健安全法の第二種感染症で、出題当時の出席停止基準は「解熱した後2日を経過するまで」でした。現在は抗インフルエンザ薬で早期に解熱しても感染力が残ることを踏まえ、「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで」に改められていますが、解熱後2日は今も必要条件です。日数は発症日・解熱日を0日目として数え、服薬の有無や症状の完全消失は基準になりません。麻疹の解熱後3日、水痘の全発疹痂皮化、咽頭結膜熱の主要症状消退後2日など、他の第二種感染症の基準と区別して覚えることが大切です。症状の経過とウイルス排出期間のずれを理解しておくことは、保護者への説明や集団感染の予防という日常診療に直結します。
解答・解説
正解はcです
症例の整理
9歳の男児(小学生)が、前日からの39℃の発熱、咽頭痛、頭痛で受診し、迅速抗原検査でインフルエンザA型と診断された。診断は確定しており、本問で問われているのは治療ではなく、学校保健安全法に基づく出席停止期間についての説明である。
考え方
学校保健安全法施行規則では、学校で予防すべき感染症を第一種から第三種に分類し、それぞれ出席停止期間の基準を定めている。インフルエンザ(特定鳥インフルエンザおよび新型インフルエンザ等感染症を除く)は第二種感染症に属する。 本問が出題された当時(2012年2月)の基準は「解熱した後2日を経過するまで」であり、選択肢cがこれに当たる。 その後、2012年4月の施行規則改正で基準が見直され、現在は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」とされている。改正の背景には、抗インフルエンザ薬の普及がある。薬によって早く(1〜2日で)解熱する例が増えた一方で、解熱後もしばらくはウイルスの排出が続くため、「解熱後2日」だけでは感染力が残る時期に登校してしまうおそれが生じた。そこで発症からの日数による条件が加えられた。 現行基準でも「解熱した後2日を経過するまで」は必要条件の一つであり、選択肢の中で基準に沿った説明はcのみである。
日数の数え方
発症日(発熱などの症状が出た日)や解熱した日を0日目とし、その翌日を1日目として数える。例えば月曜日に発症し水曜日に解熱した場合、「発症後5日経過」は土曜日まで、「解熱後2日経過」は金曜日までが出席停止となり、両方を満たす日曜日以降に登校が可能となる。 なお、学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めたときは、この期間によらない場合がある。
選択肢考察
- ×a. 解熱するまで
インフルエンザでは、解熱した時点でも気道からのウイルス排出がしばらく続いており、他者に感染させる可能性がある。そのため、解熱しただけでは出席停止は解除されず、解熱後さらに2日(幼児は3日)の経過が求められている。
- ×b. すべての症状が消失するまで
インフルエンザ後の咳や倦怠感などは、ウイルスの排出が落ち着いた後も長く残ることがあり、すべての症状が消えるまでを基準にすると必要以上に出席を制限することになる。インフルエンザの基準は症状全般ではなく、解熱からの日数(と発症からの日数)で定められている。なお、症状の消失を基準とする第二種感染症には、例えば風疹(発疹が消失するまで)や百日咳(特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬療法の終了まで)がある。
- ○c. 解熱した後2日を経過するまで
学校保健安全法施行規則に定められたインフルエンザの出席停止期間の条件であり、本問出題時の基準そのものである。現在は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」と改められ、発症後5日の条件も併せて満たす必要がある。本症例は9歳の小学生であるため、解熱後の日数は幼児の3日ではなく2日が適用される。
- ×d. 解熱した後2週を経過するまで
インフルエンザの感染力は発症直前から発症後数日間が最も強く、多くは1週間程度で排出されるウイルス量は大きく減少する。解熱後2週まで出席停止にする根拠はなく、期間が長すぎる。単位が「日」ではなく「週」になっている点に注意する。
- ×e. 抗ウイルス薬を使用開始した翌日まで
抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬やバロキサビル マルボキシルなど)は症状の持続期間を短縮するが、投与翌日にウイルスの排出が止まるわけではない。出席停止期間は服薬の有無や開始時期ではなく、発症日と解熱日からの日数で判断する。むしろ、薬で早く解熱しても感染力が残るという問題があったことが、発症後5日の条件が追加された理由である。
インフルエンザの概要
A型またはB型インフルエンザウイルスによる急性気道感染症で、主に飛沫・接触で感染する。潜伏期は1〜3日程度で、38℃以上の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などの全身症状が急に出現し、咽頭痛・咳・鼻汁などの気道症状を伴う。通常は1週間前後で軽快する。小児ではインフルエンザ脳症、熱性けいれん、異常行動、高齢者では肺炎(細菌性二次感染を含む)などの合併症に注意する。
学校感染症の分類(学校保健安全法施行規則)
・第一種:感染症法の一類感染症と二類感染症(結核を除く)など。治癒するまで出席停止。 ・第二種:飛沫感染などで学校で流行を広げる可能性が高いもの。疾患ごとに基準がある。 ・第三種:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎など。病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまで。
第二種感染症の主な出席停止期間
・インフルエンザ:発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで ・百日咳:特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで ・麻疹:解熱した後3日を経過するまで ・流行性耳下腺炎:耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで ・風疹:発疹が消失するまで ・水痘:すべての発疹が痂皮化するまで ・咽頭結膜熱:主要症状が消退した後2日を経過するまで ・新型コロナウイルス感染症:発症した後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで ・結核、髄膜炎菌性髄膜炎:病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまで 出席停止は校長が行い、臨時休業(学級閉鎖・学校閉鎖)は学校の設置者が行う。
POINT
・インフルエンザは学校保健安全法の第二種感染症。 ・現行の出席停止期間は「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで」(2012年4月改正)。 ・発症日・解熱日は0日目として数える。 ・抗インフルエンザ薬の使用や症状の完全消失は基準ではない。 ・麻疹「解熱後3日」、咽頭結膜熱「主要症状消退後2日」、水痘「全発疹の痂皮化」など、他の第二種感染症の基準と区別して覚える。
