StudyMed医師国家試験

右心房の「玄関」はいくつある?―直接開口する静脈と合流してから入る静脈

第106回医師国家試験 E問題 第38問

国試問題にチャレンジ

第106回 E問題 第38問

右心房に開口するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.奇静脈
  2. b.肺静脈
  3. c.下大静脈
  4. d.右腕頭静脈
  5. e.冠状静脈洞

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は心臓の解剖、右心房にどの血管が開口するかを問う問題だ。ポイントは「右心房に直接開口する」のか、「別の静脈に合流してから右心房に至る」のかを区別すること。まず心房の役割から確認しよう。
医学生医学生
心房は血液を受け入れる部屋で、右心房には全身からの静脈血、左心房には肺からの動脈血が戻ってきます。
ドクタードクター
その通り。では右心房に直接開口する静脈を挙げてみてくれるかな。
医学生医学生
上大静脈と下大静脈……あとは何でしたっけ。解剖実習で心臓を開いたときに、小さな孔があった気がします。
ドクタードクター
それが冠状静脈洞だ。右心房に直接開口する静脈は、上大静脈、下大静脈、冠状静脈洞の3つが基本。今回の選択肢では下大静脈と冠状静脈洞が正解になる。
医学生医学生
下大静脈は横隔膜を貫いてすぐ右心房に入るんですよね。
ドクタードクター
そう。左右の総腸骨静脈が第5腰椎の高さで合流して始まり、腎静脈や肝静脈を受け入れながら上行し、第8胸椎の高さの大静脈孔を通って、すぐに右心房の下後部に開口する。開口部には、胎生期に血液を卵円孔へ導いていた下大静脈弁、Eustachio弁の遺残がみられるよ。
医学生医学生
冠状静脈洞は、心臓自身の静脈血を集めるんですね。
ドクタードクター
そうだ。心臓の後面、左心房と左心室の間の冠状溝を走る太く短い静脈で、大心静脈・中心静脈・小心静脈を受け入れ、心筋からの静脈血の大部分を集める。下大静脈口と三尖弁口の間に開口していて、そこには冠状静脈洞弁がある。
医学生医学生
心臓の静脈血はすべて冠状静脈洞を通るのかと思っていました。
ドクタードクター
そこは正確に覚えておきたい。「大部分」であって「すべて」ではないんだ。右心室前壁の前心静脈は直接右心房に、細小心静脈、いわゆるThebesius静脈は各心腔に直接注ぐ。では誤りの選択肢を見ていこう。奇静脈はどうかな。
医学生医学生
奇静脈は右心房の近くを通っていた気がするので、迷いました。
ドクタードクター
近くを通るのは確かだね。奇静脈は胸椎の右側を上行して肋間静脈などを集め、第4胸椎の高さで右肺根の上を弓状に越えて、上大静脈の後面に注ぐ。つまり右心房には直接開口せず、上大静脈を経由する。上・下大静脈をつなぐ側副路として重要な静脈だ。
医学生医学生
右腕頭静脈も同じ理屈で、上大静脈になってから右心房に入るということですね。
ドクタードクター
その通り。内頸静脈と鎖骨下静脈が静脈角で合流して腕頭静脈になり、右腕頭静脈と左腕頭静脈が合流して上大静脈を形成する。右腕頭静脈自体は右心房に開口しない。
医学生医学生
肺静脈は、酸素化された血液を運ぶので左心房ですね。
ドクタードクター
正解。通常は左右2本ずつ、計4本が左心房の後壁に開口する。ただし先天的に肺静脈の一部または全部が右心房や大静脈系に還流する、肺静脈還流異常症という病気があることも覚えておこう。
医学生医学生
小児科の実習で、総肺静脈還流異常症の赤ちゃんの話を聞きました。正常の解剖がわかっていると異常の意味も理解しやすいですね。
ドクタードクター
まさにそうだね。発展知識をいくつか挙げておこう。冠状静脈洞は、心臓再同期療法で左心室ペーシングリードを入れる経路として使われる。また左上大静脈遺残では、左側の上大静脈が冠状静脈洞に注ぐため、冠状静脈洞が拡張してみえる。
医学生医学生
心エコーで冠状静脈洞が太く見えたら、左上大静脈遺残を疑うということですか。
ドクタードクター
そう、それが鑑別の一つになる。それから、肺癌や縦隔腫瘍で上大静脈が圧迫される上大静脈症候群では、奇静脈や胸壁の静脈が側副路として発達する。解剖の知識は、こうした臨床像の理解にそのままつながるんだ。

まとめ

右心房に直接開口する静脈は、上大静脈・下大静脈・冠状静脈洞の3つが基本であり、このほか前心静脈や細小心静脈も直接心腔へ注ぎます。奇静脈や左右の腕頭静脈は上大静脈に合流してから右心房に至るため、「直接開口する」ものではありません。肺静脈は通常4本が左心房に開口し、これが右心房側へ還流する先天異常が肺静脈還流異常症です。冠状静脈洞は心筋の静脈血の大部分を集める構造で、心臓再同期療法のリード挿入経路や、左上大静脈遺残での拡張など臨床でも登場します。正常な静脈還流路を正確に理解しておくことは、先天性心疾患や上大静脈症候群の側副路、カテーテル手技を理解する土台になります。

解答・解説

正解はc, eです

心臓の4つの部屋のうち、血液を受け入れる「入口」は心房である。全身を巡って酸素を失った静脈血は右心房へ、肺で酸素を受け取った動脈血は左心房へ戻ってくる。 右心房に直接開口する静脈は次の3つが基本である。 ・上大静脈:頭頸部・上肢・胸壁上部からの血液を集める。 ・下大静脈:下肢・腹部・骨盤からの血液を集める。 ・冠状静脈洞:心臓自身の壁(心筋)からの静脈血の大部分を集める。 このほか、心臓壁の一部の血液は前心静脈や細小心静脈(Thebesius静脈)として小さな孔から直接心腔に注ぐ。 一方、左心房には4本の肺静脈が開口する。 設問では「右心房に直接開口するもの」を問われているので、上大静脈へいったん合流してから右心房に至る静脈(奇静脈、腕頭静脈など)は該当しないことに注意する。

選択肢考察

  1. ×a.  奇静脈

    奇静脈は腹部の右上行腰静脈などに始まり、横隔膜を貫いて胸椎椎体の右側を上行する。肋間静脈や食道静脈、気管支静脈などの血液を集めたのち、第4胸椎の高さで右肺根の上を後方から前方へ弓状に越え(奇静脈弓)、上大静脈の後面に注ぐ。右心房には直接開口しない。上・下大静脈の間をつなぐ側副路として重要で、下大静脈が閉塞したときには血液の迂回路となる。

  2. ×b.  肺静脈

    肺静脈は肺でガス交換を終えた酸素に富む血液を心臓へ戻す静脈で、通常は左右2本ずつ計4本が左心房の後壁に開口する。右心房には開口しない。なお、肺静脈の一部または全部が右心房や大静脈系に還流する先天異常を肺静脈還流異常症という。

  3. ○c.  下大静脈

    下大静脈は左右の総腸骨静脈が第5腰椎の高さで合流して始まり、腹部大動脈の右側を上行して腎静脈・肝静脈などを受け入れる。横隔膜の大静脈孔(第8胸椎の高さ)を通って胸腔に入り、すぐに右心房の下後部に開口する。開口部には胎生期に血液を卵円孔へ導いた下大静脈弁(Eustachio弁)の遺残がみられる。

  4. ×d.  右腕頭静脈

    腕頭静脈は、内頸静脈と鎖骨下静脈が合流(静脈角)してできる。右腕頭静脈は短くほぼ垂直に下行し、胸骨柄の後方を斜めに横切ってきた左腕頭静脈と右第1肋軟骨の後方付近で合流して上大静脈となる。したがって、血液は上大静脈を経て右心房に戻るのであって、右腕頭静脈自体が右心房に直接開口するわけではない。

  5. ○e.  冠状静脈洞

    冠状静脈洞は心臓の後面、左心房と左心室の間の冠状溝を走る太く短い静脈で、大心静脈・中心静脈・小心静脈などを受け入れ、心筋からの静脈血の大部分を集める。下大静脈口と右房室口(三尖弁口)の間で右心房に開口し、開口部には冠状静脈洞弁(Thebesius弁)がある。ただし心臓の静脈血のすべてが冠状静脈洞を通るわけではなく、右心室前壁の前心静脈は直接右心房に、細小心静脈は各心腔に直接注ぐ。

心臓の各腔に出入りする血管

・右心房:入口=上大静脈、下大静脈、冠状静脈洞(+前心静脈、細小心静脈)。出口=三尖弁を経て右心室へ。 ・右心室:出口=肺動脈弁を経て肺動脈幹へ。 ・左心房:入口=左右の肺静脈(通常4本)。出口=僧帽弁を経て左心室へ。 ・左心室:出口=大動脈弁を経て上行大動脈へ。

上大静脈に注ぐ主な静脈

左右の腕頭静脈(合流して上大静脈を形成)、奇静脈。なお、半奇静脈・副半奇静脈は奇静脈に注ぐ。

臨床との関連

・冠状静脈洞は、心臓再同期療法(CRT)で左心室ペーシングリードを挿入する経路として利用される。 ・左上大静脈遺残では、左側の上大静脈が冠状静脈洞に注ぎ、冠状静脈洞が拡張してみえる。 ・上大静脈症候群(肺癌や縦隔腫瘍による圧迫)では、奇静脈や胸壁の静脈が側副路として発達する。

POINT

・右心房に直接開口するのは上大静脈、下大静脈、冠状静脈洞。 ・左心房に開口するのは肺静脈(通常4本)。 ・奇静脈と左右の腕頭静脈は上大静脈に注ぎ、右心房には直接開口しない。 ・冠状静脈洞は心筋の静脈血の大部分を集めるが、前心静脈や細小心静脈は直接心腔へ注ぐ。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。