StudyMed医師国家試験

片側・凹凸・白い角化―声帯の「顔つき」で見抜く喉頭癌

第106回医師国家試験 D問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第106回 D問題 第10問

喉頭内視鏡の写真(①~⑤)を別に示す。  喉頭癌と考えられるのはどれか。

第106回 D問題 第10問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、喉頭内視鏡の写真を並べて、その中から喉頭癌を選ぶ問題だ。声帯にできる病気は良性のものも多いから、「どんな見た目なら悪性を疑うか」という読み方のコツを身につけることが目標だよ。まず、正常な声帯がどう見えるか説明できるかな。
医学生医学生
耳鼻科の講義で、声門は逆V字に見えて、声帯は白っぽくてまっすぐだと習いました。
ドクタードクター
その通り。左右の声帯が前方の前連合で合わさり、後方の披裂部で開く。色は白〜淡いピンクで、表面は平滑、辺縁はまっすぐで左右対称。この正常像を基準にして、ほかの写真との違いを探すんだ。実際、選択肢の中には左右とも白く平滑で対称な、正常と考えられる声帯も含まれているね。
医学生医学生
正常像を頭に入れておくと比較しやすいですね。異常を見るときは、何から確認すればいいですか。
ドクタードクター
順番に、①病変が片側か両側か、②表面が平滑か凹凸不整か、白い角化を伴うか、③病変の位置、④声帯の形や位置の左右差、の4点を見るといい。腫瘍は片側性が多く、声帯結節やポリープ様声帯は両側性が多い、というのが大きな目安だ。
医学生医学生
片側の声帯に、表面がゴツゴツして白い角化を伴う腫瘤がある写真がありました。それが癌でしょうか。
ドクタードクター
正解。片側性で、表面が凹凸不整な隆起、そして白色の角化、いわゆる白板を伴う。これは悪性を強く示唆する組み合わせで、声門癌がもっとも考えられる。発赤や易出血性、周囲との境界不明瞭も悪性を疑う手がかりになる。もちろん確定診断には生検が必要で、組織型はほとんどが扁平上皮癌だよ。
医学生医学生
両側の声帯が半透明にブヨブヨと腫れて垂れ下がっている写真は、迷いました。腫れ方が大きいので怪しく見えて。
ドクタードクター
見た目のインパクトが大きいから迷うよね。でも両側性で、辺縁はなめらか、角化や不整な腫瘤はない。これはポリープ様声帯、いわゆるReinke浮腫だ。上皮直下のReinke腔に浮腫が生じる病態で、喫煙との関連が強く、中年以降の女性や喫煙者に多い。声が低くなるのが特徴だね。
医学生医学生
喫煙がリスクという点は喉頭癌と共通なんですね。
ドクタードクター
そう。だから良性でも禁煙指導と経過観察が大切なんだ。次に、両側の声帯の前1/3付近に左右対称の小さな隆起がある写真はどうかな。
医学生医学生
臨床実習で耳鼻科を回ったとき、保育士さんの声帯結節を見せてもらいました。声の使いすぎで両側にできるんですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。前1/3付近は発声時にもっとも強く振動してぶつかり合う部位で、歌手、教師、よく叫ぶ子どもなどにできやすい。表面は平滑で、治療は発声の安静や音声治療が基本、改善しなければ手術を考える。最後に、片方の声帯がやせて弓状に見え、左右差がある写真は?
医学生医学生
腫瘤はないので、声帯麻痺でしょうか。反回神経麻痺だと気息性嗄声になると習いました。
ドクタードクター
その通り。声門がしっかり閉じないので息もれの多いかすれ声や誤嚥を来す。原因として甲状腺癌、食道癌、肺癌、胸部大動脈瘤、術後などがあり、大動脈弓を回る左側が障害されやすい。麻痺自体は腫瘍ではないけれど、原因検索がとても重要だよ。
医学生医学生
片側か両側か、表面が平滑か不整か、という見方をすると、ずいぶん整理しやすいですね。
ドクタードクター
ただし例外もある。声帯ポリープは多くが片側性だけど、表面は平滑。片側というだけで癌と決めず、表面の性状を必ずセットで評価しよう。それから白板症は前癌病変として重要で、声帯に白い角化を見たら生検で異形成や癌の有無を確認する。
医学生医学生
喉頭癌全体としては、どんな特徴を押さえておけばいいですか。
ドクタードクター
高齢男性に多く、喫煙が最大の危険因子だ。部位で声門上・声門・声門下に分けられ、日本では声門癌が最多。声門癌は早期から嗄声が出て見つかりやすく、リンパ流が乏しいため頸部リンパ節転移が少なく、予後は比較的良い。一方、声門上癌は初期症状に乏しく転移しやすい。早期声門癌は放射線治療などで喉頭を温存できるが、進行して喉頭全摘になると声を失うため、食道発声や電気式人工喉頭、シャント発声で音声を再獲得することになる。
医学生医学生
喫煙歴のある高齢男性が長引く嗄声で来たら、喉頭をしっかり見ないといけないですね。
ドクタードクター
その意識がとても大事。嗄声が続く患者を「風邪の名残」で済ませず、内視鏡で声帯の顔つきを確認する習慣をつけておこう。

まとめ

喉頭内視鏡で喉頭癌を疑う所見は、片側性で表面が凹凸不整な隆起性病変、白色の角化(白板)、発赤や易出血性などであり、確定診断は生検で行い、組織型の多くは扁平上皮癌です。両側のびまん性浮腫はポリープ様声帯(Reinke浮腫)、両側対称の前1/3付近の小隆起は声帯結節、声帯の萎縮や左右差は反回神経麻痺を考え、正常像を基準に「片側か両側か」「表面が平滑か不整か」で整理すると鑑別しやすくなります。喉頭癌は喫煙歴のある高齢男性に多く、声門癌は早期から嗄声を来すため発見されやすく、リンパ節転移が少なく予後は比較的良好です。白板症は前癌病変として生検の対象となり、長引く嗄声では内視鏡で声帯を確認することが早期発見と喉頭温存につながります。

解答・解説

正解はaです

喉頭内視鏡の画像から声帯の代表的な疾患を見分ける問題である。喉頭内視鏡では通常、声門が逆V字(またはV字)に見え、左右の声帯が前方の前連合で合わさり、後方の披裂部で開いている。正常な声帯は白色~淡いピンク色で表面が平滑、辺縁はまっすぐでなめらかであり、左右対称である。 画像を読むときは、次の点を順に確認するとよい。 1. 病変が片側か両側か(腫瘍は片側性が多く、声帯結節・ポリープ様声帯は両側性が多い) 2. 表面の性状(平滑か、凹凸不整か、白色の角化物=白板を伴うか) 3. 病変の位置(前1/3、膜様部全長など) 4. 声帯の形・位置の左右差(麻痺や萎縮の手がかり) 喉頭癌を疑う所見は、片側声帯の表面凹凸不整な隆起性病変、白色の角化(白板)、発赤や易出血性、周囲との境界不明瞭などである。①では片側(右)声帯の前方から中央にかけて表面の不整な腫瘤性病変があり、白色の角化を伴っているため、喉頭癌(声門癌)が最も考えられる。確定診断には生検による病理組織診断が必要であり、組織型のほとんどは扁平上皮癌である。

選択肢考察

  1. ○a.  ①

    片側(右)声帯に、表面が凹凸不整で一部に白色の角化(白板)を伴う腫瘤性病変を認める。両側性・対称性の良性病変とは異なり、片側性で不整な隆起と角化を伴う点が悪性腫瘍を強く示唆し、喉頭癌(声門癌)と考えられる。声門癌は早期から嗄声(させい、声のかすれ)を来すため発見されやすく、声門部はリンパ流が乏しいことから頸部リンパ節転移も少なく、喉頭癌の中では予後が比較的良好である。喫煙との関連が強く、高齢男性に多い。

  2. ×b.  ②

    両側声帯は白色で表面平滑、辺縁も直線的で、左右対称である。腫瘤・浮腫・結節などの異常は認めず、正常な喉頭所見と考えられる。他の画像を評価する際の基準として、正常像の見え方を覚えておくことが重要である。

  3. ×c.  ③

    両側の声帯が浮腫状に膨らみ、半透明でブヨブヨと垂れ下がるように腫脹している。辺縁はなめらかで、不整な腫瘤や角化はみられないため、ポリープ様声帯(Reinke 浮腫)と考えられる。声帯粘膜の上皮直下にある Reinke 腔に浮腫が生じる病態で、喫煙との関連が強く、中年以降の女性や喫煙者に多い。声が低くなり、嗄声を来す。悪性ではないが、喫煙者に多い点は喉頭癌と共通するため、禁煙指導と経過観察が重要である。

  4. ×d.  ④

    両側声帯の前1/3付近(膜様部の中央付近)に、左右ほぼ対称の小さな結節状の隆起を認め、声帯結節と考えられる。前1/3付近は発声時に声帯が最も強く振動しぶつかり合う部位であり、声の酷使(歌手、教師、よく叫ぶ小児など)による機械的刺激で両側対称に生じるのが特徴である。表面は平滑で、悪性を疑う不整さや角化はない。治療は発声の安静や音声治療が基本で、改善しなければ手術を検討する。

  5. ×e.  ⑤

    声帯の形や位置に左右差があり、一側の声帯がやせて弓状に見える。表面に不整な腫瘤はなく、一側の声帯麻痺(反回神経麻痺)とそれに伴う声帯の萎縮が考えられる。反回神経麻痺では声門が十分に閉鎖できず、気息性嗄声(息もれの多いかすれ声)や誤嚥を来す。原因として甲状腺癌・食道癌・肺癌などの悪性腫瘍、胸部大動脈瘤、甲状腺や胸部の手術後などがあり、特に左反回神経は大動脈弓を回って走行が長いため障害されやすい。麻痺そのものは腫瘍性病変ではないが、原因疾患の検索が重要である。

喉頭癌の概要

・高齢男性に多く、喫煙が最大の危険因子である(飲酒も関与)。組織型は大部分が扁平上皮癌 ・部位により声門上癌・声門癌・声門下癌に分けられ、日本では声門癌が最も多い ・声門癌: 早期から嗄声が出るため早期発見されやすい。リンパ流が乏しく頸部リンパ節転移が少ないため予後が比較的良い ・声門上癌: 初期症状が乏しく(咽頭の違和感、嚥下時痛など)、リンパ流が豊富で頸部リンパ節転移を来しやすい ・声門下癌: 頻度は低く、進行すると呼吸困難で発見されることがある ・前癌病変として白板症が重要で、声帯の白色角化病変は生検で異形成や癌の有無を確認する ・治療: 早期声門癌では放射線治療やレーザーによる経口的切除などの喉頭温存治療が選択される。進行例では化学放射線療法や喉頭全摘術が行われ、喉頭全摘後は発声機能を失うため、食道発声・電気式人工喉頭・シャント発声(ボイスプロテーゼ)などで音声を再獲得する

声帯の主な良性疾患の見分け方

・声帯結節: 両側対称、前1/3付近の小隆起、声の酷使 ・声帯ポリープ: 多くは片側性、表面平滑な有茎性・広基性の隆起。急な発声負荷などで生じる。片側性であるが表面平滑な点が癌との違い ・ポリープ様声帯(Reinke 浮腫): 両側性、膜様部全長のびまん性浮腫、喫煙者 ・声帯麻痺(反回神経麻痺): 声帯の固定・萎縮・左右差、気息性嗄声

POINT

・喉頭癌を疑う内視鏡所見: 片側性、表面凹凸不整な隆起、白色の角化(白板) ・声帯結節: 両側対称・前1/3付近、声の酷使 ・ポリープ様声帯(Reinke 浮腫): 両側のびまん性浮腫、喫煙 ・反回神経麻痺: 声帯の左右差・萎縮、気息性嗄声、左側に多い ・喉頭癌は高齢男性・喫煙者に多く、声門癌が最多で予後比較的良好

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。