血球ごとの「専属コーチ」を覚えよう―G-CSF・EPO・IL-2と造血因子の対応表
第105回医師国家試験 G問題 第38問
国試問題にチャレンジ
血球とサイトカインの組合せで正しいのはどれか。3つ選べ。
- a.好中球 ―― 顆粒球コロニー刺激因子〈G-CSF〉
- b.好酸球 ―― インターフェロンα
- c.Tリンパ球 ―― インターロイキン2〈IL-2〉
- d.赤血球 ―― エリスロポエチン〈EPO〉
- e.血小板 ―― インターロイキン4〈IL-4〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
造血幹細胞から各系統の血球が生まれる過程では、初期にはSCF・IL-3・GM-CSFなど複数系統に作用する因子が、後期には系統特異的な因子が働きます。好中球はG-CSF、好酸球はIL-5、赤血球は腎臓で産生されるEPO、血小板は肝臓で産生されるTPOが主な因子であり、T細胞の増殖・活性化は活性化T細胞自身が産生するIL-2が担います。インターフェロンαは抗ウイルス・抗腫瘍作用をもちむしろ造血を抑制し、IL-4はTh2分化やIgEへのクラススイッチに関わるため、それぞれ好酸球や血小板の造血因子ではありません。G-CSF製剤による化学療法後の好中球減少対策、EPO製剤やHIF-PH阻害薬による腎性貧血治療、TPO受容体作動薬によるITP治療など、造血因子の知識はそのまま日常診療の治療選択につながるため、産生臓器や臨床応用とセットで理解しておくことが大切です。
解答・解説
正解はa, c, dです
サイトカインは細胞間の情報伝達を担う蛋白質の総称で、造血領域では、骨髄の造血幹細胞が各系統の血球へ分化・増殖する過程を調節する「造血因子」として働くものが多い。本問は、各血球の産生や増殖・活性化を主に担うサイトカインを正しく対応づけられるかを問うている。 系統ごとの主要な因子を整理すると次のとおりである。 ・好中球:G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子) ・単球・マクロファージ:M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子) ・好酸球:IL-5(インターロイキン5) ・赤血球:EPO(エリスロポエチン) ・血小板(巨核球):TPO(トロンボポエチン) ・Tリンパ球:IL-2(増殖・活性化)、胸腺での分化にはIL-7も重要 この対応表と照らし合わせれば、好中球-G-CSF、Tリンパ球-IL-2、赤血球-EPOの3つが正しい組合せとなる。
選択肢考察
- ○a. 好中球 ―― 顆粒球コロニー刺激因子〈G-CSF〉
G-CSFは好中球系前駆細胞(CFU-GMから分化した顆粒球系前駆細胞)に作用して好中球への分化・増殖を促し、さらに成熟好中球の骨髄から末梢血への動員や、貪食・殺菌能を高める。主に単球・マクロファージ、血管内皮細胞、線維芽細胞などから産生される。臨床では遺伝子組換え製剤が、抗癌薬投与後の好中球減少症(発熱性好中球減少症の予防・治療)、造血幹細胞移植後の好中球回復促進、末梢血幹細胞の採取(動員)などに用いられる。
- ×b. 好酸球 ―― インターフェロンα
好酸球の分化・増殖・活性化を主に担うのはIL-5であり、主にヘルパーT細胞の2型(Th2細胞)から産生される(IL-3やGM-CSFも補助的に関与する)。インターフェロンαは主にウイルス感染細胞や形質細胞様樹状細胞から産生され、抗ウイルス作用・抗腫瘍作用・免疫調節作用をもつサイトカインで、好酸球を増やす作用はない。むしろ造血抑制作用があり、治療に用いると血球減少が副作用として問題になる。臨床ではB型・C型肝炎(かつての主力治療)、腎細胞癌、慢性骨髄性白血病(チロシンキナーゼ阻害薬登場以前)などに使用されてきた。
- ○c. Tリンパ球 ―― インターロイキン2〈IL-2〉
IL-2は抗原刺激を受けて活性化したT細胞(主にCD4陽性ヘルパーT細胞)自身が産生し、自分自身や周囲のT細胞のIL-2受容体に作用して増殖を促す(オートクライン・パラクライン作用)。かつて「T細胞増殖因子」と呼ばれたのはこのためである。細胞傷害性T細胞(CD8陽性T細胞)やNK細胞の活性化、制御性T細胞の維持にも関わる。免疫抑制薬のシクロスポリンやタクロリムスは、カルシニューリンを阻害してIL-2の転写を抑え、T細胞の増殖を止めることで効果を発揮する。
- ○d. 赤血球 ―― エリスロポエチン〈EPO〉
EPOは主に腎臓の尿細管周囲間質細胞で産生される造血因子で、組織の低酸素を感知して(低酸素誘導因子HIFを介して)産生が増える。骨髄の赤芽球系前駆細胞(CFU-EおよびBFU-E)に作用し、アポトーシスを防いで赤血球への分化・増殖を促進する。慢性腎臓病では産生が低下して腎性貧血をきたすため、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)やHIF-PH阻害薬(HIFを安定化させて内因性EPO産生を促す経口薬)が治療に用いられる。逆に、EPO産生腫瘍(腎細胞癌、小脳血管芽腫など)や低酸素状態では二次性赤血球増加症をきたす。
- ×e. 血小板 ―― インターロイキン4〈IL-4〉
血小板産生を主に調節するのはトロンボポエチン(TPO)であり、主に肝臓で産生され、巨核球系前駆細胞のTPO受容体(c-Mpl)に作用して巨核球の分化・成熟と血小板産生を促す。IL-4は主にTh2細胞や肥満細胞・好塩基球から産生され、B細胞のIgE産生へのクラススイッチ、Th2細胞への分化誘導などアレルギー反応や液性免疫に関わるサイトカインであり、血小板造血を主に担う因子ではない。なお、TPO受容体作動薬(エルトロンボパグ、ロミプロスチムなど)は免疫性血小板減少症(ITP)や再生不良性貧血の治療に用いられる。
造血の階層と主な造血因子
造血幹細胞は、骨髄系共通前駆細胞とリンパ系共通前駆細胞に分かれ、骨髄系からは顆粒球・単球系(CFU-GM)、赤芽球系(BFU-E→CFU-E)、巨核球系(CFU-Meg)などの前駆細胞が生じる。 ・幹細胞〜初期前駆細胞:SCF(幹細胞因子)、IL-3、GM-CSF など、複数系統に作用する因子 ・後期前駆細胞:G-CSF(好中球)、M-CSF(単球)、IL-5(好酸球)、EPO(赤血球)、TPO(血小板)など系統特異的な因子
主な産生部位
・EPO:腎臓(胎児期は肝臓) ・TPO:肝臓 ・G-CSF・M-CSF:単球・マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞など ・IL-2:活性化T細胞 ・IL-4、IL-5:Th2細胞など
臨床応用される造血因子
・G-CSF製剤:化学療法後の好中球減少、末梢血幹細胞動員 ・ESA(エポエチン、ダルベポエチンなど):腎性貧血 ・TPO受容体作動薬:ITP、再生不良性貧血 ・IL-2製剤:腎細胞癌、血管肉腫などに使用された歴史がある ・インターフェロンα:ウイルス性肝炎、腎細胞癌などに使用されてきた
POINT
・好中球=G-CSF、好酸球=IL-5、赤血球=EPO(腎臓産生)、血小板=TPO(肝臓産生)、T細胞増殖=IL-2。 ・インターフェロンαは抗ウイルス・抗腫瘍作用をもつが、好酸球の造血因子ではない(むしろ造血抑制)。 ・IL-4はIgEへのクラススイッチやTh2分化に関与し、血小板造血とは無関係。 ・臨床応用:G-CSF(化学療法後好中球減少)、EPO製剤(腎性貧血)、TPO受容体作動薬(ITP)。
