StudyMed医師国家試験

鼻から覗く喉の地図―経鼻内視鏡の視野に「入るもの・入らないもの」

第105回医師国家試験 G問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第105回 G問題 第21問

経鼻内視鏡写真を別に示す。  この視野で観察されないのはどれか。

第105回 G問題 第21問の問題画像
  1. a.気管
  2. b.仮声帯
  3. c.喉頭蓋
  4. d.梨状陥凹
  5. e.耳管咽頭口

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は経鼻内視鏡の写真から、どの構造が見えていて、どの構造が見えないかを判断する問題だ。カギは咽頭の上下の区分と、内視鏡の先端がいまどこにあるかを意識すること。まず、写真の向きから確認しよう。経鼻内視鏡で喉頭を見下ろすとき、画面の上下はどちらが前でどちらが後ろだと思う?
医学生医学生
なんとなく画面の上が前、つまりお腹側だと思っていました。
ドクタードクター
そこはよく間違えるところだね。術者は患者の頭側・前方から観察するので、通常は画面の下側が前方の舌根・喉頭蓋側、上側が後方の咽頭後壁側になる。この写真でも、下方に弓状に張り出した喉頭蓋の縁があり、その奥に喉頭の入口が開いている。
医学生医学生
耳鼻咽喉科の実習で外来の喉頭ファイバーを見学したとき、最初は向きがつかめなくて混乱しました。
ドクタードクター
みんな最初はそうだよ。では、喉頭の中を見ていこう。喉頭口の中央には左右の声帯ヒダがV字状に開いた声門がある。声門が開いていると、その奥に何が見えるかな。
医学生医学生
声門の下は声門下部、さらにその下は気管なので、気管が見えるはずですね。
ドクタードクター
その通り。この写真でも、中央の暗い内腔に気管軟骨による輪状のひだが見えている。だから気管は観察できる。次に声帯ヒダのすぐ外上方、やや赤みを帯びた膨らみは何だろう。
医学生医学生
解剖学の実習で、声帯の上にもう一つヒダがあって、間に喉頭室があると習いました。仮声帯ですね。
ドクタードクター
正解。仮声帯、つまり前庭ヒダは声帯ヒダの上方にあって、上から見下ろすと白っぽい声帯ヒダの外側に見える。そして喉頭口の前上縁をなしているのが喉頭蓋だ。舌根の後ろにある葉状の弾性軟骨で、嚥下時に喉頭口をふさいで誤嚥を防いでいる。
医学生医学生
梨状陥凹は喉頭の中ではなく、下咽頭の一部でしたよね。
ドクタードクター
そう。梨状陥凹は披裂喉頭蓋ヒダの外側、喉頭の両外側にある左右一対のくぼみで、飲食物は喉頭口を避けてここを通って食道へ向かう。写真では喉頭口の左右外側の暗いくぼみとして確認できる。では、耳管咽頭口はどうだろう。
医学生医学生
耳管は中耳とつながっているので、もっと上のほうですよね。上咽頭にあると思います。
ドクタードクター
その通り。耳管咽頭口は上咽頭の側壁、下鼻甲介の後端のさらに後方に開口している。経鼻内視鏡を挿入する途中で上咽頭を通るときには見えるけれど、この写真のように先端が喉頭の直上まで進んだ視野では、はるか上方、内視鏡がすでに通り過ぎた場所にあるから見えない。これが正解だ。
医学生医学生
内視鏡の通り道を順番にたどれば、どこで何が見えるかがわかるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。鼻腔から上咽頭で耳管咽頭口やアデノイドを見て、中咽頭で軟口蓋の背面や舌根、喉頭蓋谷を通り、最後に下咽頭と喉頭で喉頭蓋、披裂部、仮声帯、声帯、梨状陥凹を観察する。この順序を頭に入れておくと迷わない。
医学生医学生
上咽頭といえば、Rosenmüller窩が上咽頭癌の好発部位だとCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。耳管咽頭口の後上方には耳管隆起とRosenmüller窩がある。上咽頭癌が耳管をふさぐと、片側の滲出性中耳炎で見つかることがあるから、成人の一側性の滲出性中耳炎では上咽頭の観察が欠かせない。また、喉頭を観察するときは発声で声帯が閉じ、吸気で開くので、声帯の動きの評価もできるよ。
医学生医学生
反回神経麻痺を疑うときに、声帯が動くかどうかを内視鏡で確かめるわけですね。
ドクタードクター
その通り。区分も整理しておこう。喉頭は声門上部、声門部、声門下部に分かれ、喉頭蓋や仮声帯は声門上部、声帯ヒダは声門部に属する。下咽頭は梨状陥凹、輪状後部、後壁の3亜部位に分けられる。癌の部位診断や病期分類でもこの区分がそのまま使われるから、写真と区分を対応させて覚えておこう。

まとめ

経鼻内視鏡で喉頭を見下ろす写真では、通常、画面下側が前方の喉頭蓋、上側が後方の披裂部・咽頭後壁となり、喉頭蓋、仮声帯、声帯、開いた声門の奥の気管、喉頭口の両外側の梨状陥凹が観察されます。一方、耳管咽頭口は上咽頭の側壁にあり、挿入途中では観察できても、先端が喉頭直上まで進んだ視野には入りません。上咽頭・中咽頭・下咽頭の区分や、声門上部・声門部・声門下部という喉頭の区分を、内視鏡の通過順序とともに整理しておくことが画像問題攻略のカギです。上咽頭のRosenmüller窩は上咽頭癌の好発部位であり、成人の一側性滲出性中耳炎では上咽頭の観察が重要になるなど、この解剖学的理解は日常診療での病変の発見や声帯運動の評価に直結します。

解答・解説

正解はeです

画像の読み方

経鼻内視鏡(鼻から挿入する細径の喉頭ファイバースコープ)で、中咽頭から喉頭を上方から見下ろした写真である。経鼻内視鏡では術者が患者の頭側・前方から観察するため、通常は写真の下側が前方(舌根・喉頭蓋側)、上側が後方(咽頭後壁側)となる。 写真では、下方に弓状の喉頭蓋の縁がみえ、その奥に喉頭の入口(喉頭口)が開いている。喉頭口の中央には左右の声帯ヒダがV字状に開いた声門があり、その奥に輪状の気管軟骨を伴う気管の内腔がのぞいている。声帯ヒダの外上方には仮声帯(前庭ヒダ)が、喉頭口の後方(写真上方)には左右の披裂部が、喉頭口の両外側を縁取る披裂喉頭蓋ヒダの外側には下咽頭の梨状陥凹が見える。

考え方

内視鏡の先端は既に中咽頭を越えて喉頭の直上まで進んでおり、観察されているのは中咽頭下部から下咽頭・喉頭・気管上部の範囲である。上咽頭(鼻咽頭)にある構造は、この時点では内視鏡先端より後ろ(上方)に位置するため視野に入らない。咽頭の各部位の上下関係と、どの構造がどの部位に属するかを整理して解答する。

選択肢考察

  1. ×a.  気管

    声門が開いているため、声門裂を通してその奥の気管内腔を観察できる。写真中央の暗い内腔には、気管軟骨による輪状のひだが認められる。したがってこの視野で観察される。

  2. ×b.  仮声帯

    仮声帯(前庭ヒダ)は声帯ヒダの上方にあるヒダで、両者の間には喉頭室という小さなくぼみがある。上方から見下ろすと、白っぽい声帯ヒダのすぐ外側に、やや赤みを帯びた膨らみとして見える。この視野で観察される。

  3. ×c.  喉頭蓋

    喉頭蓋は舌根の後方に位置する葉状の弾性軟骨で、喉頭口の前上縁をなし、嚥下時には喉頭口をふさいで誤嚥を防ぐ。写真下方に弓状に張り出した黄白色の構造が喉頭蓋の喉頭面・縁であり、この視野で観察される。

  4. ×d.  梨状陥凹

    梨状陥凹は下咽頭の一部で、喉頭の両外側(披裂喉頭蓋ヒダの外側)にある左右一対のくぼみである。飲食物は喉頭口を避けてここを通って食道へ向かう。写真では喉頭口の左右外側の暗いくぼみとして確認でき、この視野で観察される。

  5. ○e.  耳管咽頭口

    耳管咽頭口は上咽頭(鼻咽頭)の側壁、下鼻甲介の後端の後方に開口する耳管の咽頭側の出口であり、その後上方には耳管隆起と Rosenmüller窩(咽頭陥凹)がある。経鼻内視鏡を挿入する途中で上咽頭を通過する際には観察できるが、本写真のように先端が喉頭直上まで進んだ視野では、耳管咽頭口ははるか上方の内視鏡の通過経路上にあり観察されない。

咽頭の区分と主な構造

・上咽頭(鼻咽頭):頭蓋底から軟口蓋の高さまで。耳管咽頭口、耳管隆起、Rosenmüller窩(上咽頭癌の好発部位)、咽頭扁桃(アデノイド)がある。 ・中咽頭(口咽頭):軟口蓋から喉頭蓋谷(舌骨)の高さまで。口蓋扁桃、舌根(舌扁桃)、喉頭蓋谷、軟口蓋、咽頭後壁を含む。 ・下咽頭(喉頭咽頭):喉頭蓋谷の高さから輪状軟骨下縁まで。梨状陥凹、輪状後部、下咽頭後壁の3亜部位に分けられる。

喉頭の区分

・声門上部:喉頭蓋、披裂喉頭蓋ヒダ、披裂部、仮声帯、喉頭室。 ・声門部:声帯ヒダ、前・後交連。 ・声門下部:声帯下面から輪状軟骨下縁まで。これより下が気管。

経鼻内視鏡の観察順序

鼻腔(下鼻道または総鼻道)→上咽頭(耳管咽頭口、アデノイド)→中咽頭(軟口蓋背面、舌根、喉頭蓋谷)→下咽頭・喉頭(喉頭蓋、披裂部、仮声帯、声帯、梨状陥凹)という順に観察する。発声させると声帯が閉じ(内転)、吸気で開く(外転)ため、声帯運動の評価もできる。

POINT

・耳管咽頭口は上咽頭の側壁にあり、喉頭を観察する視野には入らない。 ・経鼻内視鏡の喉頭像では、前方(喉頭蓋)が画面下、後方(披裂部・咽頭後壁)が画面上に写ることが多い。 ・梨状陥凹は下咽頭に属し、喉頭口の両外側にみえる。 ・声門が開いていれば、奥に気管軟骨を伴う気管がみえる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。