3歳で「できなくていいこと」と「できていないと困ること」―発達の遅れを見抜く物差し
第105回医師国家試験 G問題 第18問
国試問題にチャレンジ
3歳児において発達が遅れていると判定される項目はどれか。
- a.でんぐり返しができない。
- b.ボタンをはめられない。
- c.鼻をかめない。
- d.遊びの順番を待てない。
- e.二語文を話さない。
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
発達の遅れは「その項目を大半の子が何歳までに獲得しているか」を基準に判定します。でんぐり返し、ボタンはめ、鼻をかむ、遊びの順番を待つ、はいずれもおおむね4歳頃の課題で、3歳でできなくても正常範囲です。一方、二語文は通常2歳頃までに出現するため、3歳で出ていなければ言語発達の遅れと判定され、まず難聴を除外したうえで知的能力障害や自閉スペクトラム症などを鑑別します。3歳の目安として三語文、名前・年齢を言う、丸を描く、三輪車、階段を足を交互に昇るなども押さえておきましょう。領域ごとの標準的な獲得時期を把握しておくことは、乳幼児健診で保護者の不安に適切に応え、支援が必要な子どもを早期に見つける基盤になります。
解答・解説
正解はeです
【テーマ】3歳児健康診査で確認される発達の目安(マイルストーン)を問う問題である。
考え方
発達の遅れを判定するには、『その項目が一般に何歳頃に可能になるか』と、『何歳までにできなければ遅れと考えるか(通過率が90%程度に達する時期)』を区別して考える必要がある。ある年齢で多くの子がまだできない項目は、その時点でできなくても遅れとは判定しない。一方、その年齢よりかなり前に大半の子が獲得している項目ができない場合は、遅れを疑う。 選択肢のうち、でんぐり返し、ボタンをはめる、鼻をかむ、遊びの順番を待つ、はいずれも3歳半~4歳頃にかけて可能になる項目であり、3歳の時点でできなくても正常範囲である。これに対し、二語文(『ママ、きた』『ワンワン、いた』のように2つの単語をつなげた発話)は通常2歳頃までに出現する。3歳になっても二語文が出ない場合は明らかに言語発達が遅れていると判定され、難聴、知的能力障害(知的障害)、自閉スペクトラム症、発達性言語障害などの精査が必要となる。
言語発達の流れ
喃語(生後数か月) → 初語・有意語(1歳前後) → 二語文(2歳頃) → 三語文・自分の名前を言う(3歳頃) → 簡単な会話・経験を話す(4歳頃)、という順序が基本である。
選択肢考察
- ×a. でんぐり返しができない。
でんぐり返し(前転)は、早い子では3歳過ぎから可能になるが、多くは4歳頃にできるようになる粗大運動である。3歳の時点でできなくても発達の遅れとは判定されない。3歳頃の粗大運動の目安は、階段を足を交互に出して昇る、三輪車をこぐ、片足で数秒立つ、両足で跳ぶ、などである。
- ×b. ボタンをはめられない。
ボタンをはめる動作は指先の協調を要する微細運動で、一般に4歳頃に自分でできるようになる(大きなボタンなら3歳台で可能な子もいる)。したがって3歳でできなくても遅れとはいえない。3歳頃の微細運動の目安は、丸(円)を真似て描く、積み木を8~10個程度積む、はさみを使い始める、などである。
- ×c. 鼻をかめない。
鼻をかむには、口を閉じて鼻からだけ息を強く吐き出すという呼吸の随意的な調節が必要で、多くは4歳頃に一人でできるようになる。3歳ではうまくできない子も多く、できなくても発達の遅れとは判定されない。
- ×d. 遊びの順番を待てない。
遊びの中で順番を守る・交代する、といったルールの理解と自己抑制は社会性の発達に属し、3歳半~4歳頃から可能となる。3歳頃は友達と一緒に遊び始める段階で、ルールを守ってやりとりする遊び(協同遊び)が成立するのはもう少し後である。3歳で順番が待てなくても遅れとはいえない。
- ○e. 二語文を話さない。
二語文は通常2歳頃までに話せるようになる言語発達の指標である。3歳では三語文を話し、自分の名前や年齢を言えるのが目安であり、この時点で二語文すら出ていなければ、年齢相応より1年以上の遅れがあると判断される。言語発達の遅れの原因として、難聴(聴力検査が必須)、知的能力障害、自閉スペクトラム症、養育環境の問題、発達性言語障害などを鑑別する必要がある。
乳幼児健康診査
母子保健法により、1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査は市町村に実施が義務づけられている。そのほか乳児期(生後3~4か月、6~7か月、9~10か月など)にも多くの自治体で健診が行われる。3歳児健診では身体計測、運動・言語・社会性の発達、視覚・聴覚、歯科などが確認される。
言語発達の目安
・1歳前後:意味のある単語(初語)を話す。 ・1歳6か月:意味のある単語を数語以上話す(出ていなければ遅れを疑う)。 ・2歳:二語文を話す。 ・3歳:三語文、自分の名前(姓名)・年齢を言う。『これなに?』と盛んに質問する。 ・4歳:経験したことを話す。簡単な会話が成り立つ。 ・5歳:しりとりやなぞなぞを楽しむ。発音がほぼ明瞭となる(サ行・ラ行などの構音はこの頃に完成することが多い)。
3歳頃の運動・生活習慣・社会性の目安
・粗大運動:階段を足を交互に出して昇る、三輪車をこぐ、片足立ち(数秒)、両足跳び。 ・微細運動:丸を描く、積み木を積む、はさみを使い始める。 ・生活習慣:スプーンやフォークを使って一人で食べる、衣服の着脱を手伝ってもらいながら行う、日中のおむつが外れ始める。 ・社会性:友達と一緒に遊び始める、ごっこ遊び。
4歳頃の目安
・片足跳び(ケンケン)、でんぐり返し。 ・十字を描く、ボタンをはめる、鼻をかむ。 ・順番を守る、ルールのある遊びに参加する。
POINT
・二語文は2歳頃までに出現する。3歳で二語文がなければ言語発達の遅れと判定する。 ・3歳の目安:三語文、名前・年齢を言う、丸を描く、三輪車、階段を交互に昇る。 ・でんぐり返し、ボタンはめ、鼻かみ、順番を待つ、はおおむね4歳頃の課題であり、3歳でできなくても正常。 ・言語発達の遅れでは、まず難聴を除外し、知的能力障害や自閉スペクトラム症などを鑑別する。 ・1歳6か月児健診と3歳児健診は母子保健法で市町村に実施が義務づけられている。
