StudyMed医師国家試験

「3P」で解く多発性内分泌腫瘍1型―下垂体と膵が教えてくれること

第105回医師国家試験 A問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第105回 A問題 第14問

多発性内分泌腫瘍〈MEN〉1型にみられるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.先端巨大症
  2. b.褐色細胞腫
  3. c.甲状腺髄様癌
  4. d.副甲状腺機能低下症
  5. e.Zollinger-Ellison症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、多発性内分泌腫瘍、いわゆるMENの1型と2型を区別できるかを問う問題だ。MENは複数の内分泌臓器に腫瘍や過形成が生じる常染色体顕性遺伝の疾患群で、型ごとに「どの臓器がセットで侵されるか」が決まっている。その組み合わせを整理するのがポイントだよ。
医学生医学生
内分泌の講義で「MEN1は3P」と習った記憶があります。でも、Pが何だったかうろ覚えです……。
ドクタードクター
Parathyroid(副甲状腺)、Pituitary(下垂体)、Pancreas(膵)の3つだね。膵には十二指腸も含めて考える。原因は第11染色体上のMEN1遺伝子の異常で、menin(メニン)という腫瘍抑制蛋白をコードしている。
医学生医学生
腫瘍抑制遺伝子なんですね。じゃあ2型はどうでしたっけ。
ドクタードクター
2型の原因は第10染色体上のRETがん原遺伝子で、機能獲得型変異によって起こる。軸になるのは甲状腺髄様癌と褐色細胞腫だ。1型は腫瘍抑制遺伝子の機能喪失、2型はがん原遺伝子の機能獲得、と対比で覚えると混乱しにくいよ。
医学生医学生
それなら、褐色細胞腫と甲状腺髄様癌は2型なので外れますね。
ドクタードクター
その通り。甲状腺髄様癌は傍濾胞細胞、つまりC細胞由来の癌で、カルシトニンやCEAを産生する。MEN2型ではほぼ全例に発生する最重要病変だ。褐色細胞腫は2型の約半数にみられ、両側性のことが多い。どちらもMEN1型の典型病変ではない。
医学生医学生
では下垂体の病変として先端巨大症が当てはまるんでしょうか。MEN1の下垂体腫瘍ってプロラクチノーマのイメージが強いんですが。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。確かに最も多いのはプロラクチノーマだけれど、GH産生腺腫、ACTH産生腺腫、非機能性腺腫など、どの種類も起こりうる。GH産生腺腫が骨端線閉鎖後の成人に生じれば先端巨大症として現れるから、MEN1型の病変として正しい。
医学生医学生
膵のほうはZollinger-Ellison症候群ですね。ガストリノーマで胃酸が出すぎて、潰瘍がたくさんできる病気だったと思います。
ドクタードクター
そう。ガストリン過剰により難治性・多発性の消化性潰瘍や下痢をきたす。MEN1型の機能性膵・十二指腸神経内分泌腫瘍ではガストリノーマが最も多く、十二指腸に小さく多発することが多い。逆に、Zollinger-Ellison症候群の患者の約2〜3割はMEN1型を背景にもっていると言われているよ。
医学生医学生
副甲状腺機能低下症は3Pの副甲状腺にあたるので、ちょっと迷いました。
ドクタードクター
そこがひっかけだね。MENで副甲状腺に起こるのは機能「亢進」症だ。MEN1型ではほぼ全例に原発性副甲状腺機能亢進症がみられ、多くは複数腺の過形成。しかも最も早く現れやすい病変で、高カルシウム血症や尿路結石の原因になる。MEN2A型でも約2割で亢進症を伴う。低下症はMENの構成病変ではないんだ。
医学生医学生
臓器だけでなく「亢進か低下か」まで確認しないといけないんですね。CBTのときも似たようなひっかけで間違えた気がします。
ドクタードクター
国試でもよく狙われるところだよ。2型の細分類も押さえておこう。2A型は髄様癌・褐色細胞腫に副甲状腺機能亢進症を加えたもの。2B型は副甲状腺病変を通常伴わない代わりに、口唇や舌の粘膜神経腫、腸管神経節腫症、Marfan様体型がみられ、髄様癌は若年発症で悪性度が高い。最近は2B型をMEN3型と呼ぶ分類もある。
医学生医学生
2型の手術では、褐色細胞腫を先に治療するんでしたよね。外科の実習で聞きました。
ドクタードクター
よく覚えているね。甲状腺手術の前に褐色細胞腫の有無を確認し、あれば先に治療する。術中の高血圧クリーゼを防ぐためだ。またRET遺伝子変異の保因者には予防的甲状腺全摘術が検討される。1型でも、副甲状腺機能亢進症や下垂体腺腫、ガストリノーマを若年で発症したり、多発・再発したりする場合は、MEN1型を疑って他臓器の検索と家族歴の確認を行う。
医学生医学生
1つの内分泌腫瘍を見つけたら、ほかの臓器も探しにいく視点が大事なんですね。遺伝性だから家族のことも考えないと。
ドクタードクター
その通り。遺伝カウンセリングも含めて、患者さんと家族全体を診る意識をもってほしい。

まとめ

MEN1型はMEN1遺伝子(menin、腫瘍抑制遺伝子)の異常による常染色体顕性遺伝疾患で、副甲状腺・下垂体・膵(十二指腸)の「3P」に病変を生じます。下垂体腫瘍はプロラクチノーマが最多ですがGH産生腺腫による先端巨大症も起こり、膵・十二指腸の機能性腫瘍ではガストリノーマによるZollinger-Ellison症候群が最多です。一方、甲状腺髄様癌と褐色細胞腫はRETがん原遺伝子の変異によるMEN2型の病変であり、MENでみられる副甲状腺病変は低下症ではなく機能亢進症です。若年発症や多発する内分泌腫瘍をみたらMENを疑い、他臓器の検索と家族への遺伝カウンセリングにつなげることが臨床上重要です。

解答・解説

正解はa, eです

多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:MEN)は、複数の内分泌臓器に腫瘍や過形成が生じる常染色体顕性(優性)遺伝の疾患群で、1型と2型に大別される。本問は、どの病変がどちらの型に属するかを正しく覚えているかを問うている。

MEN1型

原因遺伝子は第11染色体上のMEN1遺伝子で、menin(メニン)という腫瘍抑制蛋白をコードする。病変の組み合わせは「副甲状腺・下垂体・膵(十二指腸を含む)」の3つで、英語の頭文字から「3P(parathyroid, pituitary, pancreas)」と覚えるとよい。 ・副甲状腺:原発性副甲状腺機能亢進症がほぼ全例(90%以上)にみられ、多くは複数腺の過形成である。 ・下垂体前葉腫瘍:プロラクチノーマが最も多いが、GH産生腫瘍(先端巨大症)、ACTH産生腫瘍、非機能性腺腫など、あらゆる種類が起こりうる。 ・膵・十二指腸神経内分泌腫瘍:ガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群)が機能性腫瘍として最多で、インスリノーマ、グルカゴノーマ、VIP産生腫瘍なども生じる。

MEN2型

原因遺伝子は第10染色体上のRET がん原遺伝子(受容体型チロシンキナーゼをコード)で、機能獲得型変異による。 ・甲状腺髄様癌:ほぼ全例に発生する。 ・褐色細胞腫:約半数にみられ、両側性のことが多い。 ・2A型では原発性副甲状腺機能亢進症を、2B型では粘膜神経腫やMarfan様体型を伴う。 したがって、選択肢のうちMEN1型に属するのは下垂体腫瘍の一型である先端巨大症と、膵・十二指腸のガストリノーマによるZollinger-Ellison症候群である。

選択肢考察

  1. ○a.  先端巨大症

    MEN1型では下垂体前葉腺腫が約3〜4割に発生する。最も多いのはプロラクチノーマだが、成長ホルモン(GH)産生腺腫も生じ、骨端線閉鎖後の成人では先端巨大症として現れる。下垂体病変はMEN1型の3主要病変の一つである。

  2. ×b.  褐色細胞腫

    褐色細胞腫はMEN2型(2A・2Bとも)の構成病変で、患者の約半数に発生し、両側性のことが多い。MEN1型の典型病変ではない。MEN2型では甲状腺手術の前に褐色細胞腫の有無を確認し、あれば先に治療する(術中の高血圧クリーゼを防ぐため)。

  3. ×c.  甲状腺髄様癌

    甲状腺髄様癌は甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)由来の癌で、カルシトニンやCEAを産生する。MEN2型ではほぼ全例に発生し、最も重要な病変である。MEN1型にはみられない。RET遺伝子変異の保因者には予防的甲状腺全摘術が検討される。

  4. ×d.  副甲状腺機能低下症

    MEN1型で副甲状腺に起こるのは機能「亢進」症である。原発性副甲状腺機能亢進症はMEN1型のほぼ全例に認められ、最も早期に現れやすい病変で、高カルシウム血症や尿路結石の原因となる。MEN2A型でも約2割程度に亢進症を伴う。機能低下症はMENの構成病変ではない。

  5. ○e.  Zollinger-Ellison症候群

    Zollinger-Ellison症候群はガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)により胃酸が過剰分泌され、難治性・多発性の消化性潰瘍や下痢をきたす病態である。MEN1型ではガストリノーマが機能性の膵・十二指腸神経内分泌腫瘍として最も多く、十二指腸に小さな多発性病変として生じることが多い。Zollinger-Ellison症候群の患者の約2〜3割がMEN1型を背景にもつ。

MEN1型とMEN2型の比較

MEN1型 ・原因遺伝子:MEN1(11q13、蛋白はmenin、腫瘍抑制遺伝子) ・主病変:原発性副甲状腺機能亢進症(ほぼ全例)、下垂体前葉腫瘍、膵・十二指腸神経内分泌腫瘍 ・その他:副腎皮質腫瘍、胸腺や気管支のカルチノイド、皮膚の血管線維腫・脂肪腫など MEN2A型 ・原因遺伝子:RET(10q11.2、がん原遺伝子) ・主病変:甲状腺髄様癌(ほぼ全例)、褐色細胞腫(約半数)、原発性副甲状腺機能亢進症(約2割) MEN2B型(近年はMEN3型と呼ぶ分類もある) ・原因遺伝子:RET ・主病変:甲状腺髄様癌(若年発症で悪性度が高い)、褐色細胞腫、口唇・舌などの粘膜神経腫、腸管神経節腫症、Marfan様体型 ・副甲状腺機能亢進症は通常伴わない

覚え方

MEN1型は「3P」(Parathyroid, Pituitary, Pancreas)。 MEN2型は「髄様癌+褐色細胞腫」が軸で、2Aは副甲状腺、2Bは粘膜神経腫とMarfan様体型を加える。

臨床的な注意点

副甲状腺機能亢進症、下垂体腺腫、ガストリノーマなどを若年で発症した場合や多発・再発例では、MEN1型を疑って他臓器の検索と家族歴の確認を行う。遺伝性疾患であるため、家族への遺伝カウンセリングも重要である。

POINT

・MEN1型=副甲状腺機能亢進症、下垂体腫瘍、膵・十二指腸神経内分泌腫瘍(3P)。原因遺伝子はMEN1(menin)。 ・MEN1型の下垂体腫瘍はプロラクチノーマが最多だが、GH産生腫瘍(先端巨大症)も起こる。 ・MEN1型の機能性膵・十二指腸腫瘍はガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群)が最多。 ・MEN2型=甲状腺髄様癌+褐色細胞腫。原因遺伝子はRET。 ・MENでみられる副甲状腺病変は「機能亢進症」であり、低下症ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。