StudyMed医師国家試験

「かたまり」か「広がり」か―胸部エックス線の結節影を生む疾患を見抜く

第105回医師国家試験 A問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第105回 A問題 第15問

胸部エックス線写真で結節影を認める疾患はどれか。2つ選べ。

  1. a.肺クリプトコックス症
  2. b.癌性リンパ管症
  3. c.肺血栓塞栓症
  4. d.肺動静脈瘻
  5. e.肺胞蛋白症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、胸部エックス線写真で「結節影」を呈する疾患を選ぶ問題だ。まず結節影とは何かを正確に押さえ、そのうえで各疾患の病変が「一か所にかたまる」のか「広く広がる」のか、あるいは「単純写真ではあまり写らない」のかを考えていこう。
医学生医学生
結節影って、丸い影というくらいのイメージしかありません。大きさの決まりはあるんですか。
ドクタードクター
あるよ。境界が比較的はっきりした円形・類円形の限局性陰影で、一般に直径3cm以下のものを結節影、3cmを超えるものを腫瘤影と呼ぶ。これに対して、肺の広い範囲に広がる陰影はびまん性陰影と呼び、網状影・粒状影・すりガラス影・浸潤影などに分けられる。
医学生医学生
放射線科の実習で、読影はまず「限局性かびまん性か」から始めると教わりました。
ドクタードクター
まさにその考え方が使える問題だ。病変が肺内の一か所に塊として生じるもの、たとえば肉芽腫性感染症、腫瘍、血管奇形は結節影になる。リンパ管や肺胞腔に沿って広がるものはびまん性陰影になる。では、肺クリプトコックス症はどうだろう。
医学生医学生
真菌症なので、肺炎のように広がった影になるのかと思っていました。
ドクタードクター
そう考える人は多いけれど、クリプトコックスは肉芽腫をつくるのが特徴なんだ。ハトなどの鳥の糞で汚染された土壌から経気道的に感染し、免疫能が正常な人にも発症する。無症状のまま健診の胸部写真で見つかることも多くて、胸膜直下を中心に単発または多発の結節影・腫瘤影を呈し、下葉に多い傾向がある。空洞を伴うこともあるので、肺癌や結核腫との鑑別が問題になる。
医学生医学生
健診で見つかった結節が実は真菌だった、ということがあるんですね。診断はどうするんですか。
ドクタードクター
血清クリプトコックス抗原、つまりグルクロノキシロマンナン抗原の測定や、生検が有用だ。次に肺動静脈瘻を考えよう。
医学生医学生
血管の病気が結節に見える、というのがピンときません。
ドクタードクター
肺動脈と肺静脈が毛細血管を介さず直接つながる血管奇形で、そこが拡張して塊になる。だから単純写真では境界明瞭な結節影として見え、そこへ出入りする太い流入動脈・流出静脈の索状影を伴うのが特徴なんだ。多くは先天性で、遺伝性出血性毛細血管拡張症、いわゆるOsler病に高率に合併する。
医学生医学生
右左シャントになるから、低酸素血症やばち指が出るということですか。
ドクタードクター
その通り。さらに静脈系の血栓が肺のフィルターを素通りして脳梗塞や脳膿瘍を起こす、奇異性塞栓にも注意が必要だ。造影CTで診断し、治療はコイルなどによる経カテーテル塞栓術が中心になる。ここまでの2つが結節影を呈する疾患だ。では残りを確認しよう。癌性リンパ管症は?
医学生医学生
癌なので結節ができそうですが、名前の通りリンパ管に広がるならびまん性でしょうか。
ドクタードクター
いい推論だね。胃癌・乳癌・肺癌などの癌細胞が肺のリンパ管内に広がって閉塞させる病態で、リンパ流に沿って進展する。そのため両側性・びまん性の網状影や線状影、小葉間隔壁の肥厚であるKerley B線、気管支血管束の肥厚として現れる。高度の呼吸困難をきたし、予後不良だ。
医学生医学生
肺血栓塞栓症は、梗塞を起こした部分が影になる印象があります。
ドクタードクター
肺梗塞を合併すれば胸膜に接する楔状の陰影、Hampton's humpがみられることはあるけれど、典型的な結節影とは違う。むしろ本症は単純写真が正常か軽微な変化にとどまることが多く、所見の乏しさの割に強い低酸素血症がある、というギャップが疑う手がかりになる。末梢血管影の減少による透過性亢進、Westermark signなどが知られていて、確定診断には造影CTを用いるよ。
医学生医学生
肺胞蛋白症は、呼吸器内科の講義で「米のとぎ汁様」の洗浄液の写真を見ました。
ドクタードクター
よく覚えているね。肺胞腔内にサーファクタント由来の物質がたまる疾患で、多くは抗GM-CSF自己抗体による自己免疫性だ。肺胞腔を広く埋めるので、胸部写真では両側肺門から下肺野へ左右対称性に広がるすりガラス影・浸潤影となる。高分解能CTでは、すりガラス影に小葉間隔壁の肥厚が重なるcrazy-paving patternが特徴だ。びまん性陰影であって結節影ではない。治療は全肺洗浄やGM-CSF吸入療法が行われる。
医学生医学生
病変が「塊をつくるか」「管や腔に沿って広がるか」で影の形が決まる、と考えれば整理できますね。
ドクタードクター
その通り。発展として、孤立性結節影の良悪性の手がかりも覚えておこう。辺縁の棘状突起(spiculation)、胸膜陥入像、切れ込み、増大傾向は悪性を示唆する。一方、層状・中心性・ポップコーン状の石灰化、2年以上大きさが変わらないこと、過誤腫を示唆する内部の脂肪成分は良性を示唆する。ただ、クリプトコックス症のように画像だけでは肺癌と区別しにくい良性疾患もあるから、最終的には組織や血清学的検査で確認することが大切だよ。

まとめ

胸部エックス線写真の結節影とは、境界が比較的明瞭な直径3cm以下の円形・類円形の限局性陰影で、肉芽腫・腫瘍・血管奇形のように病変が一か所に塊をつくる疾患で生じます。肺クリプトコックス症は免疫正常者にも胸膜下の単発・多発結節影をつくり、肺動静脈瘻は流入・流出血管を伴う結節影として描出され、Osler病との合併や右左シャントによる奇異性塞栓が重要です。一方、癌性リンパ管症は網状影やKerley B線、肺胞蛋白症はすりガラス影やcrazy-paving patternといったびまん性陰影を呈し、肺血栓塞栓症は単純写真で所見に乏しい割に低酸素血症が強いことが特徴です。病変の分布様式から陰影のパターンを推論する考え方は、胸部画像読影の基本であり、結節影の良悪性判断にもつながります。

解答・解説

正解はa, dです

胸部エックス線写真の「結節影」とは、境界が比較的はっきりした円形・類円形の限局性陰影で、一般に直径3cm以下のものを指す(3cmを超えるものは腫瘤影と呼ぶ)。これに対し、肺全体や広い範囲に広がる陰影は「びまん性陰影」として区別され、網状影・粒状影・すりガラス影・浸潤影などに分けられる。 本問では、各疾患の典型的な画像所見が「限局した結節」なのか、「びまん性・広範な陰影」なのか、あるいは「目立った陰影がない」のかを整理して考える。 ・病変が肺内の一か所にかたまりとして生じるもの(肉芽腫性感染症、腫瘍、血管奇形など)は結節影となる。 ・病変がリンパ管や肺胞腔に沿って広範囲に広がるもの(癌性リンパ管症、肺胞蛋白症など)はびまん性陰影となる。 ・血管の閉塞が主体の病態(肺血栓塞栓症)は、単純写真ではむしろ所見に乏しいことが多い。 この観点から、結節影を呈する代表は、真菌による肉芽腫を形成する肺クリプトコックス症と、異常血管が塊状にみえる肺動静脈瘻である。

選択肢考察

  1. ○a.  肺クリプトコックス症

    Cryptococcus neoformansの経気道感染による真菌症で、鳥(特にハト)の糞に汚染された土壌が感染源となる。免疫能が正常な人にも発症し、無症状のまま健診の胸部写真で見つかることも多い。画像では胸膜直下を中心に、単発または多発の結節影・腫瘤影を呈し、下葉に多い傾向がある。結節内に空洞を形成することもあり、肺癌や結核腫との鑑別が問題となる。診断には血清クリプトコックス抗原(グルクロノキシロマンナン抗原)や生検が有用である。

  2. ×b.  癌性リンパ管症

    胃癌・乳癌・肺癌などの癌細胞が肺のリンパ管内に広がり、閉塞させる病態である。リンパ流に沿って病変が進展するため、画像では両側性・びまん性の網状影や線状影、小葉間隔壁の肥厚(Kerley B線など)、気管支血管束の肥厚として現れる。限局した結節影を主体とする疾患ではない。高度の呼吸困難をきたし、予後不良である。

  3. ×c.  肺血栓塞栓症

    主に下肢の深部静脈血栓が遊離して肺動脈を閉塞する疾患である。胸部エックス線写真は正常か軽微な変化にとどまることが多く、所見の乏しさの割に強い低酸素血症があることが本症を疑う手がかりとなる。みられうる所見は、閉塞部より末梢の血管影の減少による透過性亢進(Westermark sign)、中枢側肺動脈の拡張(Knuckle sign)などで、結節影は生じない。肺梗塞を合併すると胸膜に接する楔状の陰影(Hampton's hump)がみられることがあるが、典型的な結節影とは異なる。確定診断には造影CTが用いられる。

  4. ○d.  肺動静脈瘻

    肺動脈と肺静脈が毛細血管を介さずに直接つながる血管奇形で、多くは先天性であり、遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler-Weber-Rendu病)に高率に合併する。拡張した異常血管が胸部写真では境界明瞭な結節影としてみえ、そこへ出入りする太い流入動脈・流出静脈の索状影を伴うのが特徴である。右左シャントとなるため、低酸素血症・チアノーゼ・ばち指のほか、奇異性塞栓による脳梗塞や脳膿瘍をきたしうる。造影CTで診断し、治療はコイルなどによる経カテーテル塞栓術が中心である。

  5. ×e.  肺胞蛋白症

    肺胞腔内にサーファクタント由来の蛋白様物質が貯留する疾患で、多くは抗GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)自己抗体による自己免疫性である。胸部写真では両側肺門から下肺野にかけて左右対称性に広がるすりガラス影・浸潤影を呈し、蝶形陰影(butterfly shadow)様になることもある。高分解能CTでは、すりガラス影に小葉間隔壁の肥厚が重なる「crazy-paving pattern(メロンの皮様)」が特徴である。びまん性陰影であり、結節影ではない。気管支肺胞洗浄液が白濁した米のとぎ汁様になる点も重要で、治療は全肺洗浄やGM-CSF吸入療法が行われる。

結節影の定義と鑑別

結節影:境界が比較的明瞭な円形〜類円形の陰影で、直径3cm以下。3cmを超えると腫瘤影。 結節影・腫瘤影を呈する主な疾患 ・腫瘍:原発性肺癌、転移性肺腫瘍、過誤腫などの良性腫瘍 ・感染症:結核腫、非結核性抗酸菌症、肺クリプトコックス症、肺アスペルギローマ、肺膿瘍、敗血症性塞栓 ・血管性:肺動静脈瘻 ・その他:多発血管炎性肉芽腫症、リウマチ結節、サルコイドーシス、円形無気肺、肺分画症、気管支嚢胞など

びまん性陰影を呈する代表疾患

・網状影:間質性肺炎、癌性リンパ管症 ・粒状影:粟粒結核、じん肺、過敏性肺炎 ・すりガラス影・浸潤影:肺胞蛋白症、ニューモシスチス肺炎、肺水腫、ARDS

孤立性結節影の良悪性の手がかり

悪性を示唆する所見:辺縁の棘状突起(spiculation)、胸膜陥入像、切れ込み(notch)、増大傾向。 良性を示唆する所見:層状・中心性・ポップコーン状の石灰化、2年以上大きさが変わらない、内部の脂肪成分(過誤腫)。

POINT

・結節影は直径3cm以下の限局性円形陰影である。 ・肺クリプトコックス症:免疫正常者にも発症し、胸膜下の単発・多発結節影(空洞を伴うこともある)。血清クリプトコックス抗原が診断に有用。 ・肺動静脈瘻:流入・流出血管を伴う結節影。Osler病に合併し、右左シャントによる低酸素血症や奇異性塞栓をきたす。 ・癌性リンパ管症と肺胞蛋白症はびまん性陰影。 ・肺血栓塞栓症は単純写真で所見に乏しいのが特徴。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。