StudyMed医師国家試験

「親子」と「エンゼル」が目印―対象集団で見分ける国の保健福祉プラン

第104回医師国家試験 G問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第34問

我が国の母子保健の向上を目指した施策はどれか。2つ選べ。

  1. a.健康日本21
  2. b.健やか親子21
  3. c.ゴールドプラン
  4. d.新障害者プラン
  5. e.新エンゼルプラン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、国が策定してきたさまざまな計画や国民運動のうち、母子保健の向上を目指したものを選ぶ問題だ。着眼点はシンプルで、それぞれの施策が「誰を対象に、何を目指したものか」を対応させること。名前は似ていても、対象集団はかなりはっきり分かれているんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で年表のようにまとめて出てきて、どれがどれだか混ざってしまっていました。
ドクタードクター
暗記だけだと混ざりやすいよね。まず母子保健とは何かを確認しよう。妊産婦、乳幼児、思春期の子どもなど、母と子の健康を守り向上させる取り組みのことだ。だから母子の健康そのもの、あるいは子どもを産み育てる環境の整備を目的とした施策を選べばいい。
医学生医学生
「健康日本21」は名前に「健康」が入っているので、母子も含めて全部カバーしていそうに思えるんですが。
ドクタードクター
そう考える人は多いけれど、健康日本21は「21世紀における国民健康づくり運動」で、対象は特定の集団ではなく国民全体なんだ。生活習慣病の一次予防を重視して、栄養・食生活、身体活動、休養・こころの健康、たばこ、アルコール、歯の健康などの領域で数値目標を掲げた。2000年に始まり、健康増進法が法的な基盤になっている。母子保健に特化した施策ではないから、ここでは選ばない。
医学生医学生
第二次では健康寿命の延伸と健康格差の縮小が中心目標になった、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。今は第三次に引き継がれている。では本命の「健やか親子21」はどうかな。
医学生医学生
名前に「親子」が入っているので、母子保健そのものの計画ですよね。
ドクタードクター
その通り。健やか親子21は、21世紀の母子保健の主要な取り組みを示し、関係機関が一体となって推進する母子保健の国民運動計画で、健康日本21の一翼を担う位置づけとして2001年に始まった。第1次では、思春期の保健対策と健康教育、妊娠・出産の安全性と快適さの確保と不妊への支援、小児保健医療水準を保つための環境整備、子どもの心の安らかな発達と育児不安の軽減、の4つを主要課題にしていた。2015年からは第2次に移行している。
医学生医学生
産婦人科や小児科の実習で、思春期の性教育や育児不安のケアの話も聞きましたが、そういうのも全部含まれているんですね。
ドクタードクター
そう、出産だけでなく思春期から育児まで、切れ目なく見ているのが特徴だ。次に「ゴールドプラン」。これは誰が対象だと思う?
医学生医学生
「ゴールド」は高齢者のイメージなので、高齢者向けの計画でしょうか。
ドクタードクター
正解。正式名称は高齢者保健福祉推進十か年戦略で、1989年に策定された。ホームヘルパー、ショートステイ、デイサービスといった在宅福祉サービスや特別養護老人ホームの整備に数値目標を定めたものだ。その後、新ゴールドプラン、介護保険制度の開始に合わせたゴールドプラン21へと引き継がれた。母子保健とは対象が違うね。
医学生医学生
「新障害者プラン」は名前の通り障害者が対象ですね。
ドクタードクター
そうだね。障害者基本計画の前半5年間に重点的に取り組む施策と数値目標を定めた計画で、地域生活への移行支援や在宅サービスの充実、雇用・就労の促進などを柱にしている。これも母子保健の施策ではない。そして最後が「新エンゼルプラン」だ。
医学生医学生
エンゼルは天使、つまり子どものことですよね。でも少子化対策のイメージが強くて、保健というより福祉や労働の施策のように思えて迷いました。
ドクタードクター
迷うのはもっともだ。新エンゼルプランは1999年に関係6大臣の合意で策定された少子化対策の具体的実施計画で、1994年のエンゼルプランを引き継いでいる。保育サービスの充実や仕事と子育ての両立のための雇用環境整備などが中心だけれど、重点施策の一つに母子保健医療体制の整備がはっきり含まれているんだ。だから母子保健の向上を目指した施策に該当する。
医学生医学生
子育て支援の中に母子保健医療体制の整備も組み込まれているから正解になる、ということですね。健やか親子21と新エンゼルプランの2つが答えだと整理できました。
ドクタードクター
そういうこと。発展として、制度の土台も押さえておこう。母子保健の基本となる法律は1965年制定の母子保健法で、妊娠の届出と母子健康手帳の交付、1歳6か月児健診や3歳児健診などの健康診査、低出生体重児の届出、未熟児養育医療などを定めている。健やか親子21は、こうした法的な仕組みのうえに目標値を掲げて推進する国民運動計画なんだ。
医学生医学生
最近の動きとしては、こども家庭庁ができたことも関係しますか。
ドクタードクター
関係するね。2019年施行の成育基本法に基づく方針のもとで健やか親子21は推進されていて、2023年にはこども家庭庁が発足した。少子化対策の流れもエンゼルプランから子ども・子育て応援プラン、子ども・子育てビジョンへと続いている。臨床では、乳幼児健診や妊婦健診の場で、こうした施策がどう現場の仕組みにつながっているかを意識できるとよいね。

まとめ

国の保健福祉分野の計画や国民運動は対象集団ごとに策定されており、健康日本21は国民全体の健康づくり、健やか親子21は母子保健、ゴールドプランは高齢者、新障害者プランは障害者、新エンゼルプランは少子化対策・子育て支援を対象とします。母子保健の向上を目指した施策は、思春期から妊娠・出産、育児までを扱う母子保健の国民運動計画である健やか親子21と、重点施策に母子保健医療体制の整備を含む新エンゼルプランです。母子保健の制度の土台は1965年制定の母子保健法で、母子健康手帳や乳幼児健診などを定め、近年は成育基本法やこども家庭庁のもとで施策が進められています。計画名と対象集団を対応させて理解しておくことは、国家試験だけでなく、健診や地域保健の現場で制度を活用するうえでも役立ちます。

解答・解説

正解はb, eです

わが国の保健・福祉分野では、対象集団ごとに国レベルの計画(プラン)や国民運動が策定されてきた。本問は、それぞれの施策が「誰を対象に、何を目指したものか」を区別できるかを問うている。 母子保健とは、妊産婦・乳幼児・思春期の子どもなど、母と子の健康を守り向上させるための取り組みである。したがって、母子の健康そのもの、あるいは子どもを産み育てる環境の整備(少子化対策・子育て支援)を目的とした施策を選べばよい。 各施策の対象を整理すると、国民全体の健康づくり(健康日本21)、母子保健(健やか親子21)、高齢者の保健福祉(ゴールドプラン)、障害者施策(新障害者プラン)、子育て支援・少子化対策(新エンゼルプラン)となる。名称に「親子」「エンゼル(天使=子ども)」が含まれることからも推測できるが、内容まで理解しておくことが望ましい。

選択肢考察

  1. ×a.  健康日本21

    「21世紀における国民健康づくり運動」であり、対象は特定の集団ではなく国民全体である。生活習慣病の一次予防を重視し、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・こころの健康、たばこ、アルコール、歯の健康などの領域で数値目標を掲げた。2000年に開始され、2003年施行の健康増進法が法的な基盤となった。その後、第二次(2013〜2023年度、健康寿命の延伸と健康格差の縮小が中心目標)、第三次(2024年度〜)へと引き継がれている。母子保健に特化した施策ではない。

  2. ○b.  健やか親子21

    21世紀の母子保健の主要な取り組みを示し、関係者・関係機関が一体となって推進する母子保健の国民運動計画である。健康日本21の一翼を担う位置づけで2001年に開始された。第1次(2001〜2014年)では、①思春期の保健対策の強化と健康教育の推進、②妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援、③小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備、④子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減、の4つを主要課題とした。2015年からは第2次に移行し、「すべての子どもが健やかに育つ社会」を目指している。母子保健の向上を直接の目的とする施策であり、正しい。

  3. ×c.  ゴールドプラン

    正式名称は「高齢者保健福祉推進十か年戦略」で、1989年に策定された高齢者向けの計画である。在宅福祉サービス(ホームヘルパー、ショートステイ、デイサービス)や特別養護老人ホームなどの施設整備について数値目標を定めた。1994年に目標を上方修正した新ゴールドプランへ、さらに介護保険制度の開始(2000年)に合わせてゴールドプラン21(2000〜2004年度)へと引き継がれた。対象は高齢者であり、母子保健の施策ではない。

  4. ×d.  新障害者プラン

    障害者基本計画(2003〜2012年度)の前半5年間に重点的に取り組む施策とその数値目標を定めた「重点施策実施5か年計画」の通称で、2002年に策定された(1995年策定の障害者プランの後継)。地域生活への移行支援、在宅サービスの充実、雇用・就労の促進などを柱とする。対象は障害者であり、母子保健の施策ではない。

  5. ○e.  新エンゼルプラン

    正式名称は「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」で、1999年に大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治の6大臣の合意により策定され、2000〜2004年度を計画期間とした。1994年のエンゼルプランを引き継ぎ、保育サービスの充実、仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備、固定的な性別役割分業や職場優先の企業風土の是正、母子保健医療体制の整備、地域で子どもを育てる教育環境の整備、教育に伴う経済的負担の軽減、住まいづくり・まちづくりによる子育て支援などを重点施策とした。子育て支援・少子化対策として母子保健医療体制の整備を柱の一つに含んでおり、母子保健の向上を目指した施策に該当する。

対象別にみた主な国の計画・国民運動

・国民全体の健康づくり:健康づくり対策(第1次1978年〜、第2次アクティブ80ヘルスプラン1988年〜)→健康日本21(2000年〜)→第二次(2013年度〜)→第三次(2024年度〜) ・母子保健:健やか親子21(2001年〜)→健やか親子21(第2次)(2015年〜)。2019年施行の成育基本法(成育過程にある者等に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律)に基づく基本方針のもとで、国民運動として推進されている。 ・少子化対策・子育て支援:エンゼルプラン(1994年)→新エンゼルプラン(1999年策定、2000〜2004年度)→子ども・子育て応援プラン(2004年策定、2005〜2009年度)→子ども・子育てビジョン(2010年)など。2023年にはこども家庭庁が発足し、こども基本法に基づくこども大綱が策定された。 ・高齢者:ゴールドプラン(1989年)→新ゴールドプラン(1994年)→ゴールドプラン21(1999年策定、2000〜2004年度)。介護保険制度の開始とともに基盤整備が進められた。 ・障害者:障害者プラン(ノーマライゼーション7か年戦略、1995年)→新障害者プラン(2002年策定、2003〜2007年度)。

母子保健の基本となる法律

母子保健法(1965年制定)は、妊娠の届出と母子健康手帳の交付、妊産婦・乳幼児の健康診査(1歳6か月児健診・3歳児健診など)、保健指導、低出生体重児の届出、未熟児養育医療などを定めている。健やか親子21は、こうした法的な仕組みのうえに、国民運動として目標値を掲げて取り組みを推進する計画である。

POINT

・健康日本21=国民全体の健康づくり運動(生活習慣病予防、健康寿命の延伸) ・健やか親子21=母子保健の国民運動計画 ・エンゼルプラン/新エンゼルプラン=少子化対策・子育て支援(母子保健医療体制の整備を含む) ・ゴールドプラン=高齢者保健福祉、障害者プラン=障害者施策 ・計画名と対象集団を対応させて覚える

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。